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彼女に向けて、僕はただ自分の思い、それを伝える。
普段であれば、此処では無い何処かであればそれこそ着飾った言葉で伝えるのだけど。
此処では、ただ、思いつくままに。
確かに。最初にここに僕以外の誰かがいるのは嫌だった。祖父母から誘えと言われた時だって、それこそ何も言わないで、若しくはやっぱり迷惑だと、そう言われたことにしようとかそんなことも考えたのだと。
ただ、此処で、自分以外にも、こんなところを探してたどり着いた、そんな仲間意識もあるし、話していて楽しい。一緒にいて苦痛ではない。僕のお気に入り、そんな場所にいてほしいと、そう思える相手だから、そう思えるようになったから誘うのだと。
そもそも、趣味ともう言ってもいい盆栽、その話をしたのも見せたのもキミが初めてなのだと。
そして新しい楽しみを、続けてみたいと、そう思える新しいことをキミがいたから見つけられたのだと。
同情だけでなく、何かを一緒に作って、それを共有して。
祖母の様にそれを見て懐かしむ、折に触れて持ち寄って話し合う。そんな事が出来たら楽しそうだとそう思ったのだと。
そんな僕の思いをただ彼女にぶつける。
さて、僕の考えは、思っていることはキミに伝わったのだろうか。
取り留めもなく。練習中の曲の様に飛び飛びで。音はあちらこちらに。
まるで気もそぞろに手を入れた鉢植え、それを落ち着いてみたときに悲しく思った、そんな有様の様にきっと酷い文章だったのだろうけれど。
どうか、この思いだけは、此処で、もう一度、それこそこれからも、キミと会いたいな。
それだけは本物だと、さて、伝わったのだろうか。
「その、ね。」
僕があれこれと話した後、何となく二人向き合って、ふたを開けたお弁当にも手を付けずに向かい合って座っている。
「うん。」
彼女はこれまで僕がそうしていたように、彼女の説明を聞いてはいる、そんな状態の僕の様に、ただあまり脈絡のない。それこそ学校で、小論文であったり作文として提出してしまえば、酷い点数が付くだろう言葉を彼女は黙って聞いてくれた。
「良いのかな。私、君を言い訳にしても。」
「僕は良いよ。それくらいなら。」
申し訳なさ。彼女にとっての他人、甘えるのが難しい相手。
それに甘えるのに、僕が言ったから、彼女を誘ったから、そんな簡単な言い訳で彼女とまた会えるのなら。
「うん。良いよ。それくらい。だってまた夏に、此処で君と会いたいから。」
「私の名前も知らないのに。」
「君だって僕の名前、知らないでしょ。」
そういって、どちらからともなく笑いだす。
夏の前、七夕伝説にはまた早いけれど。
普段は離れていても、約束があれば、山道を挟んで会う事も出来るのだろう。僕らが、僕だけじゃなくて僕らがそれを望めば。
「私もね。夏に、君に会いたいな。」
「うん。」
そうして、彼女も僕に色々と話してくれる。
流石に冷めるのもあれだし、外だからと開けっ放しは嫌なのでお互いにお弁当に手を付けながら。
実に学生らしいと言えばいいのだろうか。
僕が此処では無い場所で、友人とそうしているように食事をしながら。
「嬉しかったんだ。学校でも、夜に活動するからっていやな顔されるし。
正直昼に活動しても、個人で出来る事なんてほとんどないし。
それで、そんな活動しても、やっぱり興味を持ってくれる子も少なくて。
町中は夜でもほとんど星が見えなくて。本当に色々難しくって。」
何となく聞いた話でもあるけれど、それでもこれまでより彼女の考えていることがよく見える気がする。
それこそ遠い星を、無理やり近くで見るために覗き込んでいた、そんな物よりも近く。
彼女と僕は、こうして鉢植えというには広いけれど、それでも狭いこの場所で、小高い山の上、少しだけ開けた場所でこうして二人でいるのだから。
「それで、ね。最初は本当に期待したんだ。同じ趣味の人かもしれないって。
そうじゃなかったけど、色々話して、よくしてくれる人もいて。何ならその人は昔の先輩で。
どれだけの偶然が重なったんだろうって、勝手に運命かもとか思って舞い上がって。」
「僕も、キミと会えて嬉しいよ。」
「ありがとう。それで、まぁ、なんだかよく分からないけど興味を持ってくれて。
それで、天体観測をやろうってそう思ってくれる君に会えて。
本当に嬉しい。私だっていやだよ。これで終わりだなんて。」
うん。そう思ってくれるだけで嬉しい。
僕と彼女はお互いにまた会いたい、そう思っている。
この7日間、それだけで終わりにしたくないと、そう思っているのだから。
「そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。でも。」
そう、だからこそ。
次があるといいなと、どうしてもそう思ってしまう。
「だから、次もやっぱりあいたい。キミに、キミとここで。せめてアルバム一冊、それを作るくらいはしたいかな。」
「私も。だから、もし。君が本当に私の言い訳にしてもいいって、そう思ってくれるなら。」
「うん。良いよ。そんな事なら。えっと、キミの両親とかは、多分祖父が話してくれると思うし。
僕も必要なら電話位するよ。何かしたいことをする、そのために手間がかかるならいいかな。そう思えるから。」
そう、それはどちらを我慢するのか選んで、そうした時の様に。
普段であれば、此処では無い何処かであればそれこそ着飾った言葉で伝えるのだけど。
此処では、ただ、思いつくままに。
確かに。最初にここに僕以外の誰かがいるのは嫌だった。祖父母から誘えと言われた時だって、それこそ何も言わないで、若しくはやっぱり迷惑だと、そう言われたことにしようとかそんなことも考えたのだと。
ただ、此処で、自分以外にも、こんなところを探してたどり着いた、そんな仲間意識もあるし、話していて楽しい。一緒にいて苦痛ではない。僕のお気に入り、そんな場所にいてほしいと、そう思える相手だから、そう思えるようになったから誘うのだと。
そもそも、趣味ともう言ってもいい盆栽、その話をしたのも見せたのもキミが初めてなのだと。
そして新しい楽しみを、続けてみたいと、そう思える新しいことをキミがいたから見つけられたのだと。
同情だけでなく、何かを一緒に作って、それを共有して。
祖母の様にそれを見て懐かしむ、折に触れて持ち寄って話し合う。そんな事が出来たら楽しそうだとそう思ったのだと。
そんな僕の思いをただ彼女にぶつける。
さて、僕の考えは、思っていることはキミに伝わったのだろうか。
取り留めもなく。練習中の曲の様に飛び飛びで。音はあちらこちらに。
まるで気もそぞろに手を入れた鉢植え、それを落ち着いてみたときに悲しく思った、そんな有様の様にきっと酷い文章だったのだろうけれど。
どうか、この思いだけは、此処で、もう一度、それこそこれからも、キミと会いたいな。
それだけは本物だと、さて、伝わったのだろうか。
「その、ね。」
僕があれこれと話した後、何となく二人向き合って、ふたを開けたお弁当にも手を付けずに向かい合って座っている。
「うん。」
彼女はこれまで僕がそうしていたように、彼女の説明を聞いてはいる、そんな状態の僕の様に、ただあまり脈絡のない。それこそ学校で、小論文であったり作文として提出してしまえば、酷い点数が付くだろう言葉を彼女は黙って聞いてくれた。
「良いのかな。私、君を言い訳にしても。」
「僕は良いよ。それくらいなら。」
申し訳なさ。彼女にとっての他人、甘えるのが難しい相手。
それに甘えるのに、僕が言ったから、彼女を誘ったから、そんな簡単な言い訳で彼女とまた会えるのなら。
「うん。良いよ。それくらい。だってまた夏に、此処で君と会いたいから。」
「私の名前も知らないのに。」
「君だって僕の名前、知らないでしょ。」
そういって、どちらからともなく笑いだす。
夏の前、七夕伝説にはまた早いけれど。
普段は離れていても、約束があれば、山道を挟んで会う事も出来るのだろう。僕らが、僕だけじゃなくて僕らがそれを望めば。
「私もね。夏に、君に会いたいな。」
「うん。」
そうして、彼女も僕に色々と話してくれる。
流石に冷めるのもあれだし、外だからと開けっ放しは嫌なのでお互いにお弁当に手を付けながら。
実に学生らしいと言えばいいのだろうか。
僕が此処では無い場所で、友人とそうしているように食事をしながら。
「嬉しかったんだ。学校でも、夜に活動するからっていやな顔されるし。
正直昼に活動しても、個人で出来る事なんてほとんどないし。
それで、そんな活動しても、やっぱり興味を持ってくれる子も少なくて。
町中は夜でもほとんど星が見えなくて。本当に色々難しくって。」
何となく聞いた話でもあるけれど、それでもこれまでより彼女の考えていることがよく見える気がする。
それこそ遠い星を、無理やり近くで見るために覗き込んでいた、そんな物よりも近く。
彼女と僕は、こうして鉢植えというには広いけれど、それでも狭いこの場所で、小高い山の上、少しだけ開けた場所でこうして二人でいるのだから。
「それで、ね。最初は本当に期待したんだ。同じ趣味の人かもしれないって。
そうじゃなかったけど、色々話して、よくしてくれる人もいて。何ならその人は昔の先輩で。
どれだけの偶然が重なったんだろうって、勝手に運命かもとか思って舞い上がって。」
「僕も、キミと会えて嬉しいよ。」
「ありがとう。それで、まぁ、なんだかよく分からないけど興味を持ってくれて。
それで、天体観測をやろうってそう思ってくれる君に会えて。
本当に嬉しい。私だっていやだよ。これで終わりだなんて。」
うん。そう思ってくれるだけで嬉しい。
僕と彼女はお互いにまた会いたい、そう思っている。
この7日間、それだけで終わりにしたくないと、そう思っているのだから。
「そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。でも。」
そう、だからこそ。
次があるといいなと、どうしてもそう思ってしまう。
「だから、次もやっぱりあいたい。キミに、キミとここで。せめてアルバム一冊、それを作るくらいはしたいかな。」
「私も。だから、もし。君が本当に私の言い訳にしてもいいって、そう思ってくれるなら。」
「うん。良いよ。そんな事なら。えっと、キミの両親とかは、多分祖父が話してくれると思うし。
僕も必要なら電話位するよ。何かしたいことをする、そのために手間がかかるならいいかな。そう思えるから。」
そう、それはどちらを我慢するのか選んで、そうした時の様に。
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