最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域

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第百六話 転落王子

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文無し王子が安宿に泊まり始めて1週間が経った。
そんなに長い間滞在出来るだけのお金はどこから手に入れたのか?
答えはお金を払っていない、だ。
リヒトはお金を払わず、自分は勇者パーティーのリーダーであり、国の第一王子だと言い、自分をただで泊めないと酷い目に会うぞ。と脅したのだ。
さらに、宿で本来有料の飯まで朝昼晩のきちんと3食貰っている。
昼は街中でナンパをして、毎晩遅くまで楽しんでから宿に戻る。
時々宿にまで連れ込んで朝まで五月蝿い。
宿の店主はいい迷惑だった。
そして遂に文句を言う。

「おい、客でもないくせに一体どれだけここに泊まるつもりだ!ちゃんとお金を払え!」

「は?僕はあの勇者パーティーのリーダーだよ?その僕に向かって随分と舐めた口のききようだね……それに、王子である僕がこのボロい宿に泊まったなんて箔がつくだろ?むしろ感謝されるべきだと思うんだけど?」

「勇者パーティーだかなんだか知らないけど、アンタのおかげでうちには苦情ばっか来てんだ」

「へぇ……なら僕は魔王討伐放棄しちゃおうかな。だって世界を救う為に日夜頑張っているのに、お金のない僕を宿に泊めることすらしないんだから」

「グッ……」

そこまで言った時、宿内にいた他の客が話しかける。

「え!貴方は勇者パーティーの一員のリヒトさんですか!?」

その客はCランク冒険者であまりリヒトの事情についても知らない男だった。

「まぁね…一員というよりリーダーってとこかな」

リヒトは調子に乗った。しかし、それが仇となる。

「あの……もし良ければ俺と戦ってもらえませんか!?どうしても勇者パーティーの方にご教授いただきたいのです」

リヒトは自分の記憶を上手いこと操る。
Dランクの魔物であるウルフにも勝てない事を忘れていたのだ。

「良いだろう。ただし、授業料としてホテルの宿代を払ってもらおう」

この時リヒトは安宿の宿代ではなく、前に行った高級ホテルの宿代を払わせようとしていた。
剣術指導なんて面倒くさいと思いながらも、これで新しい寄生先を見つけたぜ、と喜んでいたのだ。

勝負は宿の裏で行われた。
リヒトが真っ先に攻撃を仕掛けて剣を振りかざすが、Cランク冒険者の彼にもその軌道ははっきり見えた。
難なく弾いてカウンターを食らわせる。
それで終わりだった。

「は?……あの?リヒトさん、僕は貴方に教わりたいんですけど……なんで本気出してもらえないのですか?」

「う、五月蝿い!お前今ズルしたな!?一対一の勝負でズルをするなんてこの外道が!」

リヒトは怒るが、当然ズルなんかしていない。
納得もいかずに怒られている状況に嫌気がさして、Cランク冒険者君は帰ってしまった。
帰り際に安宿の宿代1日分を置いてくれたのは一応剣術指導をしてもらったから……ということだろう。

「クソが…今に見てろよどいつもこいつも王子である僕を舐めやがって…」

地べたに這いつくばる王子に店主が言う。

「はい、本来ならもっとするが、特別にこれだけで今までの宿代と認めてやるよ。王子様?」

リヒトは有り金を全て店主に持っていかれて本当に文無しになってしまった。
もうどこにも泊まれないし、国王は王都に帰してくれない。
リヒトはこれから下級冒険者の中でも更に低い、底辺冒険者として公共トイレの掃除や、街のゴミを運んで捨てに行く仕事を主にする事となるが、それはまた別の話だ。







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