日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人

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第4章 人類の宇宙への進出

4.6 反ラザニアム帝国連合の結成2

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 エクズス星の場合は一例であり、ラザニアム帝国に隷属していた惑星については、帝国の総督府はすべて廃止され、それぞれに植民惑星を奪った場合には返還し、帝国側から賠償の申し出があった。
 その後まもなく、地球からの使者が訪れて、友好条約、通商条約の交渉を行うとともに各惑星の技術レベルの調査を行っている。帝国との賠償交渉については、そう簡単に妥結とはいかなかったが、結局は帝国の計算結果に近い額で落ちついている。

  エクズス星を始めとするこうした隷属惑星は、いずれもラザニアム帝国の最初の侵攻を刎ね付けるだけの技術基盤があったわけで、すべての場合で地球より大幅に歴史のある民族が住んでおり、ほとんどがすでに惑星単位の統一政府を持っているか、違う政治体制に別れていても2つか3つである。

 それだけに、これらの種族の惑星単位の開発状況はほぼ均一であり、こうした惑星国家に比べると地球は如何に未開で、その中での格差がひどいか明らかになってきており、他惑星のデータが公表される都度、地球の人々のため息が出てくる頻度が高まることになる。

 さらに、ラザニアム帝国の侵攻を地球の他で唯一はねのけた恒星リームスルをめぐるアサカラ星であるが、無論ここにも地球からの使者は訪れており、別の星間惑星として帝国と一定程度交流があるため、貴重な情報をもたらしてくれた。

 アサカラは王国であり、どうも遺伝子レベルで能力を高められた有能な王が統治して、諸国を武力統一して惑星統一政府を作った過程から、戦争技術には長けている。歴史的には割に新しい方であり、原子力技術の利用から5百年程度へている。

 これは、核融合の技術、ただし熱核融合の技術ももっており、さらに重力エンジンの技術はもっているが超空間の技術まではたどりついていなかった。しかし、巨大惑星人のスミラム帝国と接触したことから、超空間通信の技術を与えられた結果、誠司と同様に超空間ジャンプの技術にたどりついてすでに実用艦を運用して、探検旅行を行っている。

 しかし、55年前のラザニアム帝国侵攻に対抗した当時は、超空間利用の技術は持っておらず、帝国の先行艦隊は小型艦艇により自殺攻撃及び、ミサイル・レールガンの集中攻撃で退けている。
 その後の、隷属化の要求には断固として拒絶して、約500艦の帝国の艦隊の侵攻をうけたが、多数の艦による弾幕を張られる中で、2千機の有人艦による自殺特攻を行って、結局3百艦を撃破した上に、ラザニアム帝国側が撃った惑星攻撃ミサイルも迎撃した結果、手詰まりになった帝国側が引いたため休戦条約が結ばれた。

 惑星アサカラは、直径が地球の1割ほど大きく、その代わり比重が小さいので重力は地球と同程度であり、陸地が35%であるので、地球より3割ほど陸の面積が大きい。現在の人口は62億であるので、地球よりはゆったりとしている。

 かつては砂漠と険しい山岳の面積が大きく、耕地と居住適地は小さかったが、開発に勤めた結果、居住適地を大幅に増やして、それなりにゆったり暮らしている。
 資源については、恒星リームスルをめぐる15個の惑星とその衛星から資源を獲得して、特に不足するものは無く、GDPを計算すると、年間2百兆ドルを超える豊かな生活をしている。

 なお、ラザニアム帝国の捕虜から得た情報と、アサカラ王国から得た情報を分析した結果で帝国ルラを再評価して計算すると、ラザニアム帝国のGDPの計算には隷属惑星のものも入っており、さらに食料や木材の価格、機械製品の価格等の設定に地球と大きな差がある。
 結局、地球のGDPである八十兆ドルと比べれば7千兆ドル程度となって一人十四万ドル余となる。それでも地球と比べ百倍近くの差があるが。

 アサカラ人は、エクズス星人がドワーフであればエルフである。肌色は白く、背はすらりと高く、目は吊り上がって耳が長く地球人から見ても美形である。やはり長命の種族であって、寿命は150年を超える。
 彼らの惑星にはむろん、アサカラ王国は独立を保ったのでラザニアム帝国の総督府はなく、危うく滅ぼされかけた経験から、帝国を極度に警戒しているために、交流はほとんどなく、数年に一度帝国の使者がくる程度である。

