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グースの砦 ③
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「何だよ主人、何か用か?」
「ご主人何か御用?」
「‥‥‥‥なんて?」
「呼び出しておいてそれかよ!」
「御用が無いなら遊んで貰えませんか?」
信じられないものを見た‥‥‥‥
◆◇◆
村人を助けてから三週間が過ぎ、いつもと変りなく時間が過ぎていった、用意していた本もあらかた読みつくし、ものすごく暇になってしまった。
あまりの暇さに、村を守るための柵の上に、神社によくある狛犬を土で装飾したり、柵から北に向かって10m置きに鳥居を設置したりと、いかに一日を忙しく暮らすか、それをテーマにして一日一日を過ごしてきた。
滑り台からシーソーまで遊具も作った、屋外ボーリング場まで完備している。
シーソーの中心にある稼働部分は『重力』魔法で、ボーリング場のレーンは炎で焼いてツルッツルに、もちろん玉だってツルッツル、よく滑る。
ルールは良く知らないがビリヤード台も作ってみた、全て土製で『硬化』を掛けてある、日に日に増える装飾物や遊具、その他モニュメントに、薬草を取る為にここを通る村人たちは困惑気味だ。
今や装飾物、遊具などをを合わせて20種類ほどが簡易砦の中にある。
しかし、いくら作っても心が満たされない、作れば作るほど心の中の穴が少しづつ広がるように感じる、この穴を埋めるため、神にもすがる気持ちで今制作しているのは、小さな祠のお稲荷さんだ。
お稲荷さんもそうだが、祠も意外に難しい、簡単に作れそうだが意外と複雑な作りになっている、あれはどうだったか? ここはどうなっていたか?、など考えながら作っていると、その時だけは心が満たされないことを忘れることが出来る。
もう少しで祠が完成間近となった時、少し憂鬱な気分になる、日曜日の午後5時位の、その時間帯に抱く気持ちだろう。
このまま完成してしまったらまた暇になる‥‥
次は何を作るか考えて居た時、ふと、最初に作った狛犬に目が留まった。
それをぼーっと眺めていたのだが
「‥‥‥‥犬がいたな!」
召喚獣オル・トロス、あまりにも戦闘とは縁遠い召喚獣だったので、すっかり忘れていた。一年近く呼び出してないかもしれない、久しぶりに思いっきり撫でまわそうと思い、すぐに呼び出した。
黄色の魔法陣から飛び出して来た茶色のオル、そして黒色のトロス
「「ハッ ハッ ハッ!」」
犬特有の呼吸をしつつ、尻尾をぶんぶん振り回している二匹の柴犬、あまりにも可愛く見ているだけでだらしない笑顔になってしまう、こんなに可愛いのに1年も呼んでなかったとは。
ふふふっ、相変わらず可愛いな、思いっきり撫でまわして遊んであげようか?
「何だよ主人、何か用か?」
「ご主人何か御用?」
一瞬で俺の顔から笑顔が消えた
分かってはいた、信じたくないが‥‥周りを見渡し、『潜伏・隠蔽』解除、『探知』の魔法発動
反応が無い、てことは、もしかしてこの‥‥そんな冗談
「‥‥‥‥なんて?」
「呼び出しておいてそれかよ」
「御用が無いなら遊んで貰えませんか?」
「‥‥お前たち喋れるの?」
「口が付いてるんだから当たり前だろう」
「お話でもいいですよ」
凄いなー、たまげたな
「何で前は喋らなかったんだ?」
「主人が適当な契約するからだろ」
「契約が中途半端なので、お話出来るまで時間がかかったんです」
契約が中途半端?‥‥‥‥
カナル隊と一緒に行った時か?
狙っていたオルトロスじゃなくて普通の犬が出て‥‥で、カナル隊に笑われて‥‥、あー、あー、そうだ、契約の言葉省いたな、あれって必要なんだ‥‥
「悪かったな、契約の言葉省いちゃって」
「過ぎたことだろ? いいよそんなの、気にするな」
意外と心が広い茶色のオル
「ところで呼んだということは御用があったのでは?」
黒色のトロスは礼儀正しいのね
「暇だったからさ、撫でまわそうと思ったんだけど」
シュバッ!!
二匹は言った瞬間、ひっくり返って腹を見せてきた
「ほら! いいぞ、早く、早くしろ!」
「ささ、どうぞ、何時間でも構いませんよ」
「お、おう悪いな‥‥」
「悪いと思うならさっさと撫でろ!」
「遠慮なさらず、思う存分」
「なら、撫でさせてもらおうかな」
「ねえ、グースの兄ちゃんそれ何?」
とそこに声が掛かる
今話しかけてきた、このクリオと言う男の子は、俺が助けた人の息子らしい、三週間ほど前、チラチラと覗きを繰り返し、二週間前位から話しかけてくるようになってきた。
最初は一言二言で逃げ帰っていたのが、今では俺の作った遊具で遊んでいくようになっていた。
「この子達触ってもいいの?」
そしてこの女の子がマロン、一番最初に俺を見て泣いた子だ。
最初クリオがマロンと一緒に来たのだが、逃げようとするマロンを、クリオが手を掴んで逃がさないようにしていた、酷い少年だと思う、少しずつではあるが俺と一緒にいる時間が増えていくにつれ、苦しそうな顔や泣きそうな顔をしないようになってきていた。
「結構長いことここにいるけど‥‥辛くないの?」
少し不思議に思って聞いてみたところ
「んー、何か胸の辺りが重い気がする、最初来た時よりはちょっと楽になった」
以前、天使ネクターが
「慣れれば恐怖も和らぐ」
なんて言っていたけど、本当かもしれない
「なぁ、兄ちゃん触ってもいいか?」
「いいよ、思いっきり撫でてあげな」
「わー、可愛い! なんて名前なの?」
二人とも子供らしい笑顔で聞いてくる
「茶色がオルで、黒がトロスだよ」
「ん? なんだお前らが撫でるのか? どうでもいいが早くしてくれ」
「ご主人に撫でて欲しかったのですが、仕方ありません、ささ早く」
子供らしい笑顔の二人だったが、伸ばした手を止めた
「おい! 何やってんだ、子供のくせに焦らしなんか覚えてんじゃねぇ!」
「あまり待たせるものではありませんよ、ご主人が撫でるのを譲ってくださったんです、早くしなさい」
「‥‥兄ちゃん、喋ってる‥‥」
「口が付いてんだから当たり前だろうが!」
暫く固まっていたクリオとマロンだったが、どことなく覚悟を決めるような感じで二匹を撫で始めた。
最初撫でられていた二匹は
「おい! もうちょっとゆっくりだ、そ、そうだ、空いている左手で足を触るのを忘れるな、前足、後ろ足、順番に触っていけ」
「喉からお腹まで全体的に‥‥んっ、お腹の横の部分も満遍なく」
あれやこれやと五月蠅かったが、時間が経つにつれ一言も話さなくなった
喋らなければ可愛いんだけどな、もしかして他の犬も実際はこんなことを考えているのかな
「おっ、クリオとマロンも来ていたか」
「お父さんお帰り!」
「おじさんお帰りなさい」
「おう、ただいま」
以前俺が助けたクリオの父親は、無事に怪我が治り、今ではまた薬草の採取をしている、
「グースのあんちゃん、約束したもの取ってきてやったからな」
「ありがとう、これで今日もうまい夕食になりそうだよ」
「あんまりうまいとか言うもんだからさ、今日は家で食べる分も取ってきたんだよ」
・・・・・・
・・・・
クリオのお父さんの怪我が完治したのが一週間前、これ、骨見えてるんじゃない? という所まで腕の肉を持ってかれていた怪我だったが、二週間ほどで怪我の後も無くすっかり元通りに治っていた。
そのお父さんだったが、怪我をした3日後には自らお礼に来た、あの時助けてもらえなかったら、今頃家族とはもう会うことは出来なかったと、泣きながら言われた。
ただ、やはり俺のそばにいるのは辛いらしく、そのまま泣きながら帰って行った
泣いたまま帰ったら、俺が何かしたと思われるんじゃ‥‥
と思ったがそんな事にはならなかった、そんなお父さんだが、次の日も来た、次の日どころかそれから毎日来るようになった、最初は自分の家族の事、そして仕事の事、それから村の事を話したりしていたが、その内俺の事を聞いてくるようになった。
最初はほんの数分話しただけで苦しそうな顔になり、一旦俺から離れ、また余裕が出てくると俺の元に来るというのを繰り返していた。
俺に助けられたことを気にしているのだろうか?
なんて思っていた、それからも毎日俺の所に通い詰めた結果、採取を再開できる前日には一日中俺の所で話が出来るようになっていた。
途中で、何で辛い思いをしてまで俺の所に来るのか? なんて聞いてみたことがあったけど
「あんちゃんは俺の命の恩人だからな、恩人に感謝するのは当たり前だし、それに、あんちゃんの話は聞いていて面白いからな、それにその威圧ってのは慣れると大丈夫になるってのも知っていたし」
「今はどれくらいの負担が?」
「そうだなー、ザワッとする感じはするけど‥‥気になるほどでも無いな」
最初にグースになった時、同じ隊だったタウロンとニーアは、かなり警戒をして俺から距離を取っていた、俺もそうだが、二人も訳も分からないといった所だった、話もしなかったせいか距離が縮むといったことは無かった。
バリス隊のエクレールの場合、最初はあれだったけど‥‥威圧の事は彼女も知ってたので、ある程度は話をしていたせいか、他の救助の隊が来る頃にはそこそこ普通に話をしてはいた。
クリオのお父さんが来て少ししてからだろうか? 他の採取に向かう人たちも少しずつだが、挨拶の他に一言二言話をして行くようになってきた、あとは他の子供達、最初はクリオやマロンに手を引かれ来ていたが、日に日に増える遊具や装飾物に興味を持ち、しばらくすると結構な頻度で遊びに来ていた、この世界では滑り台とかはあるが、シーソーは無く子供達にはかなり新鮮だったようだ。
それとボーリング、ピンは自動化ではないのでその都度立てなくてはならないが、ピンを立てる人を決めて楽しんでいた、一応ボーリングで使う玉は少し傾斜を付け、手元に戻ってくるように工夫してある。
俺自体ボーリングをやったことが無いので、ルールは少し違っているとは思うが、子供達の他に、採取から帰ってきた大人たちも混ざってやっていることがある。
クリオのお父さんを助けてから、少しずつではあるが俺の周りが変わってきた
そしてお父さんが採取を再開するとなった時、少し気になることがあったので聞いてみたことがある
「薬草の他に食べられるような野草ってのは無いんですか?」
「あるよ、よっぽど食う物が無くて困っている時にしか食べないがな、どんなに調理してもあの不味さはどうにもならないから誰も食べないな」
この世界のマズイは信用できない、なので‥‥
「あったら少しでいいので取ってきて欲しいんですが、もちろんお代は払います」
「取ってこいと言われたら取ってくるが、別にお代は要らないぞ」
「こう見えても高給取りですから、それに今まで休んだ分の稼ぎにもなるでしょ?」
お父さんは少し考えてから
「おう、分かった、今日あったら取ってくるよ」
それで取ってきてもらった野草を、部隊宿舎から拝借してきた鍋とコンロを使い、買ってきた他の野菜と一緒に炒めてみた、味付けは塩のみ、塩のみと言っても甘くない調味料は塩しか今の所ない
醤油がほしい‥‥
専業主婦の母親のおかげで、今まで料理などしたことが無かったが、作ってみたら結構いい感じになったと思う、自画自賛してみる。
出来たのはただの野菜炒め、完成したそれを一口‥‥
「うめぇぇー」
この世界で初めてまともな食事を口にしたと思う、この世界の料理は全て甘い、野菜なんかも改良されて甘いものしかない、煮ても焼いても甘くなる
しかしこの野草を入れることによって、そこに素晴らしい苦みが加わる、苦いのが美味いのではなく日本で母親が作ってくれた野菜炒め、これに近い状態になった、その日から毎日その野草を取ってくるようにお願いをするようになった。
・・・・・・
・・・・
「今日の夕食が楽しみだよ、他の野菜と混ぜて塩だけで炒めるなんて、俺のとこの母ちゃんは不思議な顔してたけどな」
「それで最高の野菜炒めが出来ますから、うまいですよ、この国で一番うまいんじゃないですかね」
にこにこ顔でクリオと一緒に帰って行くクリオのお父さんだったが
次の日、俺はクリオのお父さんから嘘つき呼ばわりされた。
◆◇
「さて今日はフリスビーで遊ぶぞ」
喋る犬と遊ぶという大事な日課が増えた。
遊ぶぞの言葉で尻まで振り出した二匹の犬
「空中で華麗にキャッチするんだぞ、そーら! 行ってこい」
もう待ちきれないといった二匹は、投げた瞬間に猛ダッシュで走ってい行った
シュタタタ パクッ!
