キスから始まる異世界ハーレム冒険譚

楠富 つかさ

文字の大きさ
9 / 29

第九話 商業都市

しおりを挟む
「ここが……商業都市トルキガ……」

コーゼスの村から転移してやってきたのは、石造りの家と道と橋による統一感が美しい商業都市。トルキガは水運も頻繁に使うため、水路が整備されており、その水路で売り買いをする者もいれば、渡し舟の船頭として生計を立てる者もいるらしい。

「まずは武具屋へ行きましょうか」

私たちが転移したのはトルキガの南部。ここは商人達の屋敷が多い地区だそうだ。目指すは西部。ニシェクとは街道一本で直通のため、工業製品を主に販売している地区となっている。

「短槍がいいかな? 両手槍がいいかな?」

隣を歩くレリエと少し後方にいるステラに問いかける。

「両手槍だと術の印を組むのが難しいと思います」

生活魔術ならまだしも、戦闘で行使するような術は印を組んだり詠唱をしたりしないと、発動することは出来ない。……まだ印を組むような術を習得していないのだが。

「いや、両手の方がいいな。バランスも取りやすく振り回しの威力もある。前衛はあたしが出る。ナイフくらい買ってくれるんだろう?」
「え? あ、はい。もちろんです!」

私が少し悩んでいる間に、ステラが意見をくれた。珍しく積極的な姿にレリエも少し驚きを隠せていない。その後、数件の武器屋を回り槍一振りとナイフ三本購入した。一本は私の接近戦用であり、ステラの予備を含めて三本購入だ。まぁ、少し安くなるというのもあったが。

「いやぁ……私もいよいよ武器持ちだね」
「あんたら、よくここまで旅してきたな」
「お姉ちゃんを護るのは妹の役目なのです」

そんな私たちは今、トルキガの東部へ移動している。東部には宿屋や商人向けの娯楽施設がある。レリエの知識にはその娯楽が何かはなかったが、ひょっとしたら私の欲しいものかもしれない。ちなみに、北部は農業製品が売っているのだが、需要と供給の関係上、コーゼスの村の方がかなり安い。

「部屋、ベッドは1つでいいですか?」
「……あたしはソファで寝るからな」

ということで、ダブルベッドの置かれた部屋を取った。お値段は3人で銀貨6枚。コーゼスでの宿泊費が二人で銀貨3枚だったことを考えると、割高な気がする。

「まぁ、部屋は広いけどさ」

コーゼスの宿屋のように質素という印象は受けないトルキガの宿。これでもスタンダードな部屋のはず。ランクを上げたらベッドに天蓋とかあったりして。

「二人とも、これからのことで相談があるの」
「なんでしょう?」
「んだ?」

部屋に設えてあるテーブルで向かい合う。少し口が渇く。

「私の力は、女の子にキスしてもらわないと発揮しない」
「そうですね」
「難儀だよな」
「そこで、だよ……」

後ろめたいからか、どうしても声にならない。

「そこで、だ」

ごほんと咳払いをし、覚悟を決める。

「手っ取り早く力をつけるための手段が一つだけある。……お金を払って、してもらう事だ」
「お金……ですか?」

頭に?を浮かべたレリエに鸚鵡返しをくらう。彼女が風俗の事を知らない事はわかっている。私の頭に風俗嬢という表現がないからだ。言葉を知らないなら、概念も同様に、だろう。

「職業として、お金を貰ってそういう事をする人達がいるはずなの。そういう人達なら、事情を話さなくてもお金でなんとかできると思うの」
「それって、キスで終わるのか?」

少し顔を赤らめたステラが問いかける。彼女なら裏事情も少し知っているのかもしれない。確かに、キスで終わる……終わらせるつもりはない。男だった頃から風俗には一度行ってみたいと思っていた、なんて絶対に言えない。

「お金を払えば、お姉ちゃんと私がしているようなことが出来るんですね。それはいいです!」

緊張した私を、レリエの言葉がほぐす。レリエはキスをすごく尊いものだと思っている節がある。だからこそ、抵抗はないのか? でもまぁ、何の抵抗も示さないのは逆に悲しいものがある。

「えっと、お金はどのくらい必要なのでしょうか? 金貨を持つべきなのでしょうか」

……相場が分からない。目線でステラに訴えかけるが。

「金貨を持ったほうがいいんじゃないかな?」

と、ひどく適当な答えをくれた。まぁ、純情な彼女がいくら盗賊稼業に手を染めていたからとはいえ、そこまで裏な世界を知っているわけではないか。

「えっと、金貨10枚入れておきました。どうぞ」

そう言って財布を渡すレリエ。

「レリエは……抵抗がないのか? お金で女の子をどうこうしようっていうのに」
「違法……なんですか?」
「そうでもないさ。コーゼスみたいな村ならまだしも、この規模の街ならあって当然さ」

レリエの問いに答えたのはステラだった。コーゼスに居つく前はあちこちの街を回っていたらしい彼女。風俗に身を落す少女を見てきたのかもしれない。

「じゃ、じゃあ。ちょっといってくるね」
「はい、お気をつけて」
「はしゃぎすぎんなよ」

二人に見送られて部屋を出る私。そういえば、レリエとステラを二人きりにするのは初めて? ちょっと心配だけど……しょうがないよね。連れて行くわけにもいかないし。ドアが閉める音を聞きながら、私は道を尋ねるべく宿の一階へ移動するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...