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第一部
公爵からの連絡
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「そうです、フレドリック様とリオが襲撃に。ええ、はい……。は、なんですって?」
電話口にケイとハント代行官が立って小さく話しながらウォルターズ公爵と色々と話していた。
リオはその様子を目の端に入れながら、大きくため息をついた。
フレドリックと東屋で話し込んだ後、屋敷に帰ろうとしたらパァンである。この時代に銃の知識を持ち込んだかつての魂の迷い人を殴りたい。プラスチックが存在しないから木と金属で作られていて、リオが育った時代のような精度と射程距離はないし、所持や購入にも許可が必要な状態であるが、どこの世にも抜け道は存在するのである。
最初は公爵家の長男であるフレドリックを狙っているものだと思った。フレドリックもそう思ったのだろう、リオを危険から遠ざけるように、自分が盾になるような形で屋敷までの避難経路を提案してきた。
しかしである、銃弾はフレドリックだけではなく、リオをも狙ってきた。
リオが狙われるとしたら原因は2つ、どこからか旧レオンだということがばれたか、それとも魂の迷い人であるということがバレたかである。どちらも知る人は少なく、情報は厳重に王宮に管理されているが、所詮は人がするものだ、どこからか漏れる可能性は充分あった。
そのどれか、それともフレドリックとリオ、複合的なものなのか、予想がつかなかった。だから直接ウォルターズ公爵と話したいのだけれども、ここにフレドリックがいる以上、混み入った話は難しいだろう。電話が盗聴されている可能性もある。少なくとも、今はフレドリックに正体を明かす必要はないだろう。
考え込んでいると、ウォルターズ公爵家の侍従長であるマイルズがフレドリックに耳打ちをした。
「そうだな……。――リオ、服を着替えに行ってくるよ。すぐに戻ると二人に伝えてくれ」
「わかりました」
どうやらここからフレドリックを連れ出してくれるらしい。フレドリックの後からついていくマイルズが、リオを振り返ってウインクして執務室から出ていった。
その様子を室内にいたハント代行官とケイとリオが黙って見守り、そして入口に立っていたアニーが廊下をしばらく窺って一つ頷いた。その合図を見て、リオは立ち上がり電話へと走って受話器へ駆け寄る。
「公爵!!何かわかりました!?」
『そっちの事情は聞いた。関係があるかはわからないが……リオ、王宮から収集がかかった』
「はい?」
『どうやらカレッジ領に発表していない未成年の魂の迷い人がいると漏れたらしくてね、どこぞの馬鹿伯爵が領運営代行して収入を得ているうえに魂の迷い人まで抱え込んでいるウォルターズ公爵――私がずるいと、不公平だと申し立てたらしくてね……』
「はぁ?なんですか、それ」
『ほんとそれだよ。その申し立てを重く見た王宮が魂の迷い人を全員収集することにした』
「それはあれですか。迷い人の意志じゃないことをうだうだ言うなってその馬鹿伯爵に言い渡すためですよね?」
『もちろん!!何度王宮に呼び出して怒ってもだめだったからもう魂の迷い人一同から通告してもらおうってことになって。それで、その場だけなんだけど、なんで君がカレッジ領にいるのか、真実を言ったほうがいいかもねって、陛下が』
「ええ……その場の秘密は守られますか」
『うん、度重なる無礼があるからそのあとは伯爵は騎士団の監視付隠居させるし、跡を継ぐ長男は子爵に降爵される予定だよ』
魂の迷い人の意志は国を害さない限り、誰よりも尊重されるし自由なのである。それをいるからずるいなどと言われても困る。せっかく殺したリオンの存在をここで出すことになるなんて思わなかった。
「……わかりました。――それで今回の襲撃は?」
『こちらからも騎士団からも調査員を送ったから一週間くらいで何となく判明するかもしれない。だからリオは申し訳ないけどフレドリックとこっちの領地に寄って、準備ができ次第、私と一緒に王都に向かおう』
「お手数をおかけしますがよろしくお願いします……」
困ったことになった。
「どうします?とりあえずターゲットにされた理由がわからないから、という名目でウォルターズ領に行きますか」
リオは表向きただの平民の子供である。公爵領で保護するという名目はちょっと大げさではないだろうか。
「その旨はフレドリック様も提案していたので間違いないかと」
「マイルズさん」
「坊ちゃんは風呂に入れてきました。まだ少し猶予があるでしょう。旦那様とお話してもよろしいでしょうか」
戻ってきたマイルズが電話を握ったままのハント代行官とかわる。
いくつか話すとハント代行官と確認して電話を切った。
「それでは、フレドリック様にはリオくんが襲われた理由がわからないから公爵領で保護する、という形で連れて行きましょう。――実は襲われるか襲われないかの段階で、連絡が入っていたのです」
「今日いきなり王宮から連絡が入ったらしくて。その相談をしていたらあの銃声だったんですよね」
なるほど、歓談中にケイが呼び出されたのはそれが原因だったのだろう。きっとマイルズもその電話を受けた時にここにいたのだ。
タイミングが良すぎる気がしないでもないなぁ、とリオも思う。リオが思うってことはウォルターズ公爵はもっと疑っているだろう。公爵が『どこぞの馬鹿伯爵』と言っていた。公爵がそういうふうに言う伯爵家を、リオは一家しか知らない。
「はあああ、いつまでたっても問題ばかり運んでくるな、あそこは」
カレッジ家に縁がありながらその一切を絶たれている伯爵家と言ったらあそこしかないだろう。
きっとあれだ、襲撃者が出るような危ない土地にいないで、『自発的』にうちの領へいらっしゃいって勧誘するつもりだ。それならあの襲撃もわかる。フレドリックが襲われたのは、警告かうさ晴らしか。
「……魂の迷い人を引っ張り出せばどうにかなると思っているのだろうけど……引っ張り出したのが運の尽きだ、完全に鼻っ柱をへし折らないと……」
そう呟いたリオに、その場のすべての人間が頷いた。
電話口にケイとハント代行官が立って小さく話しながらウォルターズ公爵と色々と話していた。
リオはその様子を目の端に入れながら、大きくため息をついた。
フレドリックと東屋で話し込んだ後、屋敷に帰ろうとしたらパァンである。この時代に銃の知識を持ち込んだかつての魂の迷い人を殴りたい。プラスチックが存在しないから木と金属で作られていて、リオが育った時代のような精度と射程距離はないし、所持や購入にも許可が必要な状態であるが、どこの世にも抜け道は存在するのである。
最初は公爵家の長男であるフレドリックを狙っているものだと思った。フレドリックもそう思ったのだろう、リオを危険から遠ざけるように、自分が盾になるような形で屋敷までの避難経路を提案してきた。
しかしである、銃弾はフレドリックだけではなく、リオをも狙ってきた。
リオが狙われるとしたら原因は2つ、どこからか旧レオンだということがばれたか、それとも魂の迷い人であるということがバレたかである。どちらも知る人は少なく、情報は厳重に王宮に管理されているが、所詮は人がするものだ、どこからか漏れる可能性は充分あった。
そのどれか、それともフレドリックとリオ、複合的なものなのか、予想がつかなかった。だから直接ウォルターズ公爵と話したいのだけれども、ここにフレドリックがいる以上、混み入った話は難しいだろう。電話が盗聴されている可能性もある。少なくとも、今はフレドリックに正体を明かす必要はないだろう。
考え込んでいると、ウォルターズ公爵家の侍従長であるマイルズがフレドリックに耳打ちをした。
「そうだな……。――リオ、服を着替えに行ってくるよ。すぐに戻ると二人に伝えてくれ」
「わかりました」
どうやらここからフレドリックを連れ出してくれるらしい。フレドリックの後からついていくマイルズが、リオを振り返ってウインクして執務室から出ていった。
