ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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 結局最後まで、私は褒められているのか貶されているのかよくわからないまま授業が終わった。今日の授業はこれで終わりである。

 午前と午後にひとつずつ。現代日本の学校教育と比較することではないが、ずいぶんユルい教育制度である。目的は立派な淑女になる、ということなのでこれでいいのかもしれないが。私は立派な淑女になんてなれないし、なるつもりもないけどね。

「皆さま、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」

    生徒たちはそう言いながら手を振り合っている。本当にご機嫌ようって言うんだ。お嬢様言葉をマトモに聞いて感動してしまった。が、そばにいた女子たちには睨まれてしまう。

「平民の方がこちらを見ていらっしゃるわ」
「見てはダメよ、。施しを求められてしまうわ」
「キリがないわよ、さっさと参りましょう」

    あからさまに悪態をつくお嬢様方。よくまぁ色々と悪口が出てくるなぁ。これにも感心してしまう。貴族のご令嬢なんて、そもそも世間知らずの箱入り娘なんじゃないの。お人好しで悪意なんて感じたこともなく無菌状態で育つんじゃないのか。でも足の引っ張り合いとかは凄まじいものがあるのかもしれない。

 この世界では結婚相手次第で自分の生活が決まるわけだ。良いお相手を捕まえることこそ自分を守ることになるのだから、善意だけではダメなのだろうな。そう考えると悪口言うのも教育の賜物なのかもしれない。もしかしたら、悪口レッスンみたいな授業があるのか。それとも悪口辞書とか。と、おかしな想像をしてしまった。

「先生に少しおだてられたからって、お調子に乗らないほうがよろしくってよ」
「褒められるなんて金輪際ないのだから、少しくらいよろしいじゃないの」
「まぁ、お優しいわ。そんなことを言ったら本気にするじゃないの」

 そんなことを言いながら、オホホと笑い合っている。でも目は笑っていない。これが悪役令嬢ってもんか。と、お手本のような意地悪令嬢っぷりにまたもや感心した。そうでも思わなくちゃやってられない。目の前に悪意を持った人間がいるなんて、やはり堪えるのだ。

 そもそも平民の何がいけないのか。平民が働き税金を納めているからこそ貴族だって生きていけるのだ。ここは貴族しか入れない学校かもしれないが、貴族なら貴族らしく気品を保つ努力をすべきである。少なくとも悪臭漂わせているあんた達に言われたくないわ。と、心の中で私も悪態をつく。さすがに口に出すわけにはいかない。

 嫌なことはさっさと忘れて、私も帰ろう。帰って甘いケーキでも食べよう。と、私は気持ちを切り替えた。全てを忘れて自分の欲求に忠実でありたい。さぁ何にしようかな。頭のなかでケーキ屋のショーケースを思い浮かべる。ショートケーキ、モンブラン、シュークリーム、チーズケーキ・・・と考えるだけでも涎が出そうだ。

 いや、それよりも濃いめの日本茶とお饅頭はどうだろう。と、今度は老舗の和菓子屋さんを思い浮かべる。団子に口直しのお煎餅。甘いものと辛いものを交互に食べるとエンドレス。永遠に食べ続けられそうだ。クッションを出してダラダラ寝そべりながら、お茶を啜る。これはもう天国だ。

 そんなことを考えていたら、今すぐにでも帰りたくなった。このまま家に瞬間移動しちゃおうか。そのほうが簡単だし。一刻も早くここから去りたい。よし、やろう。そう思っていたのだが、教室の外が騒がしくなった。

「アメリア様ぁ」
「どうされたのですかぁ?」

 女子の黄色い声援。あぁ、アメリアさんが来たのだな。お迎えに来てもらわなくていいんだけど。ドアを見るとニコニコと笑っているアメリアさんと目が合った。その後ろには憎悪の塊になった複数人の女子生徒たち。うっわー、またもや嫌われる要素が増えましたよ。今度はどんな悪口を言われるだろうな。

「お迎えに上がりましたよ」

    ニッコリ笑うアメリアさん。

「陛下がお呼びですから」

 陛下、という言葉に周囲がシーンとなった。見渡すと、誰もが驚愕した顔になっている。

「ついに、処刑されるの・・・?」

 誰かの呟きに思わず首を振ってしまうのだった。
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