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『運命』はなしで
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翌朝、登校の用意をしていたら、厳かな馬車が我が家にやって来た。
ランカスター公爵家の紋章、セドリックだ。
慌てて玄関へ飛び出ると、ちょうどセドリックが馬車から降りたところだった。
「メアリー」
甘い笑顔を向けられて、ついとろりとしてしまう。朝からセドリックが素敵過ぎる……! が、それどころではない。
「せ、セドリックさま、どうされたのです?」
ものすごく自然な動作でやんわりと抱き込まれ、まるでセドリックに囲われているようだ。
「今日は休むように言ったろう? 登校前に様子を見に来たんだ。その格好だと学校に行くつもりかい?」
「え、ええ。体調に問題はないようなので……」
いや、セドリックに会ってから心拍数は爆上がりだ。後で『抗発情薬』を飲んでおかなければ。
「本当に? 少し顔が赤いよ」
優しく頬を撫でられ向き合うと、セドリックこそ頬を赤らめ熱の籠った目をしている。
「セドリックさま、だ駄目です……!」
自分でも分かる『番』を求める潤んだ目では、なんの抵抗にもならない。今にも唇が重なりそうになって。
「メアリー? ランカスター卿?! こ、このような朝早くにいかがされました!?」
豪華な馬車に気づいた兄のトマスが玄関にやって来た。
我が家は節約家庭なので、来客を告げる者はいない。雇っている召し使いは皆、朝は洗濯や馬の世話などで忙しい。
「先触れもなしにすまないね。メアリーの様子が気になったんだ。メアリー、このまま学校へ行くなら一緒に行こう」
「い、いえ……」
他に婚約者のいる人と同じ馬車で登校するなんてありえない。ましてセドリックと二人っきりの空間なんて、自分がどうにかなってしまいそうだ。
「ランカスター卿、有難いお申し出ですが、メアリーはまだ未婚の身ですので……」
そもそも独身の男女が二人っきりで馬車に乗り合わせるなんてない。
良識な兄は、メアリーの事情をよく汲んでくれた。
「トマス卿。あなたは本日、王宮に呼ばれていたのではありませんか?」
「あ、そうでした!! ランカスター卿、よくご存知ですね。朝の早くに召し出されまして慌てて用意を。ああっ!!」
「お兄さま、どうされたの?」
「いや、僕が馬車を使ったらメアリーの登校に使えない」
メアリーとトマスは顔を見合わせる。
「それじゃあ、わたしは学校をお休み――」
「メアリーは俺の馬車を使えば良い」
セドリックはそっと体を寄せてきた。ピタリとくっつくと、もう駄目で。メアリーはセドリックの側にいることしか考えられなくなってしまった。
近過ぎるメアリーとセドリックの距離間に、さすがにトマスも不審に思う。
「ランカスター卿は確か、リヴァーデン伯爵家のご令嬢と婚約されていましたよね。メアリーに良からぬ噂が立てられては……」
そう。メアリーとセドリックは決して結ばれない関係だ。夢見心地から少し冷静さを取り戻す。
セドリックも一つ息を吐いて、そっとメアリーを離し、意を決したようだ。
「実はリヴァーデン伯爵家とは破談する」
「え! そうなのですか? 婚約を結んだばかりだと聞いていましたが」
「政略だから折り合わぬこともあるよ。正式な書類が整い次第発表をする」
婚約が破談?! な、なぜ。すごく嫌な予感がする。
「私はメアリーと結婚する予定だ」
「っっ!!!?」
「え、メアリーですか?? しかし我が家と結婚しても……??」
トマスは困り顔だ。当然だ。政略が常の貴族の世界。メアリーと結婚しても、アシュフォード家は高貴な家柄と縁繋ぎになれるメリットはあれどセドリック側に旨みは全くない。
「それが良いんだよ。現在、陛下のご子息は王太子殿下のみ。公爵家に無駄に権力が集中すると内乱の種になるだけだ」
「た、確かに……」
「それに私が何よりメアリーを気に入った。他の女性は考えられない」
「!!!」
*
馬車に乗り込むと、セドリックは当然のように隣に座ってきた。やはり自然な動作で腰に手を回して身を寄せ、もう片方はメアリーの髪を一束掬い「可愛い、可愛い」とかなんとか言いながらキスしている。
過度に甘いスキンシップに、メアリーは二人きりの馬車はやはり危険だと再認識した。セドリックも狭い空間で遠慮がないようだし。
貰った銀の小匣を取り出し、中に入ったお薬を一つ飲み込む。セドリックはその様子を眺めて「大丈夫? 我慢しなくて良いよ」とか言いながら顔を近づけてきた。
その意図を知り慌てて身を翻す。
「あ、あのセドリックさま」
「なぁに? メアリー」
相変わらず見惚れるような顔立ちで、躊躇うことなく深い愛情を向けてくるセドリック。このまま本能のままに流されてしまいたいと欲望がよぎるも、駄目だ。はっきりしておかないと。
「わたしたちの結婚なんですが……」
「あぁ。本当は一刻も早くしたいが、段取りが悪くてすまないね。先方と破談でき次第、すぐに婚約を取り付けるよ。結婚は俺が学園を卒業した後……が無難かな」
「そうじゃなくて! わたしたちは結婚しない方が良いと思うんです!!」
シ……ン。
甘ったるくて熱が籠っていた馬車内は、一気に温度が急降下した気がした。
セドリックはピクリとも動かず、メアリーは反応が気になってそっと様子を伺うと、有無言わせない強い眼差しを返してきた。
「どういうつもり? メアリー。俺たちは『番』なんだよ?」
「え、ええ。でもお互い立場が違いますし、セドリックさまにはすでに立派な婚約者がいらっしゃいます。わたしたちは結ばれない方が良いと思うんです……」
セドリックの冷たい空気が恐ろしくて、最後の方は尻切れとんぼになった。
愛があるのは分かっているのに、怖いってどういうことだろう。メアリーはブルっと少し体を震わせてしまった。
セドリックがすぐに気づいて、「寒い?」と優しく抱きしめてきた。
あぁ。優しいセドリックさま、好き。大好き。気持ち良い……
うっかりメアリーはとろっとしてしまって、つい頬をすりすりとセドリックの胸に擦り付けてしまう。
その態度がセドリックを溶かした。冷え切った空間が少し暖まる。
「不安にさせてしまったんだね。ごめん、メアリー。俺が『運命』をもっと信じていたら、君に出会う前に婚約なんてしなかったんだけれど。必ず解決するから、離れるなんて言わないでくれ、メアリー」
セドリックは悲しそうな顔で懇願してくるから、メアリーは絆されてしまいそうになる。
しかし、だ。現実を忘れてはならない。
「あの、でも『番』なんて不確かなもので婚約取りやめとか駄目だと思うんです。たくさんの人に迷惑がかかることをわたしは望みません」
「メアリー……」
「それに、婚約者がいるのに、こんなこと……。不実だと思います……」
やはり最後は尻切れとんぼになったが、小心なメアリーにしては上出来だ。言うべきことをきちんと伝えられた。
ピッタリとした距離感から、セドリックは少しだけ身を引く。
「……そうだな。確かに現状、婚約者のいる身で相応しい態度ではなかった。他人がどう言おうと俺は気にしないが、メアリーが貶められるのは辛い」
なんと。セドリックは即座に態度を改めてくれた。わかってくれたらしい。
「しかし俺の想いは変わらない。メアリーが好きだ。愛している。本音を言えば片時も側を離れたくないし、すぐにでも結ばれたい」
安堵したのも束の間、直球の想いをぶつけられた。
「メアリー、君は俺のことが好き?」
セドリックの瞳が揺らぎ、メアリーはたじろぐ。
そんなの言えない……。言ってはいけない、禁断の想い。
メアリーはキュッと唇を噛みしめる。
