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020 班分け
しおりを挟む放課後のホームルーム。
五年二組の教室は紛糾していた。
来週には遠足がある。
でも、子どもたちのテンションはあまり高くない。
なぜなら行先がポンポン山だからだ。
ポンポン山は標高七百メートルほどの地元にある山。ハイキングコースも整備されており、傾斜もゆるやか、気軽に山歩きが楽しめる。
それだけならば良かったのだけれども、問題は山までの往復であった。
バスではなく徒歩にて現地へ向かい、山を登ってはまた帰ってくるという行程にて。
遠足という体(てい)の長距離歩行訓練。
はっきりいってシンドイだけで、ちっとも楽しくない!
マラソン大会に並ぶ不人気行事である。
遠足の班分けのための話し合い。
とはいっても、いちいちクジとかを用意するのも面倒なので、好きな者同士がくっついて、あとは適当に調整をしようとの学級委員長の提案に、みんな諸手をあげて賛成したまではよかったのだけれども……
和香はもちろん仲良しのスズちゃんといっしょ。あとは似たような小グループに声をかけて班を組もうとするも、そこでまさかの出来事が起きた。
「ねえ、音苗さん、赤宮さん、よかったら僕といっしょの班にならない?」
いきなりそう提案してきたのは古峰玲央であった。
こういうのを青天の霹靂(へきれき)というのであろう。
熱烈なファンを多数持つ王子さまからの申し出に、和香とスズちゃんはそろってぽかん。
かたやクラスの女子たちは一瞬の沈黙の後に、ざわざわざわ。
おちょうし者の男子は「ヒュウヒュウ」なんぞと口笛を吹いては冷やかしてくるものの、それはさておき。
「えっと……どうしてまた急に?」
理由を訊ねたのは、いち早くショックから立ち直ったスズちゃん。
すると玲央はちょっと困り顔にて。
「あーいや、ほら、他の人だと誰を選んでも角が立ちそうだったから」
じつは班分けは男女混合。
ゆえにあわよくばと玲央を狙っている子たちは大勢いた。
ただでさえキツイ長距離歩行訓練、さなかに余計なことにわずらわされたくない。
その点、和香たちならば安全だと玲央は判断したという。
いちおう話の筋は通っている。
けれども、これって「君たちは眼中にない」と言われているようなもの。
べつにこっちだってその気はない。けれども面と向かって当人から言われると、ちょっとへこむ。和香は心中複雑である。
とはいえ「ここは助けるとおもって、お願い」とイケメンから手を合わされたら、拒むこともできず……
しぶしぶながら和香とスズちゃんは同じ班になることを了承した。
が、それでことは終わらない。
さらにひと波乱が起きた。
「ちょっと待ったー!」
いきなり声をあげたのは委員長の高槻悠太。
「だったら僕もその班を希望する。古峰くんに先を越されたけど、じつは僕も音苗さんを誘うつもりだったんだ」
悠太としてはこれを機に、和香の正体を暴くつもりだった。
でも、いろいろと聞く者に誤解を与えかねない発言にて。
状況と相まって見ようによっては、ふたりの男がひとりの女を取り合っているかのよう?
「えぇーっ!」
和香はたいそう困惑し、スズちゃんは「あらまぁ」と口元を手で隠しニヤニヤ、女子たちは案の定「キャーッ」と大騒ぎし始め、男子たちは無責任に囃し立てることとなった。
おかげで教室内はいっそうやかましくなってしまい、肝心の班分けの話し合いがちっともまとまらず、いったん持ち越しとなってしまった。
でもって、その日の学校からの帰り道でのこと――
「ちょっと音苗さん! どういうことなのか説明なさいっ」
「そんなのこっちが聞きたいよー。あ~ん、もうヤダーっ!」
ホームルームでの出来事を聞きつけた三輪瑠璃とファンクラブの面々から、さっそく追いかけられて逃げる和香の姿があった。
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