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顔合わせ ②
しおりを挟むドアを開けると、その部屋にいた者達が全員立って出迎えてくれる
一番最初に目に飛び込んできたのは、髭面でガタイのいい男性、一緒に大陸深部を通過したベルフ・ラーベだった。
ニヤリと笑いそうになるが最初が肝心、表情を隠し真顔で新しく所属される隊員達の前に立つ、ドアの向こうで笑われていたので今更だけど
「本日付でハヤト隊所属になりました、ベルフ・ラーベです」
おひさーとか声を掛けたい位嬉しい、3カ月も一緒に居たのでベルフの実力は良く知っている、また彼を頼りにさせてもらおう
「同じくサコナ・ソルセリー」
うーん、おかしい‥‥
「同じくエクレール・ソロウ」
よく覚えている、俺が救助に行った女性で回復系の魔法が使える女性兵士だ。
全ての隊に回復魔法が使える人員が配属されるわけではないので、エクレールがいるこの部隊はラッキーだと言える
「同じくライカ・ダーモン」
一瞬、「?」となったけど、クジュ村に居たレンダルの兄ちゃんだ。
あんまりこの人とは話した事が無かったな、あれ? この人フレックス隊はどうしたんだろう‥‥
それはさておき、一応形だけ俺も挨拶をする
「ハヤト隊隊長のウエタケハヤトです━━」
「と、タクティア・ラティウスですよー」
タクティアが挨拶の途中で割り込んできた。しかも軽い‥‥そんなことされると何だかコンビみたいで嫌なんだけど
それはいいとして‥‥
「ソルセリーは何でここにいるの?」
顔を見た瞬間からおかしいと思っていた。この言い方は失礼かもしれないけど、この言葉しか思い浮かばない
「私がいたら迷惑なのかしら?」
やたらと棘のある様な言い方で返されてしまう、ソルセリーは以前のようなぼさぼさした頭ではなく、美容院に行ってきました! みたいなおしゃれな感じになっている、以前はまぁ、仕方ないとして何だか漫画のキャラの様な髪型になっている、右目の方だけにちょっと髪が掛かるような
「その髪型だと目がチクチクしませんか?」
と言いたくなる、実際にその髪型を見たのは生まれて初めてです
「迷惑とかじゃなくて‥‥軍を辞めたとか聞いたんだけど」
軍を辞めて子供を作るって聞いたけど?
「どこの誰がそんな事を言ったのかは分からないけど、私は辞めるとは一度も言ってないわよ、‥‥貴方が部隊長になるって聞いてね、何だか危なっかしい事をしそうだから、来てあげようと思っただけよ」
ツンデレっぽい事を言うソルセリー
ツンデレとは実際に存在するのか? 一度兄さんと議論を交わしたことがあるが、最終的に好きな人物に刺々しく当たり散らす女性はいないと結論付けた。
なので
「‥‥どうも」
この場はそう返すしかない、はてさて、ソルセリーがいるという事は、この隊は破壊の一族の部隊となるのか? だとしたら‥‥
「タクティア、後の人達は今度いつ合流するの?」
「他の人? いえ、これで全員ですよ」
「全員‥‥そうなんだ」
うーん、タクティアめ何か企んでいるな、ソルセリーがいるのにたった6人てのはおかしい‥‥後で問い詰めてやる
でも、それは後でいいとして‥‥アレをやらなきゃ
「ではさっそく君たちに最初の任務を言い渡す」
キリッとした表情を作り新しく所属する隊員達に告げる
「私と一緒に酒を飲むことだ」
そうそう、一緒に飲んで親睦を深めなきゃ、これから同じ隊になるんだからね
「悪いけど、この後用事があるから遠慮させてもらうわ」
え?
ソルセリーがお断りしてきた
「すまないが私もこの後用事があるので、また今度お願いしたい」
あれ?
エクレールがお断りしてきた
「同じく自分も」
あらら?
ライカもお断りしてきた
・・・・・
・・・・・
今日は顔合わせだけだったので、挨拶やらその他諸々の用事が済むと、お断り3人衆は部屋から出て行った。
残ったのは俺とタクティア、そしてベルフだけだった
「さ、行きましょうか隊長殿、今日はどこにでもついて行きますよ」
ニッコリ笑顔のベルフが俺の肩を叩く
「うん‥‥」
てっきり皆ついてくると思い込んでいたので、今非常に寂しい気分です
「私ももちろん行きますよ、ただ出来ればお酒はちょっと苦手なので」
「俺も特に好きって訳じゃないから、普通に何か食べに行こうか」
「ハヤト隊長の奢りですかね?」
「おう! 奢っちゃる! さあ、黙って俺について来い」
寂しさを誤魔化す為にわざと大きい声を出してみる
・・・・
・・・・
そんなこんなでやってきましたオヤスの喫茶店
「チリンチリン」
ドアに付いている鐘が鳴り店員さんが気づいてくれる、何度も来ているだけあって、店員さんは何も言わずとも俺達を個室に連れて行ってくれた。
「ハヤト、ここはもしかして天使ネクターがよく来ている場所じゃないか?」
ベルフは律儀に『隊長』と付けていたけれど、『ハヤト』でもいいのよと言って見ると照れながらハヤトと呼んでくれた。こっちも何だか恥ずかしくなるから顔を赤くしたりしないで欲しい
「そうだよ、俺とネクターが愛を育んでいる場所だよ、俺とネクターがね」
「あはは‥‥いや、でも天使ネクターって男━━」
「ネクターは俺の女ね、間違えないように」
「あ、ああ、そうか‥‥」
全く、あんなに可愛いのに男と見間違えるなんて、ベルフは目が腐ってるな
「店内での淫らな行為はご遠慮ください」
タクティアが個室の壁に貼ってある注意書きを、声を出して読んだ。
「「・・・・・・・」」
タクティアとベルフが、はっ! とした後目を見開き、何故か俺を見てくる
何で俺を見るんですかね‥‥でもそれはどうでもいいとして
「注文でもしようか? 俺はもう決まっているんだけど」
「うーん‥‥おすすめとかあるか?」
「まずは苦パナンサンドと‥‥デザートにトロンアイスとかはどう?」
「トロン‥‥って、あの苦いお茶の事ですか?」
「そうだよ」
「あー俺はそれ無理だな、一度トロン茶を飲んだことがあるが、暫く舌に何か渋い物がこびりついて嫌な思いをしたことがあるからな、あれは本当に年寄りの飲み物だよ」
「いやいや、思っているのと全く違うから、騙されたと思って頼んでみてよ味は保証する」
「保証って言ってもな、そこら辺の雑草を炒めて、うまそうに食ってたハヤトに言われてもな」
「雑草じゃありませんー、野草ですぅー!」
・・・・
・・・・
「美味いな!」
「中々ですねこれ」
結局頼んだ二人は喜んでそれを食べていた。俺はグースセットとクオルシゼリーを頼み、ゼリーに舌鼓を打っていた。
前回クオルシゼリーを食べた際に、カップの様な入れ物にゼリーを入れ、その上から白いシロップを掛けてくれとお願いしたらその通りに出してくれた。他のお客にもそうして出すようにしている様子だ。
少々お腹に食べ物が入ったころ合いをみて、ここでちょっとタクティアを問い詰めたいと思う
「タクティア、ソルセリーの事何を考えているの?」
「考えていると言いますと?」
「何故この隊に入れたか、ってことだよ」
「ああ、その事ですか」
タクティアはトロンアイスが気に入ったのか、あっという間に平らげ、現在2つ目に入っている
「ソルセリーはですね、最初入れる予定では無かったんですよ、軍を辞めるって噂も私の耳に入って来ていましたし‥ですが、ベルフ・ラーべを勧誘する時にたまたま側にいたんですよね」
チラリとベルフを見る
「タクティア殿が行っている事は本当だ」
嫌だな~タクティアって呼んでくださいよ~、と、上機嫌なタクティアそれはさておき
「で?」
