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「陛下、安全が確認されました」
バーコードさんが立ち上がり、陛下は「うむ」とうなづいた。そして陛下も座る。
「おぉぉぉぉ!これはスゴイな!」
陛下の声が絶好調に響き渡る。
「快適じゃ」
陛下は背もたれの角度を変えたり、足をあげたり下ろしたりして楽しんでいる。
「リサ、これを余の執務室に置きたいのだが」
陛下の声が少し小さくなった。申し訳ないのだが、という気持ちを感じる。確かに欲しいよね、リクライニングチェア。
「献上致します!」
私が言う前になぜか校長が宣言した。
「当然のことでございます」
当たり前のように言う校長。陛下は私に聞いたのだ。リクライニングチェアは私のものだ。私が魔法で作ったわけだし。それをまるで自分の所有物のように言うのは間違いではないか。
「いや、余はリサに聞いておる」
陛下の目がまた2倍に広がった。
「いえ、もともと学校の備品だった木の椅子でした。ですから所有権は学校にあります。だから私に権利があります」
校長の言い分は分かりはするが、どこか釈然としない。しかしこれ以上目立つのは破滅への前進になりかねない。ここは穏便に執務室にでも会議室にでも持って行って構わない。すると
「もとは木の椅子?それは本当なのか?」
今度はメガネをかけた中年男性がメガネをぐいっと上げながら言った。
「は、はい・・・」
「私が魔法省の長官であることはわかっているだろう?」
いや、初めて知りました。とは言い出せなかった。それは常識中の常識であるかのようだったからだ。メガネさんはコツコツと靴音を響かせて、ゆっくりと近づいてきた。
「木の椅子がこんな素材に変化するなど聞いたことがない。本当に君は魔法を使ったと言うのかね?」
「は、はい・・・」
そう答える以外ないので私は正直に答える。私の答えを聞いたメガネさんは、ハーと大きなため息をついた。
「私は信じられん。魔法は無から有を作るものではない。不可能を可能にする魔法など存在しないのだ」
え?じゃあ魔法って何?さっき王子も火を出してたけど。小さかったけど手のひらから火だ。
「殿下の魔法を見たのだろう。手のひらに魔法石を乗せ火をつけた。殿下の魔力があってこそのことだ。魔法石は希少で高価なもの。君が買える代物ではない」
え?つまり魔法石がなければ何もできないの?高価なものってことは金持ちしか使えないってこと?あんなショボい火だって王子だからできた芸当なわけ?騙された気分だ。
「君は魔力があるようだから精進すれば立派な魔術師になれるだろう。だから入学させてやったのだ。田舎にいるよりもここならいい働き口もあるだろうから、小さな魔法石でも買って火くらいはおこせるように頑張りなさい」
メガネさんは、いやメガネ野郎は私をバカにしている。平民で孤児だから?それともリサだから?リサは不幸になるために存在しているから?そんなわけがあるか。地味に地道にやっていこうと思ったけど、馬鹿馬鹿しい。
私は黙ってメガネさんを見た。メガネさんは相変わらずバカにしたような顔で私を見ている。
「う、うわぁ!」
「キャー!」
私は自分の手のひらから火の玉を出した。それを昔の怪談映画のようにフワフワと飛ばしたのである。その場にいた全員が叫び声を上げて逃げ回っている。メガネさんは真っ青な顔をしてガタガタと震えていた。
火の玉はいくつも作った。言っておくが熱くないし燃えたりもしない。青い火に見えるだけだ。一応は人や物に当たらないように注意はしている。
「・・・ハッハッハッハッ!」
黙って見ていた陛下が笑い出した。笑い方も豪快である。毒気が抜かれたというのはこういうことかもしれない。私は火の玉を消した。
「面白い!実に面白いぞ」
私は面白くないのですが。相手は国王陛下だがもう関係ない。そもそも私はこの国の人間ではないのだから。いい加減、このマンガの中にいたくない。何でリサになったのだろう。元に戻る方法はないのだろうか。愛想笑いもできず、私は真顔になって陛下を見た。
「学校で学ぶことはないようだ。すぐに王宮で面倒を見る」
「陛下!」
中年男性軍団が騒ぎ出した。
「ここで何を学ぶと言うのだ?魔法省の長官でもできないことをやった者に?」
陛下に睨まれた中年男性軍団は何も言えず俯いた。そして私は王宮に連れて行かれたのだった。
バーコードさんが立ち上がり、陛下は「うむ」とうなづいた。そして陛下も座る。
「おぉぉぉぉ!これはスゴイな!」
陛下の声が絶好調に響き渡る。
「快適じゃ」
陛下は背もたれの角度を変えたり、足をあげたり下ろしたりして楽しんでいる。
「リサ、これを余の執務室に置きたいのだが」
陛下の声が少し小さくなった。申し訳ないのだが、という気持ちを感じる。確かに欲しいよね、リクライニングチェア。
「献上致します!」
私が言う前になぜか校長が宣言した。
「当然のことでございます」
当たり前のように言う校長。陛下は私に聞いたのだ。リクライニングチェアは私のものだ。私が魔法で作ったわけだし。それをまるで自分の所有物のように言うのは間違いではないか。
「いや、余はリサに聞いておる」
陛下の目がまた2倍に広がった。
「いえ、もともと学校の備品だった木の椅子でした。ですから所有権は学校にあります。だから私に権利があります」
校長の言い分は分かりはするが、どこか釈然としない。しかしこれ以上目立つのは破滅への前進になりかねない。ここは穏便に執務室にでも会議室にでも持って行って構わない。すると
「もとは木の椅子?それは本当なのか?」
今度はメガネをかけた中年男性がメガネをぐいっと上げながら言った。
「は、はい・・・」
「私が魔法省の長官であることはわかっているだろう?」
いや、初めて知りました。とは言い出せなかった。それは常識中の常識であるかのようだったからだ。メガネさんはコツコツと靴音を響かせて、ゆっくりと近づいてきた。
「木の椅子がこんな素材に変化するなど聞いたことがない。本当に君は魔法を使ったと言うのかね?」
「は、はい・・・」
そう答える以外ないので私は正直に答える。私の答えを聞いたメガネさんは、ハーと大きなため息をついた。
「私は信じられん。魔法は無から有を作るものではない。不可能を可能にする魔法など存在しないのだ」
え?じゃあ魔法って何?さっき王子も火を出してたけど。小さかったけど手のひらから火だ。
「殿下の魔法を見たのだろう。手のひらに魔法石を乗せ火をつけた。殿下の魔力があってこそのことだ。魔法石は希少で高価なもの。君が買える代物ではない」
え?つまり魔法石がなければ何もできないの?高価なものってことは金持ちしか使えないってこと?あんなショボい火だって王子だからできた芸当なわけ?騙された気分だ。
「君は魔力があるようだから精進すれば立派な魔術師になれるだろう。だから入学させてやったのだ。田舎にいるよりもここならいい働き口もあるだろうから、小さな魔法石でも買って火くらいはおこせるように頑張りなさい」
メガネさんは、いやメガネ野郎は私をバカにしている。平民で孤児だから?それともリサだから?リサは不幸になるために存在しているから?そんなわけがあるか。地味に地道にやっていこうと思ったけど、馬鹿馬鹿しい。
私は黙ってメガネさんを見た。メガネさんは相変わらずバカにしたような顔で私を見ている。
「う、うわぁ!」
「キャー!」
私は自分の手のひらから火の玉を出した。それを昔の怪談映画のようにフワフワと飛ばしたのである。その場にいた全員が叫び声を上げて逃げ回っている。メガネさんは真っ青な顔をしてガタガタと震えていた。
火の玉はいくつも作った。言っておくが熱くないし燃えたりもしない。青い火に見えるだけだ。一応は人や物に当たらないように注意はしている。
「・・・ハッハッハッハッ!」
黙って見ていた陛下が笑い出した。笑い方も豪快である。毒気が抜かれたというのはこういうことかもしれない。私は火の玉を消した。
「面白い!実に面白いぞ」
私は面白くないのですが。相手は国王陛下だがもう関係ない。そもそも私はこの国の人間ではないのだから。いい加減、このマンガの中にいたくない。何でリサになったのだろう。元に戻る方法はないのだろうか。愛想笑いもできず、私は真顔になって陛下を見た。
「学校で学ぶことはないようだ。すぐに王宮で面倒を見る」
「陛下!」
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