帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人

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第8章 海外へ広がる『処方』

8.10 ハヤトのスキャンダル1

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 洋子は、はっと目を覚ました。まだ、頭がぼんやりしているが、天井の豆ランプでぼんやりと部屋が明るいので天井が見える。『なんで、目が覚めたんだろう?』考えるが、確かドアがかちりとあく音だった。思ううちに、黒い影がさっと視界を横切り、何かが乱暴に首を巻く。

 首が絞められ、悲鳴も上げられない。瞬間強烈な痛みが首にはしり、意識は暗転する。黒っぽい服を着た男は、女の細い首をはがい締めにした状態で、頭を掴み強くねじる。明瞭なゴキリという音がして、顔があり得ない角度を向いて女が脱力する。

 男はアンモニア臭を放ち始めた女をそのまま横たえ、女のベッドの横にあるベビーベッドに近づく。眠っている赤ん坊の顔が、ぼんやり照らされるのを見て手をそっちに向ける。一瞬躊躇するように手は止まるが、右手で顔をふさぎ左手で体を掴む。小さな体がもがくのを感じながら右手をねじる。

 小さくゴキリという音がして、赤ん坊も女と同様に反応がなくなるのを確認して、背にかけているリュックにその体を詰め込み、再度背負う。
 『あまり、気持ちのいいものではないな』男は思いながら、ドアを静かに明けて部屋を滑り出る。老年の男女は、ガスを吹き込んで眠らせているが、男にとって静かに行動することは習慣になっているのだ。

 その日の朝、国会に行くべく準備をしているハヤトに訪問者があった。千葉県警の刑事3人である。
「二宮議員。早朝から、恐れ入ります。私は千葉県警の捜査1課の正木警部です」
 そう言って、まさに刑事らしい中年の男性が、玄関で相対するハヤトに手帳を見せる。
「はい、正木警部さんですね。どういう御用件でしょうか?」
 ハヤトが冷静に返事をする。父はすでに出かけており、母が少しハヤトから少し下がって控えている。
「はい、実は昨晩殺人と誘拐事件があり、その関係者が二宮議員を犯人と言っているのです。殺されたのは西田洋子、25歳ですが、ご存知ですか?」
 正木がハヤトの顔を見つめながら聞く。
「その名前は、知りません。ですが、そう言われるということは、私の子供を産んだという女性でしょうね。殺されたということは、背景は相当大きいということですね。まあ、ここで話すようなことではないので、上がってください」
 ハヤトは、冷静にそう言い、応接に向けて歩く。
「では、失礼します」女性が1人混じった刑事たちは口々に言って、ハヤトに続く。途中心配そうについてくる母に「母さん、心配ないから。僕が無関係なのは母さんも知っているだろう?」
 歩きながらそう言って宥めると、母も返す。
「ええ、私達と一緒だったし、夜中に出かけてもいないものね」
 応接室に落ち着いたところで、正木は一緒に来た刑事を紹介する。
「こちらは、同じ課の井川警部補と峯田刑事です」
 30代の逞しい刑事と若い女性刑事だ。
「ご苦労様です。ではお座りになって、状況を説明してください」
 ハヤトは彼らに座るように促し自らも座る。
「では、説明させて頂きます。被害者西田洋子は、1歳の息子と一緒に、両親の千葉市の自宅に住んでおり、今朝推定時刻4時頃に、パジャマの状態で首をねじり折られて殺害されております。彼女は、2階の両親の隣の6畳の部屋に住んでおり、隣の部屋の両親は多分催眠ガスにより眠らされて、気がついておりません。
 1歳の息子は連れ去られた模様で見つかっていません。朝6時過ぎに目を覚ました両親が通報して、我々が出動しました。調べた結果、犯人は居間のサッシのガラスを切り取って侵入していますが、まったく痕跡を残していません。その両親が、子供の父親の二宮さんが犯人に違いないと言い立てるものですから、無視するわけにもいかず訪問させて頂きました」

 この正木警部の話に、ハヤトは頷いて言う。
「なるほど、状況はわかりました。まず、私は昨晩この家に帰りまして、午後10時ごろまで両親と夕食を取って寝ました。ご存知だと思いますが、我が家には両親の保護のために夜間も護衛がついております。当然、彼らは私が出たのを目撃したわけはありませんが、私がその気になれば、彼らの目をくらませて出て行くことは容易です。
 また、私は、その西田洋子さんの名前も、その両親の住所も知りませんでした。しかし、彼女と子をなす仲であれば、当然知っていたでしょうね」
 ハヤトは一旦言葉を切って3人の刑事を見つめて続ける。
「つまり、状況的には私がその犯行を実行しなかったという証明は難しいですね。また、赤ん坊を連れ去ったというのは、DNA鑑定をさせないためでしょう。つまり、状況的には私は怪しまれるにふさわしい立場であり、有罪とする証拠もありませんが、無実の証明は難しいという状態です。まあ、スキャンダルの恰好のターゲットですな」

 ハヤトがさばさば言ったところに、母涼子がコーヒーを持ってくる。
「これは、ありがとうございます」
 刑事たちは礼を言って、ハヤトが促すままに考え込んで飲み始める。母はハヤトも並んでソファに座ったところで、正木が話し始める。

「おっしゃる通りなのです。本件については、本部長からもお話がありました。二宮議員は我が国の国益のために、是非とも守るべき存在というという点は、我々も承知しております。しかし、無論殺人の捜査に関しては公平に行わせて頂きます。それから、二宮さんはまだこれをご覧になっていないと思います」

 正木は、週刊Fをカバンから取り出す。
「これが、吊り広告で二宮さんのことを書いていた週刊Fです」
 正木は付箋を貼っていたページを開く。

「このように、完全に女性とその母親の言葉、さらに女性の友人の言葉に沿って記事を書いていますね。すべては、元はその女性の言うことをから来た証言で、ハヤトさんに強姦されたという趣旨の証言もそうです。そして、元の職場、つまりニノミヤ・カンパニーについては取材した様子はない。さらに、言っていることは、このように女に子供を産ませて捨てるような人間の屑を、ヒーローとして持ち上げる風潮は誤っているとしていますね。さらに、議員は即時辞職すべきと。客観的に見て随分偏った記事です。なにか、週刊Fとトラブルがあったのですか?」

 正木が言ってハヤトを見るが、ハヤトは肩をすくめて答える。
「うーん、ずっと以前にいちゃもんはつけられましたが、こっちからはないですね」
 正木は話を続ける。
「率直に言って、今回の話はうさん臭いのです。我々もあの魔法の処方を持ち込んだハヤトさんが、女性に子供を産ませることはあるかもしれないとして、それを捨てるとは考えていません。また、女性が殺されて深刻な話になりましたが、昨晩夜日本に帰ってきたあなたが、殺したとは考えていません。たとえ、物理的には可能であっても。実は今朝、西田さんに赤ん坊の遺留品をDNA鑑定させてほしいと頼んだのです。しかし、断られました。
『二宮さんが犯人というなら、鑑定でその有力な判断材料になる』と言ったのですが。娘の洋子さんがどういうことを言っていたかわかりませんが、だいぶ二宮さんに偏見というか、憎しみを持っていますね」

 正木の話にハヤトは応じる。
「殺人までやったとなると、これは私をスキャンダルに巻き込んで、日本から追い出したいのでしょうね。たぶん、実行したのはどこかの国の諜報機関でしょうから、逮捕は難しいでしょう。また、赤ん坊は、嫌な話ですが、もう処分されたでしょう。残しておいて何もメリットがありませんから。私の本当の子供だったら別ですが」

 ハヤトはそう言って、3人の顔を見て続ける。
「状況は理解しました。皆さんにお願いしたいのは、赤ん坊の遺留品を手に入れてDNA鑑定をしてください」
「はい、鑑識が入っているので、当然赤ん坊の髪の毛、またはおむつくらいは入手できると思います。DNAの採取は可能でしょう。それで二宮議員の検体を取りたいのですが?」
 正木警部の言葉にハヤトは頷く。
「では、検体を取らせて頂きます」

 女性の峯田刑事が進み出て、ハヤトの口の粘液を取る。
「それでは、朝からおさがわせして申し訳ありませんでした。二宮議員はしばらく国内におられるのですね?」
 検体を採取後に正木警部がハヤトに聞く。
「ええ、10日くらいは居る予定で、週末以外は本会議に出る予定です」

「わかりました。またお目にかかることもあるかもしれませんが、出来たら携帯の番号を教えて頂けませんか?」
 正木の依頼に答えて番号を交換する。その後、ハヤトは母に再度心配することはないと話しているところに、やってきた秘書の加山薫と共に国会に向かう。秘書の加山は、運転しながら、心配して車中ハヤトに聞く。
「ハヤトさん、警官が来たようですが、例の週刊誌の件で?」
 ハヤトは秘書にはハヤトと呼ばせるようにしている。

「うん、そうだ。あの女性は殺されたそうで、赤ん坊が行方不明らしい。彼女は両親の家に住んでいて、その両親が俺を犯人と言っているらしい」
 ハヤトが答える。
「ええ!昨晩帰ってきたハヤトさんが、すぐ殺せるわけがないじゃないですか。それに、ハヤトさんの家は護衛の人に見張られているのに」
 加山が呆れたように言う。

