84 / 86
第4章
第82話:誓い
しおりを挟む
アルヴィスの視界が、瞬く間に歪んだ。
自分は決して泣かないと決めていた。セシルを守る「盾」である自分が、彼より先に涙を見せるなど、騎士としての誇りが許さないはずだった。
けれど、指に伝わる銀の冷たさと、そこに込められたセシルのあまりにも深く、重い愛が、彼の魂を震わせた。
「……ああ……っ……セシル……」
大粒の涙が、アルヴィスの頬を伝い、セシルの手に、そして指輪の上に零れ落ちる。
彼は崩れ落ちるようにして、セシルの華奢な体を抱きしめた。
「……私は……私は、貴方を救ったつもりでいました。……不幸な運命から連れ出し、平穏な場所に隠すことが、私の使命だと……。……けれど、救われていたのは、私の方だった。……血に汚れ、戦うことしか知らなかった私に、貴方はこんなにも清らかで、美しい居場所を……っ」
アルヴィスは、セシルの首筋に顔を押し当てて、子供のように泣きじゃくった。
五年前、王宮を脱出した夜も。刺客に襲われ、死を覚悟した時も。彼は一度も弱音を吐かなかった。けれど今、セシルに愛されているというあまりの幸福感に、彼は完全に屈服していた。
「アル……泣かないで。……これは悲しい涙じゃないでしょう?」
セシルは、自分より遥かに大きなアルヴィスの頭を、慈しむように抱きかかえた。
アルヴィスの背中を優しく撫で、その震えをすべて分かち合う。
「君が僕を騎士として守ってくれたように、これからは僕が、薬師として君の心と体を癒やす。……僕たちはもう、主従じゃない。……死が二人を分かつまで、共に歩む家族なんだよ」
アルヴィスは顔を上げ、涙を拭うことも忘れて、セシルを見つめた。
そして、震える手でセシルの頬を包み込み、誓いを立てるように口を開いた。
「……セシル。この指輪にかけて、そして私の魂にかけて誓います。……私はこれまでの人生のすべてを、貴方を愛するためだけに捧げましょう。……王座などいらない。奇跡などいらない。……ただ、貴方の隣で、貴方の笑顔を守る一人の男として、永遠に歩み続けます」
二人の唇が、重なり合った。
それはかつての情熱的な口づけよりも、ずっと静かで、深い、魂の契約だった。
銀の指輪が、二人の手の中で、永遠の絆を象徴するように月光を反射していた。
自分は決して泣かないと決めていた。セシルを守る「盾」である自分が、彼より先に涙を見せるなど、騎士としての誇りが許さないはずだった。
けれど、指に伝わる銀の冷たさと、そこに込められたセシルのあまりにも深く、重い愛が、彼の魂を震わせた。
「……ああ……っ……セシル……」
大粒の涙が、アルヴィスの頬を伝い、セシルの手に、そして指輪の上に零れ落ちる。
彼は崩れ落ちるようにして、セシルの華奢な体を抱きしめた。
「……私は……私は、貴方を救ったつもりでいました。……不幸な運命から連れ出し、平穏な場所に隠すことが、私の使命だと……。……けれど、救われていたのは、私の方だった。……血に汚れ、戦うことしか知らなかった私に、貴方はこんなにも清らかで、美しい居場所を……っ」
アルヴィスは、セシルの首筋に顔を押し当てて、子供のように泣きじゃくった。
五年前、王宮を脱出した夜も。刺客に襲われ、死を覚悟した時も。彼は一度も弱音を吐かなかった。けれど今、セシルに愛されているというあまりの幸福感に、彼は完全に屈服していた。
「アル……泣かないで。……これは悲しい涙じゃないでしょう?」
セシルは、自分より遥かに大きなアルヴィスの頭を、慈しむように抱きかかえた。
アルヴィスの背中を優しく撫で、その震えをすべて分かち合う。
「君が僕を騎士として守ってくれたように、これからは僕が、薬師として君の心と体を癒やす。……僕たちはもう、主従じゃない。……死が二人を分かつまで、共に歩む家族なんだよ」
アルヴィスは顔を上げ、涙を拭うことも忘れて、セシルを見つめた。
そして、震える手でセシルの頬を包み込み、誓いを立てるように口を開いた。
「……セシル。この指輪にかけて、そして私の魂にかけて誓います。……私はこれまでの人生のすべてを、貴方を愛するためだけに捧げましょう。……王座などいらない。奇跡などいらない。……ただ、貴方の隣で、貴方の笑顔を守る一人の男として、永遠に歩み続けます」
二人の唇が、重なり合った。
それはかつての情熱的な口づけよりも、ずっと静かで、深い、魂の契約だった。
銀の指輪が、二人の手の中で、永遠の絆を象徴するように月光を反射していた。
7
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。
黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。
※このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います。
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
魔法と剣で戦う世界のお話。
幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、
魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、
家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。
魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、
「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、
二人で剣の特訓を始めたが、
その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・
これは病気か!?
持病があっても騎士団に入団できるのか!?
と不安になるラルフ。
ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!?
ツッコミどころの多い攻めと、
謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの
異世界ラブコメBLです。
健全な全年齢です。笑
マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。
よろしくお願いします!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
死に戻り騎士は愛のために願う 〜10回だけの奇跡〜
湯川岳
BL
「一生苦しむがいい。その呪いは俺からのプレゼントだ」
幼い頃に出会った友から呪いを貰ってしまったユーリ。
時は流れ、シューベルト家次男のアルトを追って騎士団に入隊をし、副団長まで上り詰めたユーリ。
毎日アルトの世話をしていく内に心惹かれていく。
「キスしてみろよ。それでオレが嫌じゃなければ……考えてやってもいい」
ユーリはアルトに口付けをする。そして呪いがこの時を待っていたかのように発動してしまった。
意識が乗っ取られ、目を覚ませばそこにあったはずの幸せは鮮やかな赤で染まっていた。
その日を境に始まったのは、暗くて長い道のりだった。
※アルト編、ユーリ編。どちらから先に読まれても大丈夫です。
エンディング異なります。それもお楽しみ頂けたら幸いです。
※最後はハッピーエンド確定。4話までだいぶ暗めの話なので苦手な方はお気をつけ下さい。
※タイトル変えてみました。
旧:死に戻り騎士の願い
表紙素材:ぱくたそ
『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。
封じられた記憶。
拭いきれない心の傷。
噛み合わない言葉と、すれ違う想い。
謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、
ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れてしまう。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。
許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。
これは、ふたりの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。
運命に抗うのは、誰か。
未来を選ぶのは、誰なのか。
優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる