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外伝33話 何か
しおりを挟む「……皆さん、そろそろ着きます」
しばらく黙っていたルーナが口を開けたのは、ガルドと戦った更に30分後であった。
「ようやくか」
「しかし……彼の方に会うことが出来るのはケイン、貴方だけです。申し訳ありません他の方には別の場所にて待っていてもらいます」
「分かりました」
「はい」
「分かった」
恭弥、虎鉄、孝勇の3人がこれに承諾し、神鈴木と会う事になったのは僕だけとなった。
「着きました。少し視界が悪くなりますのでお気をつけて」
突然のフラッシュ……
しかし、すぐに収まると、そこには恭弥達が住んでいた現代日本に近しい風景があった。
だが、少し……いや、かなり違う点がある。
ルーナに連れられてやってきたのは白黒の世界だったのだ。
パッと見た感じでは似ているのだが、全ての色がくすんでいて何だか気持ちが悪い。
「ではケイン、私についてきて下さい」
ルーナが歩き出すと、景色が一瞬で……物凄いスピードで変わっていった。
「何だ……これ?」
「私のスキルの一つですよ。私が歩けば世界も動くのです。このスキルの対象に選ぶ相手はオンオフ可能……今オフにしているのはケイン、貴方だけです」
「スキルの一つって事は……他にも持ってるの?」
「ええ……そこら辺も含めてお話ししましょう。彼の方ににね」
どうやら話している間に目的地に着いたようだ。
辺りの景色は普通の住宅街で、目の前にはボロっちいアパートがあった。
「この中です。彼の方がいるのは」
「この中……ですか?本当に?」
「疑いたくなるのは分かりますが此処ですよ。ここの6号室です」
正直半信半疑のまま僕は6号室の扉を開けた。
彼がいたのはトレカやら漫画やらが結構散らかった部屋で、一見……否、普通に普通の部屋であった。
キッチンには料理をした形跡が無く、カップヌードルやお菓子のゴミがまとめられていた。
カーテンは閉まっていて、だらしなくソファで眠っている彼の髪の毛はボサボサで、まるで彼が神だなんて誰も信じなさそうだ。
事実、僕も殆ど信じていない。
……が、
本能が
告げるのだ。
この人が
僕達を
作った
それを理解した瞬間、今まで何処かへ行方不明になっていた緊張感が一気に僕を押し潰してきて、立っているのがやっとになった。
途轍もない違和感であった。
何の変哲もないのに
強くも怖くも無いのに
測れない何かを彼が持っていたのだから。
「はぁ……、はぁっ……」
「落ち着いてくださいケイン、彼の方は貴方の敵ではありませんから」
「はぁ………」
「ケイン、こっちを向いて下さい『リラックスバージョンX』!」
ルーナの魔法によってなんとか落ち着きを取り戻したケインは、神鈴木の方を改めて見つめる。
相変わらず寝ているが、とても生物とは思えない存在だ。
ステータスが100万とか1000万とか、そんなレベルの話ではない。
きっと100億あってもこの人には勝てない。
そう思わせるだけの何かが、彼にはあった。
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