ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「そうか、リサは平民か・・・」

 ポールが神妙な顔をしている。隣でサイモンも両腕を組んで眉間に皺を寄せている。

「でもダン様がそばについているのですから、おかしな人間が寄ってくることはないでしょう」

 しかしダン様は難しい顔をしてサイモンに向かって頭を左右に振った。

「むしろ、リサの後見人に名乗り出て王族に近づこうという輩が出てくる可能性が高い」

 サイモンが深いため息をついた。

「いや、それならダン様が後見人になればいいんじゃないっすか」

 ポールがニカっと笑っている。いかにも名案思いついた、という晴々しい笑顔である。

「そういうわけにもいかないのだよ」

 ダン様の答えを聞いてポールは不思議そうな顔で首を傾げた。

「下手に王族が関わると余計な問題も発生するかもしれないですね」

 サイモンがそう言うと、ポールが頭を抱えた。

「めんどくせーな」

 私もそう思うよ。私は地味に暮らしていきたいだけ。そもそも王族の皆さんが私に関わってくるから面倒なことになるのだ。放っておいてくれればいい。そうすれば注目されることもないのだ。

 しかしそうもいかない。すでにガッツリ関わってしまっている。入学式の時にリクライニングチェアなんか出さなきゃよかったのだ。あれさえなければ、と自分の失態が悔やまれる。でもそれはそもそも粗末な椅子を充てがわれたからで・・・。というか、何でこんなに魔法が使えるんだ。何で私はマンガの世界に入り込んだ?と答えの出ない問題を1人で悶々と考えてしまう。どうすることもできないのに。

「リサの後見人には然るべき人物を選定するつもりです。それまで、リサのことは静観しておくように」

 私が1人で悩んでいるうちに彼らの中では何かしらの答えが出たようだ。ダン様の発言を聞いて王子が姿勢を正してダン様に向かって敬礼をした。

「了解しました。叔父上」

 何だか大袈裟な仕草と口調だった。しかしダン様もポールもサイモンも反応していなかった。なんで王子は無視されるのだろうか。高貴な血筋の後継者なのに。腑に落ちないが、私も何もできずにスルーした。ごめん、王子。

 そして時間になり、午後の授業に出ることになった。授業も嫌だがまたあの空間に行くことが嫌だ。なにしろ臭い。そして目のやり場に困る。珍妙すぎる髪型の人が多すぎるのだ。おしゃれって大変。男性は女子の苦労をもっと思いやるべきである。見当違いの苦労ではあるが、頑張っているのだ。

 と、思いながら教室に入る。そう思わなければやってられない。案の定、数人の女子生徒がいた。臭い。一瞬忘れていたので慌てて魔法を使う。私の行動に気づいているかわからないが、彼女たちはあからさまに敵意のこもった目つきで私を見ていた。

「あなた」

 その中の1人が私に向かって言った。頭の上には鳥がいる。オレンジの文鳥のような鳥。作り物とわかるが気持ち悪い。そういえばこんな感じの鳥のおもちゃが雑貨屋で売っていた。センサーで鳴く仕掛けがついているのだ。あれだとしたらさぞや愉快だろうな。何かの拍子でチュンチュン鳴く鳥を頭につけた人。・・・想像すると笑える。

「ダン様を突き飛ばしたんですって?」
 
 目の前のチュンチュン女(もうそうとしか見えない)が言った。ダン様を突き飛ばす?聞き捨てならないワードだぞ。

「ご存じないかもしれませんけど、ダン様は国王陛下の弟君であらせられるのよ。そんな方を突き飛ばすなんてお父様に言って牢屋にぶち込んでやるわ」

 チュンチュン女の父親は警察官とかなのか?子どもの言う「親に言いつけてやる」はどうでもいいのだが、ダン様を突き飛ばすわけないだろう。何を言っているのか?

「見た方がいらっしゃるのよ」
「犯罪者なんて怖いわ」
「さっさと出ていけばいいのに」

 嫌悪感丸出しで言ってくる女子たち。それぞれが頭の上に大きなリボンや飾りをつけている。思い返したら、確かにダン様に連れ出されて足がもつれてそんなことになった。事実ではあるが、ダン様は許してくれている。しかし。

 いつの間にか教室内にはたくさんの生徒が集まっていた。机の数より多いのではないか。つまり他のクラスの人たちも来ているのだ。彼女たちは一様に私を責めてくる。出ていけとか、犯罪者とか、罵ってくるのだ。この状況、どうしたらいいのだろう。冷静に考えてしまうのだった。
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