キミと僕との7日間

五味

文字の大きさ
20 / 66

3-1

しおりを挟む
昨夜は少し遅い時間に帰ったこともあって、そのままお風呂に入ったっきり眠ってしまった。
祖母には一応お礼なんかは伝えたけれど。
そして、少し遅かったからだろうか、目が覚めたのも少し遅い時間となってしまった。
あのまま一人で星を見た彼女ほどではないと思うけれど。

「おはよ。」
「ああ。別に、のんびりしてもいいんだぞ。」
「のんびりやるよ。」

そう答えて祖父と並んで盆栽に手を入れる。

「名前と、連絡先、聞いてきたよ。」
「ああ、ありがとう。」
「ノートに書いてもらったから、後で渡すね。」
「頼む。まぁ、何があるという訳でも無いだろうが。」
「結構荷物持って、山登りしてるみたいだから。」

僕がそう伝えると、祖父は暫く黙って、珍しく盆栽を触る手を止める。

「そうか。もし、お前が嫌でなかったらだが。」

気が付けば道具を一度おいた祖父が、こちらをまっすぐに見ていた。
だから僕も同じように道具から手をはなし、祖父を見る。

「もしも、構わないそう思ったなら、うちに誘って見なさい。
 向いよりは、家からの方が近いだろうからな。」

その言葉は、意外と、そう言うほどのものではないが、僕が決めるんだと、少し意外に思ってしまった。

「その、僕が嫌じゃなかったら、なんだ。」
「ああ。先にいたのはお前なんだ。だからお前が優先だ。」
「そういう問題、かな。」
「そういう問題だ。少なくとも、今はな。どの程度の間、こちらに居るんだ。」
「えっと、学生だし、僕と同じくらいだと思う。」
「そうか。向こうまで、いや実際にはどういった道を通っているか分からないが、危険なところも道を外れなければ無い。谷もないし、意図して脇道に逸れなければ、大事にはならないだろう。」
「でも、誘うくらいには、危ないってこと。」

僕がそう祖父に尋ねると、こちらを見たまま少し黙った上で、改めて口を開く。

「杞憂でしかないが。」
「うん。」
「それこそ重い荷物を持って、行き来している、そんなときに張り出した根に躓いて、身動きが取れなくなる。
 それだけで、人が死ぬには十分だからな。
 もし、居ると、そう分かっている間に、うちに来ないとしても、あえなくなったら、言いなさい。
 その時は探しに行かなければいけないからな。」
「うん。分かった。」
「うちの土地、ではある。管理も必要だからな。」
「そっか、大変だね。」
「簡単ではない、そういう事だな。」
「うん、わかった。彼女が続ける気なら、僕がいないときにも来るなら、一度会っておいた方がいいと思うし、一度ついて来てもらうように頼んでみる。」
「そうしなさい。」

祖父とこれだけ一度に長く言葉を交わしたのは、初めてだなと、そんな事を考える。
それと同時に、色々と気を回す人なんだなとか、僕は、あの子が、見知らぬ、名前も聞こうとしなかったあの相手が、僕がここにいるときに、この家にまでいてもいいと、そう思えるのか、そんなことを考えて、手入れを再開する。
これまでなら、アレをしようとか、こうしたらどうだろうとか、思いつくこともあれば、考えることもあるのに、今日はそういった事が全くなかった。
昨日拾ってきたものを並べても、どうしても納得がいかず、そもそもなんで良いと思って拾ってきたのかも分からなくなってきた。
これまでは、実際に置いてみて気に入らないなんてことはあったが、こんなことは初めてだ。
仕方なく、最低限の手入れだけをして、庭の一角に作られた、僕が拾い集めた石や草を置く場所へと向かう。
元の場所に戻すのもどうかと、草は乾燥させて焼くこともあるのだが、祖父にひとまず置いておけばいいと、そう言われた場所に、何となく並べて置きだせば、そこはそこで楽しい空間になった場所に持っていき、今度はそちらも手を入れる。
だがやはり、あまり気が乗らない。
広い庭の小さな一角ではあるけれど、自分だけの場所にしゃがみこんで、そこをぼんやりと見る。
どうにも、判断は任されてしまったけれど、どうしたらいいのかも難しい。
僕だけで決めるよりも、祖父母の事もある。
祖父は不安だからと、そう提案したけれど、そうであるなら、ひょっとして僕以外、見知らぬ誰かが祖父が管理しなければ、行方不明などと、そんなことになれば、騒動の種になるような、そんな相手は、ひょっとしたら断りたかったのかもしれない。
祖母にも迷惑をかけている。
そもそも、祖父は快く承諾したのではなく、僕がそうして欲しいと、そう考えていることをくみ取ってくれた、それだけなのかもしれないのだから。
だが、祖父に尋ねてしまえば、答えは決まっているだろう。
ただ、問題ない、気にするなと、そう返ってくるに決まっている。
では、どうすれば、どうするのが良いんだろうかと、並べた石を一つ、指先で揺らしながら考える。
ただ、不思議とこうしてのんびり考えるのは、悪い気分ではない。
自分がどうしたいのか、祖父は、祖母は、本当はどうすべきと考えているのか。
それを考えるのは嫌いじゃない。
ただ、あの子はどうなんだろうか、あの子がここにいる事、それを僕はどう思うんだろうか。
そして、それが僕がここに来なくなる理由になったとしたら。別の場所を探す理由になったとしたら。
そういった事を考えると、どうしても落ち込んでしまうけれど。
結局、あってから決めようか、そう決めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...