見事キャッチしたのはオスのオルだった、取れなかったメスのトロスは、よほど悔しかったのか犬語でガウガウ吠えていた。
オルはオスだからか身体能力も優れているのか? その後2回連続でフリスビーをキャッチしていた、そして問題があったのは4回目に投げた時だった。
4回目もオルがキャッチをしそうになった時、オルの頭の上に、オルの体の3倍の長さがあろう物体がオルに向かって振り下ろされた。
ドスン! 「ギャワン!!」
オルが取れなかったフリスビーをトロスがキャッチ、そのまま俺の所に持ってくる
「ささ、ご主人また投げてください」
「お、おう、あの、今のって‥‥」
そこへ全力で戻ってくるオル
「おいトロス! お前卑怯だぞ!」
「何のことでしょう?邪魔だから前足で払っただけですが?」
前足? いやいや、デカすぎるし‥‥
まさか‥‥俺の見間違いだろう
「お前には絶対に取らせないからな!」
「ふふ、そうはいきません、ご主人の寵愛は私だけのものです」
このままだと喧嘩しそうなので、さっさと投げてやる
「ほーら取ってこい!」
やはりオルの方が能力があるらしくフリスビーをキャッチしようとする、その瞬間、上からまたさっきの物体が振り下ろされた
ドスン! 「ギャワン!」
やっぱり見間違いじゃない、空中から急に出てきた巨大な物それってやっぱり‥‥
オルが取り損ねたフリスビーを、さっきと同じようにトロスが華麗にキャッチしようとしたその時、トロスの体の何倍もある犬の顔が突然出て来てフリスビーをキャッチした。
えっ!?
ドン! 「ギャワン!!」
今度は、巨大な顔にぶつかったトロスが跳ね飛ばされてしまった、轢かれたと言ってもいい
「ざまぁ!!」
と言いつつ戻ってくるオルと
「キィ━━ッ!」
奇声をあげて追いかけてくるトロス
「お、お、っ」
やたらとデカい犬の顔が、フリスビーを咥えて向かってくるのを見て、正直ビビってしまった
それはそれとして
「これってなに?」
空中から生えている巨大な顔を見ながら聞いてみる
「これのことか?」
・・・・・・
結果、分かったことは、犬の『モルフト』のようなものだった
召喚獣ノームの原型がモルフトだった、空中から突然腕が6本出てくる恐怖系の召喚獣、オル・トロスはこれと同じようなことが出来る、頭・前足の他に、後ろ足と尻尾も、巨大化したものを空中から突然出せるようだ。
あれだね、スタ○ド使いだ
戦闘には全く使えない、癒しの召喚獣だと思っていたが、これがあれば戦闘でも活躍できそうだ。
ただ、フリスビーはもうやめよう、もう一つ作って、クリオとマロン達が来てから彼らにやらせよう、このままだと本気で喧嘩しそうだし、それに結構疲れる‥‥
その日の夕方
「もう腕が動かないよー」
と言わせるまでオルとトロスは、クリオとマロンにフリスビーを投げさせていた
◇◆◇◆◇
大陸西側、コンセの村
「何でですか! 魔物の集落が出来てるかもしれないって言ってるじゃないですか!」
受話器に向かい声を荒げる男
「ええ! 分かってます! でも! っ‥‥クソッ!」
「どうだった‥‥? 聞かなくても分かるが」
「全然駄目だ! 話が通じないし、最後は無理やり通信を切りやがった」
「弱った‥‥明らかに魔物を発見する頻度が上がっているのに、このままだと‥‥」
「こうなったら村の皆で防衛するしか他にないんじゃ‥‥」
「出来なくもないが、その間誰が仕事をするんだ? この村だって裕福な方じゃない、このまま駐留の部隊が来てくれなかったら、そうするしかなくなるが‥‥」
そう言うと、この場にいた者達は重い空気に包まれた
ここ、コンセの村には三日前までは駐留の部隊が存在していた、しかし税収の少ないこの村の駐留は三日前に打ち切られている
部隊に空きがないという理由で、いつ次の部隊が来てくれるかも分からず、村人たちはかなり焦っていた。
焦る理由として
コンセの村はグースの生まれたグラースオルグの、丁度真南に当たる場所に作られている、つまり一番魔物の危険度が高い地域となる、今までは常に駐留部隊がいてくれたおかげで、なんとかなってきた。
そしてもう一つ、最近魔物の発見率が増えてきたこと、コンセの村でも薬草を採取する村人が二人ほど存在してる、この二人は『探知』持ちで危険と感じたらすぐに引き返してきていた。
しかしここ数日は、ほとんど入ることが出来ないほど魔物の数が多いという、そしてそのウチの一人が、今まで見てきた魔物とは少し様子が違う、という情報も持って来ている。
今魔物がが攻めてきたら、自分達で戦わなければならない、もちろん自分達だって魔法はある程度使えるし、武器を使った戦いだって出来る、しかし軍で鍛えられた軍人と違って自分達は素人、その内必ず被害が出るだろう、出て当たり前なのだ。
「‥‥クジュの村に新しい部隊が駐留するらしい」
その中でも一番若い村人、マークが静かに声を出す
「ああそうだな、あそこは一年も部隊が来なかったみたいだが」
「それで、それまで守っていたのがグースなんだろ?」
マークは一呼吸おいてから
「その‥‥グースは、軍とは関係ないらしい、政府が直接送り込んだらしいんだけど‥‥ここに呼べないかな‥‥」
「何を馬鹿なことを!」
「グースなんか呼んだら何が起きるか分かったもんじゃないぞ!
