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2話 呪われた王子
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「――誰だ」
酷く冷めた、掠れ声が聞こえた。
レオニード王子は、鉄で出来た檻のような部屋に隔離されていた。
いや、自由に外に出ることが許されない以上、牢屋と言っても差し支えないだろう。
魔術紋が刻まれた眼帯で両目を覆われ、酷くやせ細った彼からは、王族としての風格などを微塵も感じさせない。
私はお構いなしに前へ進み、彼の下へ近づいていく。
「待て。来るな。俺に近寄るな」
なんと言われようと私は足を止めなかった。
ただまっすぐ、ベッドの上で蹲る彼に迫っていく。
「やめろ……ごほっ、死にたいのか……」
これは彼なりの精いっぱいの気遣いなのだろう。
視力を失った者は、それ以外の感覚が常人よりも研ぎ澄まされる。
彼には今、何も見えていないけれど、誰かが近づいてくるというのははっきり認識できているだろう。
「……一体誰なんだ、お前は」
「ミディア・エルフォードと申します。レオニード殿下」
「エルフォード……あの女の関係者か」
「ええ、リゼリアお姉様に申し付けられ伺った次第です」
「……帰れ。俺が呪いに侵されて以来、一度も顔を出さなくなった女の妹などと話すことはない」
「お姉様は、聖女である私ならばあなたのことを治せるかもしれない、と、仰っていました」
「……なんだと?」
かけていた毛布を剥ぎゆっくりと体を起こすレオニード殿下。
見えていないはずなのに、私の方をじっと見つめている。
それはまるで神に縋るような、微かな希望を見出した者の姿だった。
酷く冷めた、掠れ声が聞こえた。
レオニード王子は、鉄で出来た檻のような部屋に隔離されていた。
いや、自由に外に出ることが許されない以上、牢屋と言っても差し支えないだろう。
魔術紋が刻まれた眼帯で両目を覆われ、酷くやせ細った彼からは、王族としての風格などを微塵も感じさせない。
私はお構いなしに前へ進み、彼の下へ近づいていく。
「待て。来るな。俺に近寄るな」
なんと言われようと私は足を止めなかった。
ただまっすぐ、ベッドの上で蹲る彼に迫っていく。
「やめろ……ごほっ、死にたいのか……」
これは彼なりの精いっぱいの気遣いなのだろう。
視力を失った者は、それ以外の感覚が常人よりも研ぎ澄まされる。
彼には今、何も見えていないけれど、誰かが近づいてくるというのははっきり認識できているだろう。
「……一体誰なんだ、お前は」
「ミディア・エルフォードと申します。レオニード殿下」
「エルフォード……あの女の関係者か」
「ええ、リゼリアお姉様に申し付けられ伺った次第です」
「……帰れ。俺が呪いに侵されて以来、一度も顔を出さなくなった女の妹などと話すことはない」
「お姉様は、聖女である私ならばあなたのことを治せるかもしれない、と、仰っていました」
「……なんだと?」
かけていた毛布を剥ぎゆっくりと体を起こすレオニード殿下。
見えていないはずなのに、私の方をじっと見つめている。
それはまるで神に縋るような、微かな希望を見出した者の姿だった。
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