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私は今、馬車の中にいる。ミアのいる学校に向かっているのだ。今日は殿下の卒業式で、ミアはあと2年残っている。家族全員で最初は行くつもりだったが、結局私だけ行くことになった。デイジーはミアに会うのが怖いと拒否、母はデイジーを1人残せないと言い、父はミアの尻拭いはもうしたくないと言った。
私もミアに会いたくない。だがこれは家族としてやらなくてはいけないことなのだ。ミアを増長させた責任が我々にあるかもしれない。だが、何をどうしたらよかったのかわからない。
ミアは転生者なのだろうか。10年ずっと考えてきた。仮に転生者だったとしても私たちにしたことは許されることではない。ここが乙女ゲームの世界だったとしても、ミアがしたこと、ミアにされたことは現実だ。
馬車が学校に着いた。叔父さんが待っていてくれる。2人で会場の中に入る。
「2年、スーザン・ベック。君に言いたいことがある!」
壇上でマイクを持った男性が言うと、会場から誰かが出てきて壇上に登る。
「いつも優しく微笑んで僕に挨拶してくれた!ありがとう!」
そう言って男性は女性に手を差し出す。女性は照れたような笑顔を見せながらその手を握る。わぁぁと歓声が上がる。
「卒業生が言いたいことをマイクで言うらしい。今のはプロポーズみたいだけどな」
なるほど。ゲームだと攻略対象が婚約者を断罪するが、ミアはうまくいかなかったようだから断罪はないかと思っていた。でもこのパターンだとあるということか。
次に壇上に登ったのはものすごいイケメンの男性だ。この人が王子らしい。
「ミア・モロー。君に言いたいことがある」
やはり来た。言われて嬉しそうな顔で壇上に向かうその姿に私は吐き気がしそうになった。彼女のドレスはピンクのフリフリ。フリルから手足と顔が出ているみたいなドレスだった。
数ヶ月前に「卒業式用に着るドレス代を送れ」と言ってきた。そんなお金は家にはなかった。お金を送るなら私とデイジーでドレスを作った方が安い。私もデイジーも裁縫をして家計を助けている。そう言ったら、例の「私がよその子だから」と言ってきた。そうだよ、正真正銘よその子だよ。今まで従姉妹だと思っていたから我慢してきた。でも違う。
「大丈夫だ」
私のことに気がついたか叔父さんが言った。
ミアは嬉しそうな顔をして壇上に登る。プロポーズされると思い込んでいるようだ。
「よし、行こう」
叔父さんは私の手を取り壇上に向かった。会場はざわついている。部外者と思わしき人間が壇上に上がってきたからだ。
ミアは一瞬何が起こったか分からないようだった。だが、すぐに私とわかると睨みつけた。
「ミア」
王子が呼びかけると、すぐにミアは微笑んだ。
「この人は誰?」
「私のお姉様ですぅ」
ゾワっと鳥肌が立った。お姉様なんて呼ばれたことはない。デイジーには強要したくせに私のことはマギーと呼んだ。愛称呼びを許可した覚えはない。しかもあの喋り方。甘ったるい鼻にかかった独特の声。
「ミアのお姉様ですか」
王子が私に向かって言った。
「いいえ、赤の他人です」
会場がざわめき出した。静かにして、断罪イベントが始まるのだから。
私もミアに会いたくない。だがこれは家族としてやらなくてはいけないことなのだ。ミアを増長させた責任が我々にあるかもしれない。だが、何をどうしたらよかったのかわからない。
ミアは転生者なのだろうか。10年ずっと考えてきた。仮に転生者だったとしても私たちにしたことは許されることではない。ここが乙女ゲームの世界だったとしても、ミアがしたこと、ミアにされたことは現実だ。
馬車が学校に着いた。叔父さんが待っていてくれる。2人で会場の中に入る。
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壇上でマイクを持った男性が言うと、会場から誰かが出てきて壇上に登る。
「いつも優しく微笑んで僕に挨拶してくれた!ありがとう!」
そう言って男性は女性に手を差し出す。女性は照れたような笑顔を見せながらその手を握る。わぁぁと歓声が上がる。
「卒業生が言いたいことをマイクで言うらしい。今のはプロポーズみたいだけどな」
なるほど。ゲームだと攻略対象が婚約者を断罪するが、ミアはうまくいかなかったようだから断罪はないかと思っていた。でもこのパターンだとあるということか。
次に壇上に登ったのはものすごいイケメンの男性だ。この人が王子らしい。
「ミア・モロー。君に言いたいことがある」
やはり来た。言われて嬉しそうな顔で壇上に向かうその姿に私は吐き気がしそうになった。彼女のドレスはピンクのフリフリ。フリルから手足と顔が出ているみたいなドレスだった。
数ヶ月前に「卒業式用に着るドレス代を送れ」と言ってきた。そんなお金は家にはなかった。お金を送るなら私とデイジーでドレスを作った方が安い。私もデイジーも裁縫をして家計を助けている。そう言ったら、例の「私がよその子だから」と言ってきた。そうだよ、正真正銘よその子だよ。今まで従姉妹だと思っていたから我慢してきた。でも違う。
「大丈夫だ」
私のことに気がついたか叔父さんが言った。
ミアは嬉しそうな顔をして壇上に登る。プロポーズされると思い込んでいるようだ。
「よし、行こう」
叔父さんは私の手を取り壇上に向かった。会場はざわついている。部外者と思わしき人間が壇上に上がってきたからだ。
ミアは一瞬何が起こったか分からないようだった。だが、すぐに私とわかると睨みつけた。
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「この人は誰?」
「私のお姉様ですぅ」
ゾワっと鳥肌が立った。お姉様なんて呼ばれたことはない。デイジーには強要したくせに私のことはマギーと呼んだ。愛称呼びを許可した覚えはない。しかもあの喋り方。甘ったるい鼻にかかった独特の声。
「ミアのお姉様ですか」
王子が私に向かって言った。
「いいえ、赤の他人です」
会場がざわめき出した。静かにして、断罪イベントが始まるのだから。
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