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朝食が終わる頃、お義父様のお知り合いの方が訪問された。正確にはお義父様の亡くなられたお父様のお知り合いとのことだ。
「将軍、お久しぶりでございます」
お義父様が恭しくお辞儀をされるので私も同じようにご挨拶をする。お義父様のお父様、つまりはジョセフ様のお爺様であるが、50年前のマイズ国との戦争で活躍をされた軍人だったそうだ。そして今日来られたこの将軍様はお爺様に訓練を受けた愛弟子といえるお方だそうで、ジョセフ様の活躍と結婚を聞いて駆けつけたそうである。ちなみに将軍とお義父様は呼ばれたが、正式な名前がよくわからないそうだ。お義父様も小さい頃から将軍と呼び、本人も否定しないのでそのままになっている。とっくに引退して将軍ではないはずだが、名前もわからないし将軍のままだそうだ。
「このお嬢さんが・・・」
将軍様は上から下までじっくりと私のことを見た。
「うん、いいではないか」
ニッカリと歯を見せて将軍様が笑う。
「素直そうだし、きっと子どもを何人も産むであろうな」
「将軍!」
お義父様が大声で叫び、お義母様の目が三角になった。
「そう言うことは控えてください」
お義父様が私の前に立った。その剣幕に将軍様が一瞬たじろいだが、すぐに笑顔になった。
「健康そうだと言いたかっただけじゃよ」
「ホントにもう、デリカシーがないんだから」
小声だがお義母様の声が聞こえた。ついでにその後、クソジジイとも聞こえた。のせいだと思う。
「
「ジョセフは任務中か」
「はい」
「そうか、そうか」
将軍様は満足げに何度もうなづくと、私の方を見た。お年を召してはいるが眼光が鋭い。
「ライラと言ったね」
「はい」
何だろうかとふと心配になったが、お義父様もお義母様もいる。安心して将軍様へ一歩近づいた。
「ジョセフの任務はなかなか大変だ。女性のあんたにどこまで理解できるか分からない。だが、ジョセフが安心して任務に就くためにはあんたの力が必要なんだ。古い考えと言われるだろうが、外で働く者が戻って安心できる場所が家なんだ。家があるからこそ、外で安心して働ける。そこを分かって、どうか家を守ってくれ」
そう言って将軍様は頭を下げた。
「将軍・・・」
お義父様もお義母様も驚いて目を見開いている。将軍様のような方が年若い女の私に頭を下げることなど今までなかったのだろう。
「将軍様・・・」
頭を下げる将軍様へ近づき、私は将軍様の手を取った。
「私にできることは家事くらいなものです」
将軍様が頭を上げる。
「他のご令嬢ができることは私はできないと思います。けれどこれからはジョセフ様のために私は努力していくつもりでおります」
私の言葉に将軍様は目を見開き、私の手を強く握り返した。
「努力など必要ないのだ!」
さすが将軍様、力が強い。手を締め付けられて痛いが、我慢する。
「必要があれば人は変わっていく。努力とは変えていくこと、君は変える必要はない!」
一瞬何を言っているか分からないのだが、分かったふりをした。将軍様は興奮したように話し続ける。
「ジョセフに必要なのは、君のような女性だ。ワシはどんな女がジョセフの嫁になるか偵察しに来たのだ。王命となれば尚のこと。どんなバカ女が来たか不安だったが、こんないい女だったとは」
将軍様の手に一層力が込められた。痛い・・・。お義父様が気がついて将軍に手を離すよう言ってくれた。
「これは失礼・・・」
手を離してもらい、ようやく自由になった。そして・・・。
「まぁ、戦時中そんなことが?」
「そうなんだ、あの時は無我夢中だったからねぇ」
家事の腕前を見てもらおうと何故か食事の用意をし、将軍様の戦争体験話を聞いていた。
「マイズ国とは今はそれなりにいい関係を築いているが、当時は敵だった。向こうは我々のことを獣扱いしていて、ジュウセンと当時の戦争のことを言っていたようだよ」
「まぁ・・・」
「今は戦争もない、いい時代になったもんだな」
そう言って将軍様はワインを飲み干した。少し眠そうな目をされている。
「将軍様、少しお休みください」
様子を見てセオが声をかけている。私もそのタイミングで席を立った。実は将軍様に付き合っていたのは最終的には私だけなのだ。最初のうちはお義父様もお義母様もお義兄様たちも付き合って、食事とワインを楽しんでいた。私も張り切って食事の準備をして、かなりの量の料理を出した。しかしそのうち1人抜け、2人抜け・・・で、私だけが残って将軍様の話を聞いていた。
「よく付き合ってくれたね」
「本当、同じような話を何度もするから疲れるんだよね」
と、感心されたが、話を聞くのは苦ではなかった。むしろもっと聞きたいと思っていた。今度は小さい頃のジョセフ様の話を聞き出そうか、それともお会いできなかったお爺様の話の方がいいだろうか。そんなことを考えながら、この場にジョセフ様もいてくださったらなと思ったのだった。
