日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人

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第4章 人類の宇宙への進出

4.10 惑星ホライゾンへの植民1

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 ガイア・ホライゾン五十五号が惑星ホランゾンに着陸した位置は、最初は出来るだけ気候が穏やかな地域に落ち着くという方針があったため、最大の大陸である中央大陸の南緯二十五度の地点で、海沿いにある比較的大きな街の広大な広場である。

 今回のホライゾンには、旅客船が20隻すなわち幼児を入れて24万人が到着した。貨物機は、40隻着陸しており、それぞれ満載荷重として30万トンが限界のところに実際には平均10万トンであるから、400万トンの資器材及び食料が到着している。

 ガイア・ホライゾン55号が着陸した街には、他にはベトナムのホーチミンから来た旅客船1隻と、2隻の貨物機が着陸している。
 惑星ホランゾンは、地軸の傾きが15度であるため、23度の地球に比べると季節の変化は少ないが着陸の時点、かつ地点では春である。また、一日が22時間5秒程度であるため、一日を22時間とすることにしているが、今の季節は日没時間17時に対して12時であった。

 旅客型ガイヤ・ホランゾン宇宙艦については、今回の第一陣の場合は、最大5日現地に留まることが許される。これは彼らの場合には、まだ当然地上に宿舎が出来ていないため、宇宙船内を当面宿舎として使うためである。
 今後、第一陣がそれ以降の人々のための家の準備を整えた後は、地上へ着陸後は旅客が下り次第すぐに地球に引き返すことにしているが、これは宇宙艦の往復時間を5日としているためである。

 建物については、先遣隊による先乗り調査のロボットによっては爆発物等が仕掛けていないことをあらかじめ確認して、さらに一般家屋その他の商業ビル・公共ビル等についても調査をしている。
 一般人が住んでいた建物は殆ど規格化されて2階建ての5戸が1セットになったもので、一戸あたり2百㎡余りもあって、それぞれに道路に面した表・裏共に庭がついており、広い道路に面した表側にはガレージもついている。
 構造はコンクリート状のブロックつくりであり、金属の組み立て材やボルトなどで組み立てられており、大変丈夫なもののようで、殆ど劣化は見られていない。

 家具は、クローゼットなどが同じ材質で殆ど建物に作り付けのもので、床は、入り口や廊下等は滑らかで滑りにくい仕上げになっており、部屋の中は柔軟性があるじゅうたん状床材になっていて、低いテーブルはそのまま残されている。どうもこれは日本の畳にあたるもので、人々は床に直接座って暮らしていたものらしい。
 ベッドは壁から引き起こす構造になっていて、寝室はさらに物を置くところは全て壁に収納するようになっていて普段は何もない状態になるようだ。

 色については、内側は全体に淡い緑、空色、ベージュといったところで建物によってまちまちだが、外側は基本的には白に近い灰色になっているので、これは構造材の色であると考えられる。
 ただ、こういった建物であれば、家具については殆ど持ち込む必要がないため移住には大変都合が良いことが確かめられている。

 屋内設備がどうなっているかが問題であったので、これはある程度念入りに調べられた。
 まず、上下水関係は地球と同様に、屋内において形は違うが、給水栓による温冷水の給水線設備、水洗乾燥機能付きのトイレ、およびシャワー的なものがついた風呂がある。

 上水道設備は街全体で川から取水をして、ゴミなどを取る粗処理をした後に、ポンプで市内の小高い山になっている山の上にある配水池に揚水している。配水池からは配水管で各建物に対して配水して、各建物群で水を受けいれ、宅内で膜ろ過をして飲める水質の水にするようになっている。

 排水は風呂、トイレほかの各排水箇所から基本的に建物群ごとにある処理設備に流入して処理し浄化した水を雨水排水設備に流すようになっている。この処理水は、電力だけを送れば極めて清澄な処理が出来るもので地球の技術よりはるかに進んでいることを伺わせる。

 給水、排水設備双方共に、当然処理した後の泥がでてくるわけであるが、これらは、ごみとしてパックで取り出し排出するようになっている。これらの設備はそのまま残されているが、極めて洗練されたものであり、電気を供給すればすぐに機能するようなっている。

 電気については、下水と同様に各棟で独立しており、給電線はなく電池で持ってきて交換するようになっている。従って、基本的には放置された家々について電池はさすがに持ちさられているので、点検清掃して、電池は今や地球で行き渡っているSAバッテリーの百㎾容量のものを設置すれば一応住めることになる。

 飲み水については、安全を見て当面は持ってきたペットボトルを使うとしたが、シャワーと風呂、配水系統については電力を供給すれば最初から使えた。
 こうして、着陸して最初の日にはまずこうした家の点検・整備を見越して、ワンボックスの作業車が100台降ろされ、電気設備関係の技術者を中心として5人のチームが市街地に向けて散っていった。さらには、その後を20人乗りの小型バスが追いかけて行き、家の点検と基本的な清掃が終わる都度、家々に人と荷物が降ろされた。

 基本的には一戸に一家族または単身者の場合は2人であるが、支給されるのは、各々の私物のコンテナの他は、食料パック十食分と各々十リットルの水ボトルと毛布2枚である。また、その後に大人一人について、バイク一台かまたは立場によっては車が、落ち着いた家に配達された。無論これらのバイクも車両もバッテリー駆動である。

 ちなみに、建設部隊が大々的に動員されて来ているのは、こうした住居の整備のためではない。2030年には十億人になろうかという人口を養うための農業を含めた産業基盤を作るためである。
 このために必要とされる諸施設は、以下のようなものになる。
⑴都市インフラ(既存都市用):既存道路の改善、ごみの焼却溶融設備、バッテリー交換所等
⑵都市インフラ(都市拡張部・新設工場地帯用):道路・排水網、発電所・給電網、浄水場配水網、排水処理場・排水管網、
⑶工場:核融合発電機、バッテリーの充電、バッテリーの製造、モーターの製造、重力エンジン、製鉄・製鋼、非鉄金属精錬・加工、輸送機器、船舶、各種食品工場、農機具、製塩、製糖、醸造、セメント、骨材
⑷鉱山:石炭、石灰、岩塩、珪砂、砂・砂利、鉄鉱、ボーキサイト、ニッケル、マンガン、金、銀、銅、チタン、亜鉛、スズ、鉛、その他非鉄金属、
⑸農水産業インフラ整備:圃場、果樹栽培場、牧草地、畜産肥育場、漁港、海水魚・淡水魚養殖場

 5億人のいわゆる先進国レベルの生活をする人々の生活を支え、かつ地球他の惑星との交易で輸出もするための基盤を作るためには、莫大な投資と労力が必要であり、そのための大枠の計画はすでにできている。
 基本的には、惑星ホランゾンの輸出品目としては、地球で枯渇が迫っているがホライゾンには豊富なリン鉱石、マグロに似た大型魚が豊富な魚類、極めて豊富な木材等が挙げられている。

 実際に、ホランゾンからの輸出に要する費用としては、宇宙船の償却費、最小で5人の乗組員の約1週間の人件費とその経費が殆どであり、水素で足りる燃料費は殆ど唯のようなものだ。
 宇宙船は、ラザニアム帝国からの分捕り品で、サルベージ費に1隻3百万ドル、貨物船への改修費に2百万ドルかかっている。

 この艦は改装後、ホライゾン開発公社に1億ドルで売却されているが、エアバス380が2.5億ドルと言われているので、1万人もの乗客が乗せられる艦の費用としては安いものだ。

 準備機構から、同盟諸惑星への武装付きのガイア型の販売価格は50億ドルになっている。
 なお、ガイア型より劣る材料の特殊鋼材によってつくられているギャラクシー型の建造費は20億ドルであるので、容量で2倍で船体は高級合金で造られているガイア型をもし作れば実際に50億ドル程度かかるかもしれないので、あながち50億ドルの販売価格は高くはない。

 なにしろ、アサカラ王国を除けば、これらの諸国には賠償金として巨額の帝国ルラが入って来るので、この程度の支出は問題ないし、帝国の支配下に入っていた苦い経験から、競って、地球側が申し入れた戦闘宇宙艦を各十艦買い込んだものだ。
 アサカラ王国も十隻を買ったので、360隻の艦が売れて、1.8兆ドルの収入があったわけであるが、これはあっという間に所得3倍増計画の投資に消えていった。無論、乗員の訓練については、実費で地球で行ったが、これはこうした諸国の軍人との交流に大変有意義なものであった。

 話が逸れたが、要はナムたち建設技術者のやるべき仕事は山積しているということだ。
 ナム一家の引っ越しは、2日目午後であった。ナム一家は昨日艦が着陸して順番に外に出てよいとの放送があり、暗くなるまでの2時間に最下層と2階の人たち、翌日朝7時から1時間ごとに3階、4階、5階の人々が順番に外に出ることが出来るとのことである。