「‥‥でもさ、そのグースは一年もクジュの村を守ったんだろ? それに俺たちが他に頼れるものってあるか?」
「でもな!」
「じゃあ俺達だけでこの村を守るのか!? 守れるのか!」
「それは‥‥」
言い出しっぺのマーク本人に不安が無かったわけではないが、村の事を考え、何とか他の皆を説得し、何かあったら自分の責任でもいいとまで言って、村人たちの首を縦に振らせることが出来た。
・・・・・
数日後、コンセから一番近い移転門を通り、クジュの村に近い移転門へと移動し、クジュの村に着いたマークは、心なしか緊張していた、グースに直接会うというのもそうだが、引き受けてくれるとも限らない。
グースは軍に籍を置いてはいるが、軍とはあまり関係が無いらしい、つまり命令系統が違うことから、もしかしたら引き受けてくれるのではないか? と淡い期待を持ってはいた。
政府に直接のコネがないので、グースに直接直談判し、来てもらうようお願いしに来ることになった。
「‥‥なんだこれは」
マークはその村の異様な光景に困惑した、町のいたるところに土で出来た像が立っているからだ、裸の女性の像や裸の男性の像、子供の像から兵士のような像まで、ありとあらゆる場所に設置されていた
「おや? あんた見かけない顔だがどこから来たんだ?」
クジュの村の人が話しかけてくる
「自分はコンセの村から来たマークと言います、あの‥‥この土で出来た像は‥‥」
「これか? 北にいるグースの旦那が作ってくれたんだよ、あんまり出来がいいんでな貰って来たんだよ、ほら、あそこにある貝殻に乗ってる裸の女の像があるだろ? あれ家で貰ったんだよ、中々いいだろ?」
へっへっへと村人は笑っていた
グースが作った? これを‥‥、そうだグースに合わないと
「グースに合うことは出来ますか? お願いがあって来たんですが」
「おう、旦那ならいつも村の北側にいるから」
ありがとうと言葉を残しマークは村の北側に向かう
しかし何だこの村は、村中が彫刻だらけじゃないか、‥‥しかも一体一体硬化まで掛けられているし、ん? 何だあの高い‥‥櫓か? 結構な額を村の防衛に当てているようだな、政府から援助でもしてもらったのだろうか?
目立つ櫓を目指し歩き、そして、グースのいる場所に到着したマークは、一瞬で心臓を掴まれるような恐怖を体験した、しかしそれとは別に自分の目に映った物に困惑した。まず間違いないのは自分の見ている人物がグースだろう
ただそのグースは、公衆の面前では不適切な仮面を付けており、頭にはキラーラビットの耳のような形をしたものが乗っている、おそらく魔石。
どう見てもふざけてるとしか思えない、そしてグースのいた場所とは、まるで砦のような場所で、柵があり、櫓や立派な門まで付いていた、門の両脇にはダイヤウルフのような魔物の像が二体、北を睨むように配置されている。
そして周りには子供達が溢れ、遊具や小型のダイヤウルフのような小さい二匹の生き物と遊んでいた。
「おじさん誰だ? どこの人」
マークを見つけた子供が話しかけてきた
「コンセの村から来たんだ、君、この砦はこの村で作ったのかい? それとも政府にお願いして作ってもらったのかい?」
子供に聞くことでは無いと思うが、あまりにも良い出来の砦なのでつい聞いてしまった
「これはグースの兄ちゃんが一日で作ったんだよ、土で」
「えっ! 土、これが?」
櫓や柵も全部ここにあるのは土で出来ているという
ガウゥ!!
突然魔物の声がしたので、マークは慌ててそちらを見た、そこにはさっきの小さな生き物の顔の前に、更に大きな顔が突然空中に浮かんでいるのだ、その大きな顔の口には皿のようなものが咥えられてある。
危うく腰を抜かす所だったが
「あれは兄ちゃんの召喚獣だよ」
そう教えてくれた。
すべて土でできた櫓に柵、そしてあの召喚獣、なにより子供達が平気な顔でグースのそばにいる‥‥、間違いない、この人ならコンセの村を守ってくれることが出来る、
そう確信したマークは勇気を振り絞り、恐怖と戦いながら一歩一歩、グースに近づき
「わ、私はマークと言います、コンセの村からあなたにお願いしに来ました、どうか私の村を守って下さい」
ひっくり返った声でそうグースに告げた
「ご主人何か御用?」
「‥‥‥‥なんて?」
「呼び出しておいてそれかよ!」
「御用が無いなら遊んで貰えませんか?」
信じられないものを見た‥‥‥‥
◆◇◆
村人を助けてから三週間が過ぎ、いつもと変りなく時間が過ぎていった、用意していた本もあらかた読みつくし、ものすごく暇になってしまった。
あまりの暇さに、村を守るための柵の上に、神社によくある狛犬を土で装飾したり、柵から北に向かって10m置きに鳥居を設置したりと、いかに一日を忙しく暮らすか、それをテーマにして一日一日を過ごしてきた。
滑り台からシーソーまで遊具も作った、屋外ボーリング場まで完備している。
シーソーの中心にある稼働部分は『重力』魔法で、ボーリング場のレーンは炎で焼いてツルッツルに、もちろん玉だってツルッツル、よく滑る。
ルールは良く知らないがビリヤード台も作ってみた、全て土製で『硬化』を掛けてある、日に日に増える装飾物や遊具、その他モニュメントに、薬草を取る為にここを通る村人たちは困惑気味だ。
今や装飾物、遊具などをを合わせて20種類ほどが簡易砦の中にある。
しかし、いくら作っても心が満たされない、作れば作るほど心の中の穴が少しづつ広がるように感じる、この穴を埋めるため、神にもすがる気持ちで今制作しているのは、小さな祠のお稲荷さんだ。
お稲荷さんもそうだが、祠も意外に難しい、簡単に作れそうだが意外と複雑な作りになっている、あれはどうだったか? ここはどうなっていたか?、など考えながら作っていると、その時だけは心が満たされないことを忘れることが出来る。
もう少しで祠が完成間近となった時、少し憂鬱な気分になる、日曜日の午後5時位の、その時間帯に抱く気持ちだろう。
このまま完成してしまったらまた暇になる‥‥
次は何を作るか考えて居た時、ふと、最初に作った狛犬に目が留まった。
それをぼーっと眺めていたのだが
「‥‥‥‥犬がいたな!」
召喚獣オル・トロス、あまりにも戦闘とは縁遠い召喚獣だったので、すっかり忘れていた。一年近く呼び出してないかもしれない、久しぶりに思いっきり撫でまわそうと思い、すぐに呼び出した。
黄色の魔法陣から飛び出して来た茶色のオル、そして黒色のトロス
「「ハッ ハッ ハッ!」」
犬特有の呼吸をしつつ、尻尾をぶんぶん振り回している二匹の柴犬、あまりにも可愛く見ているだけでだらしない笑顔になってしまう、こんなに可愛いのに1年も呼んでなかったとは。
ふふふっ、相変わらず可愛いな、思いっきり撫でまわして遊んであげようか?
「何だよ主人、何か用か?」
「ご主人何か御用?」
一瞬で俺の顔から笑顔が消えた
分かってはいた、信じたくないが‥‥周りを見渡し、『潜伏・隠蔽』解除、『探知』の魔法発動
反応が無い、てことは、もしかしてこの‥‥そんな冗談
「‥‥‥‥なんて?」
「呼び出しておいてそれかよ」
「御用が無いなら遊んで貰えませんか?」
「‥‥お前たち喋れるの?」
「口が付いてるんだから当たり前だろう」
「お話でもいいですよ」
凄いなー、たまげたな
「何で前は喋らなかったんだ?」
「主人が適当な契約するからだろ」
「契約が中途半端なので、お話出来るまで時間がかかったんです」
契約が中途半端?‥‥‥‥
カナル隊と一緒に行った時か?
狙っていたオルトロスじゃなくて普通の犬が出て‥‥で、カナル隊に笑われて‥‥、あー、あー、そうだ、契約の言葉省いたな、あれって必要なんだ‥‥
「悪かったな、契約の言葉省いちゃって」
「過ぎたことだろ? いいよそんなの、気にするな」
意外と心が広い茶色のオル
「ところで呼んだということは御用があったのでは?」
黒色のトロスは礼儀正しいのね
「暇だったからさ、撫でまわそうと思ったんだけど」
シュバッ!!
二匹は言った瞬間、ひっくり返って腹を見せてきた
「ほら! いいぞ、早く、早くしろ!」
「ささ、どうぞ、何時間でも構いませんよ」
「お、おう悪いな‥‥」
「悪いと思うならさっさと撫でろ!」
「遠慮なさらず、思う存分」
「なら、撫でさせてもらおうかな」
「ねえ、グースの兄ちゃんそれ何?」
とそこに声が掛かる
今話しかけてきた、このクリオと言う男の子は、俺が助けた人の息子らしい、三週間ほど前、チラチラと覗きを繰り返し、二週間前位から話しかけてくるようになってきた。
最初は一言二言で逃げ帰っていたのが、今では俺の作った遊具で遊んでいくようになっていた。
「この子達触ってもいいの?」
そしてこの女の子がマロン、一番最初に俺を見て泣いた子だ。
最初クリオがマロンと一緒に来たのだが、逃げようとするマロンを、クリオが手を掴んで逃がさないようにしていた、酷い少年だと思う、少しずつではあるが俺と一緒にいる時間が増えていくにつれ、苦しそうな顔や泣きそうな顔をしないようになってきていた。
「結構長いことここにいるけど‥‥辛くないの?」
少し不思議に思って聞いてみたところ
「んー、何か胸の辺りが重い気がする、最初来た時よりはちょっと楽になった」
以前、天使ネクターが
「慣れれば恐怖も和らぐ」
なんて言っていたけど、本当かもしれない
「なぁ、兄ちゃん触ってもいいか?」
「いいよ、思いっきり撫でてあげな」
「わー、可愛い! なんて名前なの?」
二人とも子供らしい笑顔で聞いてくる
「茶色がオルで、黒がトロスだよ」
「ん? なんだお前らが撫でるのか? どうでもいいが早くしてくれ」
「ご主人に撫でて欲しかったのですが、仕方ありません、ささ早く」
子供らしい笑顔の二人だったが、伸ばした手を止めた
「おい! 何やってんだ、子供のくせに焦らしなんか覚えてんじゃねぇ!」
「あまり待たせるものではありませんよ、ご主人が撫でるのを譲ってくださったんです、早くしなさい」
「‥‥兄ちゃん、喋ってる‥‥」
「口が付いてんだから当たり前だろうが!」
暫く固まっていたクリオとマロンだったが、どことなく覚悟を決めるような感じで二匹を撫で始めた。
最初撫でられていた二匹は
「おい! もうちょっとゆっくりだ、そ、そうだ、空いている左手で足を触るのを忘れるな、前足、後ろ足、順番に触っていけ」
「喉からお腹まで全体的に‥‥んっ、お腹の横の部分も満遍なく」
あれやこれやと五月蠅かったが、時間が経つにつれ一言も話さなくなった
喋らなければ可愛いんだけどな、もしかして他の犬も実際はこんなことを考えているのかな
「おっ、クリオとマロンも来ていたか」
「お父さんお帰り!」
「おじさんお帰りなさい」
「おう、ただいま」
以前俺が助けたクリオの父親は、無事に怪我が治り、今ではまた薬草の採取をしている、
「グースのあんちゃん、約束したもの取ってきてやったからな」
「ありがとう、これで今日もうまい夕食になりそうだよ」
「あんまりうまいとか言うもんだからさ、今日は家で食べる分も取ってきたんだよ」
・・・・・・
・・・・
クリオのお父さんの怪我が完治したのが一週間前、これ、骨見えてるんじゃない? という所まで腕の肉を持ってかれていた怪我だったが、二週間ほどで怪我の後も無くすっかり元通りに治っていた。
そのお父さんだったが、怪我をした3日後には自らお礼に来た、あの時助けてもらえなかったら、今頃家族とはもう会うことは出来なかったと、泣きながら言われた。
ただ、やはり俺のそばにいるのは辛いらしく、そのまま泣きながら帰って行った
泣いたまま帰ったら、俺が何かしたと思われるんじゃ‥‥
と思ったがそんな事にはならなかった、そんなお父さんだが、次の日も来た、次の日どころかそれから毎日来るようになった、最初は自分の家族の事、そして仕事の事、それから村の事を話したりしていたが、その内俺の事を聞いてくるようになった。
最初はほんの数分話しただけで苦しそうな顔になり、一旦俺から離れ、また余裕が出てくると俺の元に来るというのを繰り返していた。
俺に助けられたことを気にしているのだろうか?
なんて思っていた、それからも毎日俺の所に通い詰めた結果、採取を再開できる前日には一日中俺の所で話が出来るようになっていた。
途中で、何で辛い思いをしてまで俺の所に来るのか? なんて聞いてみたことがあったけど
「あんちゃんは俺の命の恩人だからな、恩人に感謝するのは当たり前だし、それに、あんちゃんの話は聞いていて面白いからな、それにその威圧ってのは慣れると大丈夫になるってのも知っていたし」
「今はどれくらいの負担が?」
「そうだなー、ザワッとする感じはするけど‥‥気になるほどでも無いな」
最初にグースになった時、同じ隊だったタウロンとニーアは、かなり警戒をして俺から距離を取っていた、俺もそうだが、二人も訳も分からないといった所だった、話もしなかったせいか距離が縮むといったことは無かった。
バリス隊のエクレールの場合、最初はあれだったけど‥‥威圧の事は彼女も知ってたので、ある程度は話をしていたせいか、他の救助の隊が来る頃にはそこそこ普通に話をしてはいた。
クリオのお父さんが来て少ししてからだろうか? 他の採取に向かう人たちも少しずつだが、挨拶の他に一言二言話をして行くようになってきた、あとは他の子供達、最初はクリオやマロンに手を引かれ来ていたが、日に日に増える遊具や装飾物に興味を持ち、しばらくすると結構な頻度で遊びに来ていた、この世界では滑り台とかはあるが、シーソーは無く子供達にはかなり新鮮だったようだ。
それとボーリング、ピンは自動化ではないのでその都度立てなくてはならないが、ピンを立てる人を決めて楽しんでいた、一応ボーリングで使う玉は少し傾斜を付け、手元に戻ってくるように工夫してある。
俺自体ボーリングをやったことが無いので、ルールは少し違っているとは思うが、子供達の他に、採取から帰ってきた大人たちも混ざってやっていることがある。
クリオのお父さんを助けてから、少しずつではあるが俺の周りが変わってきた
そしてお父さんが採取を再開するとなった時、少し気になることがあったので聞いてみたことがある
「薬草の他に食べられるような野草ってのは無いんですか?」
「あるよ、よっぽど食う物が無くて困っている時にしか食べないがな、どんなに調理してもあの不味さはどうにもならないから誰も食べないな」
この世界のマズイは信用できない、なので‥‥
「あったら少しでいいので取ってきて欲しいんですが、もちろんお代は払います」
「取ってこいと言われたら取ってくるが、別にお代は要らないぞ」
「こう見えても高給取りですから、それに今まで休んだ分の稼ぎにもなるでしょ?」
お父さんは少し考えてから
「おう、分かった、今日あったら取ってくるよ」
それで取ってきてもらった野草を、部隊宿舎から拝借してきた鍋とコンロを使い、買ってきた他の野菜と一緒に炒めてみた、味付けは塩のみ、塩のみと言っても甘くない調味料は塩しか今の所ない
醤油がほしい‥‥
専業主婦の母親のおかげで、今まで料理などしたことが無かったが、作ってみたら結構いい感じになったと思う、自画自賛してみる。
出来たのはただの野菜炒め、完成したそれを一口‥‥
「うめぇぇー」
この世界で初めてまともな食事を口にしたと思う、この世界の料理は全て甘い、野菜なんかも改良されて甘いものしかない、煮ても焼いても甘くなる
しかしこの野草を入れることによって、そこに素晴らしい苦みが加わる、苦いのが美味いのではなく日本で母親が作ってくれた野菜炒め、これに近い状態になった、その日から毎日その野草を取ってくるようにお願いをするようになった。
・・・・・・
・・・・
「今日の夕食が楽しみだよ、他の野菜と混ぜて塩だけで炒めるなんて、俺のとこの母ちゃんは不思議な顔してたけどな」
「それで最高の野菜炒めが出来ますから、うまいですよ、この国で一番うまいんじゃないですかね」
にこにこ顔でクリオと一緒に帰って行くクリオのお父さんだったが
次の日、俺はクリオのお父さんから嘘つき呼ばわりされた。
◆◇
「さて今日はフリスビーで遊ぶぞ」
喋る犬と遊ぶという大事な日課が増えた。
遊ぶぞの言葉で尻まで振り出した二匹の犬
「空中で華麗にキャッチするんだぞ、そーら! 行ってこい」
もう待ちきれないといった二匹は、投げた瞬間に猛ダッシュで走ってい行った
シュタタタ パクッ!
見事キャッチしたのはオスのオルだった、取れなかったメスのトロスは、よほど悔しかったのか犬語でガウガウ吠えていた。
オルはオスだからか身体能力も優れているのか? その後2回連続でフリスビーをキャッチしていた、そして問題があったのは4回目に投げた時だった。
4回目もオルがキャッチをしそうになった時、オルの頭の上に、オルの体の3倍の長さがあろう物体がオルに向かって振り下ろされた。
ドスン! 「ギャワン!!」
オルが取れなかったフリスビーをトロスがキャッチ、そのまま俺の所に持ってくる
「ささ、ご主人また投げてください」
「お、おう、あの、今のって‥‥」
そこへ全力で戻ってくるオル
「おいトロス! お前卑怯だぞ!」
「何のことでしょう?邪魔だから前足で払っただけですが?」
前足? いやいや、デカすぎるし‥‥
まさか‥‥俺の見間違いだろう
「お前には絶対に取らせないからな!」
「ふふ、そうはいきません、ご主人の寵愛は私だけのものです」
このままだと喧嘩しそうなので、さっさと投げてやる
「ほーら取ってこい!」
やはりオルの方が能力があるらしくフリスビーをキャッチしようとする、その瞬間、上からまたさっきの物体が振り下ろされた
ドスン! 「ギャワン!」
やっぱり見間違いじゃない、空中から急に出てきた巨大な物それってやっぱり‥‥
オルが取り損ねたフリスビーを、さっきと同じようにトロスが華麗にキャッチしようとしたその時、トロスの体の何倍もある犬の顔が突然出て来てフリスビーをキャッチした。
えっ!?
ドン! 「ギャワン!!」
今度は、巨大な顔にぶつかったトロスが跳ね飛ばされてしまった、轢かれたと言ってもいい
「ざまぁ!!」
と言いつつ戻ってくるオルと
「キィ━━ッ!」
奇声をあげて追いかけてくるトロス
「お、お、っ」
やたらとデカい犬の顔が、フリスビーを咥えて向かってくるのを見て、正直ビビってしまった
それはそれとして
「これってなに?」
空中から生えている巨大な顔を見ながら聞いてみる
「これのことか?」
・・・・・・
結果、分かったことは、犬の『モルフト』のようなものだった
召喚獣ノームの原型がモルフトだった、空中から突然腕が6本出てくる恐怖系の召喚獣、オル・トロスはこれと同じようなことが出来る、頭・前足の他に、後ろ足と尻尾も、巨大化したものを空中から突然出せるようだ。
あれだね、スタ○ド使いだ
戦闘には全く使えない、癒しの召喚獣だと思っていたが、これがあれば戦闘でも活躍できそうだ。
ただ、フリスビーはもうやめよう、もう一つ作って、クリオとマロン達が来てから彼らにやらせよう、このままだと本気で喧嘩しそうだし、それに結構疲れる‥‥
その日の夕方
「もう腕が動かないよー」
と言わせるまでオルとトロスは、クリオとマロンにフリスビーを投げさせていた
◇◆◇◆◇
大陸西側、コンセの村
「何でですか! 魔物の集落が出来てるかもしれないって言ってるじゃないですか!」
受話器に向かい声を荒げる男
「ええ! 分かってます! でも! っ‥‥クソッ!」
「どうだった‥‥? 聞かなくても分かるが」
「全然駄目だ! 話が通じないし、最後は無理やり通信を切りやがった」
「弱った‥‥明らかに魔物を発見する頻度が上がっているのに、このままだと‥‥」
「こうなったら村の皆で防衛するしか他にないんじゃ‥‥」
「出来なくもないが、その間誰が仕事をするんだ? この村だって裕福な方じゃない、このまま駐留の部隊が来てくれなかったら、そうするしかなくなるが‥‥」
そう言うと、この場にいた者達は重い空気に包まれた
ここ、コンセの村には三日前までは駐留の部隊が存在していた、しかし税収の少ないこの村の駐留は三日前に打ち切られている
部隊に空きがないという理由で、いつ次の部隊が来てくれるかも分からず、村人たちはかなり焦っていた。
焦る理由として
コンセの村はグースの生まれたグラースオルグの、丁度真南に当たる場所に作られている、つまり一番魔物の危険度が高い地域となる、今までは常に駐留部隊がいてくれたおかげで、なんとかなってきた。
そしてもう一つ、最近魔物の発見率が増えてきたこと、コンセの村でも薬草を採取する村人が二人ほど存在してる、この二人は『探知』持ちで危険と感じたらすぐに引き返してきていた。
しかしここ数日は、ほとんど入ることが出来ないほど魔物の数が多いという、そしてそのウチの一人が、今まで見てきた魔物とは少し様子が違う、という情報も持って来ている。
今魔物がが攻めてきたら、自分達で戦わなければならない、もちろん自分達だって魔法はある程度使えるし、武器を使った戦いだって出来る、しかし軍で鍛えられた軍人と違って自分達は素人、その内必ず被害が出るだろう、出て当たり前なのだ。
「‥‥クジュの村に新しい部隊が駐留するらしい」
その中でも一番若い村人、マークが静かに声を出す
「ああそうだな、あそこは一年も部隊が来なかったみたいだが」
「それで、それまで守っていたのがグースなんだろ?」
マークは一呼吸おいてから
「その‥‥グースは、軍とは関係ないらしい、政府が直接送り込んだらしいんだけど‥‥ここに呼べないかな‥‥」
「何を馬鹿なことを!」
「グースなんか呼んだら何が起きるか分かったもんじゃないぞ!
