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第百五話 文無し王子

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「なんなんだ!アイツらはこの僕がパーティーメンバーだというのに勝手に抜けやがって!」

リヒトは付き人に当たり散らしていた。
実の所言うと、リヒトは王城から追い出されていたのだ。
王子らしからぬ態度にしょっちゅう他国の姫や令嬢に手を出しては外交問題になりそうになっていた。
だから、勇者と一緒に魔王を倒してこいという任務を与えて、暫く世界を見て回ったら考え方も変わるだろうという国王の計らいだったのだ。
一応付き人を1人つけたが、金は無駄遣いしそうなので渡さなかった。
今のリヒトには王族としての力はないと言ってもいい。
国王に頼った所で無視されるだけなのだ。
そうとは知らずに自分の腕を見込まれて勇者パーティーに入れられたと思っているリヒト。
彼はこの後、たった1人になった元勇者パーティーで最強の名を勝手に名乗る事になる……


街に戻ったリヒトは金も無いのに高級料亭に入って高めのコースを頼む。
食べ終わった後、懐から金を出そうとしてようやく金が無い事に気づく。

「チッ、そういえば昨日ギャンブルで溶かしたんだった。おい!今日はつけで頼む」

「かしこまりました」

リヒトはここのところ毎日通っていたので、信頼されていたのだ。
今日払わなくてもきっとそのうち払ってくれると……

料理を食べ終わったリヒトはいつもの高級ホテルに向かう。
すると、ホテル前で引き止められた。

「お客様、先に宿泊料を払っていただかないと…」

「なんだと!はじめに何日か分払ったでは無いか」

「ええ、ですがそれは先日で終わりです。宿泊を延長なさいますか?」

「チッ、分かった……っと今は金がないんだった。おい、ツケで頼む」

「お客様……料亭ではないのですからホテルでツケなど出来るはずないでしょう」

「うるさい!なんとかしろ」

「どうにもなりません。お引き取りを……これ以上ここで迷惑行為をするなら街の警備隊を呼びますよ?」

「僕の何が迷惑だと言うのだ!」

「ホテル前で大声を上げて怒鳴るなど迷惑以外の何者でもないでしょう。もし泊まりたいと言うのであればきちんと代金を揃えからで」

「……顔は覚えたからな。精々数日ここで惨めに働いているんだな!」

リヒトは仕方なく街の安い宿に泊まった。

「なんで王子である僕がこんな目に……」




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