ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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    私は今、中年男性に囲まれている。王宮へ向かう馬車の中。さすがに陛下と同じ馬車には乗れず、中年男性たちと乗る羽目になった。なかなかキツイ。

    陛下の馬車は豪華で乗り心地抜群なのだろう。それに引き換えこの馬車は。行きに乗った馬車ほどではないが、お尻が痛い。クッションは有りはするけど、せんべいみたいなうっすい綿が敷かれているだけ。しかもメガネさんとバーコードさんに挟まれている。行きのときのように少し浮くこともできない。まさしく地獄だった。

    良かったことはすぐに王宮に着いたこと。近くて良かったと胸を撫で下ろしたが、このあとどうなるのかを考えると安心してはいられない。王宮は当たり前だが豪華絢爛。お城なんて行ったことはないけど、テレビや映画で見た中世ヨーロッパのお城って感じだった。

 思わずキョロキョロしてしまうが、こういう態度は良くないなと反省。大人しく中年男性たちの指示に従う。そしてかっこいい制服を着たおそらく騎士の人に案内され、会議室のような大きなテーブルが備えられている部屋に通された。私の後ろを中年男性たちがゾロゾロと着いてくる。なんか面倒なことになってしまった。

    マンガでは、入学式の後リサは教室に戻る。そこには王子の婚約者であるシャロンがいる。シャロンは公爵家のご令嬢であり、身分は女生徒の中では一番上だ。平民が底辺とすると、リサは気楽に話しかけてはいけない。ところがリサは話しかける。馴れ馴れしくシャロンの肩を突っつき、同じクラスなら今日から友だちだよねなどと言ってしまう。孤児院ではそうやってみんな仲良くなっていたのだ。

 しかし漫画のストーリーが大きく外れてしまった。私はリサが来られなかったはずの王宮に来ている。シャロンと今後会えるかどうかわからない。まだストーリーは始まって間もない。確かにマンガの通りにならないようにと思っていた。地道に真面目に魔法の練習をしようと決めていた。この先どうなるのだろうか。なるようにしかならないだろうけど、嫌な結末にだけはならないでほしい。

 私がそんなことを考えていると、陛下がやってきた。その後ろにはリクライニングチェアが数人の使用人によって運ばれている。あれ、結構重いんだよね。使用人の人たちが少し気の毒に思えた。みんな顔が引き攣って見えたからだ。

「さて」

 陛下は私をじっと見ながら言った。

「これは本当にリサが作ったものか?」

 先ほどまではどこか楽しそうに話していたが、今は真剣な様子だ。室内も重々しい空気になっている。

「はい」

 私も陛下から目を離さずに答えた。

「そうか」

 陛下は顎に手をやり少し考えるようなそぶりをした。

「ではもう一度、同じものが作れるか?」
「まさか!」

 反応したのはメガネさんだった。

「陛下、そんなことができるわけがありません。魔法石も持っていないのに魔法が使えるわけがないでしょう」

 陛下は黙ってメガネさんを見たが、その目力が凄まじかった。思わず、ヒッという声が出た。メガネさんも怯んではいたものの、それでも視線を動かすことはしなかった。

「できます」

 と、言った後に心の中で多分と呟いた。あの時はなぜかできてしまったのだ。いわば偶然の産物である。本当ならみんなと同じような椅子を出すつもりだったのだ。

「ではやってみなさい」

 準備されていたのだろう。小さな木の椅子が何個か運び込まれた。これ全部やれって?まぁやってみるけど。私は頭の中でリクライニングチェアを思い浮かべる。すると頭の中で違うイメージが浮かんだ。手すりがあってグラスとか入れられるように穴が空いていると便利だよね。折りたたんで収納できるテーブルがついていると便利かも。

 いやいやいや、そんなことをイメージしたらダメだ。と、思っているうちに周囲がざわついているのを感じた。ヤバい、これはきっと。

「なんだ、これは」
「どうしてこんなことが可能なんだ」
「前代未聞でありますぞ!」
「魔法省の主任研究員を呼べ!」

 中年男性たちの騒ぐ声。よくよく見ると、リクライニングチェアが1台増えている。収納できるテーブルと手すりにグラスを入れられる穴あきだ。自分のやったことなのに、呆れてしまったよ。

 陛下を見るとニマニマした顔をしていた。そして私を見て、大きくうなづいたのだった。
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