「それでですね、ここにいるベルフを勧誘していたら、『私もその隊に入る事にするわ』って言われましてね、結果そうなったんです」
「‥‥それだけ?」
「それだけです」
「よく軍から許可が下りたね」
「元々退役するって言われてましたし、残ってくれるなら軍としても助かりますからね、でも本当は退役してもらって血を残してもらった方がいいんですが、まぁ、しかしソルセリーが入隊すると言ってくれたおかげで、ハヤト隊の懐はとても温かいですよ、好きな物資を好きなだけ支給してくれますからね、
資金的な物だって中隊規模の資金が使えるし、しかも人数はたったの6人しかいない、軍の中でも最も裕福な部隊になったんじゃないですか?、お金が好きなハヤト隊長には悪い話ではないと思いますよ」
「べ、別にお金が好きな訳じゃないし、必要なだけだし」
「そうですか? でもなんにせよ、物資や金銭で困ることは無くなりましたよ」
「しかしタクティア殿、たとえソルセリーがいたとしても、たった6人で中隊並みの物資というのは、他の隊からの「やっかみ」とかが酷くなるのではないでしょうか?」
「いえ、それは無いですね、これは前々からなのですが今、軍の予算は海軍に重点的に回されているんですよ、そのせいで辺境の村の駐留部隊を割いたり、支給品が質の悪い物に変えられたりしていますからね、最近になって末端の部隊にもそういった情報が流れるようになってきましたから、どっちかと言うと、やっかみは海軍の方に向かうでしょう。
ただ、それじゃなくてもたった4人で深部を抜けてソルセリーを救出と言う偉業を成し遂げた者達に対して、文句を言う輩なんていませんよ、それに相手は魂を食べると言われたグラースオルグですからね」
ソルセリーがこの隊に入る事となった経緯は分かったけど、本当にそれでいいものか‥‥
「なあハヤト、グラースオルグの事なんだが‥‥、その後あの姿になったりしたのか?」
「ん? 一度だけね」
「そ、そうか‥‥それで意識は有ったんだよな‥‥」
どうやらベルフはあの姿がお気に召さない様子
「意識は有ったね、いやぁ~びっくりしたよ、顔を洗おうとしたら変身していたからね、どうやら寝ている間にそうなってたみたいでね」
「へぇ~以外に簡単になれるんですねぇ」
「いや、なろうと思ってなれる物じゃないよ、多分生理現象と同じなんじゃないかな」
「生理現象は違うと思うんだが‥‥」
「生理現象で思い出したけど、あの姿になったらネクターが会いに来てくれるって言ってたからさ」
「会いに来るって言ってたか? 警告とか注意のたぐいだと思ったんだが」
「来てくれるならどっちでもいいよ、でね、そのままの姿で暫く待ってたらもう一つの生理現象が来てね」
「もう一つ?」
「うん、言ってしまうとおしっこなんだけどさ」
そう、朝には絶対に来るアイツだ
グースの姿を間近で見たことのあるベルフは
「おしっこ?‥‥‥‥あ、あー、あの姿でか?」
「そう、いや~焦ったよ、あの姿の時に来られるとどうしようもないからね」
グースの外見は鎧姿になっている、その鎧を取れないかと色々試してみたが、脱着できる様な場所はどこにも無く、限界が近づく中、時間だけが過ぎていった。
ネクターは来ず、尿意だけが近づいてくるという極限状態の中、何とかギリギリに変身が解け、瞬間にパジャマとパンツを一緒に脱ぎ事なきを得た。
「あ、そうだ、話は変わるけどタクティア、この後任務とかどうなっているの?」
本来隊長である俺に上からの指令が届くはずなんだけど、何故かタクティアに指令が届くようになっている、直接本部に出向き聞いてくるようだが。
それは別にいいんだけど、このタクティア何故か直前にしか教えてくれない、出来ればもっと早く教えて欲しいんだけど‥‥こっちも予定とかあるし、どうにかなりませんかね?
