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彼女とは一先ず最後の夜。
いつものように、もうそう言ってもいい気がする、そんな時間を彼女と過ごす。
僕は変わらずギターを鳴らしながら。
彼女は大きな天体望遠鏡を、小さな接眼レンズから覗きながら。
「今日は何か見てみる。」
「今日は良いかな。」
彼女にそう聞かれるけれど、今日はまぁ、最初の日と同じようにギターだけに専念しようかなと思うから。
もうしばらくしたら今日も持ってきているお弁当を広げて、またあれこれと話す事にはなるけれど。
ただ、その前に。
「夏、来るのかな。」
僕がそう聞けば、彼女はかすかに肩を震わせる。
これまでは僕がギターを弾きながらこちらを見る彼女に話しかけていたけれど、今回はその逆。
僕はギターを鳴らす指を止めて、こちらに振り返らず天体望遠鏡を触っている彼女に話しかける。
「なんとなくだけどね、来ないような気もしてるんだ。」
「うん、悩んでる。」
「そっか。」
なら仕方ない。
「また、此処で会えたり、手伝ってくれるとやっぱり嬉しいかな。」
「そうだよね。」
「でも遠慮する気持ちは、うん、分かるし。」
そう、だから彼女に任せるしかない。
夏まではまだ長い。その間に気持ちが変わることも有るだろうし。
「キミは、私に来てほしいって、そう思ってくれるんだよね。」
「うん。」
「そのあたり、絶対嘘は言わなさそうだもんね。」
「前も言ったけど、嘘くらいつくよ。」
「でも、これは違うんでしょ。」
そう、彼女に来てほしいのは本当。
「来てほしいけど、無理は言えないよ。僕はここが好きだから、ここに来るのが嫌なら、ここに来て楽しめないならやっぱり、それは違うし。」
「キミにとっては大事な場所だもんね。」
「キミにとっても、そうなってくれると嬉しいけど。」
そう僕が言えば、彼女は天体望遠鏡から顔を離して空を見る。
少し暗い天気の悪い日があるかと思えば、幸いな事に彼女と出会ってから今日まで、夜は良く晴れている。
今日も変わらず、満天の、それこそ庭にある僕の石を集めている一角、そこを遠目に見たようにと言えば流石に言いすぎだけれど、数えきれない星と、半月からさらにかけた月。
ランタンの明りを消してしまっても、手元くらいは確認できるそんな夜。
「大事、かな。だからやっぱり迷惑かなって。」
「まぁ、そうだよね。やっぱりここは祖父母の場所だし。」
「うん。」
「例えば、そのこっちに来る迄泊ってたところとかは。」
「だって、それで、此処で君と会ったら、またこうなるでしょ。君は祖父母に私と会ったて言うから。」
それはそうだ。僕は必ず祖父母に伝える。それを黙っていることは出来ないから。
「うん。」
「君はそうだよね。」
そこから暫く、お互いに言葉は無い。
こうして夜の山の中。自分が歩く音、揺れるケースが当たる音。そんな聞きなれない音も聞こえず、聞き慣れてはいるけどいつもより大きな音だけが聞こえる。
そんな音にただしばらく耳を傾ける。
「君はさ。」
「うん。」
「例えば他の場所、私が誘ったら来てくれたりするのかな。」
「えっと、行くよ。きっと。」
そう、僕はきっと誘われたら行くだろう。
「一等星のアルバムは作りたいし。でもまずはここで、そうしたいかも。」
そうそれはもう僕の中では決めた事でもあるから。
「あ、本気だったんだ。」
「えっと。やりたくない事や、そのつもりが無かったら口にしないよ、僕は。」
「それが君の言う嘘かなって。」
「そんな嘘のつき方はしないよ。」
「じゃ、私と一緒に、それが嘘なのかな。」
言われて僕は首をかしげてしまう。
どうにも祖父からの話をしたときもそうだが、伝え方に失敗したのかもしれない。
少なくとも僕は彼女に嘘はついていないし、というよりもここにいる間はそれを言わない。
「えっとさ。嘘はつくけど、少なくとも、僕此処では無いよ。」
「え。」
「何というか伝え方がよくなかったのかもしれないけど。ほら、学校とか、どうしてもやらなきゃいけない時とかね。勉強嫌いだけど、面接のときは好きですとか、そんな事も言ったし。」
「それ、嘘って言うの。」
「だって、そんな事ちっとも思ってないし。言わなかったっけ、あんまり好きじゃないんだよね。」
ようやく彼女がこちらを振り向く。
なんというか、良く泣く人であるらしい。
今は止まっているけど、その跡くらいは見える。
「それって、嘘って言うほどなのかな。」
「僕はそう思ってるけど。でも、まぁ、うん。」
上手く言えない。言葉は形にしにくい。だから思った事をただそのまま。
此処ではそんな僕でいたい。
定型文を選ぶだけでは無く。
「なんて言えばいいのか、苦手なんだけどね。」
「君のお爺さんも口数少ないしね。」
「えっと、君といるときはよく話してると思うよ。」
「あれで。」
何やら驚いているけれど、祖父はきちんと要所要所で喋る人なのだ。別に無口という訳でも無い。
「来なくてもいいけど、来てほしいけど。君と一緒に、星については。それは本当。
だから、次の夏、キミがここにいると嬉しいし。いなくても、うん。でも一緒にアルバム、作りたいな。」
祖父と父、この二人とは並んで鉢植えに向かう時間がある。
祖母と母とは、何かと見た目に関して、髪の手入だったりちょっと着慣れない服だったり。
数少ないよく話す友人とは、ちょこちょこと飲み物を飲みながら小物を見たり。
彼女とは、こうして星を見て、それを写真に撮って、二人でそれを並べてみる。
そんな時間が持てればいいな。
