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第五章 俺様、北方へ行く
11、忘れてた。
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『ここもか……』
一夜明けて、俺達はセントゥロから一番近いという泉、プントへと辿り着いた。
しかし、泉は枯れ果てて一滴の水分もなくただ乾いた大地が広がるのみ。泉とその周辺の牧草地を管理するために定住している者がいるという話だったが、その建物らしき残骸で辛うじてここがプントであるとわかる程度だ。
「ここも、モンスターに襲われたのでしょうか?」
「そうじゃなきゃここまで荒れないだろ」
ルシアちゃんの呟きにアルベルトが何を当たり前のことを、と答える。
「人が隠れられそうな場所もなかったぜ」
「足跡もありすぎて追えないね……」
周囲を見回ってきたチェーザーレとドナートが何も見つけられなかったと言う。
チェーザーレよ、こんな見通しの良い場所に人がいればすぐわかるだろ? 隠れるって、土の中にか? 怖えーよ!
『ドナート、馬車の轍はあるか? 最近のものだ』
ドナートは元々猟師だったらしく、足跡を見極められるというので聞いたが、最近のものは俺達の足跡くらいだそうだ。
「皆踏み荒らされているから、最近は馬車は来ていないようだよ」
俺達が踏み荒らしていない範囲で一番新しいのはモンスターの物らしき足跡だそうだ。国境に向かう小さな点が多数と、国内奥地へと向かう大型のもの。小さいのはイナゴだろうとのこと。
「キャッ?!」
「地下にも何もないぞ」
『貴様はどこから生えてるんだ!』
ルシアちゃんの悲鳴に振り返ると、1号と4号が泉の中心地からにゅっと生えていた。もぞもぞと動くと泉から出てくる。
「いや、ほら、泉が枯れてるだろ?」
『見ればわかる』
「じゃあ、その泉の水はどこから来てると思う?」
1号がこちらに向かって歩きながら問いかけてくる。4号はいつの間にか消えていた。
1号が言うには、泉の源泉はたいてい湧き水なのだそうだ。泉が枯れるということは地下水が枯れるということで、地盤沈下の原因になると。
「地盤沈下って何ですか?」
「わかりやすく言うと大地が割れてその上で生活している人や町、土地ごと地中に飲み込む現象だ」
「えぇ?! それは、暗黒破壊神の所業ではないのですか?!」
地中の水が枯れることで地下に空洞が云々かんぬんという説明を省いて結論だけ言う1号に、エミーリオだけではなく他のメンバーまで驚いた顔をしいている。
こっちではそういう自然現象は全部神の仕業か。
『どちらにしろ、昨日今日枯れたわけではないと』
「地下の方はまだ幾分湿り気があったけどな」
正直、泉が枯れたことを何故そこまで1号が気にするかわからない。
「泉が枯れたから人が移動したのか。移動する前にモンスターに襲われて滅んだのか。いずれにしろ、この世界の人間が地下に隠れてないかと今4号に探らせてる」
『泉が枯れたのが人がいない理由であれば、襲われる前に移動している可能性がある訳か』
「ご名答」
優秀な生徒をもって先生は嬉しいですよ、とわざとらしく目元を拭うふりをする1号は取り敢えず殴る。
「一応鑑定も使ってみたけど、ここに勇者は埋葬されていないようだしね」
『ほう、そんな使い方もあるのか』
ベルナルド先生が土地そのものに鑑定がかけられることを教えてくれた。
さっそくやってみよう。
「全てを見通す神の眼!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【プント】
ノルドの南に位置する泉。またその周辺地。三年ごとにノルドの遊牧民たちが移り住む。定住としている土地の管理者は16名だったが半年前のスタンピードによって壊滅。
さらにロクスタの襲撃によって放牧地のミスカンタスも食い尽くされたため、遊牧民たちが戻ってくるにはあと1年は必要。土の栄養状態は良くなってるから、種と水を撒けば良く育つよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だから誰だよ、ちょいちょい鑑定に介入してるの! 種なんて撒かないよ。持ってないし。育ててる暇ないし。
『何にしろここにいてもどうにもならんな。先へ進もう』
エミーリオの案内で次の目的地であるパトゥリモーニオを目指す。そこはノルドで一番大きな泉だから枯れずに残っている可能性があるとのこと。
ついでに聞くと、今年はそこに王族を始めノルドの民が移住している土地なのだという。それはつまり、そこで勇者召喚が行われた可能性が高いということで。
それから二日ほど進んだが行けども行けども同じ光景。いったいイナゴ共はどこから来たのだろうか?
道中、1号がおっとり国王の所にいる7号と連絡を取っていた。ノルドの現状、イナゴの被害、生存者が誰もいないことを報告しこれからパトゥリモーニオを目指すと伝える。
「もしかしたら、モンスターはベネディジョンを目指しているのかもしれない」
とおっとり国王。そこには女神が暗黒破壊神の一部を封じたとされている黒く大きな岩があるのだそうだ。
「ちょっと行って様子を見てきてよ」
『俺様は貴様の小間使いではないのだが?』
「うん、でも、ほら暗黒破壊神の力が解放されちゃったら大変だよ?」
遠回しにめんどくさいと言ったのだが、それに被せるように言い含められてしまった。この狸め!
