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第七十八話 勇者の……
しおりを挟む「エルナさん!本当に良いんですか?」
「何が?」
「だってケインさん1人で戦うつもりですよ!」
「……そうね。彼女がそれを望んでいるのなら仕方がありませんよ」
「気づいてないんですか!?ケインさんは僕達の為に…巻き込まない為に突き放したんですよ!」
「……そんな事分かってるわよ!でもどうしようもないじゃない!ガルドさんが死んだ時、私は自分でも恐ろしいほど冷静だった。ケインさんは彼の死を弔い、激怒していたのによ…」
エルナの顔にはいつのまにか涙が流れていた。
「私だって悲しかった……でもそれ以上に、犯人がどこに居るのかとか、何故ガルドさんが殺されたのかとか……そんな事ばかり考えてた。私はね『勇者』なのよ。この国に来てから嫌というほど色々な事を教えられたわ。魔物の倒し方も、スキルの習得方法も、仲間が死んでも冷静でいられる方法とかもね……」
「それは……エルナさんにとっては逃げ出したい毎日だったのですか?」
「…誰かの命を救う為に私は強くなっている。そう思って今日まで進んできた。だから後悔なんて無かった。でも今日知ってしまったの………私はもう、仲間の為に涙を流す事も出来ないんだ!って、いつだって私は自己中な人間で、結局誰も助けられないんだって」
「それは違いますよ。万人を救える人間なんてそれこそ御伽噺の勇者様でも無理ですよ。さあ、ケインさんの元に行きましょう?」
「でも……こんな私が彼女の側に居たら、彼女を傷つけるだけで…」
「誰だってそうですよ。エルナさんは自己中なんて言ってますけど、本当は誰よりも他人想いなの……みんな知ってますよ?僕もケインさんも…ガルドさんも」
「……許してくれるかしら」
「分かりません。それは僕が答えて良いことではないので。でもこれだけは確実に言えます。ケインさんは今貴方に謝りたいはずですよ?」
「な、なんで」
「ケインさんは僕達に被害が来ない様に僕達を突き放しました。僕達の為とはいえ、きっと酷い事をしたと思っていますよ。エルナさんは自分がケインさんの横にいてはいけないと思ってケインさんに酷いことを言って突き放したわけですよね?」
「!」
「…結局、貴方達は似た者同士だったんですよ。表面上活発なケインさんとお淑やかなエルナさんは馬が合わなさそうに見えて1度も喧嘩なんてしてません。根本的な所で通じあっていたんだと思いますよ」
その言葉を聞いてはっとさせられたエルナは涙を拭いた。
「そうね……では行きましょうか!ケインさんの元へ!」
2人は向かう。生涯の仲間の元へ……
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