「君の気持ちも知らずに、俺は俺の意思を曲げるなんてできない」
まっすぐ見据えた目がメアリーを捉えて離さない。こんなにも真剣に自分と向き合おうとする人は他にいるだろうか。
これが『運命』か。
「答えて・・・」
切実な訴えに、メアリーは陥落した。
「好きです……」
「メアリー!!」
セドリックは歓喜と共に条件反射で抱き寄せようとしたが、すんでのところで止まった。照れたようにから笑いするセドリックはメアリーの意思を尊重してくれるようだ。
「メアリー、教えてくれるか? いったい何が不安なんだい? 俺たちは、お互い好き合い……『運命』なのに」
メアリーとセドリックは『運命の番』。ロマンチックだが、それが生きていく枷ともなるだろう。
お互いを不幸にしてしまう予感しかない。
「その、『運命』をなしにしたいんです」
メアリーはまとまらない思いを、ひとつの言葉に託した。
「『運命』をなしとは、運命に囚われたくないと?」
「はい!」
さすがセドリック! メアリーの意図をわかってくれたようだ。思わず顔がほころびる。
「……確かに医者にも言われたな。メアリーの戸惑いは大きいと」
セドリックは小さく頷きながら呟いた。
「わかった。つまり俺たちが『運命の番』であることを隠したい、と。そういうことだね? それがメアリーの不安を取り除く」
「はい! そうです!」
そして速やかに別れたい。名残惜しいけれど、あまりに危険。茨の道だ。
メアリーは普通で良いのだ。ちょっと禁断の果実を味わい過ぎた気もするが……。
思いを確かめ合った二人は、節度を保ちながらも甘い気配を隠しきれない。
「メアリー」
朝の柔らかい日差しが馬車の窓から溢れて、セドリックの顔を明るく照らす。今まで出会ったどんな人よりもいっとう素敵に映るのは『運命の番』だからか、セドリック自身の魅力によるものなのかメアリーにはわからない。
ドキドキドキドキ
胸の高鳴りが止まらない。
早く薬が効いてと、切に願った。
――セドリックが何を考えているのか、気づきもしないで。
ランカスター公爵家の紋章、セドリックだ。
慌てて玄関へ飛び出ると、ちょうどセドリックが馬車から降りたところだった。
「メアリー」
甘い笑顔を向けられて、ついとろりとしてしまう。朝からセドリックが素敵過ぎる……! が、それどころではない。
「せ、セドリックさま、どうされたのです?」
ものすごく自然な動作でやんわりと抱き込まれ、まるでセドリックに囲われているようだ。
「今日は休むように言ったろう? 登校前に様子を見に来たんだ。その格好だと学校に行くつもりかい?」
「え、ええ。体調に問題はないようなので……」
いや、セドリックに会ってから心拍数は爆上がりだ。後で『抗発情薬』を飲んでおかなければ。
「本当に? 少し顔が赤いよ」
優しく頬を撫でられ向き合うと、セドリックこそ頬を赤らめ熱の籠った目をしている。
「セドリックさま、だ駄目です……!」
自分でも分かる『番』を求める潤んだ目では、なんの抵抗にもならない。今にも唇が重なりそうになって。
「メアリー? ランカスター卿?! こ、このような朝早くにいかがされました!?」
豪華な馬車に気づいた兄のトマスが玄関にやって来た。
我が家は節約家庭なので、来客を告げる者はいない。雇っている召し使いは皆、朝は洗濯や馬の世話などで忙しい。
「先触れもなしにすまないね。メアリーの様子が気になったんだ。メアリー、このまま学校へ行くなら一緒に行こう」
「い、いえ……」
他に婚約者のいる人と同じ馬車で登校するなんてありえない。ましてセドリックと二人っきりの空間なんて、自分がどうにかなってしまいそうだ。
「ランカスター卿、有難いお申し出ですが、メアリーはまだ未婚の身ですので……」
そもそも独身の男女が二人っきりで馬車に乗り合わせるなんてない。
良識な兄は、メアリーの事情をよく汲んでくれた。