 従って、準備機構がアサカラ星を訪れるときは、ラザニアム帝国艦をサルベージしたガイア型は使わず、ギャラクシー型エリダヌスを派遣して、何度もの通信を繰り返してようやく許可を得て、その宇宙港に着陸している。
 アサカラ王国にとっては、ラザニアム帝国以外の異星人で交流があるのは巨大惑星人のみであるが、彼らとは生活環境の大きな違いから実際の交流は通信のみである。他の酸素呼吸生物は、その存在は知ってはいるが、実際の交流はなく、地球船の着陸は異星船の着陸としては初である。

 ラザニアム帝国艦については、惑星に受け入れることはかたくなに拒み、条約の締結は宇宙の艦内に行っている。地球船の受け入れについても、いろんな意見のある中で、地球船からラザニアム帝国の軍事力を事実上葬り去ったいきさつが送信された。
 この中で、隷属している種族を解放し、かつ、帝国から隷属化による損害を賠償させることを帝国に合意させたことが知らされて、受け入れが決まったものである。この際の言語は帝国語である。

 当然、アサカラ人にとっても地球人は大きな関心の的であり、地球船エリダヌスの着陸の放映は、やはり大部分のアサカラ人が見たと言われる。アサカラ王国に対しても、やはり友好条約と通商条約締結の申し入れが行われたが、それに先立って、ラザニアム帝国の侵攻を退けた詳しい経緯、さらに帝国の軍事力を破壊した経緯と突き付けた要求と帝国の屈服が詳しく語られた。

 加えて、解放した帝国の隷属種族の惑星へ、すでに使者を送って友好条約と通商条約締結の申し入れを行っていることも説明された。アサカラ人にとっては、あの強大な帝国の軍事力の破壊した力が脅威であったし、それを背景に自分たちのみならず、解放した隷属種族に屈服を迫ることなく対等の関係を築こうする態度に感銘を受けた。

 準備機構の代表マリア・シモンズがアサカラ王に謁見している。
 最初は多くの廷臣が見守る中で、謁見の間で挨拶をしたが、すぐに別間に通され王ミズマース・ドライス・ラザームと王太子サラマース及び数人の重臣との会談である。

 王がまず口を開く。
「貴地球の人々が、ラザニアム帝国といかに戦ったかの資料は読ませていただいた。さらに、帝国の軍事力を打ち砕いて、さまざまな過酷な条件を飲ませたことは大変な成果だと思う。
 しかしながら、地球の立場では、自らを滅ぼしにかかった帝国を滅ぼしてしまうことも可能だったと思われるが、その方法は取らなかったのはなぜであろうか?」
 使節代表のシモンズが答える。

「実のところ、我々は自らの歴史の中ではそれに近いことはしばしば行っております。また、少し顔かたちが違ったり、肌の色が違ったのみで他の種族を虐げてきた歴史も持っております。
 しかし、過去は百年の中でそうした態度は否定され、その教育が徹底された結果、現在においては他の知的な存在を虐げるまたは絶滅させることは否定されております。
 実のところ、合理的な判断としてラザニアム帝国をその住民共に滅ぼしてしまうという意見もないことはありませんでした。しかし、圧倒的多数は、害のないように封じ込めるという意見でした。さらに、帝国に従属している35の種族については、解放して通商の相手にするということに対しては全く異論が出ませんでした」

「うむ、それは素晴らしい。失礼だが、まだ歴史という意味では大変短い貴種族がその段階に達しているというのは驚くべきことだ。
 我々も、帝国を住民と共に滅ぼすという方法は取りたくない。しかしながら、かの帝国の規模は驚くほど大きくその経済力は強大だ。今回貴地球が軍事的に圧倒したことは評価するが、経済力すなわち国力という意味でどう対抗すると考えられておられるだろうか?」

 王の質問に対してシモンズは答える。
「そのための、貴国訪問です。確かに、我が地球は戦争に関しては勝ちましたが、単にかれらの宇宙軍を殲滅したにすぎません。それも、ラザニアム帝国の国力に対比して極めて小さい戦力です。
 そういう意味では、彼らの国力は現状の所が殆ど損なわれていませんが、戦争に勝利した結果の帝国への命令には、彼らが他種族を滅ぼして奪った惑星を放棄するというものがありますし、隷属させた種族への賠償というものがあります。

 従って、かれらは現状で八十五個もの居住惑星が二十四個に減少しますし、隷属種族に対しては今まで搾取してきた財を彼らに返す必要があります。
 この影響はまだつかみ切れていませんが、たぶん、彼らのGDPは今に比べ半減以下になると想定しています。それに対して、私どもは貴王国も加わって頂きたいのですが、当面帝国へ隷属していた種族と全て友好・通商条約を結び、国交を深め同盟を結びたいと考えています。
 すなわち、個では帝国に国力に匹敵することはこの数百年は無理でしょうから、集団の友好国で匹敵しようというものです」

