にゃんとワンダフルDAYS

月芝

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041 場外乱闘!?

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 キーン、コーン、カーン、コーン。

 始業のチャイムが鳴るのと同時に、五年二組の教室へと駆け込んできたのは和香だ。
 ギリギリセーフ、走ったせいで痛む脇腹を押さえつつ、和香は自分の席へと。
 途中、スズちゃんから「ずいぶん遅かったけど、何かあったの?」と心配されるも、和香は「ううん、ちょっと寝坊しちゃっただけだから、アハハ」と笑って誤魔化す。
 さすがにフライドチキン抗争に巻き込まれたせいとは言えない。
 にしても朝っぱらから揉みくちゃにされて、ひどい目に合った。

 カラス、タヌキ、ネズミ、イタチ、アライグマ、ネコ。
 町に住むいろんな動物たち。
 それらが一堂に会しては、夜明けの大乱闘。
 アレをひと言であらわせば『狂嵐』である。
 そりゃあ、たしかに某有名ファーストフード店のフライドチキンは美味しい。
 衣がパリッ、お肉が柔らかくてジューシー、スパイシーで風味も豊か、だから和香も大好きだ。お父さんがお土産とかで買ってきてくれたら小躍りして喜ぶ。
 だから動物たちが目の色を変えるのも、理解できなくもない。
 というか、動物たちの食べ物に対する意気込み、その執着を舐めていた。
 よもや、あれほどモーレツだとは思わなかった。
 ビビった。
 和香は机にぐったり突っ伏す。

  ◇

 鉛筆片手にぼんやり授業を受けつつも、和香の頭の片隅にあったのはフライドチキン抗争のこと。
 仁義なき戦い。時間にすればほんの数分間のことだけど、内容がやたらと濃い。

 カラスたち翼を持つ者は、その利を活かして編隊を組み、上空から滑空し獲物を狙う。
 タヌキたちは慎重かつ大胆だ。他を牽制しつつ、並んで肩を組んではモフモフの盾となり、他勢力を押しのけては獲物を確保しようとする。
 小さいながらも数で勝るネズミたち、人海戦術による攪乱と波状攻撃を繰り広げては場を掻き乱す。
 イタチやアライグマなどの手先が器用な面々は、闇雲にゴミ袋を漁るのではなくて、ピンポイントに狙いを定めての行動が際立つ。
 コテツ率いるネコたちは、江戸の火消しさながらに威勢よく正面から突撃を敢行。

 彼らの視点に立って、初めて見えてくることもある。
 どうしてどうして、動物たちもあれで色々と考えて動いているのだ。
 とはいえ、六つもの勢力が争えば混乱してしまい、最終的にはごちゃごちゃ、敵味方が入り乱れての大乱闘となるのだが……

(……にしたって、あれをどうにかしろって、ジョーってば無茶ぶりにもほどがある)

 無難なのは、みんなで奪い合うのではなくて分かち合うこと。
 とはいえ毎回、分配をしていたら手間がかかるし、量も微々たるものになるだろう。
 ちびっとではきっと誰も満足せずに、不満ばかりが募る。それを避けるには……
 例えば――順番にエサ場を利用するのはどうだろうか?
 最初はクジとかで順番を決めて、あとはその順番でエサを漁るのだ。水曜日はカラス、金曜日はイタチみたいに持ちまわりで。
 日によっては当たりハズレが起こるだろうけど、それはしょうがない。運が悪かったと諦めもらうしかない。
 あっ! でも月曜日は特別だから、そこだけは気をつけないと。工夫をして公平になるようにしなければならない。
 ……とまぁこんな感じで、種族の垣根を越えた共通の決まり事を作るのだ。

 あれこれ考えているうちに、いい感じに考えがまとまってきた。
 和香はさっそくノートに思いついたアイデアをメモしておく。

(これならいけるかな、でも……)

 どうしても乗り越えなければならない問題というか、高い壁がある。
 それはせっかく考えた決まり事を、いかにしてみなに認めさせるかということ。

 カラスたちへの説明は……ジョーに丸投げするとして。
 コテツならば和香の話に理解を示してくれそうな気がする。彼さえ支持してくれたらノラネコたちは大丈夫だろう。
 タヌキらについては、どんぐり山のサンやパウロたちに協力をお願いして、縁を取り持ってもらうのはどうだろうか。
 問題は残りのネズミ、イタチ、アライグマたち。
 伝手がまったくない。
 和香はちょくちょくネコの姿で町中を散策しているけれども、不思議と彼らを見かけたことはなかったもので接点が皆無。いきなり話しかけたとて、はたして聞く耳を持ってくれるかどうか。
 ……可能性はかなり低い。
 ロクに知りもしない相手からの提案に、素直にうなづくとはとてもおもえない。
 さて、どうしたものやら。う~ん。

 妙案が浮かばず和香が悶々としているうちに、はや一日の授業が終わり、放課後のホームルームの時間となった。
 だが、ここで先生からおもわぬことを告げられる。

「あー、近頃、登下校中の生徒がカラスに襲われるケースが多発しているらしいので、みな注意するように。万が一出くわしてもあわてず騒がず、ゆっくりとその場から立ち去るように。
 それからアライグマの目撃も相次いでいるが、あれはかわいい見た目に反して、性格が荒っぽいのでけっして近づかないように。他にもネズミが増えているらしいとの情報もある。
 あー、もしも噛まれたり引っかかれたら、すぐに傷口を水で洗い流して、病院に行くこと。絶対に素人判断で甘くみないこと、いいな。
 なお現在、市役所の環境課が調査しているそうなので、見かけてもお仕事の邪魔をしないように……」

 役所がすでに動き出している!
 そうと知って和香は愕然とした。
 ショックのあまり先生の話が途中から頭に入ってこない。
 まさかの場外乱闘! 一部が暴徒化している?
 ジョーが危惧していたことが現実になりつつある。このままではかなりマズイ。
 もうあまり猶予がない。


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