「いや可能・不可能でいえば、物理的には可能だろう。しかし、やったという証明もまたできないがね。しかし、マスコミや野党は、やってないことを証明しろという『悪魔の証明』を求めるのは平気だからね」
 ハヤトが平静に言う。
「たしかに、いつもそうですね。警察に逮捕されることはないでしょうが、マスコミと野党の目的は、悪印象を人々に植え付けることですからね」
 加山は言って、ハヤトの表情から内心は相当に怒っていることを察して聞いた。
「でもハヤトさんは、どう対応されますか。黙っているわけではないでしょう?」

「ああ、もちろん。今度は、すこしおかしい女の子とその赤ん坊が殺された。まあ、赤ん坊の死体は見つかっていないが、状況からして残念ながら間違いないだろう。情報機関、多分中国の仕業だな。懲りねえ奴らだ。それと、週刊Fもどうしてかはわからんがぐるだな。多分金と脅されてのことだろう。
 あの記事はいくらなんでも強引すぎる。俺を完ぺきに敵に回すのが、やばいことくらいはわかっているだろうに。よほど切羽詰まっているな。まあ、DNA鑑定で、赤ん坊は俺とは無関係という結果は出るだろう。それで、スキャンダルの半分は崩せる。もう一つの、弱いリングは週刊Fだな。俺をはめようとすることは、どういうことかということを教えてやるよ」

 ハヤトは、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。その顔を見て、加山は背筋がぞっとして、週刊Fの者達に同情が湧いてくるのを抑えきれなかった。加山は、「エヘン!」と咳ばらいをして、今日の予定を述べる。
「ええ、今日はハヤトさんが入っている防衛委員会の予算審議があります。時間は………」

 ハヤトが、国会に着くと、すでにそこには多くの記者が集まっている。ハヤトたちは、車の中で、すでにラジオの放送を聞いている。それは西田洋子の殺人と、その子が行方不明になって、その両親がハヤトを殺人犯として告発しているとしている。さらに、週刊Fの記事の詳しい内容が説明されている。

 それを客観的に聞けば、殆どの人はハヤトが犯人で間違いないと思うだろう。ハヤトが車から降りると、記者がわっと集まってくる。
「二宮議員、西田洋子さんの殺人犯、さらにそのお子さんの誘拐犯として告発されているようですが、お話を聞かせてください」

 記者たちが、ワイワイ言っているが、要約するとそういうことだ。ハヤトが記者たちに向いて、口を開こうとすると記者たちは競ってマイクを突き付ける。
「一度しか言わないからよく聞いてください。いいですか?」
 記者たちは、黙って聞く体勢に入った。
「まず、私は会社の社員だった西田洋子という女性を個人的には知りませんし、今朝まで名前も知りませんでした。従って、彼女の子供が私との間にできたということはあり得ません」

 そこで、質問を始めようとする記者に言う。
「黙って最後まで聞きなさい」
 ハヤトから、軽い威圧をかけて睨まれた記者は黙ったので、ハヤトは続ける。

「今朝、千葉県警の刑事さんたちの訪問を受けて、彼女が殺されて、その子供が行方不明になっているのを知りました。それと、その刑事さんから週刊Fの記事を読ませて頂き、全て彼女の話から出た話を根拠に、その記事が私に対して悪意に満ちた非難をしていることを知りました。
 その記事の内容は明らかに偽りなので、週刊Fについては、私自身で何らかのお礼はするつもりです。無論、覚悟の上でしょうがね。今回の一連の出来事は、出産でノイローゼになった女性が、自分の子供を、私との間にできたという妄想を持ったことが出発点です。

 ですから、女性は当然両親を始め周りの人には私から捨てられたと言いますよね。少なくとも、公平を期すなら、元の職場も取材するべきでしょう。その話を彼女が週刊誌に持ち込んだ結果、週刊誌はまともな取材もせずに、しかも私に明らかな悪意を持って記事にしたわけです」

 ハヤトは記者を見渡す。記者はまた一斉にしゃべろうとするが、ハヤトはそれを手で制止して再度口を開く。
「今朝の殺人は、また別の話です。私がやってないという悪魔の証明はできませんが、やったという証明もできませんよ。実際にやってないのですから。私はこの犯人は、明らかにどこかの国の諜報機関の者だと思っています。目的は、私をスキャンダルに巻きこんで、日本から追い出すことです。
 これについても、その国には、週刊Fと同様にきちんとお礼はします。いずれにせよ、これは私をターゲットにしたある国の諜報機関と、週刊Fの合作です。以上です。これで、十分記事にできるでしょう?私は時間がないので、ここで失礼します」
 ハヤトは、一礼してさっさと歩き去る。記者たちは口々に問いかけながら追いかけるが、ハヤトは無視する。
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