ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「断罪ですって」
「死刑台に向かうのかしら」
「当然よ」

 キャーキャーと騒ぎ声が響く。楽しそうである。断罪とか死刑とか言っているわりに、彼女たちは笑いあっている。不愉快だが見ていると昔の自分を思い出した。そうだよ、10代女子ってそうなんだよ。何でもないことで騒いで、憂いもなく楽しそうで。自分だってそういう時があった、一生何も変わらず過ごしていけると信じていた・・・。と達観した大人の意見が冷静に浮かんでしまった。

 しかし断罪とか死刑とか物騒な言葉が簡単に出てきて、聞いているだけでウンザリしてくる。意味をわかって言っているのだろうか。死刑って人が死ぬってことだよ。断罪って言われても罪なんて犯していないよ。冤罪をでっち上げるってそっちの方が罪だよ。

 でも彼女たちは何も考えていないようだ。貴族のご令嬢って、もっと世間知らずで上品だと思っていた。オホホと笑い合って意味のない会話を続けているものだと思ったのだが、そうではなかったようだ。現代の女子高生と大差ない。もしかしたらこの世界が少女マンガの世界だからだろうか。

 そんなことを私はただ考えていたのだが、その間も彼女たちのおしゃべりは終わることがない。

「死刑ってなったら私、絶対見にいくわ」
「断首かしら、あの頭を掴んで『正義は守られた!』ってやりたいわ」
「わぁ、勇気あるぅ」

 片腕を上げて頭を持つ仕草をする女子。芝居がかった低い声を出して生真面目な顔をし、その様子を見た別の子たちは笑っている。なんか・・・貴族のご令嬢とは思えないな。

「静まりなさい!」

 ついにアメリアさんが大声で制した。途端にシーンと静かになる。静かにできるのなら最初から騒がずに大人しくしてればいいのに。叱られてシュンとなってはいるが、すぐに元に戻るだろう。10代女子ってそういうものだ。

「行きましょう」

 アメリアさんが教室を出て行くので私もついていく。廊下に出てしばらくの間アメリアさんはただ無言で歩いていた。背中から怒りを感じ、私も無言にならざるを得ない。ただ黙って後をついていく。

 しばらく歩いていたが、誰もいなくなったあたりでアメリアさんは立ち止まった。振り返ると私に向かって深々と頭を下げる。

「本当に申し訳ございません」

 えっ?いきなり何?どうしたの?私は戸惑い、ただオロオロとその様子を見るしかできなかった。

「リサ嬢が温和な方なので何もなく済ませてくださっていますが、その気になれば彼女たちが断罪されてもおかしくないのです」

 は?何言ってるの?

「リサ嬢は陛下から認められた国にとっても重要な方。いくら平民の出とはいえ、本来あのクラスに入る人ではありません。あんな・・・あんな低俗な・・・」

 そう言いながらアメリアさんは唇を噛み締める。目にはうっすらと涙が滲んでいる。え?なんでそんなに感情的になってるの?

「ここ最近流行っている低俗な本に影響を受けているのだと思います」

 アメリアさんによると、身分の高い男性に恋をした平民の女性がなりふり構わず男性に付き纏うというストーリーの本が貴族の間で流行っているそうだ。最終的には平民の女性は国外追放になったり、刑罰を受けたり、最悪な場合は死刑になったりするとのこと。

 は?それってこの世界の原作と同じだよね。いくら何でもひどすぎない?と思うのだが、平民女性が酷い目に合えば合うほど本は売れているという。

「一時期身分を超えた自由恋愛の本が流行った反動でしょう」

 その前には貴族男性が平民の女性に恋をするというストーリーが流行ったらしい。あらゆる困難を乗り越えて結ばれるという話に影響されて、結婚するなら自由恋愛などと盛り上がる人がいて貴族の間で色々と騒動が起きたそうだ。

「流行だからといって主義主張を簡単に変えてしまうのはどうかと思います」

 アメリアさんはキリリとした表情でそう言い切った。うんうん、そうだよね。と私も同意する。

「リサ嬢があんな低俗なクラスで我慢することはありません。ダン様へ訴えるつもりでいます」

 鼻息荒く決意を表明するアメリアさん。いや、そんな盛り上がらないでいいから。貴族のオホホ連中と付き合うよりはマシだと思う。鬱陶しいけど無視すればいいのだから。しかしアメリアさんは拳を握りしめ、私の意見を聞く気配はないのだった。





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