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21話 まずは服!
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人数が増えたところで問題になったのが服と寝床と風呂だ。
いや、こいつらは疑問に思わないらしいが、俺は気になる。服はできれば毎日洗いたい。ほぼ外仕事なんだし。
「誰か針仕事できるやつはいるか?」
なんとなく先入観で女子の方が居そうかなと、食事を拵えてる時に言葉にした。
「私できます」
「あ、あの、僕もやりたいです」
うん、もちろんゴリ筋肉が服を作ってもいいに決まっている。
「おー、じゃあ頼む。お前らは料理番から外すとして、大丈夫そうか?」
「大丈夫です!」
料理長の許可を得て4人ほど部屋の隅に連れだした。
布は冒険者の服がしこたまあったからな。
マジックバッグから取り出すと結構な量の服があった。
シフォン、2000歳くらいって言ってたもんなー。
2000年で溜めた服だと思えば、そりゃあ数もあるはずだわ。
「このままだと派手過ぎるし動き辛いだろ?これを解いて作り直して欲しいんだ」
冒険者の服がきらびやか過ぎて、着る勇気なかったもん。中古だし、失敗してもいいんだ。
千年以上前のもあると思えば、デザインが古いのも仕方ない。
それができるようになったら新しい布を反物で買ってこよう。
「わかりました」
手元に近い服から丁寧に糸を解いて、なるほど、その糸も使うのか。エライなあ。
「わ!サフィ様!レースが付いてますよ。売ったらお金になりますね!」
って売っちゃうのかよ!女子のセリフじゃねえな!
「えー、滅多に手にする事のない素材なんだから縫い付けてみたいっすよー」
だよな!
でもそのセリフ、可愛い女の子の口から聞きたかったなー。
「そうだなあ。宝石類は売るとして、そういうのは女子の衣装につけていいんじゃないか?」
「え!いいんですか!」
「そんな贅沢な服、着たことない!」
「やったー!ねえねえ、どうする~?」
「あはは、まあ頼むよ」
ワイワイと女子トーク(?)が始まったところで、針仕事では戦力にならない俺は席を外した。
俺が役に立てるとしたら洗濯の方だろうな。
基本的に洗濯は洗剤も無くて、もみ洗いや踏み洗いがメインなんだが、汚れの強い物は洗濯玉という浄化の術式が刻まれた物を使うのだ。
桶に水を張って1日つけておく。
するとあら不思議。次の日には綺麗になってんだよなー。
洗濯玉に魔力さえ込めればいつまででも使えるから、エコでいいし。ここに魔力持ちがいるんだから利用しない手はないだろ。
そうすれば余った人員は他に回せるしな。
「サフィ様、魔石を集めてきました。肉は調理室に運んでおきます」
リク達が森で魔物を狩ってきたらしい。
俺が小さくていいから出来るだけたくさん魔石が欲しいって頼んだからな。
洗濯用だ。洗濯用。
「あ、うん。そういえばリクは魔力あったよな」
「はい、みたいですね。けど使えなければ意味ないです」
リクがしゅんとしてしまった。
「教えるからさ、魔石に魔力込めるの手伝ってくれね?」
「はい!」
そうしたら俺は術式を入れたらいいだけになる。
俺はシフォンが教えてくれた方法でリクに魔法を教えようとして、困ったなと思った。
シフォンは俺の上に寝そべって魔力を流し込んだけど、人間同士ってどうやるんだ?
要するに身体が触れてればいいんだよな?
とりあえず同じようにしてみるか。
「リク、こっちに来て横になれ」
リクを寝室に呼ぶとベッドに横たわらせる。
リクが寝転んだところで、シフォンがやってたみたいに上にのしかかった。
「サ、サフィ様?」
「ん?重いか?」
「い、いえ、幸せです」
「はい?」
なんか幻聴が聞こえたぞ。
「あ、あ、あっと、どうやるんですか?」
「んーとな、俺からリクになんか流れてるのわかるか?」
俺は全身で魔力をリクに流していく。
流しすぎると俺の中の魔力が無くなって、体温が急に下がっちまうから徐々にだ、徐々に。
「あ、はい。暖かい感じがします」
お、センスある!