「‥‥でもさ、そのグースは一年もクジュの村を守ったんだろ? それに俺たちが他に頼れるものってあるか?」
「でもな!」
「じゃあ俺達だけでこの村を守るのか!? 守れるのか!」
「それは‥‥」
言い出しっぺのマーク本人に不安が無かったわけではないが、村の事を考え、何とか他の皆を説得し、何かあったら自分の責任でもいいとまで言って、村人たちの首を縦に振らせることが出来た。
・・・・・
数日後、コンセから一番近い移転門を通り、クジュの村に近い移転門へと移動し、クジュの村に着いたマークは、心なしか緊張していた、グースに直接会うというのもそうだが、引き受けてくれるとも限らない。
グースは軍に籍を置いてはいるが、軍とはあまり関係が無いらしい、つまり命令系統が違うことから、もしかしたら引き受けてくれるのではないか? と淡い期待を持ってはいた。
政府に直接のコネがないので、グースに直接直談判し、来てもらうようお願いしに来ることになった。
「‥‥なんだこれは」
マークはその村の異様な光景に困惑した、町のいたるところに土で出来た像が立っているからだ、裸の女性の像や裸の男性の像、子供の像から兵士のような像まで、ありとあらゆる場所に設置されていた
「おや? あんた見かけない顔だがどこから来たんだ?」
クジュの村の人が話しかけてくる
「自分はコンセの村から来たマークと言います、あの‥‥この土で出来た像は‥‥」
「これか? 北にいるグースの旦那が作ってくれたんだよ、あんまり出来がいいんでな貰って来たんだよ、ほら、あそこにある貝殻に乗ってる裸の女の像があるだろ? あれ家で貰ったんだよ、中々いいだろ?」
へっへっへと村人は笑っていた
グースが作った? これを‥‥、そうだグースに合わないと
「グースに合うことは出来ますか? お願いがあって来たんですが」
「おう、旦那ならいつも村の北側にいるから」
ありがとうと言葉を残しマークは村の北側に向かう
しかし何だこの村は、村中が彫刻だらけじゃないか、‥‥しかも一体一体硬化まで掛けられているし、ん? 何だあの高い‥‥櫓か? 結構な額を村の防衛に当てているようだな、政府から援助でもしてもらったのだろうか?
目立つ櫓を目指し歩き、そして、グースのいる場所に到着したマークは、一瞬で心臓を掴まれるような恐怖を体験した、しかしそれとは別に自分の目に映った物に困惑した。まず間違いないのは自分の見ている人物がグースだろう
ただそのグースは、公衆の面前では不適切な仮面を付けており、頭にはキラーラビットの耳のような形をしたものが乗っている、おそらく魔石。
どう見てもふざけてるとしか思えない、そしてグースのいた場所とは、まるで砦のような場所で、柵があり、櫓や立派な門まで付いていた、門の両脇にはダイヤウルフのような魔物の像が二体、北を睨むように配置されている。
そして周りには子供達が溢れ、遊具や小型のダイヤウルフのような小さい二匹の生き物と遊んでいた。
「おじさん誰だ? どこの人」
マークを見つけた子供が話しかけてきた
「コンセの村から来たんだ、君、この砦はこの村で作ったのかい? それとも政府にお願いして作ってもらったのかい?」
子供に聞くことでは無いと思うが、あまりにも良い出来の砦なのでつい聞いてしまった
「これはグースの兄ちゃんが一日で作ったんだよ、土で」
「えっ! 土、これが?」
櫓や柵も全部ここにあるのは土で出来ているという
ガウゥ!!
突然魔物の声がしたので、マークは慌ててそちらを見た、そこにはさっきの小さな生き物の顔の前に、更に大きな顔が突然空中に浮かんでいるのだ、その大きな顔の口には皿のようなものが咥えられてある。
危うく腰を抜かす所だったが
「あれは兄ちゃんの召喚獣だよ」
そう教えてくれた。
すべて土でできた櫓に柵、そしてあの召喚獣、なにより子供達が平気な顔でグースのそばにいる‥‥、間違いない、この人ならコンセの村を守ってくれることが出来る、
そう確信したマークは勇気を振り絞り、恐怖と戦いながら一歩一歩、グースに近づき
「わ、私はマークと言います、コンセの村からあなたにお願いしに来ました、どうか私の村を守って下さい」
ひっくり返った声でそうグースに告げた
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