その様子を室内にいたハント代行官とケイとリオが黙って見守り、そして入口に立っていたアニーが廊下をしばらく窺って一つ頷いた。その合図を見て、リオは立ち上がり電話へと走って受話器へ駆け寄る。
「公爵!!何かわかりました!?」
『そっちの事情は聞いた。関係があるかはわからないが……リオ、王宮から収集がかかった』
「はい?」
『どうやらカレッジ領に発表していない未成年の魂の迷い人がいると漏れたらしくてね、どこぞの馬鹿伯爵が領運営代行して収入を得ているうえに魂の迷い人まで抱え込んでいるウォルターズ公爵――私がずるいと、不公平だと申し立てたらしくてね……』
「はぁ?なんですか、それ」
『ほんとそれだよ。その申し立てを重く見た王宮が魂の迷い人を全員収集することにした』
「それはあれですか。迷い人の意志じゃないことをうだうだ言うなってその馬鹿伯爵に言い渡すためですよね?」
『もちろん!!何度王宮に呼び出して怒ってもだめだったからもう魂の迷い人一同から通告してもらおうってことになって。それで、その場だけなんだけど、なんで君がカレッジ領にいるのか、真実を言ったほうがいいかもねって、陛下が』
「ええ……その場の秘密は守られますか」
『うん、度重なる無礼があるからそのあとは伯爵は騎士団の監視付隠居させるし、跡を継ぐ長男は子爵に降爵される予定だよ』
魂の迷い人の意志は国を害さない限り、誰よりも尊重されるし自由なのである。それをいるからずるいなどと言われても困る。せっかく殺したリオンの存在をここで出すことになるなんて思わなかった。
「……わかりました。――それで今回の襲撃は?」
『こちらからも騎士団からも調査員を送ったから一週間くらいで何となく判明するかもしれない。だからリオは申し訳ないけどフレドリックとこっちの領地に寄って、準備ができ次第、私と一緒に王都に向かおう』
「お手数をおかけしますがよろしくお願いします……」
困ったことになった。
「どうします?とりあえずターゲットにされた理由がわからないから、という名目でウォルターズ領に行きますか」
リオは表向きただの平民の子供である。公爵領で保護するという名目はちょっと大げさではないだろうか。
「その旨はフレドリック様も提案していたので間違いないかと」
「マイルズさん」
「坊ちゃんは風呂に入れてきました。まだ少し猶予があるでしょう。旦那様とお話してもよろしいでしょうか」
戻ってきたマイルズが電話を握ったままのハント代行官とかわる。
いくつか話すとハント代行官と確認して電話を切った。
「それでは、フレドリック様にはリオくんが襲われた理由がわからないから公爵領で保護する、という形で連れて行きましょう。――実は襲われるか襲われないかの段階で、連絡が入っていたのです」
「今日いきなり王宮から連絡が入ったらしくて。その相談をしていたらあの銃声だったんですよね」
なるほど、歓談中にケイが呼び出されたのはそれが原因だったのだろう。きっとマイルズもその電話を受けた時にここにいたのだ。
タイミングが良すぎる気がしないでもないなぁ、とリオも思う。リオが思うってことはウォルターズ公爵はもっと疑っているだろう。公爵が『どこぞの馬鹿伯爵』と言っていた。公爵がそういうふうに言う伯爵家を、リオは一家しか知らない。
「はあああ、いつまでたっても問題ばかり運んでくるな、あそこは」
カレッジ家に縁がありながらその一切を絶たれている伯爵家と言ったらあそこしかないだろう。
きっとあれだ、襲撃者が出るような危ない土地にいないで、『自発的』にうちの領へいらっしゃいって勧誘するつもりだ。それならあの襲撃もわかる。フレドリックが襲われたのは、警告かうさ晴らしか。
「……魂の迷い人を引っ張り出せばどうにかなると思っているのだろうけど……引っ張り出したのが運の尽きだ、完全に鼻っ柱をへし折らないと……」
そう呟いたリオに、その場のすべての人間が頷いた。
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