「それが魔力なんだよ。まずは感覚的に魔力がわかるようにならないとダメみたいでさ。俺、これがわかるようになるまで結構時間かかったんだよな。お前すぐわかるとかすげえな」
本当、シフォンにのし掛かられたまま、重いし、もふもふが楽しいしで、一向にわかるようにならなかったもんなー。
「当たり前です。サフィ様の魔力ならわからないわけがありません。この温度、この甘い匂い……はぁいつも寝る時に嗅ぎまくってるのと同じです。あぁあ堪りません!もっとください!」
や、やべえ、なんか変なスイッチ押したっぽい。
「こ、今度はお前がやってみろ」
これ以上はなんかやばい感じがガンガンする。
「はい!」
リクの返事と共にぐるりと体勢が入れ替わった。
いや、くっついてればいいから入れ替わる必要ないんだけどな。
「行きます」
「おう」
さあ来い!なんか心身共に寒くなった分を補充してもらわんとな。
って、勢いあり過ぎ!
「あ、あぅ、はぁ、も、と」
もっとゆっくり……って言葉になってねえ。
「サフィ様?」
「あっん、あっつ、い」
お前の魔力、圧がすごい。
もしかしてリクって魔力量多いんじゃ。
それを手加減なくガンガン入れてくるから、あっつい!!
「リック、1回、止め、て!」
「あ、は、はい!大丈夫ですか、サフィ様!」
俺の上からリクが退いて、何故か胡座の上に姫抱っこされた。
リクの顔色も赤くて息も荒いし、お前も暑かったよな。でも
「だっじょぅぶじゃなひ」
現状だけは報告さないと、このままガンガンこられても困る。
「ごめんなさいっ、ごめんなさい!」
赤い顔が一気に青くなっちまって、うわっ。泣くなって。
お前は俺にやれって言われてやっただけなんだから、上手く教えられなかった俺にムカつくぐらいでいいんだって!
あああっもう!
貰い過ぎたなら返せばいいんだろ?
目一杯になった魔力を発動するとか、俺の場合暴走の方が怖えぇからな。
ちょうど目の前のリクの首が剥き出しだ。
「さ、サフィ様?」
手も足も動かせない俺は、ガブリとそこに食いついて、そこから魔力を戻しはじめた。
だらだらと涎を垂らしながら戻すこと5分。
やっと楽になってきた。
「リク」
「はっ、はい!」
リクはカタカタと貧乏揺すりをしながら『タエロ、タエロ』と何かを小さく唸っている。
だからそんな不安そうな顔するなって。
「リクって魔力量、多いんだな」
「そ、そうですか?」
「うん、それが一気に入ってきたから暑くなったって感じかな。んで、今少しリクに戻したから楽になってきたから大丈夫だよ」
「わかりました!戻せばいいんですね!じゃあ吸います」
「は?……あ、むっ」
なんで?なんでそこでキス?
な、なるほど。
めっちゃ吸われてるな。唾液ごと魔力持っていかれてるな。
じゃねーよ!
何が悲しくて男とキスしなければならんのだ。
今世の俺のファーストキスなんだぞ!
いや、カウントしないけどな。
もしかしたら、裏表のない純粋な女神がこの世界にはいるかもしれないしな……いや、そういう子に裏切られた方がダメージデカくないか?
うわあぁぁぁぁあん、八方塞がり!
じゃなくて!!
「んふ、1回やめ!」
やっと楽に動かせるようになった手を顔の間に入れて、ぐいと追いやる。
「あのな、こんなことしなくても、お互い少しずつ行き来できればいいんだって」
「わかりました。このままだとヤバかったのでその方がいいです」
なにが?
俺はそのままリクに抱きついた。
「ん、いくぞ?わかるか?」
ゆっくりと俺の魔力を流していく。
「あ、はい。来てます、暖かいのが」
「じゃあ返してみ?いいか、少しずつだぞ」
「はい!」
あ、来てるな。
やっぱりリクの魔力、熱い。
しかし、すぐに細かい微調整もできちまうとか、もう合格でいいんじゃね?
「サフィ様、可愛いです」
あん?何がだ?
「そんな風にとろんと他の人を見たりしたらダメですからね」
はあ?
