ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「どういうことですか!」

 ダン様がズンズンと私の前にやってきた。ダン様は足が長い。その長い足を使い大股で歩いてきたので、あっという間に私の前に来た。両腕を掴まれ、私は前後に揺すられる。かなりの力強さで揺らすので気分が悪くなってきた。

「どうして!どうして無詠唱でできるのですか!あれだけの威力のあるストーンバレットを出すのであれば、魔法師が10人いても1時間は詠唱続けなければ無理です。それを・・・!」

 ダン様の力が強くて掴まれた腕が痛い。が、それを訴えることもできない。そもそも、どうしてと言われても答えようがない。やってみたらできた。それだけだ。それよりも揺らすのをやめてもらえないだろうか。

「いいですか!あなたは普通ではないのです。もっと慎重に動いてください!」
「ダン様、それくらいで・・・」

 見かねたアメリアさんが声をかけてくれた。ありがとう、アメリアさん。あなたは天使だ。アメリアさんに言われて、ダン様はようやく私の腕を解放した。うん、楽になった。ダン様は少し感情的になる時があるね。気をつけよう。

「叔父上、それより瞬間移動のほうが・・・」

 せっかく気分がよくなったのに。王子よ、何故今それを言うのだ。思わず私は王子を睨みつけてしまった。しかし王子はどこかぼんやりしているし、横にいたサイモンはうずくまっていて、ポールは腕を押さえて苦しそうな顔をしていた。あぁ、そうだ。彼らは3人で大量の悪魔と戦っていたのだ。気の毒に。

 私は彼らの苦痛を癒してあげたくて、そんなイメージをした。ラノベとかで見る聖女の癒しを思い浮かべたのだ。その瞬間、彼らを白い光が包み込んだ。なんか大袈裟だな。でも仕方ないか。以前見たアニメでは聖女が力を振るうときは画面が真っ白になったのだ。それが真っ先に頭に浮かんでしまったのだ。うまくいっただろうか。

「だぁかぁらぁ!」

 するとダン様が眉間に皺を寄せ、人差し指を私に向けた。人に指を差してはいけません。教わってこなかったわけではないはずだが、そんなことを無視してしまうくらいにダン様は今イラついている。血圧が上がりますよ。

「魔法を使うんじゃありません!」

 使いたくて使っているわけではない。いや、違うか。使おうと思って使っているけど、結果がダン様の考えと違うだけだ。でもうまくいっているんだからいいじゃないの。とはいえそれを言い返すのも躊躇われた。

「いいですか、あなたの魔法は規格外なんです。他の人はあなたのような魔法はできません。それをきちんと把握してください」

 規格外といわれても・・・。イメージしたことが形になってしまうだけなのだ。そんなに責めなくてもいいのに。さっきまで喜んでいたはずだ。リクライニングチェアとかティーセットとか見てご機嫌だったのに。そんなダン様はいなくなってしまったのか・・・。かなり悲しい。

「ポールの腕の傷が消えている!」
「サイモン、顔の傷がないぞ!」

 2人がお互いを見ながら叫んでいる。

「あんなに疲れていたはずが・・・」

 王子がそういった瞬間、3人がほぼ同時に私を見た。ヒョエっと声が出そうになる。マンガで出てきた主役級の3人だ。つまりは全員美形である。そんな彼らが私を見ている。マンガにも似たような描写があった。マンガの中でリサは喜んでいた。3人と仲良くなってリサは幸せを感じていたはずだ。いずれ覆ってしまうのに。

 でも私はリサではない。リサのようにはならない。彼らとも親しくなってはいけない。孤高を貫き、魔法を極めるのだ。

 3人と目をそらそうとした時、何かが見えた。それは小さな石のように見えた。大量にあるそれが魔法石だと分かった。確かお金になるんだったな。先立つものはいつだって必要だ。リサは孤児でお金は持っていない。それでは。

 魔法石は大量にあったが、散らばっているので集めるのは困難だ。それなら、と私は掃除機を思い浮かべた。そして散らばっていた魔法石を集め、袋に入れた。袋はサンタクロースの袋みたいなものを思い浮かべたら出てきたのだ。

「どうしてあなたは・・・」

 ダン様がため息をついているが、知ったこっちゃない。袋の中には大量の小さな魔法石これでいくらくらいになるのだろうか。と、私はルンルン気分になったのだった。
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