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「尋問魔法は言葉通り、尋問時に使うと相手がペラペラと話してしまう魔法です」
ダン様は冷静に話してはいる。だがいつもより少し早口な感じがする。もしかしたら緊張しているのかもしれない。そう思うと私の気持ちもなんだか落ち着かなくなってきた。どこか緊迫した空気が漂っている。
私はあの時のことを思い返していた。確かに話をさせたくて少し圧をかけたかもしれない。しかし魔法を使ったという感覚はなかった。普通に会話したつもりでいたのだが、それが違ったというならどうしたらいいのだろう。
今後誰かと話をするにも無意識に魔法が使われてしまうのであれば、会話ができなくなってしまう。相手の意思に反することであれば、それは完全に人権を無視したことになってしまうからだ。そういうことであれば、私は人と付き合わない方がいいだろう。そうだ、そうしよう。
最初からそのつもりだった。マンガみたいに嫌な結末を迎えたくはない。誰とも交わらずに魔法を極めよう。そう思っていたんだ。・・・でも何故だかそうすることが嫌だった。すごく寂しい気持ちになったのだ。
身の潔白だけは話しておこう。私は意を決して口を開く。簡単なことだ。魔法を使うつもりではなかった。結果的に使っていただけだ。そう言えばいい。ダン様は理解してくれるはずだ。
「わ、私・・・、そんなつもりでは・・・」
それなのに、簡単に言えるはずだった言葉が出てこなかった。しどろもどろになってしまい、却って怪しい言い方になってしまう。落ち着こう。そう思いながら悪いように考えてしまう。だってリサは幸せになれないのだ。やることが全て裏目に出て不幸になる。それがリサなのだ。
そうだ、もしかしたらこのまま投獄される恐れだってある。牢獄でリクライニングチェアとティーセットを作る日々を想像してしまい、私はゾッとした。そうなる前に逃げ出すべきか。でも逃げ出してもダン様がどこまでも追っかけて来そうだ。どうしよう。どうしたらいい?
ダン様は再び大きなため息をついた。今度も長く深いため息である。永遠に息を吐き続けるのかと思うくらいに長い時間、彼は何も言わなかった。
「何を考えているかわかりますよ、リサはなかなか頭がいいですからね」
ようやく話し出したが、褒められているのか貶されているのかわからなかった。そしてダン様は笑顔だった。恐ろしく美しい笑顔で私を見つめる。その笑顔が怖い。
「尋問魔法は罪人に使うのであれば問題はありません。むしろ有益なものです」
確かにペラペラと話してくれるのであれば、ありがたいだろう。「吐け、吐くんだ」と机をドンと叩く必要もなくなる。この世界でそんなことをしているかわからないけど。きちんとした司法制度は存在していると思う。
「しかし、誰にでも使われるのであれば問題です」
ダン様の言葉に陛下が口を挟む。
「えー、いいんじゃないか。相手が話す分には問題なかろう」
ダン様が深刻な表情なのに陛下は特に何も考えていない様子でヘラヘラしている。子供っぽく唇を少し尖らせて、拗ねたような言い方だ。いいのか?そんなんで。
ダン様はそんな陛下の顔を見もしないで話を続けた。
「犯罪者が相手であれば、問題はないでしょう。しかしリサは学生です。誰にでも尋問魔法を無意識に発してしまったら、リサの人間関係にヒビが入るのは確実でしょう」
ダン様は私が最初から人間関係を構築するつもりがないということを知らない。おそらく、平民で孤児のリサでも学校に馴染めるように気を遣ってくれるだろう。その思いを踏み躙るかもしれないけど。学校生活がどうなるかはまだわからないけど、やはりバッドエンディングには向かいたくない。
「そうかぁ・・・」
しかしそこで陛下が何故だかニヤリと笑った。悪巧みをしている悪党の顔である。なんか、悪い予感がする。絶対何か思いついてるよね。私がそんなことを考えていることに気づいたのだろうか。目が合うと陛下はまたもやニヤリと笑い、ダン様を見る。
「ジョンを呼べ」
陛下がダン様に命じる。ダン様は一瞬戸惑った感じだったが、すぐに部屋を出て行ってしまった。残ったのは私と陛下。気まずい空気が流れていた。