王族探しに、勇者探しに、黒岩の確認。やることが増えてしまったではないか。
『一体あとどのくらいかかるのだ? いつになったら着く?』
「そろそろ見えてきてもおかしくないのですが……」
「お前飛べるだろ? 文句言ってないでちょちょっと飛んで様子見てこいよ」
『あ』
忘れてた。そうだ、俺飛べるんだった。
一夜明けて、俺達はセントゥロから一番近いという泉、プントへと辿り着いた。
しかし、泉は枯れ果てて一滴の水分もなくただ乾いた大地が広がるのみ。泉とその周辺の牧草地を管理するために定住している者がいるという話だったが、その建物らしき残骸で辛うじてここがプントであるとわかる程度だ。
「ここも、モンスターに襲われたのでしょうか?」
「そうじゃなきゃここまで荒れないだろ」
ルシアちゃんの呟きにアルベルトが何を当たり前のことを、と答える。
「人が隠れられそうな場所もなかったぜ」
「足跡もありすぎて追えないね……」
周囲を見回ってきたチェーザーレとドナートが何も見つけられなかったと言う。
チェーザーレよ、こんな見通しの良い場所に人がいればすぐわかるだろ? 隠れるって、土の中にか? 怖えーよ!
『ドナート、馬車の轍はあるか? 最近のものだ』
ドナートは元々猟師だったらしく、足跡を見極められるというので聞いたが、最近のものは俺達の足跡くらいだそうだ。
「皆踏み荒らされているから、最近は馬車は来ていないようだよ」
俺達が踏み荒らしていない範囲で一番新しいのはモンスターの物らしき足跡だそうだ。国境に向かう小さな点が多数と、国内奥地へと向かう大型のもの。小さいのはイナゴだろうとのこと。
「キャッ?!」
「地下にも何もないぞ」
『貴様はどこから生えてるんだ!』
ルシアちゃんの悲鳴に振り返ると、1号と4号が泉の中心地からにゅっと生えていた。もぞもぞと動くと泉から出てくる。
「いや、ほら、泉が枯れてるだろ?」
『見ればわかる』
「じゃあ、その泉の水はどこから来てると思う?」
1号がこちらに向かって歩きながら問いかけてくる。4号はいつの間にか消えていた。
1号が言うには、泉の源泉はたいてい湧き水なのだそうだ。泉が枯れるということは地下水が枯れるということで、地盤沈下の原因になると。
「地盤沈下って何ですか?」
「わかりやすく言うと大地が割れてその上で生活している人や町、土地ごと地中に飲み込む現象だ」
「えぇ?! それは、暗黒破壊神の所業ではないのですか?!」
地中の水が枯れることで地下に空洞が云々かんぬんという説明を省いて結論だけ言う1号に、エミーリオだけではなく他のメンバーまで驚いた顔をしいている。
こっちではそういう自然現象は全部神の仕業か。
『どちらにしろ、昨日今日枯れたわけではないと』
「地下の方はまだ幾分湿り気があったけどな」
正直、泉が枯れたことを何故そこまで1号が気にするかわからない。
「泉が枯れたから人が移動したのか。移動する前にモンスターに襲われて滅んだのか。いずれにしろ、この世界の人間が地下に隠れてないかと今4号に探らせてる」
『泉が枯れたのが人がいない理由であれば、襲われる前に移動している可能性がある訳か』
「ご名答」
優秀な生徒をもって先生は嬉しいですよ、とわざとらしく目元を拭うふりをする1号は取り敢えず殴る。
「一応鑑定も使ってみたけど、ここに勇者は埋葬されていないようだしね」
『ほう、そんな使い方もあるのか』
ベルナルド先生が土地そのものに鑑定がかけられることを教えてくれた。
さっそくやってみよう。
「全てを見通す神の眼!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【プント】
ノルドの南に位置する泉。またその周辺地。三年ごとにノルドの遊牧民たちが移り住む。定住としている土地の管理者は16名だったが半年前のスタンピードによって壊滅。
さらにロクスタの襲撃によって放牧地のミスカンタスも食い尽くされたため、遊牧民たちが戻ってくるにはあと1年は必要。土の栄養状態は良くなってるから、種と水を撒けば良く育つよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だから誰だよ、ちょいちょい鑑定に介入してるの! 種なんて撒かないよ。持ってないし。育ててる暇ないし。
『何にしろここにいてもどうにもならんな。先へ進もう』
エミーリオの案内で次の目的地であるパトゥリモーニオを目指す。そこはノルドで一番大きな泉だから枯れずに残っている可能性があるとのこと。
ついでに聞くと、今年はそこに王族を始めノルドの民が移住している土地なのだという。それはつまり、そこで勇者召喚が行われた可能性が高いということで。
それから二日ほど進んだが行けども行けども同じ光景。いったいイナゴ共はどこから来たのだろうか?
道中、1号がおっとり国王の所にいる7号と連絡を取っていた。ノルドの現状、イナゴの被害、生存者が誰もいないことを報告しこれからパトゥリモーニオを目指すと伝える。
「もしかしたら、モンスターはベネディジョンを目指しているのかもしれない」
とおっとり国王。そこには女神が暗黒破壊神の一部を封じたとされている黒く大きな岩があるのだそうだ。
「ちょっと行って様子を見てきてよ」
『俺様は貴様の小間使いではないのだが?』
「うん、でも、ほら暗黒破壊神の力が解放されちゃったら大変だよ?」
遠回しにめんどくさいと言ったのだが、それに被せるように言い含められてしまった。この狸め!
王族探しに、勇者探しに、黒岩の確認。やることが増えてしまったではないか。
『一体あとどのくらいかかるのだ? いつになったら着く?』
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『あ』
忘れてた。そうだ、俺飛べるんだった。
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