「次の任務はですね、だいぶ前から決まっていたのですが」
ほらね、決まってるのにずっと内緒だったんだよね
「ヨルド要塞の攻略になりますね」
「タクティア殿、ヨルド要塞とはどこにあるのか?」
「ベルフやソルセリー達が破壊しようとしていた敵拠点ですよ」
「ヨルド要塞というのか‥‥」
「ええ、ハヤト隊長達が連れてきた捕虜によって名前が判明したんです、あの要塞はハルツールからマシェルモビアに進行する時、進路上の丁度西側にあって、あそこをまず落とさないと挟撃される可能性が大きいですからね。
今回はラブル中佐率いる連隊に組み込まれる事になります、ただ、こちらにはソルセリーがいますから無謀なことを要求される事はありません、小さいながらも破壊の一族の部隊になりますからね。 万が一の事があれば、ハヤト隊長の判断で一目散に撤退することも可能です」
「へぇー、それでその要塞って落とすのが難しいの? 連隊を出す位だからよっぽどだと思うんだけど?」
「俺は2度ヨルド要塞の破壊任務で向かったんだが、まずたどり着けないんだよ、たどり着けない処かその姿すら肉眼で見た事は無い」
「カチン」と皿の上にスプーンを置き、ベルフは深くため息をついた
「2度の破壊任務で、2回とも途中で奇襲され包囲された、多くの仲間を失い隊も壊滅状態にまで追い込まれた。2度目がハヤトが救助しに来てくれた時だ。
最初の破壊任務で向かった時は、ソルセリーの姉がそこで戦死している、俺もそうだがソルセリーにしても因縁の場所だろう」
そう言ってベルフは目を閉じた
「今現在その要塞の情報なども、数十もしくはそれ以上の偵察隊の犠牲の上にありますからね」
タクティアとベルフは要塞についてそう説明してくれた。
2度行ったうちのの2度とも敵に発見されて奇襲されている、『潜伏・隠蔽』の魔法を掛け、姿を完全に消し奇襲したというのは分かった。
問題なのはよほど高性能な探知の魔道具などを保持している可能性がある、それを使いハルツール軍を発見した、俺のうさ耳探知魔石も比べ物にならない物があるんだろう
ただ、こちらの部隊はかなりの人数だったはず、それを奇襲とはいえ壊滅まで持っていくには相手もそれなりの兵数がいたはず、その人数をどうやって移動させたのか?‥‥
・・・・・
・・・・・
食事も終わり喫茶店から出ることとなる、帰り際オヤスに
「出来れば店が閉店した後来ていただけないでしょうか?」
と、言われたので‥‥‥
やってきましたオヤスの店、本日2回目
「で? 何でいるの?」
「イヤだなぁ~、ハヤト隊長の行く場所ならどこにでも付いて行きますよ」
何故だかタクティアが先に待っていた。
あんまり深く考えないようにしようかな
オヤスが閉店後に来店してくれと言った理由は、小豆とチョコレートの事であった、うーん‥‥すっかり忘れてた。
「『あずき』は多分大丈夫だと思います、言われてた『よーかん』ですが、ゼリーと同じように調理してみたら結構それっぽい感じにはなったかと」
ふむ、それっぽい感じっていうか‥‥羊羹そのものだな、色は少々白っぽいが見た目まるっきり羊羹、長方形のその物体を『風』魔法で切る、風で切ると結構周囲に飛び散るのだけど、鍛冶仕事なんかでよく使ったりするので、俺にも熟練の技が身についてきたのか? 柔らかい物でも飛び散らずキレイに切れる、自分の技術力の高さに自画自賛してみる。
しかし目の前にいる2人は『風』魔法を契約して無く、使ったことすらないので、どれだけ難しいことを俺がしているのか理解できていない
『風』魔法なんだから切れて同然だろ? そんな事より、包丁でも使ったら? ぐらいにしか思って無いんだろう、分かってもらえないのが悲しい‥‥
