彼はやっぱり気づかない!

水場奨

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50話 閑話1 卒業と旅立ち

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「なんだか兄さん嬉しそうだね」
「おう」
今日の俺は寛大だぜ。
なんていったってな。

「身長が伸びてたんだ!168!」
すげえだろ!1年で8センチも伸びやがった。

「へー。かわいいですね」
「うっさいわアホ!」
「僕もうすぐ190越えるんで」
「ぐぬぬ」

『って言っても、前世も190くらいだったからなーなんて』
「へ?今、な、なんて?」
今のは聞こえたぞ。
不吉な言葉が、聞こえたぞ。

「あー、なんでもないよ」
なんでもなくない!

もし前世の身長がこの世界の身長にも影響するのなら、俺ヤバい。
みんなには170って言ってたけど168センチしかなかった人間だぞ。
こっちのヤツってみんなでかいのに、168で止まったらどうしよう。

「ほら、兄さん!早くしないとカランが行っちゃうよ」
「カランが俺を置いてくわけねえだろ、バーカ!」
「それもそうか。……向こうに行っても元気でね、兄さん」
「おう!俺はいつでも元気だぜ」

カランは今日卒業で、仕事を辞めた俺と一緒に仲間のところへ帰ってくれる。
出た時と違って、俺の相方はカランになったわけだけど、あいつらは何も言わなかった。

俺は、リクがいなくても生きていく。

あ、そうだ。

『なあ、クリス。お前が卒業するまでに、シルベール様との結婚が、さも当たり前のことになってるように、兄ちゃん頑張っちゃうからね』

それだけ言うと俺は走って部屋を飛び出した。

「はいはい……えっ!?兄さん、それ、日本語!!えっ?!」
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