キミと僕との7日間

五味

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「えっと、そうなんだ。」
「うん。僕が自分で買った事はないかな。」
「じゃ、趣味が合う曲があってよかったね、で、いいのかな。」
「どうだろう。あまり気に入ら無い曲もあるし。」
「へー。一応、そういうのはあるんだ。」
「まぁ、ね。ただ、数が多いし。よっぽどのことが無ければ、適当に聞いていけば、気に入るものも見つかるんじゃないかな。」

そういって、僕は父親がリビングに並べているCDの数を思い返す。
それなりに大きな本棚、そこにはびっしりと、それこそ隙間がないほどにCDが詰まっている。
それこそ適当に決めた棚を端から聞いていっているが、どんな並びになっっているのか、続けて同じ人と、そうわかる局にあたることもない。
物によっては、それこそ詰め合わせみたいな、明らかに違う人が同じ曲を歌ったりと、そんなものも混ざっている。趣味が合うかどうかは置いておいても、適当に取り出して聞いても、まず退屈することはないだろう。

「特に好きな曲とかは。」
「んー、こうして弾いてる曲かな。何度か聞いて、覚えて、自分でも。そう思うくらいには。」
「そうなんだ。」

彼女はそういって、首をかしげる。
恐らく話が最初に戻るのだろう、そんなことを考えて、彼女の言葉を待つ。

「でも、調べたりしないんだ。」
「うん。そこまで興味があるなら、ちゃんと入れ物見て、覚えてると思うよ。」
「そっか、書いてあるもんね。」
「だから、そこまででもないんじゃないかな。」
「でも、自分で弾いてはみるんだ。」
「まぁ、こうしてるのは好きだし。」

そう、元々ピアノで適当に真似る、そんな曲を探して、父親が持っていたものに目を付けたに過ぎない。
母親がピアノに関しては楽譜をそれなりに持っているし、それもピアノの隣に並べられている。
なんだかんだと続けていれば、譜面を見てこんな曲、それくらいは分かるようになったけど、なかなかどれも簡単に引けるようなものではないし、譜面があるならと、きちんと弾いてみたくなってしまう。
ちょっと気分転換に、気軽に。
そうであるなら、こうして自分で聞いた曲の気に入った部分を、爪弾くだけ、それが僕の性に合っている。
ピアノで弾こうと思うと、多少できることもあって、曲全体を落とし込もうとしてしまうし。

「そっか。うん、ご馳走様でした。」

そうして話している間に、彼女も全部食べ終えたらしい。
結構な量、それこそ晩御飯を普通に食べていれば、一つを全部食べるのもちょっとと、そう言いたくなるような量だったが、彼女はそれをこの場で全部食べ切って見せた。
思った以上に、大変な事をしているのだろう。

「うん。伝えとく。」
「お願いね。直接お礼を言いたいけど。」
「一応、聞いてみようか。」

そうはいう物の、彼女が来るとしたら、それこそ夜、この時間帯か、観測が終わってから、朝。
そして、彼女はまた荷物を抱えて、さらに距離の増えた道を行くのだろう。

「でも、大変じゃない。」
「そうだけど、貰いぱなっして言うのも。」
「僕から伝えておくから、気にしないで。」
「そういう訳にも。」
「手紙とかでも、いいんじゃない。さっきのノート貸すから、それに書いといてくれたら、渡すよ。
 重たい荷物持って、山を往復って言うのも、お祖母さん、気を遣わせてって、そう考えると思うし。」
「そっか、そうだね。とりあえず、お礼の手紙だけ。
 後は、帰る前に一度、案内してもらってもいいかな。」
「うん、聞いとく。」

そう答えて、僕は彼女に改めてノートを渡す。
彼女が持っているものもあるけど、そちらはそちらで、観測したことを書きとめるための物なのだろうし。
そうして、彼女がノートに向かい合っている間に、僕は僕で練習に戻る。
いや、練習というほどの物でもないかな。ただ、ゆったりと思うままに音を出しているだけなのだから。正直なところ間違えたって、そっちが気に入ってしまえば、直したりもしないのだから。
単音と、時折和音を交えて、のんびりと、それこそランタンもほとんどついていない、それ以外の明りは月と星だけ。
ギターの音に交じって、色々な音が聞こえてくる、そんな中でただぼんやりと指を動かす。
祖父なら、こんな時どんな風に時間を使うのだろうか、父なら、母なら。祖母はなんとなく、側に誰かがいれば、あれこれと世話を焼いている気がするけれど。
母の事は母に、祖父はその姿勢を崩さないだろうが、聞いたら、ここ、恐らく手を入れ続けているだろうここで、祖父がどうしていたかくらいは、聞けば応えてくれそうな気はする。
そんなことを考えていると、また声がかけられる。

「ごめんね、お待たせしました。」

どうやら、彼女は祖母への言伝を書き終えたらしい。
差し出されたノートを受け取って、自分の荷物にまとめ、ついでに時間を確認すれば、昨日よりも既に遅い時間になっていた。

「いや、いいよ。勧めたのは僕だし。」
「容器、洗ってから。」
「いや、持って帰るよ。荷物増えたら、大変でしょ。」

そういって、ギターをケースにとりあえず入れると、容器を相手がどうにかする前に回収する。

「もう、帰るの。」
「うん、昨日より遅い時間になったし。」
「えっと、引き留めちゃったかな。」
「そんなことはないよ。言い出したのは僕だから。」

そうして、ギターケースを閉じて、肩に背負い、他に忘れ物がないかと確認しながら、荷物を持つ。

「じゃ、風邪には気を付けて。」

祖母が口癖のように言う言葉を彼女に告げれば、相手からも似たような言葉が返ってくる。

「うん、そっちも。怪我にもね。」
「そうだね、暗いし。」
「じゃあ、また、明日、かな。」
「多分、そうじゃないかな。」

そうして別れて、一人で来た道を戻る。
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