にゃんとワンダフルDAYS

月芝

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022 小さな鳥居

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 土手の上から河川敷側へと転げ落ちた和香と玲央。
 生えていた雑草と繁みがクッションとなってくれたおかげで、すり傷と軽い打ち身程度ですんだのだけれども。

「うぅ、目が回る。古峰くんは大丈夫? 巻き込んでごめんなさい。怪我とかしてない? バスケの大会が近いのに……」
「いや、もとはといえば僕のせいみたいなものだから気にしないで。それよりも音苗さんの方は無事?」
「うん、わたしも平気、ちょっと膝をすりむいただけだから」
「そう……にしても参ったね、まだクラクラしているよ」

 とりあえず互いの無事を確認し安堵した。
 頭を振り、和香はよろよろ立ち上がろうとするも、そこで目に入ったのが……………小さな鳥居?
 朱色で足下が黒く塗られており、なりは小さくともいっぱしの姿をしている。
 ほんの五十センチほどの大きさのモノだ。それが地面からにょっきと生えている。
 だが周囲に祠や社は見当たらない。
 あるのは小さな鳥居だけ。
 じつはコレ、「ここで悪さをしないように」という戒めであった。「神さまがちゃんと見ていますよ」との警告にて、ゴミの不法投棄防止のために設けられていたもの。
 そうとは知らず、和香は「はて?」と首をひねったのだけれども、その時のことであった。

 ぞわぞわぞわぞわぞわぞわ……

 奇妙な気配を感じて、うなじの毛が逆立つ。

(――っ! この感覚ってアレに遭遇したときと同じもの……ってことは、もしかしてコレも紅葉路に通じているの!?)

 紅葉路は各地の鳥居と通じている秘密の通路のこと。とても便利なのだが、たまにアレと遭遇するのが玉に瑕(きず)。
 どうにもイヤな予感がした和香は、玲央をうながしすぐにその場を離れようとする。
 でも逃げられなかった。
 ふり返ろうとしたところで、いきなり何者かによって足首をむんずと掴まれたから。

「!」

 白い手であった。
 小さな鳥居の奥からのびたアレの手だ。
 びっくりして悲鳴をあげそうになるも、それもかなわない。口元を別の手が塞いでしまう。
 和香は驚きのあまり大きく目を見開く。

「ふがふがふが」

 さらに幾本もの腕がのびてきては全身に絡みつき、和香はたちまち拘束されてしまう。
 かとおもえば、そのままひといきに鳥居の奥へと引きずり込まれてしまった。
 すべては一瞬の出来事であった。

  ◇

「ハッ、えっと……あれ、ここどこ?」

 無数の白い手により紅葉路へ引きずり込まれたとおもったら次の瞬間のこと、和香は見知らぬ山の中にいた。
 ぽつんとひとりきり、周囲に玲央の姿はない。
 どうやらさらわれたのは自分だけのようだ。
 玲央が巻き込まれなくてよかったと和香は安堵するも、遅ればせながら自分の姿がネコになっていることに気がづいた。

「なんでわたしってばネコになってんの? いつのまに変身したんだろう……あぁ、そうか。紅葉路は人間だと通れないから。だからわたしだけ連れてこられたんだね。
 にしても、ここはどこだろう?」

 山の中なのにはちがいないけれど、音苗本家があるところほど山深くはなさげである。
 これならば自力で下山できそうだ。
 それに紅葉路は各地の鳥居と鳥居を結んでいる特別な通り道。
 白昼にもかかわらず、アレが自分を連れ去れった意図は不明だが、ここまで運ばれたからにはきっと近くに出口になった鳥居があるはず。それを使えば戻ることは可能。
 だから和香は草をかき分け探したのだけれども……

「にゃんにゃあー。(やられたぁー)」

 ネコ姿の和香は眉根を寄せる。
 視線の先には倒されて壊れてしまっている石の鳥居の残骸があった。
 柱が砕けており、これではもう使えない。
 どうやら易々とは帰してくれないらしい。
 やっかいなことになった。和香が表情を険しくしていると、不意にガサリと物音がしたもので、ビクぅ。

 倒れた鳥居の奥にあったのは、朽ちて廃屋然としている社。
 忘れられてひさしい、長いこと誰も訪れていないのは一目瞭然にて。
 音はそちらの方から聞こえてきた。
 ここは山奥だ。獣がいたとて不思議ではない。
 が、それが大きなイノシシとかだと、さすがにおっかない。
 いちおう和香は動物と話す能力を持っている。けれども、みながみな友好的ではないどころか、ろくに言葉が通じないこともしょっちゅうだ。異種族コミュニケーションは難しい。

(もしも危険な相手だったら、どうしよう……)

 すると、またしてもガサガサリとの音が――

「にゃ、にゃにゃにゃ? (ねえ、誰かいるの?)」

 和香はおそるおそる音がする方へ声をかけた。
 すると社の陰から姿をみせたのは……


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