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第七十九話 誰の為に
しおりを挟む戦闘が開始して15分が経過した。
「あははは、逃げてばっかりじゃ僕を倒せないよ?勝者になるんじゃ無かったの?」
「うるさいなぁ、黙ってろよ直ぐに望み通りにしてやるからな」
しかし、ケインの攻撃は全て糸で塞がれて全く通らない。
驚異的な糸を操る能力によって投石をしても全て弾かれてしまう。
「なんなんだあの糸は!」
貴金属で出来ているとはいえ、あまりに強すぎる。
「この糸には魔力を付与しているんだ。だからどれだけ攻撃しても簡単には切れないよ?魔力には魔力で攻撃しないと」
クソっ!せめて盾を持ってきていれば……
いや、たらればを言っても仕方がない
「でもケインちゃん中々耐えるね……流石最弱とはいえ四天王を倒しただけはあるよ」
「僕をあの頃と一緒にしてたら痛い目見るぜ?」
そう言いながら縮地で回避し続ける。
本体の元に行きたいが、本体の周りに縮地で飛べるスペースが無い。縮地は物質が存在する場所には移動できないからまずはこの糸をどうにかするしか無いな……
「だろうね。テクストでは全く歯が立たなさそうだ。しかし……面倒くさいなぁ、君の縮地特別だろ?普通そんな速度で発動できない。疲れるけど……奥の手を使わせてもらうよ!」
そう言うと、僕の周りに糸を張り巡らせて逃げ道を無くした。
「糸牢獄の鼠!」
「…なんだ?これ」
糸は襲ってきたりしない。ただその場に置いてあるだけだ。
そう思っていたのに…気づいたら僕の右腕が切れていた。
「グッ!」
「チッ、首は逃したか…まあ良いこれでもう戦えないだろう」
「…一体何を」
「ふふん冥土の土産に教えてやるよ。僕は糸に魔力を込めることが出来る……一つ一つの糸に多大な魔力を込めることで魔力同士が反応し合い、糸を骨組みに魔力の壁を作った。魔力は引き合わされて壁になるわけだが…その時の魔力の移動速度は僕でも対処できないほどだ。見てから反応など絶対に無理だね」
つまりコイツは見えない魔力の刃で僕を切ったということか?
すぐに切り離された右腕を拾ってくっつける。
「はっ!回復速度も異常だね」
今の僕なら回復能力のおかげで切り離された部位も時間が経たなければくっつける事ができる。
だが、流石に首を切られて無事なはずが無い。
これは不味いことになった。
何か逆転の一手はないか?
「隙だらけだよ!」
しまった!また糸に囲まれてしまった!
これは死んだな……
良い人生だった……
走馬灯が見え始めた時、
「ハアアアアアアア!」
僕の前に炎の柱が立った。
その炎に魔力は相殺されて、僕は命を救われた。
「な!一体誰が…」
「私です!」
そこに現れたのはエルナとクリフだった。
「2人とも、なんでここに来たんだ!」
「なんで?と言われましても…私達仲間ではありませんか。それとも、それ以外に何か理由でも必要ですか?」
「…コイツは四天王だ。危ないからさっさと逃げ…」
「なら尚更ケインさん1人で戦わせるなんて出来ません。私達も戦います」
「何を言っても退かなそうだな…」
「ええ、それは貴方も同じでしょう?」
「分かったよ。無茶だけはするなよ!」
「はい!」
僕達は戦う…
誰かの為に………
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