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「リ、リチャード殿下!」
校長の声にその場にいる全員がサッとひざまづいた。私は出遅れてしまいすぐに動こうとしたのだが無駄だった。すでに王子が私の目の前に来ていたのである。
「今魔力を感じたが、君か?」
彼は私に顔を近づける。突然すぎて面食らった。彼は確かにマンガで見た王子だった。リサと親しくなり、リサも彼との逢瀬に夢中になった。おかげで学校中からリサは憎まれる。王子が平民のリサと親しくなるなんてあり得ないことだからだ。
どうにかこの場を誤魔化さなくてはいけない。周囲の人間は全員王子の登場にひざまづいている。私だけが立っていてしかも王子と向き合っているのだ。やばい、と思いながらも動けなかった。至近距離で見る彼の顔はサイッコーにカッコ良い。そりゃ読者に好かれるように丁寧に描いたのだろう。芸術とまで思うくらいに彼の顔は整っていた。
「発言を許す、君が魔力を放ったのか?」
何も言わない私に痺れを切らしたのか、少しイラついたような言い方になっている。
「は・・・、はい」
「な、何なんだ、これは!」
ようやく私が絞り出した声を王子は聞かずに次の言葉を放った。リクライニングチェアのことを言っているのは明らかである。何と説明しようか、私は躊躇した。革張りで背もたれも倒れて足も上げられる。こんなものは見たことがないだろうし、もしかしたらこの世界にない素材なのかもしれない。
「これは椅子・・・椅子でいいのか。それともベッドなのか?」
私が何も言わないからか、王子は1人でブツブツと言い出した。
「形が変わるぞ。なるほど、こうなるのか。あっ、何という柔らかさ。これは・・・」
王子は勝手にあちこちを触っている。だがまだ座ろうとはしていない。私は居た堪れなくなってきた。そっと校長を見ると、ひざまづいたまま唇を噛み締めている。王子が声をかけないので全員がひざまづいたままになっているのだ。
「あ、あの・・・殿下・・・様?」
校長はリチャード殿下と呼んでいた。親しくもないのに名前を呼ぶのはいけないとラノベで知っていたので、私は殿下と呼ぶことにしたのだがなぜか様をつけていた。それなら王子様の方がよかったかも?と思ってしまったが本音を言えばどうでもいい。
「ハハハ。そんな呼び方しなくていいよ」
王子は爽やかな笑顔で私を見る。マンガならズキュンと胸にエンジェルの矢が放たれるだろう。
「僕はリチャード、親しいものはリックと呼ぶ。君もそう呼んでいいよ」
その瞬間、小さな悲鳴があちこちから聞こえた。王子が出会ってすぐの女生徒に愛称呼びを許可してしまったのだ。これはヤバい。かなりヤバい。しかもこれはマンガと同じセリフなのだ。確実にマンガの通りに話が進んでしまっている。
「そんなことより、これはどうしたんだ?」
王子の質問に私は答えるしかない。
「魔法を使いました」
言ってから後悔した。もしかしたらここでは魔法は禁止されていたのかもしれない。考えてみたら王子がいるだろう空間で、自分勝手に魔法を使ったら王子に危険が及ぶ可能性がある。実際、王子は驚いたような表情をしていた。
「え?何を言っているんだ?」
王子は心底意味がわからないという顔をしている。
「魔法でできるわけがないだろう」
「え?」
魔法で、ではなく魔法が、と聞き間違えたのだと思った。入学しただけで魔法が使えるわけがないと思われたのだろう。平民の、しかも孤児の私が魔法の才能があると言われただけで実際に使えるとは思われなかったのだろうと私は解釈した。
「君、魔法のことを何も知らないんだな」
そう言いながら王子は手のひらを差し出した。しばらくすると手のひらの上に小さな炎が見えた。細い蝋燭の先に灯るような小さな炎だ。すぐに火は消え、彼は少し疲れたような様子で額の汗を拭う。
「さすが、殿下。素晴らしい」
「魔法王子、ここに見参ってところですな」
「これだけの魔法を使えるなんて、やはり王子は天才ですね」
「我が国の将来は安泰だな」
そんなことを言いながら、中年の男性たちが入ってきた。中央にはイケオジがいる。眼光鋭くこちらを見ている。
「陛下!」
校長が大声で言ったので私は反射的に動いていた。当たり前のように土下座した。正式な礼儀作法を知らないのだから仕方がない。それよりも陛下って国王のことだよ。なんでいるのと思っていたのだった。
