【完結】少女探偵・小林声は渡り廊下を走らない

暗闇坂九死郞

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少女探偵・小林声はプールサイドを走らない

第16話

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「……まーた君たちか」

 現場に到着した何時もの刑事二人組(鷲鼻&オールバック眼鏡)は、ふみたちを見るなり大きく溜息を吐いた。

「それにしても、よく人が死ぬ学校だ。ま、今回はただの事故死だろうがね。小林こばやし君、ご苦労だった。後は我々でやっておくから、君たちはもう戻っていいぞ」

「いいえ警部、これは殺しです。望月もちづき真司しんじはここではないどこか別の場所で殺害されたと考えて間違いありません」
 小林は真っ直ぐに鷲鼻の中年刑事を見返して言う。

「……いや、そうは言っても小林君、状況的に見てもこれは事故死としか……」

「私がこれを殺人事件だと確信する根拠はこれです」
 そう言って小林がプールの水槽の中から拾い上げたのは、細長い木の実のような塊だ。

「何だね、それは?」

「松の球果きゅうかです。松かさや松ぼっくりと呼ぶのが一般的でしょう」

「……松ぼっくり?」

 ふみ香は思わずプールの周囲を見回す。プールを囲むフェンスの外には松の木が植えられている。

「別にプールの中に松ぼっくりが落ちとっても、おかしなことなんて何もないやないか」
 白旗しらはたが逆立った髪を弄りながら言う。

「松かさが落ちていたこと自体が問題ではない。問題なのは松かさのこの形状だ」

 小林が持っている松ぼっくりはが閉じた状態で、小さく縮こまっている。

「それがどないしてん?」

「警部、望月真司は一昨日このプールに夜中に忍び込んで泳いだそうです。何時プールの水が抜かれたのか調べて貰えませんか?」
 小林は白旗を無視して警部に言う。

「……それは構わないが、本当にそれがこの件と関係あるのかね?」

「ええ。それでこの殺人事件の犯人を突き止めることができます」
 小林こえは自信満々にそう宣言するのだった。

     〇 〇 〇

 警察が証人として新たにプールに呼んだのは、体育教師の佐竹さたけ育郎いくろうだった。
 佐竹は白髪混じりの角刈り頭に青いジャージという前時代的なスタイルの教師で、ふみ香も校門の前に竹刀を持って立っているところを何度か見かけたことがあった。

「プールの管理をされているのは佐竹先生だと伺っていますが?」
 オールバックの若手刑事が佐竹に質問する。

「……ええ、一昨日生徒が夜間にプールに忍び込むことがありまして、それで水を抜くことにしたのですが、まさかそれがこんな事故に繋がってしまうとは」

「プールの水を抜いたのは何時頃ですか?」

「生徒の侵入が発覚してすぐです。昨日の朝の時点で水は抜いてありました」

「警部、たった今犯人がわかりました」
 小林が佐竹の前に躍り出る。

「望月真司を事故に見せかけて殺したのは佐竹先生、貴方ですね?」
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