切った羊羹を一切れ口の中に放り込む
あぁ‥‥「ういろう」だわこれ、羊羹じゃない、でも、まぁ‥‥‥
「美味しいと思うよ、思っていたのとは違ったけど、おやつにはいいんじゃないのかな?」
「え? おやつですか? てっきり普通の食事のお供なんかにと思っていたんですけど‥‥」
「甘いパナンなんかに挟んで食べるのもいいかもしれませんね」
普通の食事にか‥‥そう言えばこの人達味覚がおかしいんだった。
「ういろう」は名前がそのまま「ういろう」でお店で提供することにしたようだ。
オヤスは俺に味の確認をするまでお店では販売してなかったらしい、確かにメニューには載っていなかった。
そしてチョコレート、都合のいい型が無く底の浅い皿に入れ、固めたものが出された。それを割って口に運ぶ、オヤスがなにやら期待の目でこちらを見ているが‥‥‥
うーん、何か惜しい‥‥チョコレートみたいだけど違う、でも、これはこれで━━
「美味しい!!」
口に入れたチョコレートを吹き出しそうになる、いつもはそんな大きな声を出さないタクティアが叫んだ。
「美味しいですよ! 凄く美味しい!」
それを聞いたオヤスが
「そうでしょう! そうでしょう! 私も最初味見した時コレだ! って思ったんです」
オヤスがぐるりと俺の方を見て
「私、これで商売を始めようと思うんです!」
なんて言い出した、商売ならもうしてるだろうに‥‥
「私ね、起業しようと思うんですよ! 会社です、会社を立てるんです!」
オヤスはとても興奮した状態で早口でまくし立てる、そして俺の手を取り
「それで貴方には会社の役員をしてほしいんです」
興奮したオヤスに気押されながら
「い、いや俺軍人だし、軍を辞める気は無いんだけど」
「ハヤト隊長軍を辞める必要はありませんよ、軍の活動に支障が全く無かったり、国に不利益になるようなことが無かったら軍人でも商売は認められていますから、自身で武器・防具の修理などをしている人達の中には、休暇中に簡単なお仕事を手伝って、金銭を稼いでいる人達もいますから」
「いや、それでも役員はどうかと思うけど、俺そういうのよく分からないし」
オヤスは更に強く俺の手を握り
「仕事などは私に任せておいてくれればいいんです、ただ役員の地位にいるだけでいいんです」
とにかく必死に説得してくる
「ただいるだけって‥‥それがオヤスの会社に何の得があるの?」
何かアイディアをクレとかそんなのだったら別にタダでもいいんだけど、ほとんどオヤスに丸投げだし
「この作り方もそうでしょうが、他の今現在存在する会社などはすぐに調べ真似をしてくるでしょう」
うん、そうだね
「そうなれば誰が最初にそれを発明したのか? となります、現に今売りに出しているメニューだって、他の喫茶店などから偵察に来ますし‥‥もしかしたら見間違いの可能性もありますけど、大企業からの偵察もありました。
立ち上がって店の中を覗き込む様な仕草を何度もしていましたから‥‥だからこそ! 発明した貴方をどこよりも先に囲っておきたいんです!」
「なるほど‥‥」
同じような理由で部隊を一つ作ったタクティアが納得する
「ハヤト隊長、軍への申請は私がしておきましょう」
「ありがとうございます」
「いえいえ、これしきのことお礼を言われるほどでもありませんよ」
「うん」とも言っていないのに決まってしまった、前々から感じてはいたけれどタクティアは俺のマネージャーみたいだ。知らないところで色々と勝手に決めてしまう
何もしなくてもいいなら別になってもいいけれど、会社が負債を抱えて倒産とかしたら俺に不利益とかこないよね?
