婚約破棄のその後に

ゆーぞー

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 フードを深くかぶった男女が足早に歩いていく。その先には男性が立っていた。胡散臭い感じの男性であるが、女性はその男性に親しげな仕草を見せている。一方、女性と一緒にいた男性の方は落ちつかない様子でフードをさらに深くかぶり直している。

「ようこそ、マイズ国へ」

 男の名はアルフォンス。マイズ国の裏組織を牛耳るボスである。

「会えてよかったわ」

 そう言って女性はフードを外した。乱れた髪を手で撫で付ける。

「結婚式はどうされたのですか」

 アルフォンスの言葉に女は顔を歪ませた。

「やってられないわ」

 憎々しげに呟くと、女は一緒にいた男の方を見る。

「もうフードを取って大丈夫よ」

 しかし男はフードを取ろうとしない。それどころか周囲を見回し落ち着かない様子で女の肘を突いた。

「こんなところまで来て。見つかったらどうするつもりだ。今度こそ、もう・・・」

 男の気弱な発言を聞き、女は男の手を振り解いた。男はハッとした様子で女を見返す。

「だからあなたはダメなのよ」

 女のキツい口調に男はあからさまに落ち込む。

「まあまあ」

 見ていたアルフォンスは笑みを浮かべながら女を嗜めている。

「レナード様は国を出たのは初めてでしょう?緊張もしますよ」

 名前を呼ばれ、男はビクッと肩を振るわせた。国外に出たのは初めてであるが、問題は国の承諾を得ていないことである。つまり密出国であり、密入国。厳罰に処される犯罪行為であった。

「安心してくださって大丈夫ですよ」

 アルフォンスは相変わらず笑顔である。その向こうでメリアも笑っている。

「そうよ、アルフォンスに任せておけば大丈夫。気にすることなんてないわ」

 アルフォンスがどんな人間か、レナードはわかっている。知らなかったことは、アルフォンスとメリアが親しい間柄だったということだ。

 こんなことになるとは思わなかった。レナードは伯爵家に生まれ、その将来は約束されていた。勉強は好きではなかったが、体を動かすことは嫌いではなかった。だから騎士になろうとしたが、実際やってみたらうまくいかなかった。そのことにレナードは気づいていたが、父がなんとかしてくれた。だからレナードはそれでいいと思った。

 ある時父からライラというつまらない女と結婚しろと言われた。見るからに地味で面白みのない女だった。それならメリアと結婚したいと思った。彼女は華やかだったし、一緒にいると面白かった。彼女は他の男とも平気で遊ぶ女だ、といろんな人から言われたが、それの何が問題かレナードにはわからなかった。モテる女を自分のものにするためにはどうしたらいいか。レナードは日夜そのことを考えていた。

 しかし彼は職を失い家族を失い全てを失った。メリアと結婚しなくてはいけないと言われたので従おうとしたが、メリアは嫌がった。自分と結婚することが嫌なのではなく、ドレスが嫌だと言う。ウエディングドレスはライラが着る予定だったドレスだった。

 寸法が合わないのはともかく、そのドレスは男のレナードが見ても貧相でお粗末だった。こんなドレスで結婚しようとしていたとは、ライラと結婚しなくてよかったと思った。メリアはこんなところにいるのは嫌だと言い、一緒に逃げようと言った。この国にいても仕方ない。そう言われ、レナードもその気になった。そしてメリアの言う通りにしたら、マイズ国にいたというわけである。

「ねぇ、レナード様。騎士団にいたのだから、色々知ってることがあるでしょうね」

 アルフォンスが猫撫で声で話しかけてきた。

「少し教えてもらえませんか?」

 アルフォンスは笑顔ではあったが、目は笑っていなかった。

「教えてあげて」

 メリアはアルフォンスの横でレナードを見ていた。

「これからお世話になるのよ、知ってることは教えてあげなくちゃ」

 メリアは自分の妻になるのだ。なのにどうしてアルフォンスと一緒に自分を見ているのだろう。レナードは何故だかそんなことが気になった。





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