61 / 67
61
しおりを挟む
「断罪ですって」
「死刑台に向かうのかしら」
「当然よ」
キャーキャーと騒ぎ声が響く。楽しそうである。断罪とか死刑とか言っているわりに、彼女たちは笑いあっている。不愉快だが見ていると昔の自分を思い出した。そうだよ、10代女子ってそうなんだよ。何でもないことで騒いで、憂いもなく楽しそうで。自分だってそういう時があった、一生何も変わらず過ごしていけると信じていた・・・。と達観した大人の意見が冷静に浮かんでしまった。
しかし断罪とか死刑とか物騒な言葉が簡単に出てきて、聞いているだけでウンザリしてくる。意味をわかって言っているのだろうか。死刑って人が死ぬってことだよ。断罪って言われても罪なんて犯していないよ。冤罪をでっち上げるってそっちの方が罪だよ。
でも彼女たちは何も考えていないようだ。貴族のご令嬢って、もっと世間知らずで上品だと思っていた。オホホと笑い合って意味のない会話を続けているものだと思ったのだが、そうではなかったようだ。現代の女子高生と大差ない。もしかしたらこの世界が少女マンガの世界だからだろうか。
そんなことを私はただ考えていたのだが、その間も彼女たちのおしゃべりは終わることがない。
「死刑ってなったら私、絶対見にいくわ」
「断首かしら、あの頭を掴んで『正義は守られた!』ってやりたいわ」
「わぁ、勇気あるぅ」
片腕を上げて頭を持つ仕草をする女子。芝居がかった低い声を出して生真面目な顔をし、その様子を見た別の子たちは笑っている。なんか・・・貴族のご令嬢とは思えないな。
「静まりなさい!」
ついにアメリアさんが大声で制した。途端にシーンと静かになる。静かにできるのなら最初から騒がずに大人しくしてればいいのに。叱られてシュンとなってはいるが、すぐに元に戻るだろう。10代女子ってそういうものだ。
「行きましょう」
アメリアさんが教室を出て行くので私もついていく。廊下に出てしばらくの間アメリアさんはただ無言で歩いていた。背中から怒りを感じ、私も無言にならざるを得ない。ただ黙って後をついていく。
しばらく歩いていたが、誰もいなくなったあたりでアメリアさんは立ち止まった。振り返ると私に向かって深々と頭を下げる。
「本当に申し訳ございません」
えっ?いきなり何?どうしたの?私は戸惑い、ただオロオロとその様子を見るしかできなかった。
「リサ嬢が温和な方なので何もなく済ませてくださっていますが、その気になれば彼女たちが断罪されてもおかしくないのです」
は?何言ってるの?
「リサ嬢は陛下から認められた国にとっても重要な方。いくら平民の出とはいえ、本来あのクラスに入る人ではありません。あんな・・・あんな低俗な・・・」
そう言いながらアメリアさんは唇を噛み締める。目にはうっすらと涙が滲んでいる。え?なんでそんなに感情的になってるの?
「ここ最近流行っている低俗な本に影響を受けているのだと思います」
アメリアさんによると、身分の高い男性に恋をした平民の女性がなりふり構わず男性に付き纏うというストーリーの本が貴族の間で流行っているそうだ。最終的には平民の女性は国外追放になったり、刑罰を受けたり、最悪な場合は死刑になったりするとのこと。
は?それってこの世界の原作と同じだよね。いくら何でもひどすぎない?と思うのだが、平民女性が酷い目に合えば合うほど本は売れているという。
「一時期身分を超えた自由恋愛の本が流行った反動でしょう」
その前には貴族男性が平民の女性に恋をするというストーリーが流行ったらしい。あらゆる困難を乗り越えて結ばれるという話に影響されて、結婚するなら自由恋愛などと盛り上がる人がいて貴族の間で色々と騒動が起きたそうだ。
「流行だからといって主義主張を簡単に変えてしまうのはどうかと思います」
アメリアさんはキリリとした表情でそう言い切った。うんうん、そうだよね。と私も同意する。
「リサ嬢があんな低俗なクラスで我慢することはありません。ダン様へ訴えるつもりでいます」
鼻息荒く決意を表明するアメリアさん。いや、そんな盛り上がらないでいいから。貴族のオホホ連中と付き合うよりはマシだと思う。鬱陶しいけど無視すればいいのだから。しかしアメリアさんは拳を握りしめ、私の意見を聞く気配はないのだった。
「死刑台に向かうのかしら」
「当然よ」
キャーキャーと騒ぎ声が響く。楽しそうである。断罪とか死刑とか言っているわりに、彼女たちは笑いあっている。不愉快だが見ていると昔の自分を思い出した。そうだよ、10代女子ってそうなんだよ。何でもないことで騒いで、憂いもなく楽しそうで。自分だってそういう時があった、一生何も変わらず過ごしていけると信じていた・・・。と達観した大人の意見が冷静に浮かんでしまった。
しかし断罪とか死刑とか物騒な言葉が簡単に出てきて、聞いているだけでウンザリしてくる。意味をわかって言っているのだろうか。死刑って人が死ぬってことだよ。断罪って言われても罪なんて犯していないよ。冤罪をでっち上げるってそっちの方が罪だよ。
でも彼女たちは何も考えていないようだ。貴族のご令嬢って、もっと世間知らずで上品だと思っていた。オホホと笑い合って意味のない会話を続けているものだと思ったのだが、そうではなかったようだ。現代の女子高生と大差ない。もしかしたらこの世界が少女マンガの世界だからだろうか。