 このシモンズの言葉はアサカラ王を始めとして、政権の積極的な同意を得ることができ、友好条約・通商条約については、早くもたたき台に対する合意が得られた。
 また、こうした友好的な会議の結果、他の星系で行われたような調査がアサカラ王国でも合意され実施された。

 この、調査隊の地球への帰還に同行して、アサカラ王国が独自に建造して、ある程度の探検旅行を実施した恒星間宇宙船が地球を訪問している。
 地球としても、実際に他惑星の種族が訪問するのは初めてであるから、アサカラ星の恒星である名前を取った宇宙艦リームスル1号が銀河宇宙港に着陸した時はカメラの放列が引かれた。

 リームスル1号は全長250mで葉巻型の艦であるが、核融合炉が一旦熱を発してその熱から電力に換える方式であるため、動力部が大きいことからこのサイズになっている。
 アサカラ人が、宇宙船から現れてその姿を見せたとき、期せずして多くの人々から漏れ出た言葉は「エルフだ!」であった。

 その後、彼らの多くが王太子サラマースを中心として、あちこちを友好訪問、あるいは技術調査をして回ったが、「エルフ」という言葉が付きまとった。しかし、かれらはアサカラ星への地球人の訪問団から、エルフの様々な絵姿等を見せられ、「なるほど、本当に似ていますね。面白いこともあるものだ」と喜んでいたようだから特に問題はなかった。

 リームスル一号は1ヵ月強の滞在の後に、正使である王太子サラマースのサインによって友好条約と通商条約の締結を終えて帰っていったが、サラマース以下の視察団は、待っていた王と重臣に地球訪問の結果得られた地球についての情報の報告をしている。これは、概要として王太子が最初に報告したものが最も簡潔にして要を得ているのでそれを紹介しよう。

「地球自体のデータは皆存じているかと思うので説明はしない。まず、大きな特徴は、地球はいまだ統一政府が無く、その準備段階であるいうことで、しかも200位の国に別れている。
 さらに、国、地方、個人の貧富の差が極めて大きく、80億に達するというその人口の数割が食事すらまともに取れないという状態だ。
 リームスル一号が着陸したのは、日本という国で、なかでも豊かな国であるそうだが、家なども貧弱で中も狭いものの、なかなか人々はきちんとした印象であった。また、全体を知る意味から、貧しいという国にも訪問したが、まあ、なんというか我が国の数千年(これは彼らの年の数え方を地球の年数に換算している、以下同)前の内燃機関の開発されたころの状態であった。

 全般として、我が国に比べ大幅に貧しく、さらに全体としてのテクノロジーははるかに劣っているな。しかし、気を付ける必要があるのは、彼らはすでに核融合発電、これは核融合反応を直接電力に変換する方法であるため我々のものよりはるかに効率が良い、さらに我が国より効率の良いバッテリー・システム、重力エンジン、超空間通信および超空間ジャンプを実用化している。
 それも、この数年の間にだ。かれらが帝国を破った兵器は、超空間攻撃システムと呼ばれていて超空間をへてエネルギーを送り込むものらしいが、今から半年余り前に開発されて実用化されという。

 さすがにこの兵器のノウハウは出せないと断られたが、かれらはその惑星全体としては、我が王国に比べてその経済、社会システムやテクノロジーすべてにわたって相当に遅れている。しかし、一方でこのまさに直近で、一部に我が国を上回る技術を実用化しており、我が国がどうやってもかろうじて抵抗するしかできないラザニアム帝国の軍事力を壊滅させたのだ。
 彼らのこの数年に進歩はいかなる基準に照らしても明らかに異常である。しかし、幸いにして、かれらは他の種族を隷属化させようとする意志は明らかにない。これは、わがアサカラ王国に対してもであるから、私は彼らの言うように、対ラザニアム帝国として他のラザニアム帝国に隷属していた種族と共に連合を組むべきであろうと思う。

 その中で、彼ら地球人を我々が助けられる面は多々あろうし、彼らが我々を助けることもあろう。なにより、かれらは、間違いなく我が国が抵抗できない秘密兵器を実用化してすでに帝国の戦力を滅ぼすために使っている。
 加えて、すでにラザニアム帝国の戦闘艦を3百艦余りもサルベージして自分の戦力にして、さらに千数百の艦を同様に戦力化しようとしているのだ。彼らの言うには、これらの艦は我が国を含めて帝国に隷属していた種族に売却の意思があるという。
 こうしたことから、私の意見としては、我が国は積極的に彼らと交流して、そうすることでお互いに利益のある存在になるべきである。すなわち、我々と地球人は良き友人になるべきであると考えるのだ」

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