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1話 お姉様が捨てた王子様
「ねえ、ミディア。あなた、王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、まるで壊れたおもちゃを差し出すように、リゼリアお姉様は私に告げた。
彼女はいつだって私を見下していて、今も意地の悪い笑みを浮かべながら嘲笑するように喋っている。
何故なら出来損ないである私と違って、お姉様は誰もが一目置く完璧な公爵令嬢なのだから。
そして、そんなお姉様が私に何かを与えるときは、決まってそれが要らなくなった時だった。
「レオニード・ヴォルディア殿下。あなたも、名前は良く知っているでしょう?」
お姉様が口にしたその名前を聞いた時、私は戦慄した。
彼はこの国一番のイケメンと噂される、貴族平民問わず大人気の第一王子。
もちろん私はその顔を見たことがないけれど、少し前までは年頃の貴族令嬢ならばみな彼とお近づきになりたいと言っただろう。
だが、そんな王子様もいまや誰も近づきたがらない厄介者だ。
それは彼が不治の病――否、解呪不可の悍ましい呪いに侵されたからだ。
目を合わせただけでその身を石化させ、自らの肉体をも蝕む恐るべき呪いだ。
これのせいで、王子は魔術で目を潰され、ついに誰の前にも姿を現さなくなった。
「仮にも聖女であるあなたなら解呪できるかもしれないと、特別に王子様への接近許可が出たわ。それに、目の見えないあなたなら石化の恐れはないでしょう?」
なるほど、そう言うことかと私は納得した。
確かに私は生まれつき強い光の魔力を有した聖女の一人として、幼い頃を修道院で過ごした。
だけど、私は光を認識できる術を失った。
私の眼は二度と光を捉えることは出来ない。
だから、私が認識できるのはどこまでも広がる闇だけだった。
光を知らぬ者に光の理を扱えるはずもなく、 結局私はあの出来事をきっかけに修道院を追い出され、以降は実家で大人しく一人で過ごしていたのだ。
しかし、お姉様はレオニード王子の婚約者だった。
そして、優秀で未来あるお姉様が、ダメになった王子の婚約者であり続ける必要性はなく、かといって放置する訳にもいかない。
そこで白羽の矢が立ったのがこの私という訳だ。
「で、どうなの? 行くのか、行かないのか。ちゃんと口に出して言いなさい。いっつも黙って一人でボーっとして、不気味なのよあんた。まったく、なんでこんなのが聖女なんだか」
「……分かりました。伺います」
「そう。ならさっさと支度なさい。良かったわね、あんたみたいなのにも役割が与えられて」
「…………」
私に拒否権など存在しない。
だけど、私はもとよりこの話を受けようと思っていた。
何故なら私は、光を持たない者の気持ちが分かるから。
何も見えないことへの絶望を、誰よりも知っているから。
だからこそ、この国で一番王子様の気持ちを分かってあげられるのは私だけなのだ。
ある日、まるで壊れたおもちゃを差し出すように、リゼリアお姉様は私に告げた。
彼女はいつだって私を見下していて、今も意地の悪い笑みを浮かべながら嘲笑するように喋っている。
何故なら出来損ないである私と違って、お姉様は誰もが一目置く完璧な公爵令嬢なのだから。
そして、そんなお姉様が私に何かを与えるときは、決まってそれが要らなくなった時だった。
「レオニード・ヴォルディア殿下。あなたも、名前は良く知っているでしょう?」
お姉様が口にしたその名前を聞いた時、私は戦慄した。
彼はこの国一番のイケメンと噂される、貴族平民問わず大人気の第一王子。
もちろん私はその顔を見たことがないけれど、少し前までは年頃の貴族令嬢ならばみな彼とお近づきになりたいと言っただろう。
だが、そんな王子様もいまや誰も近づきたがらない厄介者だ。
それは彼が不治の病――否、解呪不可の悍ましい呪いに侵されたからだ。
目を合わせただけでその身を石化させ、自らの肉体をも蝕む恐るべき呪いだ。
これのせいで、王子は魔術で目を潰され、ついに誰の前にも姿を現さなくなった。
「仮にも聖女であるあなたなら解呪できるかもしれないと、特別に王子様への接近許可が出たわ。それに、目の見えないあなたなら石化の恐れはないでしょう?」
なるほど、そう言うことかと私は納得した。
確かに私は生まれつき強い光の魔力を有した聖女の一人として、幼い頃を修道院で過ごした。
だけど、私は光を認識できる術を失った。
私の眼は二度と光を捉えることは出来ない。
だから、私が認識できるのはどこまでも広がる闇だけだった。
光を知らぬ者に光の理を扱えるはずもなく、 結局私はあの出来事をきっかけに修道院を追い出され、以降は実家で大人しく一人で過ごしていたのだ。
しかし、お姉様はレオニード王子の婚約者だった。
そして、優秀で未来あるお姉様が、ダメになった王子の婚約者であり続ける必要性はなく、かといって放置する訳にもいかない。
そこで白羽の矢が立ったのがこの私という訳だ。
「で、どうなの? 行くのか、行かないのか。ちゃんと口に出して言いなさい。いっつも黙って一人でボーっとして、不気味なのよあんた。まったく、なんでこんなのが聖女なんだか」
「……分かりました。伺います」
「そう。ならさっさと支度なさい。良かったわね、あんたみたいなのにも役割が与えられて」
「…………」
私に拒否権など存在しない。
だけど、私はもとよりこの話を受けようと思っていた。
何故なら私は、光を持たない者の気持ちが分かるから。
何も見えないことへの絶望を、誰よりも知っているから。
だからこそ、この国で一番王子様の気持ちを分かってあげられるのは私だけなのだ。
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