「将軍、お久しぶりでございます」
お義父様が恭しくお辞儀をされるので私も同じようにご挨拶をする。お義父様のお父様、つまりはジョセフ様のお爺様であるが、50年前のマイズ国との戦争で活躍をされた軍人だったそうだ。そして今日来られたこの将軍様はお爺様に訓練を受けた愛弟子といえるお方だそうで、ジョセフ様の活躍と結婚を聞いて駆けつけたそうである。ちなみに将軍とお義父様は呼ばれたが、正式な名前がよくわからないそうだ。お義父様も小さい頃から将軍と呼び、本人も否定しないのでそのままになっている。とっくに引退して将軍ではないはずだが、名前もわからないし将軍のままだそうだ。
「このお嬢さんが・・・」
将軍様は上から下までじっくりと私のことを見た。
「うん、いいではないか」
ニッカリと歯を見せて将軍様が笑う。
「素直そうだし、きっと子どもを何人も産むであろうな」
「将軍!」
お義父様が大声で叫び、お義母様の目が三角になった。
「そう言うことは控えてください」
お義父様が私の前に立った。その剣幕に将軍様が一瞬たじろいだが、すぐに笑顔になった。
「健康そうだと言いたかっただけじゃよ」
「ホントにもう、デリカシーがないんだから」
小声だがお義母様の声が聞こえた。ついでにその後、クソジジイとも聞こえた。のせいだと思う。
「
「ジョセフは任務中か」
「はい」
「そうか、そうか」
将軍様は満足げに何度もうなづくと、私の方を見た。お年を召してはいるが眼光が鋭い。
「ライラと言ったね」
「はい」
何だろうかとふと心配になったが、お義父様もお義母様もいる。安心して将軍様へ一歩近づいた。
「ジョセフの任務はなかなか大変だ。女性のあんたにどこまで理解できるか分からない。だが、ジョセフが安心して任務に就くためにはあんたの力が必要なんだ。古い考えと言われるだろうが、外で働く者が戻って安心できる場所が家なんだ。家があるからこそ、外で安心して働ける。そこを分かって、どうか家を守ってくれ」
そう言って将軍様は頭を下げた。
「将軍・・・」
お義父様もお義母様も驚いて目を見開いている。将軍様のような方が年若い女の私に頭を下げることなど今までなかったのだろう。
「将軍様・・・」
頭を下げる将軍様へ近づき、私は将軍様の手を取った。
「私にできることは家事くらいなものです」
将軍様が頭を上げる。
「他のご令嬢ができることは私はできないと思います。けれどこれからはジョセフ様のために私は努力していくつもりでおります」
私の言葉に将軍様は目を見開き、私の手を強く握り返した。
「努力など必要ないのだ!」
さすが将軍様、力が強い。手を締め付けられて痛いが、我慢する。
「必要があれば人は変わっていく。努力とは変えていくこと、君は変える必要はない!」
一瞬何を言っているか分からないのだが、分かったふりをした。将軍様は興奮したように話し続ける。
「ジョセフに必要なのは、君のような女性だ。ワシはどんな女がジョセフの嫁になるか偵察しに来たのだ。王命となれば尚のこと。どんなバカ女が来たか不安だったが、こんないい女だったとは」
将軍様の手に一層力が込められた。痛い・・・。お義父様が気がついて将軍に手を離すよう言ってくれた。
「これは失礼・・・」
手を離してもらい、ようやく自由になった。そして・・・。
「まぁ、戦時中そんなことが?」
「そうなんだ、あの時は無我夢中だったからねぇ」
家事の腕前を見てもらおうと何故か食事の用意をし、将軍様の戦争体験話を聞いていた。
「マイズ国とは今はそれなりにいい関係を築いているが、当時は敵だった。向こうは我々のことを獣扱いしていて、ジュウセンと当時の戦争のことを言っていたようだよ」
「まぁ・・・」
「今は戦争もない、いい時代になったもんだな」
そう言って将軍様はワインを飲み干した。少し眠そうな目をされている。
「将軍様、少しお休みください」
様子を見てセオが声をかけている。私もそのタイミングで席を立った。実は将軍様に付き合っていたのは最終的には私だけなのだ。最初のうちはお義父様もお義母様もお義兄様たちも付き合って、食事とワインを楽しんでいた。私も張り切って食事の準備をして、かなりの量の料理を出した。しかしそのうち1人抜け、2人抜け・・・で、私だけが残って将軍様の話を聞いていた。
「よく付き合ってくれたね」
「本当、同じような話を何度もするから疲れるんだよね」
と、感心されたが、話を聞くのは苦ではなかった。むしろもっと聞きたいと思っていた。今度は小さい頃のジョセフ様の話を聞き出そうか、それともお会いできなかったお爺様の話の方がいいだろうか。そんなことを考えながら、この場にジョセフ様もいてくださったらなと思ったのだった。
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