35 / 260
グースの砦 ②
しおりを挟む随分奥に入り込んでいる人がいるな‥‥
召喚獣による昼の広範囲の『探知』をしていた時、やたらと奥まで入り込んでいる人の反応があった。 距離にして9㎞、村から離れていた。
あまり奥に行くなと言ってあったのに‥‥
『探知』を更に続ける、奥まで入り込んだ人が気になるが、他の場所も確認を怠らない、そして『探知』魔法の中継が届くギリギリの10㎞地点、5つの魔物の反応があった。
クジュの村に来て初めての魔物の反応だな、奥まで行っている人と進行方向は逆に進んでいるし、距離もそこそこ離れてはいるが‥‥
暫く召喚獣のポッポを、魔物と奥まで入り込んでいる人の辺りを旋回させ様子を見ていたが、魔物はそれまで進んでいた方向をクルリと変え、人がいる場所にと移動しはじめた。
これはまずい‥‥
俺は椅子立ち上がり、柵の外に飛び出す。ペガサスのコスモに乗って行けたらいいのだが、ポッポを出している以上、コスモは呼び出せない、一度俺の近くでポッポを魔法陣に帰還させなくてはならない、なかには2体以上の召喚、多重召喚も出来る人もいると聞くが俺には出来ない。
ポッポにすぐ戻るよう命令し、緩衝地帯に向けて走り出した。
◆◇
クジュの村に生まれ、家族のために危険な緩衝地帯まで足を踏み入れ、ずっと薬草を取っていた。畑を耕して暮らすことも出来るのだが、薬草を採取して売った方が金になるから続けている
長年の経験で、この場所のことはかなり熟知していると自信があった、あまり奥深くには入らず常に周りに気を配り、少しでも妙な所があればすぐさま村に引き返す、だから毎日無事に家に帰ることが出来た。
家に帰れば父と母、そして妻と子供たちが待っていてくれる、そして今日も何事もなく家に帰れる‥‥はずだった。
「風よ! 切り裂け!」
刀ように鋭利になった風がダイヤウルフを捉える、鋭利になった風はダイヤウルフの前足を切り飛ばした
「ギャウン!!」
前足を失ったダイヤウルフは、顔から地面に突っ込む、これでこの魔物は動くことが出来ない
「風よ! 切り…ぐあっ!!」
しかしダイヤウルフは一匹ではない、目の前にいた他の二匹に魔法を放とうとした時、横から飛び出したダイヤウルフに腕をかまれる、とっさの事に腕を振り回すと、腕に噛みついたダイヤウルフは振るった方向にそのまま飛ばされていった。
そして自分の腕からは、噛みつかれた部分の肉を持ってかれ、力を入れることの出来なくなった手からは、持っていた武器が落ちた。
「何匹いるんだよ!」
男は自分の腕に自信があった、村では自分が一番魔物と戦える、『風』と『水』の魔法を契約ができ、刀だって多少は扱える、だから目の前にダイヤウルフ3匹が現れた時、冷静に対処が出来た。自分なら出来ると‥‥
しかし、利き手の右手は血だらけで、刀を持つ力すら入らない。
『10㎞までは魔物がいないのを確認しました、ただ、用心してください』
1週間前ほどに来たグースが、毎日そう言って送り出してくれていた、自分は『探知』魔法が使えないのでこういった情報は助かる、実際に魔物はいなかったし気配すら無い。
『探知の後に魔物が移動する可能性もあるので、奥まで入らないで』
言われなくても分かっている、分かってはいたが‥‥
朝一番で一気に奥まで入り、時間と共に村に近づきながらの採取、そうすれば時間と共に魔物が南下してきたとしても大丈夫、この1週間はそうしていつもよりも珍しく、高く売れる薬草を採取することが出来た。
だから逆に欲が出てしまった
もうちょっとだけ奥に入ろう、もう少しだけ‥‥
そこは宝の山だった、誰も足を踏み入れない場所には、たくさんの薬草が生い茂っていた、男は大興奮したがその結果右手に大きな怪我を負ってしまった。
「風よ! 切り裂け! 切り裂け!」
魔物の動きが速いのに加え、数が何匹いるか分からず、でたらめに魔法を打ちながら逃げる他ない、背中を見せて逃げるのは本来してはいけない行為、しかし腕に怪我をした痛みが恐怖に変わり、何匹いるのか? それすら判別できないことに更に恐怖が増す、だから背中を見せて逃げてしまった。
男が対処出来ない数の魔物に見つかった時点で、男の人生はもうお終いだった。
悲鳴にも似た声を上げ、走り出した男は一度だけ後ろを見る、するとそこには、大きな口を開け、今にも頭に喰いつきそうな距離にダイヤウルフが‥‥
ヒュン! ドン
‥‥吹き飛んだ。
口の中に氷の槍を突き刺され。
吹き飛んだ魔物はそのままピクリとも動かなくなった
「間に合って良かった! 怪我は腕だけですか?」
見たこともない顔の男が問いかけてくる
「ああ、腕だけだ、あんたは?‥‥うっ!」
すぐに分かった、この心臓を締め付けられるような感覚、村に来た仮面のグースが、今は仮面を外して目の前にいた。思わず悲鳴を上げそうになるが飲み込む。
駐留していたグースか? 助かったのか‥‥
「全く、あれほど言ったのに‥‥」
グースはため息をついた後、同時に3本の氷の槍を作り出し、あっけなく魔物を退治してしまった。
・・・・・
「先に帰ってください」
グースの召喚した空飛ぶ召喚獣で、一足先に村へと帰ってこれた。
男が乗っている空飛ぶ生き物の姿を見て、騒いでいる人たちがいる。
「何だあれ? ヒュケイか」
「ありゃ? 違った、クリオのとこの親父だ」
「あの白いのって、グースの召喚獣じゃないか?」
「何であんたが空から来るんだ? あれ! 怪我してるじゃねーか」
「診療所の先生呼んで来い!」
「おい、お前何があった?」
村人にゆっくりと召喚獣から降ろされた男は、正直に今しがた遭ったことを話した
「実は‥‥」
・・・・・・
・・・・
・・
「はい、お疲れさん」
クルッポーと鳴いてポッポは光の粒に戻った。
夕方、一日の最後の『探知』を終え、外に設置してある土で出来た椅子に座り、同じく土製のテーブルで今日の日報を書いていた。
土で出来ていると言っても『硬化』で固めてあるので座っても汚れない、テーブルは一度焼いて、陶器のような手触りにしているが、椅子は焼いていない、焼くとつるつるした座り心地になってイヤだし、駅なんかによくある、プラスチック製の椅子って好きじゃないんだよね、お尻が滑って落ち着かない。
駐留する部隊が毎日書き込む日報は、後から交代で来た部隊の情報源になる、どんな魔物がいたか? 村にまで魔物が入り込んだか? そして魔物による被害など
魔物の数が急に増えたとなれば、近くに魔物の集落が出来たかどうかも判断できるし、村に入り込んだ魔物がいるとなれば、人の味を覚えた魔物がいるかもしれない、そうなるとまた村に来る可能性も十分ある。
日報に今日の事を記入していた時
「あ、あ、あの‥‥」
一人の村人が話しかけてきた、今は既にうさ耳の魔石は外してあるが、通常の『探知』は起きている間は常にしているので、近づいている人の反応は確認していた。だが話しかけられるとは思ってなかったけど。
「なんでしょうか?」
話しかけてきた村人は、どことなく今日助けた人に似ていた、
兄弟かな?
「その‥‥今日は息子を助けていただいて、ありがとうございました」
親でした‥‥
『生命の契約』のがあるおかげで、親子3代、同じような年代の見た目の人達がよくいる、この世界に来てそこそこ経つが、未だにこれには慣れない。
「怪我の具合はどうでしたか?」
「はい、2週間もすれば筋肉も元通りになり、また働くことが出来ると‥‥」
「それは良かった‥‥、ただ、今回はたまたま見つけたから良かったものの、自分のする『探知』は薬草を採取する人たちから見て便利かもしれませんが、本来は魔物の奇襲などを避けるための物です、あまり鵜呑みにしてしまわないようにお願いします。」
「はい、息子もつい欲が出てしまったと言ってましたので‥‥」
その男性はこの後もお礼の言葉を言ってきて、最後にもう一度
「今日は本当にありがとうございました」
と言って帰って行った。最後にはかなり脂汗を額に浮かべていたので、かなり我慢していたのだろう、走って帰って行ったし
・・・・・
次の日
ポッポを使っての朝の『探知』をしている時、なにやら話しかけられているなと感じ、そちらを見てみると、そこに男の子が立っていた、生まれたばかりの小鹿の用に足をプルプルさせ、泣きそうな顔でこっちを見ていた
「何かな?」
「あ、あの‥‥‥‥、昨日はお父さんを助けてくれて、ありがとうございました!」
そう言って男の子は‥‥
逃げて行った、もう全力疾走だ、壁の所を曲がった所に別の子供が二人いた、怖いから友達と一緒に来たんだろう
「‥‥‥‥朝食にしよう」
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる