ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「リチャードが中に?」

 2人はブルブルと震えながらコクコクとうなづいた。よくよく聞けば、王子の他に2人の生徒が一緒らしい。おそらく、宰相の息子のサイモンと騎士団長の息子のポールだろう。マンガでも3人はいつも一緒だった。リサは3人と一緒に行動し、学校中から嫌われていたのである。

「とにかく向かわないと」
「近衛にも連絡します」

 ダン様は立ち上がり、アメリアさんは手の中の何かに向かって話し出した。無線のようなスマホのような役割をするもののようで、王宮に即座に連絡できるようだ。それなりに便利なものがあるのだなと感心した。メール機能があるものも取り付ければ後々見返せるし、お役所仕事なら便利なのではないだろうか。呑気にそんなことを考えてしまう。

 ダン様とアメリアさんは険しい顔をしながら2人で話している。私も何かできることはないだろうか。正直に言えば、あまり王子たちと関わりたくない。彼らと親しくなることで、リサは破滅してしまうのだ。だが今はそんなことを言ってはいられない。集まっているのは弱い魔獣らしいが、数が違う。そして弱い魔獣が集まるとそれを狙ってもう少し強い魔獣が集まる可能性も出てくるそうだ。

 王子のことが頭に浮かんだ。数時間前に入学式の会場で出会った彼は、マンガで見た通りのイケメンだった。誰にでも優しいのでリサに振り回されてしまうのだが、本来はいい人なのだ。サイモンとポールも会ってはいないが、おそらくいい人だろう。いずれにしてもここで傷ついてもらっては困る。物語はまだ始まったばかりなのだ。

「リサはここにいなさい」

 近衛兵たちはまだ来ない。王子が危険とはいえ状況が把握できていない以上、近衛兵を動かすわけにはいかないそうだ。そのためダン様とアメリアさんが先に森の中に入るという。確かにそれが賢明だろう。魔獣なんて見たこともない私が行けば、足手纏いにしかならない。分かっている。分かっているのだけれど、私は躊躇した。大人しくここにいるのは申し訳ないと思った。私には何もできない、ではできることをすべきだ。そう思っていたのだが・・・。

 不意に草と土の匂いがした。次の瞬間、むせかえるような生臭さを感じ吐きそうになった。喉元まで何かが込み上げてきて涙が滲む。気がつけば、目の前にリチャード様がいた。彼を囲むように男性が2人立っている。色白で黒髪の痩せた男性が宰相の息子のサイモン。そして筋骨隆々の大男が騎士団長の息子のポールだ。

 マンガから出てきたような3人組。本物だ。どうして?と首を傾げていると。

「・・・瞬間移動ですね」

 ダン様が疲れたような声を出した。なるほど、瞬間移動なんてすごいことをすれば、そりゃ疲れるだろう。ダン様はすごい人だ。まさかそんなことができるなんて知らなかった。これで遅刻も無くなるし、歩く手間も省ける。

「ダン様、すごいですね。瞬間移動できるなんて、それなら門は作らなくていいんじゃないですか?」

 私はニコニコと笑ってダン様を見た。

「私ではありませんよ!」

 ダン様が怒鳴った。温和な人だと思っていたのにあんまりだ。

「リサ、あなたがやったんでしょう」
「え?私?」

 そんなことしようなんて思ってもみなかった。確かに何かできることはないかと思っていた。しかしそれが森の中に入るということではなかったはずだ。

「叔父上・・・」

 王子がヨロヨロと歩み寄る。

「下級魔獣ではありますが、数が半端ではないのです。とりあえず襲ってきたやつは倒してはいるのですが・・・」

 見れば3人とも傷だらけだ。ポールの腕からは血が流れ出ている。サイモンも魔獣に引っかかれたのだろうか。顔に大きな傷ができていた。

「2人がいたから何とか持ち堪えはしたが・・・」

 王子はそう言って唇を噛んだ。よくよく見れば数メートル先に黒い塊が動いている。

「デビルラビットですね」

 直訳すれば悪魔のウサギ。よくよく見れば目が赤く光っている。大量にいるので塊に見えるのか。気味が悪い。

「話は聞いています。とにかく何とかしましょう」

 アメリアさんが剣を構える。ダン様も右手を挙げて何かを言おうとしていた。黒い塊がこちらに向かってくる。

(ストーンバレット)

 心の中で呟いた。あの塊が潰れるくらいの石が落ちてくればいい。そう思ったら。

 ドスンバタン!
 ギョエ~~!

 何やら大きな音と叫び声が聞こえた。土埃がひどくて視界がぼやけている。しばらくすると、黒い塊は無くなっていた。本当にストーンバレットが悪魔のウサギを退治していたのだった。


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