復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第4章 魔王視点

第3話:鎖の温もり

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セレは、勇者としての二重生活を始めた。

数日に一度、彼は王城から任務を受けて教会を離れる。それは、王城の人間が彼の報告を疑わないための、「勇者としての活動」の証明だった。彼は、別の魔物討伐を終え、血と魔物の穢れを纏ったまま、夜遅くに教会へ帰ってくる。

彼が帰ってくるまでの間、俺はただ静かに座っている。この鎖は、彼が俺に課した罰だが、不思議と、俺の心に静かな安息をもたらしていた。

俺の闇の力は、外部に漏れることはない。そして、俺は彼の監視下にある。俺が誰かを傷つける可能性は、ゼロだ。

セレが戻ってくると、彼はまず、俺が逃げていないか、鎖を引っ張って確認する。その無言の確認行為すら、俺には「君はここにいる」という、彼からの依存のメッセージのように感じられた。

そして、彼の最も過酷な罰が始まる。

彼は、俺の隣に座り、王城での冷酷な経験、師範たちの無関心、そして孤独な訓練の日々を、淡々と語る。その話のすべてが、俺への憎しみに繋がっている。

「今日、訓練の成果を見せる儀式があった。老魔導師は、俺の光が、お前の闇を滅ぼすために完璧だと褒めた。……俺を道具だとしか見ていない癖に」

彼はそう言って、拳を強く握りしめた。その怒りは、当然、俺に向けられている。

「そうか。それは良かったね。君の光は、世界一だ」

俺は、彼の怒りを煽らないよう、ただ静かに、彼の言葉を肯定した。

「君の光が、この世界で唯一、僕の闇を鎮められる。君が、君の力を信じて、その使命を貫いてくれて、僕は……本当に、感謝しているよ」

俺は、心からの言葉を伝えた。彼の力がなければ、俺はとっくに闇に飲み込まれ、世界を滅ぼしていたはずだ。彼こそが、俺の運命を止めた唯一の救いなのだ。

しかし、俺の感謝は、セレの怒りを増幅させるだけだった。

「その感謝が、俺には何の価値もない。お前は俺を裏切り、俺の鎖を燃やした。お前はただ、永遠に俺のそばで、俺の怒りを受け止め続ける。それだけがお前の役割だ」

彼の言葉は冷たい。だが、俺は知っている。彼が、俺を話し相手として必要としていることを。彼が、俺の肯定的な言葉を、心の奥底で求めていることを。

俺が鎖に繋がれていることで、セレの心は、孤独な勇者としての重荷から、わずかに解放されている。この鎖は、俺の罪の証であると同時に、彼の精神的な命綱なのだ。

俺は、この歪んだ共同生活の中で、彼の心の闇を溶かすことができるのだろうか。
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