リクの言ってることが、時々マジで意味不明だ。
しばらくそうやって魔力を行き来させて、リクはもうやれるなと確信した。
「一回でできるようになるとか、リクすげえなぁ。俺できるようになるまで、ひと月くらいかかったのにぃ。明日から魔力詰め頼むなぁ、ふわぁぁ」
てか疲れた。
俺はちょっとだけのつもりでリクに凭れかかると、そのまま目を閉じ……寝てしまったらしい。
すぅすぅと寝息を立てた俺を見て、今日はいい日だなと幸せに浸ろうとしたリクが
「は!もしかして直ぐにできなかったら、もっとこの練習できたんじゃ……俺のバカっ」
と唸ってたことには気づかなかった。
いや、こいつらは疑問に思わないらしいが、俺は気になる。服はできれば毎日洗いたい。ほぼ外仕事なんだし。
「誰か針仕事できるやつはいるか?」
なんとなく先入観で女子の方が居そうかなと、食事を拵えてる時に言葉にした。
「私できます」
「あ、あの、僕もやりたいです」
うん、もちろんゴリ筋肉が服を作ってもいいに決まっている。
「おー、じゃあ頼む。お前らは料理番から外すとして、大丈夫そうか?」
「大丈夫です!」
料理長の許可を得て4人ほど部屋の隅に連れだした。
布は冒険者の服がしこたまあったからな。
マジックバッグから取り出すと結構な量の服があった。
シフォン、2000歳くらいって言ってたもんなー。
2000年で溜めた服だと思えば、そりゃあ数もあるはずだわ。
「このままだと派手過ぎるし動き辛いだろ?これを解いて作り直して欲しいんだ」
冒険者の服がきらびやか過ぎて、着る勇気なかったもん。中古だし、失敗してもいいんだ。
千年以上前のもあると思えば、デザインが古いのも仕方ない。
それができるようになったら新しい布を反物で買ってこよう。
「わかりました」
手元に近い服から丁寧に糸を解いて、なるほど、その糸も使うのか。エライなあ。
「わ!サフィ様!レースが付いてますよ。売ったらお金になりますね!」
って売っちゃうのかよ!女子のセリフじゃねえな!
「えー、滅多に手にする事のない素材なんだから縫い付けてみたいっすよー」
だよな!
でもそのセリフ、可愛い女の子の口から聞きたかったなー。
「そうだなあ。宝石類は売るとして、そういうのは女子の衣装につけていいんじゃないか?」
「え!いいんですか!」
「そんな贅沢な服、着たことない!」
「やったー!ねえねえ、どうする~?」
「あはは、まあ頼むよ」
ワイワイと女子トーク(?)が始まったところで、針仕事では戦力にならない俺は席を外した。
俺が役に立てるとしたら洗濯の方だろうな。
基本的に洗濯は洗剤も無くて、もみ洗いや踏み洗いがメインなんだが、汚れの強い物は洗濯玉という浄化の術式が刻まれた物を使うのだ。
桶に水を張って1日つけておく。
するとあら不思議。次の日には綺麗になってんだよなー。
洗濯玉に魔力さえ込めればいつまででも使えるから、エコでいいし。ここに魔力持ちがいるんだから利用しない手はないだろ。
そうすれば余った人員は他に回せるしな。
「サフィ様、魔石を集めてきました。肉は調理室に運んでおきます」
リク達が森で魔物を狩ってきたらしい。
俺が小さくていいから出来るだけたくさん魔石が欲しいって頼んだからな。
洗濯用だ。洗濯用。
「あ、うん。そういえばリクは魔力あったよな」
「はい、みたいですね。けど使えなければ意味ないです」
リクがしゅんとしてしまった。
「教えるからさ、魔石に魔力込めるの手伝ってくれね?」
「はい!」
そうしたら俺は術式を入れたらいいだけになる。
俺はシフォンが教えてくれた方法でリクに魔法を教えようとして、困ったなと思った。
シフォンは俺の上に寝そべって魔力を流し込んだけど、人間同士ってどうやるんだ?
要するに身体が触れてればいいんだよな?
とりあえず同じようにしてみるか。
「リク、こっちに来て横になれ」
リクを寝室に呼ぶとベッドに横たわらせる。
リクが寝転んだところで、シフォンがやってたみたいに上にのしかかった。
「サ、サフィ様?」
「ん?重いか?」
「い、いえ、幸せです」
「はい?」
なんか幻聴が聞こえたぞ。
「あ、あ、あっと、どうやるんですか?」
「んーとな、俺からリクになんか流れてるのわかるか?」
俺は全身で魔力をリクに流していく。
流しすぎると俺の中の魔力が無くなって、体温が急に下がっちまうから徐々にだ、徐々に。
「あ、はい。暖かい感じがします」
お、センスある!
