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そうしてしばらく月を見た後は、なんだかんだと良い時間だと、いつものように祖母に持たされた料理を広げる。
思えばこちらに居る間は、毎日あれこれと出て来るものが変わっているが、このお弁当にしても夕飯とすら違うものが入っている。ただ。
「これ、何だろう。」
「えっと。」
容器を開けて、思わず首をかしげてしまった僕に気が付き、彼女も顔を寄せてきて、中を覗き込む。
「おにぎり、かな。」
「そうなんだ、平たいけど。」
中にはこれまた隙間なく、色とりどりの断面をのぞかせながら、薄くサンドイッチのパンの代わりに、ご飯を使ったような、そんなものが詰まっている。
後は別の容器がいくつか入っており、その中にも総菜や果物が。
「こんな感じで、サンドイッチみたいにするのもあるんだよ。」
「へー。」
「コンビニでも、たまにあるけど。」
「僕、コンビニ行かないし。」
「え、そうなの。珍しい。」
特にほしいものが無いのもあるけど、買い物にわざわざ行かなくても、だいたい家の冷蔵庫を開ければ何かと入っている。後は、それこそたまにネットスーパー経由で週末にお菓子の類をまとめて買うくらいだろうか。
どのみち、たくさん食べるわけではないから、一度買えば数ヶ月くらいは持つし。
「自分で、よく料理したりするの。」
「ううん。全く。」
だいたい家の料理は母親と父親が週末に、総菜を大量に作って冷蔵庫や冷凍庫に入れている。
後はお腹が空いた時に、そこから出して温めて食べるだけだ。こっちに来ている間は、そもそも台所に入ったことすらない。
「そうなんだ。」
「それにしても、色々挟んであるね。」
どうにもおにぎりというと、せいぜい梅干しとか、鮭とか、そんなものばかり思いつくが、今目の前にあるものは、葉物野菜も挟んであるように見える。
本当にお米をパン代わりにしているみたいだ。
早速とばかりに、僕が手を付けなければ、彼女もそうしないから、適当に一つを取ってみる。
断面の色鮮やかさはともかく、具体的に何が入っているのだろうと、そんなことを思いながら口に運んでみるが、正直数は食べられそうにない。
「味付け、ちょっと濃いかも。」
恐らく、調味料の類が別に塗ってあるのだろうけど、それが結構な量みたいだ。
「そう、かな。」
彼女の方はどうやら平気らしい。ひょっとすると中身に寄るのかもしれないけど。
「うん。調味料、えっと、これマヨネーズ多くて。脂っこいかな。」
「え。そうかな。ちょうどいいと思うけど。ああ、でもここ数日のが薄味だったし、それに慣れてると、そう思うのかな。」
「薄味、かな。お弁当になってるものは、しっかり味がついてたと思うけど。」
「え。そうなの。」
どうやら、かなり僕と彼女の間に味覚の違いがあるらしい。
これにおかずまでとなると、なんだか喉が渇きそうだ。祖母にしては珍しい味付けに、珍しい料理だし、新しいことに挑戦してみたのだろうかと、そんなことを考えて、一つをどうにか食べきる。二つ目には、ちょっと手を伸ばそうと思えない。
「えっと、もう食べないの。」
「うん、喉か湧きそうだし、良いかな。こっちの果物はつまむけど。」
残してしまうようなら、無理にでも食べようとは思うけど、他に食べきってくれそうな相手もいるし。
果物は流石に特に手が加わっている様子もなく、切り分けられているオレンジやリンゴをかじる。
「そっか。えっと、でもしっかり食べないと、って私が言うのもおかしいね。」
「それに、僕は三食食べた上だから。」
「そっか。」
祖母はそのあたりも考えているのだろうか。特に苦手な味付けなどを伝えたこともないから、知らない、そういったことも有るかもしれないけど。
でも、何となく気が付いていそうな気もする。苦手な食べ物は、一度出たらそれ以降出てきていないし。
「それにしても、お祖母さん、すごいね。こんなに色々。」
「うん。」
それでも祖母が褒められると、僕も嬉しい。
「えっと、でも、本当にそれだけで大丈夫。私よりも細いから。」
「お腹空いてないし。大丈夫。」
良く細いと言われるけど、お腹がすけば食べるし、不調もないのだから、まぁ大丈夫だろう。
前にもこんな話をした気もするけど。
「普段、どんなもの食べてるの。」
「どんなって、どうなんだろう。」
言われて思わず首をかしげる。そう聞かれても、こう、一言で返せない。
「和食とか、洋食とか。」
「ああ、えっと、和食が多いかな。こんな感じで、容器に入ってるのをあっためて食べるよ。」
「そうなんだ。えっとご両親は。」
「どっちも平日は働いてるから。週末に、二人で仲良くお惣菜作ってるよ。」
「わ、素敵。君は、一緒にやったりは。あ、料理しないって言ってたね。」
「うん、楽しんでやってるみたいだし、割って入るのも悪いしね。」
それに、流石に3人で使うには、台所も手狭だろう。大きな冷蔵庫が二つも並んでいるわけだし。
「そっか。」
「うん。君は自分で作ったりするの。」
「簡単な物くらいなら。お菓子を作ったりもするし。」
「ふーん。」
少々気のない返事になってしまったが、こうして話しているうちに、なんだかんだと果物も容器の半分くらいになっている。彼女にしても、なかなか速いペースで食べて言っているみたいだし。
そろそろギターの練習でも、そんなことを考え出すと、彼女の方から切り出される。
思えばこちらに居る間は、毎日あれこれと出て来るものが変わっているが、このお弁当にしても夕飯とすら違うものが入っている。ただ。
「これ、何だろう。」
「えっと。」
容器を開けて、思わず首をかしげてしまった僕に気が付き、彼女も顔を寄せてきて、中を覗き込む。
「おにぎり、かな。」
「そうなんだ、平たいけど。」
中にはこれまた隙間なく、色とりどりの断面をのぞかせながら、薄くサンドイッチのパンの代わりに、ご飯を使ったような、そんなものが詰まっている。
後は別の容器がいくつか入っており、その中にも総菜や果物が。
「こんな感じで、サンドイッチみたいにするのもあるんだよ。」
「へー。」
「コンビニでも、たまにあるけど。」
「僕、コンビニ行かないし。」
「え、そうなの。珍しい。」
特にほしいものが無いのもあるけど、買い物にわざわざ行かなくても、だいたい家の冷蔵庫を開ければ何かと入っている。後は、それこそたまにネットスーパー経由で週末にお菓子の類をまとめて買うくらいだろうか。
どのみち、たくさん食べるわけではないから、一度買えば数ヶ月くらいは持つし。
「自分で、よく料理したりするの。」
「ううん。全く。」
だいたい家の料理は母親と父親が週末に、総菜を大量に作って冷蔵庫や冷凍庫に入れている。
後はお腹が空いた時に、そこから出して温めて食べるだけだ。こっちに来ている間は、そもそも台所に入ったことすらない。
「そうなんだ。」
「それにしても、色々挟んであるね。」
どうにもおにぎりというと、せいぜい梅干しとか、鮭とか、そんなものばかり思いつくが、今目の前にあるものは、葉物野菜も挟んであるように見える。
本当にお米をパン代わりにしているみたいだ。
早速とばかりに、僕が手を付けなければ、彼女もそうしないから、適当に一つを取ってみる。
断面の色鮮やかさはともかく、具体的に何が入っているのだろうと、そんなことを思いながら口に運んでみるが、正直数は食べられそうにない。
「味付け、ちょっと濃いかも。」
恐らく、調味料の類が別に塗ってあるのだろうけど、それが結構な量みたいだ。
「そう、かな。」
彼女の方はどうやら平気らしい。ひょっとすると中身に寄るのかもしれないけど。
「うん。調味料、えっと、これマヨネーズ多くて。脂っこいかな。」
「え。そうかな。ちょうどいいと思うけど。ああ、でもここ数日のが薄味だったし、それに慣れてると、そう思うのかな。」
「薄味、かな。お弁当になってるものは、しっかり味がついてたと思うけど。」
「え。そうなの。」
どうやら、かなり僕と彼女の間に味覚の違いがあるらしい。
これにおかずまでとなると、なんだか喉が渇きそうだ。祖母にしては珍しい味付けに、珍しい料理だし、新しいことに挑戦してみたのだろうかと、そんなことを考えて、一つをどうにか食べきる。二つ目には、ちょっと手を伸ばそうと思えない。
「えっと、もう食べないの。」
「うん、喉か湧きそうだし、良いかな。こっちの果物はつまむけど。」
残してしまうようなら、無理にでも食べようとは思うけど、他に食べきってくれそうな相手もいるし。
果物は流石に特に手が加わっている様子もなく、切り分けられているオレンジやリンゴをかじる。
「そっか。えっと、でもしっかり食べないと、って私が言うのもおかしいね。」
「それに、僕は三食食べた上だから。」
「そっか。」
祖母はそのあたりも考えているのだろうか。特に苦手な味付けなどを伝えたこともないから、知らない、そういったことも有るかもしれないけど。
でも、何となく気が付いていそうな気もする。苦手な食べ物は、一度出たらそれ以降出てきていないし。
「それにしても、お祖母さん、すごいね。こんなに色々。」
「うん。」
それでも祖母が褒められると、僕も嬉しい。
「えっと、でも、本当にそれだけで大丈夫。私よりも細いから。」
「お腹空いてないし。大丈夫。」
良く細いと言われるけど、お腹がすけば食べるし、不調もないのだから、まぁ大丈夫だろう。
前にもこんな話をした気もするけど。
「普段、どんなもの食べてるの。」
「どんなって、どうなんだろう。」
言われて思わず首をかしげる。そう聞かれても、こう、一言で返せない。
「和食とか、洋食とか。」
「ああ、えっと、和食が多いかな。こんな感じで、容器に入ってるのをあっためて食べるよ。」
「そうなんだ。えっとご両親は。」
「どっちも平日は働いてるから。週末に、二人で仲良くお惣菜作ってるよ。」
「わ、素敵。君は、一緒にやったりは。あ、料理しないって言ってたね。」
「うん、楽しんでやってるみたいだし、割って入るのも悪いしね。」
それに、流石に3人で使うには、台所も手狭だろう。大きな冷蔵庫が二つも並んでいるわけだし。
「そっか。」
「うん。君は自分で作ったりするの。」
「簡単な物くらいなら。お菓子を作ったりもするし。」
「ふーん。」
少々気のない返事になってしまったが、こうして話しているうちに、なんだかんだと果物も容器の半分くらいになっている。彼女にしても、なかなか速いペースで食べて言っているみたいだし。
そろそろギターの練習でも、そんなことを考え出すと、彼女の方から切り出される。
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