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第二部
帰路と岐路
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※本日2話同時更新していますのでご注意ください。
「え?ちょっとまってどういうこと?」
ウォルターズ領での二週間の勉強滞在ののち、リオはようやくカレッジ領に帰る日を迎えた。
長く一緒にいたフレドリックともお別れか、と思ったらフレドリックも旅装である。気づけばコリーとミック、そしてフレドリックの侍従であるケネスも同じく旅装だった。そして馬車が大きいし多い。
「やあ、リオ。これからよろしく頼むよ!!」
「え、ええええ?」
思わず公爵を見ると、公爵もにっこりと笑った。公爵夫人だけが頭が痛いとばかりに額を抑えている。
「フレドリックはしばらくカレッジ領で学ばせることにしたよ。ハント代行官に学びつつしばらくカレッジ領に住むことになる。ハント代行官たちには既に連絡済で、準備も済んでいることだろう。よろしく頼むよ。リオの今後の勉強もフレドリックとケネスが見てくれるから、大いに頼るといい」
「ええええ……」
リオを驚かすためにあえて全員が黙っていたということらしい。あれよあれよという間にリオはフレドリックと同じ馬車に乗せられる。同じくケネスとミックも乗って来ていた。コリーは後続の荷物を積んだ馬車に乗ったようだった。
「リオ、ちゃんと嫌なことは嫌というのよ。どうしても我慢ならなかったらこちらの屋敷においでなさい」
公爵夫人が窓から上半身を出したリオの両手をその嫋やかな両手で握りしめた。どうやらこの中でリオの味方は夫人だけのようだ。その夫人も公爵に口止めされて渋々黙っていたのだろう、その表情が物語っていた。そんな美しい布陣を励ますようにリオもその手をぎゅっと握りしめる。
「ありがとうございます、ライラが帰ってくるころには絶対遊びに来ますね!!」
「ええ、そうして。楽しみにしているわ」
ようやく夫人の顔に笑顔が見える。かなり疲れてはいそうなので、この後ゆっくり休んでほしい。
二人がそっとその手を放し、リオが乗り出した身体を馬車の中に引っこめると、すっと公爵が手をあげた。
「では、励めよ」
「行ってきます」
「お世話になりました」
そうしてリオは混乱の中、ウォルターズ領を後にしたのだった。
「聞いてないよ、こんなこと」
「言ってなかったからね。王宮からの許可が出るのに時間がかかったのもある」
目の前で涼しい顔をしているフレドリックは困ったように眉を下げて笑った。器用な奴め、と思いつつ、リオは今後の諸々をフレドリックから報告された。
現在カレッジ領もウォルターズ公爵家の管理下にあるので、ウォルターズ公爵の仕事を継ぐ前にカレッジ領の仕事を一通りできるようになるのは確かに理にかなっている。侍従が三人ということもまあ理解できる。あと襲撃があった事実を鑑みて、カレッジ領の代行官邸に騎士団の出張所のさらに出張所が出来ているらしい。当番制で数名が二十四時間体制で常駐するという。
「なんか色々大事になっちゃったんだね、今回の件」
「まあそういうことだね。少なくとも旧ヤーアク領の色々が片付くまでカレッジ領の守りは固いほうがいいだろう。変に逆恨みされているとも限らない」
過去の襲撃と今回でヤーアク領の破落戸がかなりの人数捕まったり死んだりしている。変な恨みを持った人間がいるとも限らない。ただでさえ少ない人数で回しているカレッジ領代行官屋敷だ、警戒するに越したことはないだろう。
そんな話をしていたら一度止まっていた馬車列が、動き出した。
「うちの駐屯地にいる騎士団からの補充人員も一緒に行くんだ。護衛代わりだね」
「へえ、公爵後継って本当に大変だね」
人ごとのようなリオに、フレドリックがため息をついたのを、リオは知らない。
「え?ちょっとまってどういうこと?」
ウォルターズ領での二週間の勉強滞在ののち、リオはようやくカレッジ領に帰る日を迎えた。
長く一緒にいたフレドリックともお別れか、と思ったらフレドリックも旅装である。気づけばコリーとミック、そしてフレドリックの侍従であるケネスも同じく旅装だった。そして馬車が大きいし多い。
「やあ、リオ。これからよろしく頼むよ!!」
「え、ええええ?」
思わず公爵を見ると、公爵もにっこりと笑った。公爵夫人だけが頭が痛いとばかりに額を抑えている。
「フレドリックはしばらくカレッジ領で学ばせることにしたよ。ハント代行官に学びつつしばらくカレッジ領に住むことになる。ハント代行官たちには既に連絡済で、準備も済んでいることだろう。よろしく頼むよ。リオの今後の勉強もフレドリックとケネスが見てくれるから、大いに頼るといい」
「ええええ……」
リオを驚かすためにあえて全員が黙っていたということらしい。あれよあれよという間にリオはフレドリックと同じ馬車に乗せられる。同じくケネスとミックも乗って来ていた。コリーは後続の荷物を積んだ馬車に乗ったようだった。
「リオ、ちゃんと嫌なことは嫌というのよ。どうしても我慢ならなかったらこちらの屋敷においでなさい」
公爵夫人が窓から上半身を出したリオの両手をその嫋やかな両手で握りしめた。どうやらこの中でリオの味方は夫人だけのようだ。その夫人も公爵に口止めされて渋々黙っていたのだろう、その表情が物語っていた。そんな美しい布陣を励ますようにリオもその手をぎゅっと握りしめる。
「ありがとうございます、ライラが帰ってくるころには絶対遊びに来ますね!!」
「ええ、そうして。楽しみにしているわ」
ようやく夫人の顔に笑顔が見える。かなり疲れてはいそうなので、この後ゆっくり休んでほしい。
二人がそっとその手を放し、リオが乗り出した身体を馬車の中に引っこめると、すっと公爵が手をあげた。
「では、励めよ」
「行ってきます」
「お世話になりました」
そうしてリオは混乱の中、ウォルターズ領を後にしたのだった。
「聞いてないよ、こんなこと」
「言ってなかったからね。王宮からの許可が出るのに時間がかかったのもある」
目の前で涼しい顔をしているフレドリックは困ったように眉を下げて笑った。器用な奴め、と思いつつ、リオは今後の諸々をフレドリックから報告された。
現在カレッジ領もウォルターズ公爵家の管理下にあるので、ウォルターズ公爵の仕事を継ぐ前にカレッジ領の仕事を一通りできるようになるのは確かに理にかなっている。侍従が三人ということもまあ理解できる。あと襲撃があった事実を鑑みて、カレッジ領の代行官邸に騎士団の出張所のさらに出張所が出来ているらしい。当番制で数名が二十四時間体制で常駐するという。
「なんか色々大事になっちゃったんだね、今回の件」
「まあそういうことだね。少なくとも旧ヤーアク領の色々が片付くまでカレッジ領の守りは固いほうがいいだろう。変に逆恨みされているとも限らない」
過去の襲撃と今回でヤーアク領の破落戸がかなりの人数捕まったり死んだりしている。変な恨みを持った人間がいるとも限らない。ただでさえ少ない人数で回しているカレッジ領代行官屋敷だ、警戒するに越したことはないだろう。
そんな話をしていたら一度止まっていた馬車列が、動き出した。
「うちの駐屯地にいる騎士団からの補充人員も一緒に行くんだ。護衛代わりだね」
「へえ、公爵後継って本当に大変だね」
人ごとのようなリオに、フレドリックがため息をついたのを、リオは知らない。
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