そんなことを私はただ考えていたのだが、その間も彼女たちのおしゃべりは終わることがない。
「死刑ってなったら私、絶対見にいくわ」
「断首かしら、あの頭を掴んで『正義は守られた!』ってやりたいわ」
「わぁ、勇気あるぅ」
片腕を上げて頭を持つ仕草をする女子。芝居がかった低い声を出して生真面目な顔をし、その様子を見た別の子たちは笑っている。なんか・・・貴族のご令嬢とは思えないな。
「静まりなさい!」
ついにアメリアさんが大声で制した。途端にシーンと静かになる。静かにできるのなら最初から騒がずに大人しくしてればいいのに。叱られてシュンとなってはいるが、すぐに元に戻るだろう。10代女子ってそういうものだ。
「行きましょう」
アメリアさんが教室を出て行くので私もついていく。廊下に出てしばらくの間アメリアさんはただ無言で歩いていた。背中から怒りを感じ、私も無言にならざるを得ない。ただ黙って後をついていく。
しばらく歩いていたが、誰もいなくなったあたりでアメリアさんは立ち止まった。振り返ると私に向かって深々と頭を下げる。
「本当に申し訳ございません」
えっ?いきなり何?どうしたの?私は戸惑い、ただオロオロとその様子を見るしかできなかった。
「リサ嬢が温和な方なので何もなく済ませてくださっていますが、その気になれば彼女たちが断罪されてもおかしくないのです」
は?何言ってるの?
「リサ嬢は陛下から認められた国にとっても重要な方。いくら平民の出とはいえ、本来あのクラスに入る人ではありません。あんな・・・あんな低俗な・・・」
そう言いながらアメリアさんは唇を噛み締める。目にはうっすらと涙が滲んでいる。え?なんでそんなに感情的になってるの?
「ここ最近流行っている低俗な本に影響を受けているのだと思います」
アメリアさんによると、身分の高い男性に恋をした平民の女性がなりふり構わず男性に付き纏うというストーリーの本が貴族の間で流行っているそうだ。最終的には平民の女性は国外追放になったり、刑罰を受けたり、最悪な場合は死刑になったりするとのこと。
は?それってこの世界の原作と同じだよね。いくら何でもひどすぎない?と思うのだが、平民女性が酷い目に合えば合うほど本は売れているという。
「一時期身分を超えた自由恋愛の本が流行った反動でしょう」
その前には貴族男性が平民の女性に恋をするというストーリーが流行ったらしい。あらゆる困難を乗り越えて結ばれるという話に影響されて、結婚するなら自由恋愛などと盛り上がる人がいて貴族の間で色々と騒動が起きたそうだ。
「流行だからといって主義主張を簡単に変えてしまうのはどうかと思います」
アメリアさんはキリリとした表情でそう言い切った。うんうん、そうだよね。と私も同意する。
「リサ嬢があんな低俗なクラスで我慢することはありません。ダン様へ訴えるつもりでいます」
鼻息荒く決意を表明するアメリアさん。いや、そんな盛り上がらないでいいから。貴族のオホホ連中と付き合うよりはマシだと思う。鬱陶しいけど無視すればいいのだから。しかしアメリアさんは拳を握りしめ、私の意見を聞く気配はないのだった。
61
あなたにおすすめの小説
冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します
みおな
ファンタジー
王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。
それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。
死んだはずの私が目覚めたのは・・・
姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました
碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。
学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。
昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!!
隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!?
何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
夢を現実にしないための正しいマニュアル
しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。
現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事?
処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。
婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる