贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希

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第二部

閑話・公爵家の若手侍従2

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 そうして、数週間が過ぎ、ようやく待望の客人が訪れた。一週間ほど前まで公爵である旦那様とその長男であるフレドリック様がピリピリとしていたが、ある日を境にそのひりつきがおさまったので、おそらく問題が解決したのだろう。


「リオ様、お久しぶりです、お待ちしておりました」

「お久しぶりです、執事長、ハンナさん!! お世話になります」


 王宮に公爵とフレドリック様自ら出向き、迎えに行ったリオ様が来たのはとある日の昼下がりだった。

 フレドリック様にエスコートされるように玄関ホールに入ってきたのは十五歳を迎えるには少し小柄な少年だった。平民と言われると品があり、貴族としてはあまりにも気安そうな雰囲気。おそらく七年前までの滞在で面識のある使用人はみな笑みを浮かべていた。それに関しては少々居心地が悪いらしく、ちょっと笑顔が強張っていたのはご愛敬である。

「ではリオ様、お部屋にご案内いたしますね」

 ハンナに目配せされて、コリーとミック、メアリーとモイラもその後ろに従った。気安く話すハンナとリオ様の後ろを歩きつつ、流石王宮のアイロン係の腕はすごいなぁとその小さな背中を眺めていた。

「うわ、変わってない!!久しぶり過ぎる!!」

「リオ様が大きくなった分、お部屋も狭く見えてしまいますね。リオ様、こちらがこれからリオ様の滞在時にお世話いたしますものたちです。ご紹介しますわ」

 四人を簡単に紹介すると、ハンナが部屋を出て行った。

「うーん、四人もつけてもらっちゃって悪いな」

「普段つきますのはメイドと侍従一人ずつです。日々交代制となっています」

「そうなんだ」

「お部屋のことはご存じだと思いますが、新しく用意したものがありますから、ご案内いたしますね」

 七年前から水回りが変更になっているらしく、小さな案内にも驚いたり頷いたりしてくれる。いつの間にかメイドも侍従も笑顔になっていた。どうやら聞いていた通り、随分と気安い性分らしい。

「いや、でもこの服は多すぎ……。え、うそでしょ一年分あったりする?」

「ええ、念のためご用意するようにと」

「俺、成長期なのに……」

 部屋の案内と荷解きが済むと、ミックとモイラは部屋を辞した。コリーとメアリーが残っている。コリーが付き添って部屋着に着替えている間に、メアリーがお茶を入れたので、リオ様はそれを飲みながらやや疲れていた。

「いやでも昔とほとんど変わらなくてほっとした。王宮の客間って、調度品が全部「私は高いです!!」って主張しててあとなんか輝きが強すぎて……」

「そんなにですか?」

「そんなに。王宮に住んでる同類の部屋は色々と家具を入れ替えてだいぶ落ち着いてるんだけど、客間はどうしてもね……」

「このお屋敷にもそういうものを好む方が来た時用のお部屋がありますけどね、初めてこのお屋敷に来た時は思ったよりシンプルなお屋敷に驚いたものです」

「やっぱり?そうだよね。多分シンプルに見えてキンキラに劣らずそれ以上の銘木とか使い放題のものすっごく高価なものだろうと思うんだけどそれでも視覚情報は大事」

 そう言ってリオ様が使っている茶器も、魂の迷い人が好むものを長年追求してきた商会が出している高級なシリーズものである。魂の迷い人に関わる商品はそれなりに貴族にも平民にも売れるので商会は商品開発に積極的だ。たまに新製品が出ると新聞にニュースとして出るほどである。

「リオ様の滞在期間は決まっていないとのことですが、既に決まっている予定などありますか?」

「うーん、前に来たの七年前だからね。ちょっと数日はお屋敷でゆっくりさせてもらおう……。王宮にいた時はランチにお茶にディナーと引っ張りだこだったんだ……」

「ああ……」

 コリーとメアリーは目を見合わせた。私的とはいえ王宮なら着せ替え人形状態で、なおかつ堅苦しいものだったのだろう。今もソファに背を預けて、ちょっとお行儀が悪い。しかし、ここは彼の私室なのでそれが許される場所である。

「では私たちは控えの間におりますので何かあればすぐにお呼びください」


 客間に隣接して、なおかつ廊下に出なくても客間との出入り口がある侍従控えの部屋がある。ここだけでも寝泊り出来るほどのものだ。小さなキッチンとデスク、そしてベッドまである。コリーはそこに下がり、メアリーは部屋を辞した。部屋の主に呼ばれるか、次の予定が入るまで、こちらで細かな仕事をこなすのだ。
 もちろん廊下にも面しているので、部屋の主に直接言うほどのものではない連絡はこちらに来る。
 しばらく机仕事をしていると、ノックとともに先輩侍従が入ってきた。フレドリック様付の侍従ケネスである。

「リオ様は?」

「お部屋でおやすみです。随分とお疲れのようだったので」

「そうか、夕食の時間はこちら。服はこちらのメモの物を。フレドリック様が迎えに来るから少し前に着替えだけは頼む」

「わかりました」

「どうだった?客人は」

「気安い方でした。少なくとも高圧的とは正反対の方です」

「そっか。まさか迷い人様をお迎えすることになるとはな……さすが公爵家というべきか」

「本当に。おとぎ話の中の登場人物だと思っていました」

「やっぱりそうだよなぁ……。っと、じゃあ夜はそういうことで」

「はい、お知らせありがとうございました」


 先輩を見送って、独りになってほっと一息つく。隣の部屋は小さな音すらしないので、きっとおとなしくしているのだろう。確かに公爵家の侍従とはいえ、王宮は身構えてしまう。平民ならなおのことだろう。リオ様をギリギリまで休ませようとコリーは時間を逆算するのだった。



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