校長の声にその場にいる全員がサッとひざまづいた。私は出遅れてしまいすぐに動こうとしたのだが無駄だった。すでに王子が私の目の前に来ていたのである。
「今魔力を感じたが、君か?」
彼は私に顔を近づける。突然すぎて面食らった。彼は確かにマンガで見た王子だった。リサと親しくなり、リサも彼との逢瀬に夢中になった。おかげで学校中からリサは憎まれる。王子が平民のリサと親しくなるなんてあり得ないことだからだ。
どうにかこの場を誤魔化さなくてはいけない。周囲の人間は全員王子の登場にひざまづいている。私だけが立っていてしかも王子と向き合っているのだ。やばい、と思いながらも動けなかった。至近距離で見る彼の顔はサイッコーにカッコ良い。そりゃ読者に好かれるように丁寧に描いたのだろう。芸術とまで思うくらいに彼の顔は整っていた。
「発言を許す、君が魔力を放ったのか?」
何も言わない私に痺れを切らしたのか、少しイラついたような言い方になっている。
「は・・・、はい」
「な、何なんだ、これは!」
ようやく私が絞り出した声を王子は聞かずに次の言葉を放った。リクライニングチェアのことを言っているのは明らかである。何と説明しようか、私は躊躇した。革張りで背もたれも倒れて足も上げられる。こんなものは見たことがないだろうし、もしかしたらこの世界にない素材なのかもしれない。
「これは椅子・・・椅子でいいのか。それともベッドなのか?」
私が何も言わないからか、王子は1人でブツブツと言い出した。
「形が変わるぞ。なるほど、こうなるのか。あっ、何という柔らかさ。これは・・・」
王子は勝手にあちこちを触っている。だがまだ座ろうとはしていない。私は居た堪れなくなってきた。そっと校長を見ると、ひざまづいたまま唇を噛み締めている。王子が声をかけないので全員がひざまづいたままになっているのだ。
「あ、あの・・・殿下・・・様?」
校長はリチャード殿下と呼んでいた。親しくもないのに名前を呼ぶのはいけないとラノベで知っていたので、私は殿下と呼ぶことにしたのだがなぜか様をつけていた。それなら王子様の方がよかったかも?と思ってしまったが本音を言えばどうでもいい。
「ハハハ。そんな呼び方しなくていいよ」
王子は爽やかな笑顔で私を見る。マンガならズキュンと胸にエンジェルの矢が放たれるだろう。
「僕はリチャード、親しいものはリックと呼ぶ。君もそう呼んでいいよ」
その瞬間、小さな悲鳴があちこちから聞こえた。王子が出会ってすぐの女生徒に愛称呼びを許可してしまったのだ。これはヤバい。かなりヤバい。しかもこれはマンガと同じセリフなのだ。確実にマンガの通りに話が進んでしまっている。
「そんなことより、これはどうしたんだ?」
王子の質問に私は答えるしかない。
「魔法を使いました」
言ってから後悔した。もしかしたらここでは魔法は禁止されていたのかもしれない。考えてみたら王子がいるだろう空間で、自分勝手に魔法を使ったら王子に危険が及ぶ可能性がある。実際、王子は驚いたような表情をしていた。
「え?何を言っているんだ?」
王子は心底意味がわからないという顔をしている。
「魔法でできるわけがないだろう」
「え?」
魔法で、ではなく魔法が、と聞き間違えたのだと思った。入学しただけで魔法が使えるわけがないと思われたのだろう。平民の、しかも孤児の私が魔法の才能があると言われただけで実際に使えるとは思われなかったのだろうと私は解釈した。
「君、魔法のことを何も知らないんだな」
そう言いながら王子は手のひらを差し出した。しばらくすると手のひらの上に小さな炎が見えた。細い蝋燭の先に灯るような小さな炎だ。すぐに火は消え、彼は少し疲れたような様子で額の汗を拭う。
「さすが、殿下。素晴らしい」
「魔法王子、ここに見参ってところですな」
「これだけの魔法を使えるなんて、やはり王子は天才ですね」
「我が国の将来は安泰だな」
そんなことを言いながら、中年の男性たちが入ってきた。中央にはイケオジがいる。眼光鋭くこちらを見ている。
「陛下!」
校長が大声で言ったので私は反射的に動いていた。当たり前のように土下座した。正式な礼儀作法を知らないのだから仕方がない。それよりも陛下って国王のことだよ。なんでいるのと思っていたのだった。
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