ダン様は冷静に話してはいる。だがいつもより少し早口な感じがする。もしかしたら緊張しているのかもしれない。そう思うと私の気持ちもなんだか落ち着かなくなってきた。どこか緊迫した空気が漂っている。
私はあの時のことを思い返していた。確かに話をさせたくて少し圧をかけたかもしれない。しかし魔法を使ったという感覚はなかった。普通に会話したつもりでいたのだが、それが違ったというならどうしたらいいのだろう。
今後誰かと話をするにも無意識に魔法が使われてしまうのであれば、会話ができなくなってしまう。相手の意思に反することであれば、それは完全に人権を無視したことになってしまうからだ。そういうことであれば、私は人と付き合わない方がいいだろう。そうだ、そうしよう。
最初からそのつもりだった。マンガみたいに嫌な結末を迎えたくはない。誰とも交わらずに魔法を極めよう。そう思っていたんだ。・・・でも何故だかそうすることが嫌だった。すごく寂しい気持ちになったのだ。
身の潔白だけは話しておこう。私は意を決して口を開く。簡単なことだ。魔法を使うつもりではなかった。結果的に使っていただけだ。そう言えばいい。ダン様は理解してくれるはずだ。
「わ、私・・・、そんなつもりでは・・・」
それなのに、簡単に言えるはずだった言葉が出てこなかった。しどろもどろになってしまい、却って怪しい言い方になってしまう。落ち着こう。そう思いながら悪いように考えてしまう。だってリサは幸せになれないのだ。やることが全て裏目に出て不幸になる。それがリサなのだ。
そうだ、もしかしたらこのまま投獄される恐れだってある。牢獄でリクライニングチェアとティーセットを作る日々を想像してしまい、私はゾッとした。そうなる前に逃げ出すべきか。でも逃げ出してもダン様がどこまでも追っかけて来そうだ。どうしよう。どうしたらいい?
ダン様は再び大きなため息をついた。今度も長く深いため息である。永遠に息を吐き続けるのかと思うくらいに長い時間、彼は何も言わなかった。
「何を考えているかわかりますよ、リサはなかなか頭がいいですからね」
ようやく話し出したが、褒められているのか貶されているのかわからなかった。そしてダン様は笑顔だった。恐ろしく美しい笑顔で私を見つめる。その笑顔が怖い。
「尋問魔法は罪人に使うのであれば問題はありません。むしろ有益なものです」
確かにペラペラと話してくれるのであれば、ありがたいだろう。「吐け、吐くんだ」と机をドンと叩く必要もなくなる。この世界でそんなことをしているかわからないけど。きちんとした司法制度は存在していると思う。
「しかし、誰にでも使われるのであれば問題です」
ダン様の言葉に陛下が口を挟む。
「えー、いいんじゃないか。相手が話す分には問題なかろう」
ダン様が深刻な表情なのに陛下は特に何も考えていない様子でヘラヘラしている。子供っぽく唇を少し尖らせて、拗ねたような言い方だ。いいのか?そんなんで。
ダン様はそんな陛下の顔を見もしないで話を続けた。
「犯罪者が相手であれば、問題はないでしょう。しかしリサは学生です。誰にでも尋問魔法を無意識に発してしまったら、リサの人間関係にヒビが入るのは確実でしょう」
ダン様は私が最初から人間関係を構築するつもりがないということを知らない。おそらく、平民で孤児のリサでも学校に馴染めるように気を遣ってくれるだろう。その思いを踏み躙るかもしれないけど。学校生活がどうなるかはまだわからないけど、やはりバッドエンディングには向かいたくない。
「そうかぁ・・・」
しかしそこで陛下が何故だかニヤリと笑った。悪巧みをしている悪党の顔である。なんか、悪い予感がする。絶対何か思いついてるよね。私がそんなことを考えていることに気づいたのだろうか。目が合うと陛下はまたもやニヤリと笑い、ダン様を見る。
「ジョンを呼べ」
陛下がダン様に命じる。ダン様は一瞬戸惑った感じだったが、すぐに部屋を出て行ってしまった。残ったのは私と陛下。気まずい空気が流れていた。
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