「それが魔力なんだよ。まずは感覚的に魔力がわかるようにならないとダメみたいでさ。俺、これがわかるようになるまで結構時間かかったんだよな。お前すぐわかるとかすげえな」
本当、シフォンにのし掛かられたまま、重いし、もふもふが楽しいしで、一向にわかるようにならなかったもんなー。
「当たり前です。サフィ様の魔力ならわからないわけがありません。この温度、この甘い匂い……はぁいつも寝る時に嗅ぎまくってるのと同じです。あぁあ堪りません!もっとください!」
や、やべえ、なんか変なスイッチ押したっぽい。
「こ、今度はお前がやってみろ」
これ以上はなんかやばい感じがガンガンする。
「はい!」
リクの返事と共にぐるりと体勢が入れ替わった。
いや、くっついてればいいから入れ替わる必要ないんだけどな。
「行きます」
「おう」
さあ来い!なんか心身共に寒くなった分を補充してもらわんとな。
って、勢いあり過ぎ!
「あ、あぅ、はぁ、も、と」
もっとゆっくり……って言葉になってねえ。
「サフィ様?」
「あっん、あっつ、い」
お前の魔力、圧がすごい。
もしかしてリクって魔力量多いんじゃ。
それを手加減なくガンガン入れてくるから、あっつい!!
「リック、1回、止め、て!」
「あ、は、はい!大丈夫ですか、サフィ様!」
俺の上からリクが退いて、何故か胡座の上に姫抱っこされた。
リクの顔色も赤くて息も荒いし、お前も暑かったよな。でも
「だっじょぅぶじゃなひ」
現状だけは報告さないと、このままガンガンこられても困る。
「ごめんなさいっ、ごめんなさい!」
赤い顔が一気に青くなっちまって、うわっ。泣くなって。
お前は俺にやれって言われてやっただけなんだから、上手く教えられなかった俺にムカつくぐらいでいいんだって!
あああっもう!
貰い過ぎたなら返せばいいんだろ?
目一杯になった魔力を発動するとか、俺の場合暴走の方が怖えぇからな。
ちょうど目の前のリクの首が剥き出しだ。
「さ、サフィ様?」
手も足も動かせない俺は、ガブリとそこに食いついて、そこから魔力を戻しはじめた。
だらだらと涎を垂らしながら戻すこと5分。
やっと楽になってきた。
「リク」
「はっ、はい!」
リクはカタカタと貧乏揺すりをしながら『タエロ、タエロ』と何かを小さく唸っている。
だからそんな不安そうな顔するなって。
「リクって魔力量、多いんだな」
「そ、そうですか?」
「うん、それが一気に入ってきたから暑くなったって感じかな。んで、今少しリクに戻したから楽になってきたから大丈夫だよ」
「わかりました!戻せばいいんですね!じゃあ吸います」
「は?……あ、むっ」
なんで?なんでそこでキス?
な、なるほど。
めっちゃ吸われてるな。唾液ごと魔力持っていかれてるな。
じゃねーよ!
何が悲しくて男とキスしなければならんのだ。
今世の俺のファーストキスなんだぞ!
いや、カウントしないけどな。
もしかしたら、裏表のない純粋な女神がこの世界にはいるかもしれないしな……いや、そういう子に裏切られた方がダメージデカくないか?
うわあぁぁぁぁあん、八方塞がり!
じゃなくて!!
「んふ、1回やめ!」
やっと楽に動かせるようになった手を顔の間に入れて、ぐいと追いやる。
「あのな、こんなことしなくても、お互い少しずつ行き来できればいいんだって」
「わかりました。このままだとヤバかったのでその方がいいです」
なにが?
俺はそのままリクに抱きついた。
「ん、いくぞ?わかるか?」
ゆっくりと俺の魔力を流していく。
「あ、はい。来てます、暖かいのが」
「じゃあ返してみ?いいか、少しずつだぞ」
「はい!」
あ、来てるな。
やっぱりリクの魔力、熱い。
しかし、すぐに細かい微調整もできちまうとか、もう合格でいいんじゃね?
「サフィ様、可愛いです」
あん?何がだ?
「そんな風にとろんと他の人を見たりしたらダメですからね」
はあ?
リクの言ってることが、時々マジで意味不明だ。
しばらくそうやって魔力を行き来させて、リクはもうやれるなと確信した。
「一回でできるようになるとか、リクすげえなぁ。俺できるようになるまで、ひと月くらいかかったのにぃ。明日から魔力詰め頼むなぁ、ふわぁぁ」
てか疲れた。
俺はちょっとだけのつもりでリクに凭れかかると、そのまま目を閉じ……寝てしまったらしい。
すぅすぅと寝息を立てた俺を見て、今日はいい日だなと幸せに浸ろうとしたリクが
「は!もしかして直ぐにできなかったら、もっとこの練習できたんじゃ……俺のバカっ」
と唸ってたことには気づかなかった。
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