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「皆のもの、表を上げぃ」
舞台俳優かと思うくらいの張りのある声。イケオジは声もイケている。国王陛下のお声が周囲に響き渡った。恐る恐る私は顔を上げる。
「お主、名は何と申す?」
目の前には国王陛下の顔があった。私は土下座の状態から顔を上げたので正座状態。陛下は私の前にしゃがみ込んでいた。国王陛下の整った顔が目の前にあって私は動揺していた。しかも時代劇のようなセリフ。
この人本当に国王陛下?国王陛下の役をしている舞台俳優とかじゃないの?というより何でここに国王陛下がいるの?学校の入学式だよね。息子の王子が入学するから?というかマンガに出て来たっけ。
私の頭の中では色々な疑問が浮かんでいた。マンガでは国王陛下は出てこなかったはずだ。こんな濃い顔の陛下を絵で描くとしたら、作者はすごく大変だったと思う。
「お主、発言を許すぞ。名を名乗れ」
ぼんやりしている私を見かねて陛下に再度聞かれた。名を名乗れってこれまた時代劇か。
「リサ・・・と申します」
無視をするわけにいかないので答えたが、思いのほか小さな声しか出なかった。
「あ?」
聞こえなかったのだろう。だが聞き返し方が怖い。威圧感たっぷりである。
「リサと申します!」
聞き返されないように大声を出そうと試みたら、今度は怒鳴り返したみたいになってしまった。目の前だから唾でも飛んでたらどうしようかと思ったが、もうどうにでもなれと思う。
「リサ・・・。家名は?」
陛下は深くうなづきながらなおも聞いてくる。家名って苗字のことだよね。孤児だし苗字なんてないはず。どう答えようかと思っていたら
「その者は孤児でありますので家名はございません」
私の代わりに校長が答えた。さすがに陛下の前ではボソボソ声ではない。でも何で校長が答えるんだ。私に聞かれたのに。と、少しだけムッとした。
「何ッ!」
すると陛下の声がより一層大きく響いた。私だけではなく数人の生徒の肩がビクッと動いている。陛下の目がカッと見開いた。目から何かの光線が出そうな勢いだ。
「魔力の線が太いようなので入学させればと思いまして・・・」
陛下の後ろに控えていた中年男性の1人が言った。おそらく大臣とかの偉い人に違いない。しかし何の威厳も感じない。でっぷりとお腹が出ている、どこにでもいる男性である。
「確かそのような報告を受けていたな。この者がそうだったのか」
平民のリサの入学は国が決めたことだ。つまり陛下が決めたことなのだ。そうなると、私は陛下にお礼を言うべきなのではないだろうか。でも陛下に対してどんな言葉遣いをすればいいかわからない。それでただ陛下を見ていたら、陛下も私を見た。陛下の目はとても大きい。その目がよりいっそう大きく見開き、ギラギラといった感じになっている。悪いことは何もしていないはずなのに、申し訳ないという気持ちになった。
「で、これはいったい何だ?」
ようやく陛下の目が私からリクライニングチェアに移る。安心する私は
「椅子です」
と、答えた。
「椅子ぅ~?」
今度は語尾を上げてきた。わざとではないのはわかっているが、まるで役者のような大仰な言い回しだ。その瞬間。
「まことかッ!」
と、視線を向けてきた。きっと陛下はこういう人なのだ。芝居がかっているけど、これが素なのだ。そう思ったら逆に冷静になれた。
「はい。椅子です。お試しになってください」
「では、私が」
陛下に勧めたつもりだが、陛下の後ろに控えている中年男性が手を挙げた。先ほど発言したでっぷりお腹の人ではない人で、頭髪が寂しいいわゆるバーコードハ◯という人だ。バーコードさんは何の躊躇いもなく座った。
「や、柔らかい・・・」
と、小さく呟いている。
「あ、こうすると楽ですよ」
私はそう言って背もたれを倒した。
「うわぁ!」
バーコードさんが驚いて大声を上げる。だがすぐに「あ、ホントだ」と呟いた。
「それからこうすれば・・・」
と、私は足元を上げた。
「うわぁぁぁ!」
と、またもやバーコードさんの悲鳴が出た。が、すぐにバーコードさんは静かになった。目も瞑っている。あまりに静かなので気絶でもしたのかと心配になり、そっと近づくと「気持ちいい、眠ってしまいそうだ」と小さく呟いていた。その横で陛下の目はよりいっそう大きく開いているのだった。
舞台俳優かと思うくらいの張りのある声。イケオジは声もイケている。国王陛下のお声が周囲に響き渡った。恐る恐る私は顔を上げる。
「お主、名は何と申す?」
目の前には国王陛下の顔があった。私は土下座の状態から顔を上げたので正座状態。陛下は私の前にしゃがみ込んでいた。国王陛下の整った顔が目の前にあって私は動揺していた。しかも時代劇のようなセリフ。
この人本当に国王陛下?国王陛下の役をしている舞台俳優とかじゃないの?というより何でここに国王陛下がいるの?学校の入学式だよね。息子の王子が入学するから?というかマンガに出て来たっけ。
私の頭の中では色々な疑問が浮かんでいた。マンガでは国王陛下は出てこなかったはずだ。こんな濃い顔の陛下を絵で描くとしたら、作者はすごく大変だったと思う。
「お主、発言を許すぞ。名を名乗れ」
ぼんやりしている私を見かねて陛下に再度聞かれた。名を名乗れってこれまた時代劇か。
「リサ・・・と申します」
無視をするわけにいかないので答えたが、思いのほか小さな声しか出なかった。
「あ?」
聞こえなかったのだろう。だが聞き返し方が怖い。威圧感たっぷりである。
「リサと申します!」
聞き返されないように大声を出そうと試みたら、今度は怒鳴り返したみたいになってしまった。目の前だから唾でも飛んでたらどうしようかと思ったが、もうどうにでもなれと思う。
「リサ・・・。家名は?」
陛下は深くうなづきながらなおも聞いてくる。家名って苗字のことだよね。孤児だし苗字なんてないはず。どう答えようかと思っていたら
「その者は孤児でありますので家名はございません」
私の代わりに校長が答えた。さすがに陛下の前ではボソボソ声ではない。でも何で校長が答えるんだ。私に聞かれたのに。と、少しだけムッとした。
「何ッ!」
すると陛下の声がより一層大きく響いた。私だけではなく数人の生徒の肩がビクッと動いている。陛下の目がカッと見開いた。目から何かの光線が出そうな勢いだ。
「魔力の線が太いようなので入学させればと思いまして・・・」
陛下の後ろに控えていた中年男性の1人が言った。おそらく大臣とかの偉い人に違いない。しかし何の威厳も感じない。でっぷりとお腹が出ている、どこにでもいる男性である。
「確かそのような報告を受けていたな。この者がそうだったのか」
平民のリサの入学は国が決めたことだ。つまり陛下が決めたことなのだ。そうなると、私は陛下にお礼を言うべきなのではないだろうか。でも陛下に対してどんな言葉遣いをすればいいかわからない。それでただ陛下を見ていたら、陛下も私を見た。陛下の目はとても大きい。その目がよりいっそう大きく見開き、ギラギラといった感じになっている。悪いことは何もしていないはずなのに、申し訳ないという気持ちになった。
「で、これはいったい何だ?」
ようやく陛下の目が私からリクライニングチェアに移る。安心する私は
「椅子です」
と、答えた。
「椅子ぅ~?」
今度は語尾を上げてきた。わざとではないのはわかっているが、まるで役者のような大仰な言い回しだ。その瞬間。
「まことかッ!」
と、視線を向けてきた。きっと陛下はこういう人なのだ。芝居がかっているけど、これが素なのだ。そう思ったら逆に冷静になれた。
「はい。椅子です。お試しになってください」
「では、私が」
陛下に勧めたつもりだが、陛下の後ろに控えている中年男性が手を挙げた。先ほど発言したでっぷりお腹の人ではない人で、頭髪が寂しいいわゆるバーコードハ◯という人だ。バーコードさんは何の躊躇いもなく座った。
「や、柔らかい・・・」
と、小さく呟いている。
「あ、こうすると楽ですよ」
私はそう言って背もたれを倒した。
「うわぁ!」
バーコードさんが驚いて大声を上げる。だがすぐに「あ、ホントだ」と呟いた。
「それからこうすれば・・・」
と、私は足元を上げた。
「うわぁぁぁ!」
と、またもやバーコードさんの悲鳴が出た。が、すぐにバーコードさんは静かになった。目も瞑っている。あまりに静かなので気絶でもしたのかと心配になり、そっと近づくと「気持ちいい、眠ってしまいそうだ」と小さく呟いていた。その横で陛下の目はよりいっそう大きく開いているのだった。
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