「トマス卿。あなたは本日、王宮に呼ばれていたのではありませんか?」
「あ、そうでした!! ランカスター卿、よくご存知ですね。朝の早くに召し出されまして慌てて用意を。ああっ!!」
「お兄さま、どうされたの?」
「いや、僕が馬車を使ったらメアリーの登校に使えない」
メアリーとトマスは顔を見合わせる。
「それじゃあ、わたしは学校をお休み――」
「メアリーは俺の馬車を使えば良い」
セドリックはそっと体を寄せてきた。ピタリとくっつくと、もう駄目で。メアリーはセドリックの側にいることしか考えられなくなってしまった。
近過ぎるメアリーとセドリックの距離間に、さすがにトマスも不審に思う。
「ランカスター卿は確か、リヴァーデン伯爵家のご令嬢と婚約されていましたよね。メアリーに良からぬ噂が立てられては……」
そう。メアリーとセドリックは決して結ばれない関係だ。夢見心地から少し冷静さを取り戻す。
セドリックも一つ息を吐いて、そっとメアリーを離し、意を決したようだ。
「実はリヴァーデン伯爵家とは破談する」
「え! そうなのですか? 婚約を結んだばかりだと聞いていましたが」
「政略だから折り合わぬこともあるよ。正式な書類が整い次第発表をする」
婚約が破談?! な、なぜ。すごく嫌な予感がする。
「私はメアリーと結婚する予定だ」
「っっ!!!?」
「え、メアリーですか?? しかし我が家と結婚しても……??」
トマスは困り顔だ。当然だ。政略が常の貴族の世界。メアリーと結婚しても、アシュフォード家は高貴な家柄と縁繋ぎになれるメリットはあれどセドリック側に旨みは全くない。
「それが良いんだよ。現在、陛下のご子息は王太子殿下のみ。公爵家に無駄に権力が集中すると内乱の種になるだけだ」
「た、確かに……」
「それに私が何よりメアリーを気に入った。他の女性は考えられない」
「!!!」
*
馬車に乗り込むと、セドリックは当然のように隣に座ってきた。やはり自然な動作で腰に手を回して身を寄せ、もう片方はメアリーの髪を一束掬い「可愛い、可愛い」とかなんとか言いながらキスしている。
過度に甘いスキンシップに、メアリーは二人きりの馬車はやはり危険だと再認識した。セドリックも狭い空間で遠慮がないようだし。
貰った銀の小匣を取り出し、中に入ったお薬を一つ飲み込む。セドリックはその様子を眺めて「大丈夫? 我慢しなくて良いよ」とか言いながら顔を近づけてきた。
その意図を知り慌てて身を翻す。
「あ、あのセドリックさま」
「なぁに? メアリー」
相変わらず見惚れるような顔立ちで、躊躇うことなく深い愛情を向けてくるセドリック。このまま本能のままに流されてしまいたいと欲望がよぎるも、駄目だ。はっきりしておかないと。
「わたしたちの結婚なんですが……」
「あぁ。本当は一刻も早くしたいが、段取りが悪くてすまないね。先方と破談でき次第、すぐに婚約を取り付けるよ。結婚は俺が学園を卒業した後……が無難かな」
「そうじゃなくて! わたしたちは結婚しない方が良いと思うんです!!」
シ……ン。
甘ったるくて熱が籠っていた馬車内は、一気に温度が急降下した気がした。
セドリックはピクリとも動かず、メアリーは反応が気になってそっと様子を伺うと、有無言わせない強い眼差しを返してきた。
「どういうつもり? メアリー。俺たちは『番』なんだよ?」
「え、ええ。でもお互い立場が違いますし、セドリックさまにはすでに立派な婚約者がいらっしゃいます。わたしたちは結ばれない方が良いと思うんです……」
セドリックの冷たい空気が恐ろしくて、最後の方は尻切れとんぼになった。
愛があるのは分かっているのに、怖いってどういうことだろう。メアリーはブルっと少し体を震わせてしまった。
セドリックがすぐに気づいて、「寒い?」と優しく抱きしめてきた。
あぁ。優しいセドリックさま、好き。大好き。気持ち良い……