いつものように、もうそう言ってもいい気がする、そんな時間を彼女と過ごす。
僕は変わらずギターを鳴らしながら。
彼女は大きな天体望遠鏡を、小さな接眼レンズから覗きながら。
「今日は何か見てみる。」
「今日は良いかな。」
彼女にそう聞かれるけれど、今日はまぁ、最初の日と同じようにギターだけに専念しようかなと思うから。
もうしばらくしたら今日も持ってきているお弁当を広げて、またあれこれと話す事にはなるけれど。
ただ、その前に。
「夏、来るのかな。」
僕がそう聞けば、彼女はかすかに肩を震わせる。
これまでは僕がギターを弾きながらこちらを見る彼女に話しかけていたけれど、今回はその逆。
僕はギターを鳴らす指を止めて、こちらに振り返らず天体望遠鏡を触っている彼女に話しかける。
「なんとなくだけどね、来ないような気もしてるんだ。」
「うん、悩んでる。」
「そっか。」
なら仕方ない。
「また、此処で会えたり、手伝ってくれるとやっぱり嬉しいかな。」
「そうだよね。」
「でも遠慮する気持ちは、うん、分かるし。」
そう、だから彼女に任せるしかない。
夏まではまだ長い。その間に気持ちが変わることも有るだろうし。
「キミは、私に来てほしいって、そう思ってくれるんだよね。」
「うん。」
「そのあたり、絶対嘘は言わなさそうだもんね。」
「前も言ったけど、嘘くらいつくよ。」
「でも、これは違うんでしょ。」
そう、彼女に来てほしいのは本当。
「来てほしいけど、無理は言えないよ。僕はここが好きだから、ここに来るのが嫌なら、ここに来て楽しめないならやっぱり、それは違うし。」
「キミにとっては大事な場所だもんね。」
「キミにとっても、そうなってくれると嬉しいけど。」
そう僕が言えば、彼女は天体望遠鏡から顔を離して空を見る。
少し暗い天気の悪い日があるかと思えば、幸いな事に彼女と出会ってから今日まで、夜は良く晴れている。
今日も変わらず、満天の、それこそ庭にある僕の石を集めている一角、そこを遠目に見たようにと言えば流石に言いすぎだけれど、数えきれない星と、半月からさらにかけた月。
ランタンの明りを消してしまっても、手元くらいは確認できるそんな夜。
「大事、かな。だからやっぱり迷惑かなって。」
「まぁ、そうだよね。やっぱりここは祖父母の場所だし。」
「うん。」
「例えば、そのこっちに来る迄泊ってたところとかは。」
「だって、それで、此処で君と会ったら、またこうなるでしょ。君は祖父母に私と会ったて言うから。」
それはそうだ。僕は必ず祖父母に伝える。それを黙っていることは出来ないから。
「うん。」
「君はそうだよね。」
そこから暫く、お互いに言葉は無い。
こうして夜の山の中。自分が歩く音、揺れるケースが当たる音。そんな聞きなれない音も聞こえず、聞き慣れてはいるけどいつもより大きな音だけが聞こえる。
そんな音にただしばらく耳を傾ける。
「君はさ。」
「うん。」
「例えば他の場所、私が誘ったら来てくれたりするのかな。」
「えっと、行くよ。きっと。」
そう、僕はきっと誘われたら行くだろう。
「一等星のアルバムは作りたいし。でもまずはここで、そうしたいかも。」
そうそれはもう僕の中では決めた事でもあるから。
「あ、本気だったんだ。」
「えっと。やりたくない事や、そのつもりが無かったら口にしないよ、僕は。」
「それが君の言う嘘かなって。」
「そんな嘘のつき方はしないよ。」
「じゃ、私と一緒に、それが嘘なのかな。」
言われて僕は首をかしげてしまう。
どうにも祖父からの話をしたときもそうだが、伝え方に失敗したのかもしれない。
少なくとも僕は彼女に嘘はついていないし、というよりもここにいる間はそれを言わない。
「えっとさ。嘘はつくけど、少なくとも、僕此処では無いよ。」
「え。」
「何というか伝え方がよくなかったのかもしれないけど。ほら、学校とか、どうしてもやらなきゃいけない時とかね。勉強嫌いだけど、面接のときは好きですとか、そんな事も言ったし。」
「それ、嘘って言うの。」
「だって、そんな事ちっとも思ってないし。言わなかったっけ、あんまり好きじゃないんだよね。」
ようやく彼女がこちらを振り向く。
なんというか、良く泣く人であるらしい。
今は止まっているけど、その跡くらいは見える。
「それって、嘘って言うほどなのかな。」
「僕はそう思ってるけど。でも、まぁ、うん。」
上手く言えない。言葉は形にしにくい。だから思った事をただそのまま。
此処ではそんな僕でいたい。
定型文を選ぶだけでは無く。
「なんて言えばいいのか、苦手なんだけどね。」
「君のお爺さんも口数少ないしね。」
「えっと、君といるときはよく話してると思うよ。」
「あれで。」
何やら驚いているけれど、祖父はきちんと要所要所で喋る人なのだ。別に無口という訳でも無い。
「来なくてもいいけど、来てほしいけど。君と一緒に、星については。それは本当。
だから、次の夏、キミがここにいると嬉しいし。いなくても、うん。でも一緒にアルバム、作りたいな。」
祖父と父、この二人とは並んで鉢植えに向かう時間がある。
祖母と母とは、何かと見た目に関して、髪の手入だったりちょっと着慣れない服だったり。
数少ないよく話す友人とは、ちょこちょこと飲み物を飲みながら小物を見たり。
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そんな時間が持てればいいな。
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