嘘つき王と影の騎士

篠雨

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第3章:氷解のゆりかご

第63話:真実の脈動、生への帰還※

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「……あ、……っ、あぁぁ……ッ!!」

 セシルの喉から、引き裂かれたような悲鳴が零れた。 
 初めて受け入れる、アルヴィスの巨大な質量。それは、単なる肉体的な侵入などではない。セシルの魂の奥深くまでを蹂躙し、支配し、真っ新に塗り替えていくような、圧倒的な「存在」の証明だった。

 身体の芯を容赦なく貫かれ、セシルの視界は白く弾けた。十二年間、一度も他者を容れたことのない、清潔すぎて死んでいた場所。そこを、アルヴィスの荒々しい熱が無理やり押し広げ、彼自身の色で染め上げていく。

「……っ、ふ、ぅ……、セシル……、力を、抜いて……大丈夫だ、俺を見ろ……!」

 アルヴィスもまた、脂汗を流しながら己の野性的な衝動を必死に抑え込んでいた。今すぐに腰を振って、この愛しい男を自分だけのものに作り替えたい。けれど、その狂おしい欲望以上に、セシルの痛みを少しでも和らげたいという、祈るような献身が彼を繋ぎ止める。

 アルヴィスはセシルの震える指を絡め取り、何度も何度も、こぼれる涙を吸い取った。

「あ……、あ、う……っ、アル、ヴィス……、痛い、のに……っ、熱いんだ……っ」

 セシルは必死に酸素を求め、アルヴィスの逞しい胸にしがみついた。 
 痛みは確かにそこにある。だが、それを上書きするように、内側から伝わってくるアルヴィスの脈動が、セシルの全身の血を沸騰させていく。冷え切っていた手足に、他者の体温が戻る。死んでいた細胞の一つ一つが、アルヴィスの命を分け与えられ、歓喜に近い悲鳴のような産声を上げていた。

「セシル……愛している、愛している……っ!」

 アルヴィスが、ついに動き出した。  ゆっくりと、けれど確実な力強さで、セシルの最奥を突き上げる。一突きのたびに、セシルの意識は過酷な現実と甘美な陶酔の間で、激しく揺れ動いた。

「ひ……、あ、あぁぁッ! そこ、は……、ぁ……っ!!」

 セシルの指が、アルヴィスの背に食い込み、深い爪跡を残す。かつて「聖王」として民を祝福した指先が、今は一人の男の背中を掻き毟り、その快楽に翻弄されている。その果てしない背徳感が、さらにセシルの理性を削り取っていく。

 アルヴィスの動きは次第に激しさを増し、重なる肌がぶつかる、生々しく甘い音が静かな寝室に響き渡った。混ざり合う、荒い吐息。滴り落ちるアルヴィスの汗が、セシルの白い胸元に落ちて弾ける。

「……セシル、俺を見て……誰が貴方を抱いているか、その目に、脳に、焼き付けて……ッ!」

「あ……っ、アル、ヴィス……! 君だ……、君に……私が、暴かれて、いく……っ」

 セシルは、涙で滲んだ瞳でアルヴィスを凝視した。そこにあるのは、神への祈りよりも遥かに切実で醜悪なまでに純粋な、一人の男への「渇望」だった。  
  絶頂が近づくにつれ、二人の境界線は消失していった。どちらが喘いでいるのか、どちらの心音がこれほどまでに激しいのか。もはや判別がつかないほどの熱狂の中で、アルヴィスはセシルの首筋を噛みしめ、最期の深みへと自身を叩きつけた。

「……ッ、あ……ああぁあぁッ!!!」

 セシルの身体が大きく跳ね、絶頂の白光の中で硬直する。それと同時に、アルヴィスもまた、咆哮にも似た声を上げ、セシルの内側へと、自らの命の証をすべて解き放った。

 激しくぶつかり合っていた二人の呼吸が、ゆっくりと一つのリズムへ重なっていく。繋がったまま、アルヴィスはセシルの上に崩れ落ち、その華奢な肩に顔を埋めて、勝利した戦士のように、あるいは救いを得た迷い子のように、静かに震えていた。

 セシルの内側には、アルヴィスの熱い余韻が満ちていた。 
 それは、失われた魔力よりも遥かに暖かく、確かな、これから生きていくための「糧」だった。
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