ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「リサ」

 気まずいと思っていると、陛下から声をかけられた。思わず背筋がピンと伸びてしまう。直立不動のまま、私は陛下の言葉に耳を傾ける。

「このリクらいニングチェあーは素晴らしい」

 言い慣れていないせいか発音の仕方がぎこちない。でも十分使いこなしているようなので、嘘は言っていないのだと思う。

「ありがとうございます」

 素直にお礼を言う。本当なら自分で使いたかったけど。気に入って使ってくれてるんだから、返せとは言えない。

「魔法をここまで使いこなせる人間は、今我が国にはいないと思う」

 陛下にそう言われて、私はどう答えていいかわからなかった。確か王子は陛下の御付きの中年男性たちに魔法王子とか呼ばれていた。すごい魔力の持ち主と褒められていたはずだ。それなのに私なんかを認めてしまっていいのだろうか。内心ビクビクしながら、私は陛下の話を聞いていた。

「魔法とは魔法石をどれだけ使えるかだ。当然高価な魔法石を手にできる者が有利になる。それ故、魔法は庶民には広がらなかった。魔力がいくらあっても無駄だったのだ」

 陛下はしみじみとそんなことを語り出した。魔法石は魔獣を倒して手に入れる。討伐が大変な魔獣ほど価値の高い魔法石が手に入る。さっき森の中でたくさんの魔法石を拾ったが、あの程度の魔法石ではたいした魔法は使えない。そしてこの国では討伐が大変な魔獣は少ないのだそうだ。魔獣が暴れると被害が増大するので、魔獣がいない方がいい。とはいえ、魔法石が手に入らないと魔法は使えない。どちらがいいか難しいところである。

「魔法の盛んな国はいくらでもある。そんな国に攻め込まれたら我が国はどうすることもできない」

 キッと空を見つめ、陛下は言った。魔法石が手に入らないのであれば、魔法も発展しない。他の国では魔法石がバンバン手に入るので、魔法もかなり進化しているそうだ。

「安価な魔法石でも高度な魔法ができないか、研究させていた。そのためにも魔力の多い者を平民からも探し、英才教育を施す。リサを見つけ学校に入学させたのはそういう理由からだ」

 陛下の表情は真剣だった。国を護るために国王陛下として未来を見据えているのだ。リクライニングチェアで寛いでいるのはたまたま見せた一時の姿。普段はおそらく大変な責務に追われているのだろう。当たり前だ、国王陛下なのだから。

 おちゃらけた芝居がかった役者陛下。そんな感想さえ持っていたのだが、失礼なことをした。心の中でお詫びする。そりゃ国の代表、国王陛下様だ。遊び半分でできるわけがない。

「今まで魔法を使ってきたのか?どんな魔法を使った?」

 そう聞かれ、私は首を振った。

「魔法はこちらに向かう馬車の中で練習しました。それまでは使ったことがありません」
「なぁにぃ~?」

 突然始まった。またもや陛下が芝居に入ったのである。大袈裟な言い回しに目をひん剥いている。歌舞伎役者のモノマネか。目の前で展開される顔芸に卒倒しそうだった。

「なぁぜぃだぁ~?」

 何故って聞かれても。リサがリサのままだったら、きっと魔法は使えない。魔法石がないからだ。もしかしたら学校で魔法石を与えてくれたかもしれないが、そもそもこの国には魔法石が不足している。おそらくたいした結果にはならないだろう。しかし魔法石がなくても私は魔法が使える。それは魔法石の存在を知らないまま、魔法の練習をしたからだ。

 しかしそれを陛下に言っていいかわからない。魔法とはイメージの力ですよ。妄想することです。そんなことを言って納得するだろうか。それに私は現代日本の知識があるのでリクライニングチェアやティーセットなどを魔法で出すことができた。何の知識もないまま、出すことはできないだろう。

 だから私は曖昧に首を傾げるだけにした。それでも何か聞かれたら、孤児院で色々なことを想像して楽しんでいたので、とでも言おうと思った。それで陛下が納得するかわからないが、納得しなくてもいいと思った。やるつもりもなくできてしまうのだから仕方がないのだ。そう言い張るしかないだろう。

 しかし陛下はそれ以上何も聞かなかった。首を傾げる私を見て、そうか、と小さく呟いた。急に芝居が終わった感じになり、何か物足りない気持ちになったのだった。
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