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しおりを挟むどんどん出てくる料理に私は食べることを忘れ、ただ見るだけだった。順番に料理が出てくると思ったのだが、それは最初だけ。大皿料理が大量に並び、使用人たちがそれを分けてくれる。1人につき1人の使用人がつくのだ。
「驚いたでしょう。これがクルーソン家なのよ」
そう言いながらもお義母様も山盛りの料理に手をつけていく。お義父様もお義兄様がたも休みなく食事を続けている。当然ジョセフ様もだ。
「ライラ様、こちらはいかがですか?」
私についてくれた人は若い女性。笑顔で料理を取り分けてくれる。肉料理だけで5種類、魚料理も3種類、野菜料理は15種類あるという。途中で料理長のローガンが現れて説明してくれたので判明した。
「こちらの料理はあっさりしておりますので、ライラ様も親しみやすいかと思います」
正直言って料理を見ているだけでお腹がいっぱいになってきた。そんな私の様子を見てローガンが教えてくれた。少し落ち着いたので食事に手をつける。確かにあっさりしていくらでも食べられそうだ。とても美味しい。
「爽やかな風味ですね」
口の中でレモンのような風味が広がる。思わず感想を口にした。
「はい、レモンを使っています」
ローガンが笑顔で答えてくれた。
「こちらはピリっとしていますが、食欲が増しますね」
ちょっとした感想を言うと、ローガンが返してくれる。あまり余計なことを言うと専門家のローガンから不評を買ってしまうかもしれない。しかし感想は言いたいので当たり障りのないようなことを言ってしまう。でもローガンはニコニコ笑っているので気にしないようにして食事を続ける。
気がつくとお義父様、お義兄様がこちらをじっと見ていた。何かやらかした?やばい。
「お、美味しいかね?」
お義父様から聞かれるが、どこかぎこちない言い方に聞こえる。やはり食べ方が汚かったのだ。思わず俯きそうになった。
「この料理ならライラの方が美味いですね」
ずっと黙って食べていたはずのジョセフ様がいきなり言った。何をおっしゃるのだろう。私は驚いて持っていたナイフとフォークを落としそうになる。
しかし涼しい顔でジョセフ様は持っていたナイフとフォークを一旦置くと、丁寧な仕草でナフキンで口を拭った。その様子に目を奪われてしまいそうになるが、今はそんな場合ではない。
「ライラの料理の方が上ですね」
よせばいいのにジョセフ様が同じことを言う。恐る恐るローガンを見た。きっと不快な思いをしているはずだ。プロの料理よりも素人の料理が上だなんて恐ろしい発言である。ローガンは笑顔だが、それはきっとジョセフ様の前だからであろう。
「ライラったらお料理まで上手なの?」
お義母様がナイフとフォークを置いて、グラスを持ち上げた。横にいたメイドがワインのボトルを手にしている。お料理までってどういう意味?お義母様の言葉の意味がわからない。
「セオに聞いておりました。ライラ様はクッキーがお上手だそうで」
と、ローガンがより一層笑顔になって言う。その笑顔を見ていると、素人のくせにしゃしゃり出てきて、と言っているような気がする。クッキーくらいで偉そうに、とも思える。確かにクッキー焼いたけど、それはあの宿舎だったからだ。プロの料理人がいれば約必要などないのだ。
「クッキーだけではない。向こうではずっとライラの料理を食べたが、美味かった」
ジョセフ様はそう言うとグラスの中のワインを飲み干す。すかさず横に控える使用人がワインを継ぎ足していた。
「明日の朝食はライラが用意してほしい」
継ぎ足されたワインを飲み干すと、ジョセフ様は平然と仰った。断ることもできずに結局私は明日の朝食を作ることになってしまった。プロの料理人様がおられるというのに、である。
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