 しかし、何しろ各階に幼児まで入れると2500百人位の人が乗っているのであるから、出入りで30分以上はかかり、外に出るのも30分足らずであるとのことである。
 なお、床が地上15m余りの3階までは階段を使い、4階、5階はリフトを使うことになっている。
 ナム一家は2階であり、明日午後は引っ越しという知らせは受けていた。

 ナムが「折角だから、外を歩いてみようか」といい、「そうね。出てみましょう。ダンも外に出たいかな?」とにっこり息子に話しかける。ダンはよくわからないようだが「うん」と頷くので、指定時間になったとき、ダンをナムが背負って一家で階段に向かう。

 鋼製階段をホアと並んで元気よく降りるが、日が傾きかかって夕日で赤くなっている町並みの景色が見える。数㎞離れたところに十階程度の大きなビルが立ち並んでおり、近くには2階建ての40mほどの長さで繋がった白っぽい細長いビルが、周囲を緑に囲まれて数え切らないほど建ち並んでいる。

 そのビルは5つに分かれており、それを降りながら指さしてナムがホアに言う。
「あれの一区画が一戸なんだよ。1、2階で二百㎡あるらしい」
「うわあ、広い!それに庭に囲まれて!すごい!」

 ホアが感嘆する。何しろ彼らが買おうとして頑張っていたマンションは、40㎡足らずの、25階建ての一室なのだ。かれらは、その種のマンションを買った友人の家に招かれて、その真新しくて家具が揃っている部屋を見て、自分たちが住んでいた古ぼけた自分たちの6㎡の一室のみと比べて、大いに羨ましがったものだ。

 従って、かれらは降りると、なにより近くにあるその住宅に向けて歩く。広場の地面はコンクリートのような適度の粗度のある舗装で覆われている。二百mほど先に、広場の端には縁石があってその先は植樹帯になって高さ5mほどの丸く枝が張り出した樹木が5m程度の間隔で植わっている。

 住宅地は緩衝帯として植樹帯を隔てて始まっている。住宅の長辺方向にそって、幅15mほどの道路があってその両側に住宅が道路から8mほど奥まって建っており、5つある区画の各々の中央の玄関に向かって幅2mほどの歩道があって、ガレージも庭の片側についている。

「うわあ、すごい、高級住宅だね!」
 ホアが叫ぶ。そう、このレベルの家は、とてもベトナムでは彼らの手には届かない。

「いいわね、庭があって。裏にもあるんでしょうね」
 かれらは裏に回ってみるが、やはり奥行5mほどの庭がある。

「本当に、こんなところに住めるのかしら」
 ホアが夢みるように言うのに、ナムがいささか圧倒されながら言う。
「うん、そのはずだよ。もっとも買い取るか家賃を払う必要があるがね」
「ぜひ買いましょうよ。私も働くから!」

「うん、いまの収入だとそんなに高くないはずだよ。僕の今の予定されている年収の5倍くらいだと聞いている」
「その位だったら、私たちがマンションを買うより楽じゃない。うれしい!」
 そう言うホアを見て『女にとって家は夢なんだなあ』とつくづく思った。

 翌日、ナム一家は午前中に時間が指定され、その指定時間午後2時に出発できるように準備をするように指示された。受け取った3つの荷物を、借りたカートに乗せて言われたように共通スペースに待機していると、若い女性が声をかける。

「ナム・グエンさんと奥さんのホアさん、ダン君ですね?」
 ナムが頷いて返事をする。
「はい、そうです」

「では、荷物を持って、あのリフトに乗ってください」
 ホアがリュックを背負った状態で、ダンをおんぶひもで胸の前に抱え、ナムがリュッ4クを背負って荷物のカートを押して、その大きなリフトに向かう。その間にも、女性はほかの人々に声をかけている。リフトが半分くらい埋まったところで、「では、降ろしますよ」別の男性が声をかけるとリフトが静かに下がり始める。

 地上に降りたところで、またさっきの女性が、声をかける。
「じゃ、ダナンさん一家、〇〇さん、××さん、□□さん、こっちの車に乗ってください」
 皆、荷物を積んでそのミニバスに乗って出発した。
 いよいよ我が家に入れるのだ。
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