うっかりメアリーはとろっとしてしまって、つい頬をすりすりとセドリックの胸に擦り付けてしまう。
その態度がセドリックを溶かした。冷え切った空間が少し暖まる。
「不安にさせてしまったんだね。ごめん、メアリー。俺が『運命』をもっと信じていたら、君に出会う前に婚約なんてしなかったんだけれど。必ず解決するから、離れるなんて言わないでくれ、メアリー」
セドリックは悲しそうな顔で懇願してくるから、メアリーは絆されてしまいそうになる。
しかし、だ。現実を忘れてはならない。
「あの、でも『番』なんて不確かなもので婚約取りやめとか駄目だと思うんです。たくさんの人に迷惑がかかることをわたしは望みません」
「メアリー……」
「それに、婚約者がいるのに、こんなこと……。不実だと思います……」
やはり最後は尻切れとんぼになったが、小心なメアリーにしては上出来だ。言うべきことをきちんと伝えられた。
ピッタリとした距離感から、セドリックは少しだけ身を引く。
「……そうだな。確かに現状、婚約者のいる身で相応しい態度ではなかった。他人がどう言おうと俺は気にしないが、メアリーが貶められるのは辛い」
なんと。セドリックは即座に態度を改めてくれた。わかってくれたらしい。
「しかし俺の想いは変わらない。メアリーが好きだ。愛している。本音を言えば片時も側を離れたくないし、すぐにでも結ばれたい」
安堵したのも束の間、直球の想いをぶつけられた。
「メアリー、君は俺のことが好き?」
セドリックの瞳が揺らぎ、メアリーはたじろぐ。
そんなの言えない……。言ってはいけない、禁断の想い。
メアリーはキュッと唇を噛みしめる。
「君の気持ちも知らずに、俺は俺の意思を曲げるなんてできない」
まっすぐ見据えた目がメアリーを捉えて離さない。こんなにも真剣に自分と向き合おうとする人は他にいるだろうか。
これが『運命』か。
「答えて・・・」
切実な訴えに、メアリーは陥落した。
「好きです……」
「メアリー!!」
セドリックは歓喜と共に条件反射で抱き寄せようとしたが、すんでのところで止まった。照れたようにから笑いするセドリックはメアリーの意思を尊重してくれるようだ。
「メアリー、教えてくれるか? いったい何が不安なんだい? 俺たちは、お互い好き合い……『運命』なのに」
メアリーとセドリックは『運命の番』。ロマンチックだが、それが生きていく枷ともなるだろう。
お互いを不幸にしてしまう予感しかない。
「その、『運命』をなしにしたいんです」
メアリーはまとまらない思いを、ひとつの言葉に託した。
「『運命』をなしとは、運命に囚われたくないと?」
「はい!」
さすがセドリック! メアリーの意図をわかってくれたようだ。思わず顔がほころびる。
「……確かに医者にも言われたな。メアリーの戸惑いは大きいと」
セドリックは小さく頷きながら呟いた。
「わかった。つまり俺たちが『運命の番』であることを隠したい、と。そういうことだね? それがメアリーの不安を取り除く」
「はい! そうです!」
そして速やかに別れたい。名残惜しいけれど、あまりに危険。茨の道だ。
メアリーは普通で良いのだ。ちょっと禁断の果実を味わい過ぎた気もするが……。
思いを確かめ合った二人は、節度を保ちながらも甘い気配を隠しきれない。
「メアリー」
朝の柔らかい日差しが馬車の窓から溢れて、セドリックの顔を明るく照らす。今まで出会ったどんな人よりもいっとう素敵に映るのは『運命の番』だからか、セドリック自身の魅力によるものなのかメアリーにはわからない。
ドキドキドキドキ
胸の高鳴りが止まらない。
早く薬が効いてと、切に願った。
――セドリックが何を考えているのか、気づきもしないで。
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