それは大丈夫です、とオヤスは言っていた。
取りあえずチョコレートから初め、準備が整ったらういろう、そしてクオルシゼリーと売り出して行くらしい
「それでですが‥‥お願いがありまして」
何もしなくてもいいのかと思ったら仕事があるらしい、新しい商品のアイディアかな? と思ったら宣伝用のポスターを出したいからそれ用の写真を撮りたいと、それに俺を起用したいと言って来た
「嫌だけど、俺よりも有名な人がいっぱいいるんだから、そっちに頼んだらどうなの?」
「とは言いますが、資金的な物もありますし‥‥それに執行役員の貴方だったらこの国では既に一番の有名人ですから」
あ、もうオヤスの中では俺は執行役員なんだね‥‥
「ハヤト隊長だったらマシェルモビアでも有名ですからね」
「‥‥それって、両方とも悪い意味での有名でしょ?」
取りあえずポスターの事はお断りをしておいた。
もう一つチョコレートを作る過程で出てくるココアの方だけど、飲み物としては不合格、その代わり食用油として使うことが出来るとオヤスに言われたが、信じることが出来ず取りあえず飲ませてもらった、結果はオヤスが正しかった。
それとオヤスの会社の役員になる話だけど、軍の方で許可が下りなかった。
ただ顧問ならいいという事で、俺はオヤスの会社の顧問になった。
しかし、それを正式に聞いたのは数か月後、申請をしてくれたタクティアが教えてくれなかったからだ。
・・・・・・
・・・・・・
やっと着いたか‥‥
ヨルド要塞攻略のため、第一キャンプ地に一番近い移転門から軍用車で出発し、たった今第一キャンプ地に到着した。
今日はここで夜を明かし、明日第二キャンプ地に向けまた軍用車で出発をする。
いつもはコスモに乗ってひとっ飛びだったけど、他の隊員がいるのでそれも出来ない、コスモに慣れてしまっていたので、軍用車に乗ると何だか疲れてしまう、せめて竜翼機は手配出来なかったんですかね?
「それでは報告に行ってきます」
第一キャンプ地の簡易指令室に「今着きました」と報告するためタクティアが向かった
いっそのことタクティアが隊長をしてくれたらいいのに‥‥タクティアにそれを言ったら
「ははは、ハヤト隊長は変わった冗談が好きなのですね」
と言われた、結構本気なんだけどな
それはさておき、今はポッポを召喚している、以前はクルッポークルッポーと鳴き五月蠅いほどだったが最近は何故だか鳴かなくなった。
それはいつからかは覚えてはいないが、やたらと大人しい
以前はよく頭の上だったり肩に停まっていたのが、どちらかと言ったら肩から腕の方に停まる様になった。
朝起こしてもらう時もゲシゲシ蹴ってきたりしていたのだけれど、足で少し突っつくような起こし方をしてくる
元気が無いのかな?と思ったけどそうでもない、召喚獣も成長するのだろうか?主に精神的な意味で
元気が無いと言ったらソルセリーも元気が無い、移転門から軍用車でここに来るまでほとんど言葉を発していなかった、前々回の任務で姉を亡くしたせいだろう、何か言葉を掛けてあげられればいいのだけど、良い言葉が思いつかない
ベルフも似たような状態だった、ライカは知り合いがいたようでそちらに行っている、現在俺のそばにいるのはエクレールだけだった。
「ハヤト隊長は力が有り余っているのか? 先ほどからせわしなく体を動かしているが」
「有り余ってはいないよ、ずっと座りっぱなしだったし体が固まっててね、暫くは座りたくない」
「ふふっ、そうだな、私も疲れてしまったよ」
と言いつつ、ベンチに姿勢正しく腰掛けている
「そうだ、以前は用事が有って断ってしまったが、要塞の攻略が終わったらこの隊皆で飲みに行かないか?」
「お!いいよ」
任務終了後の楽しみができた。
ハルツールに戻ったらデュラ子の新しい服も買ってあげなきゃならないし、帰ってからも忙しくなりそうだな
◇◆◇◆◇
「おい、ポージュもう少しで到着するぞ」
アルフレッドはゆさゆさと寝ているポージュを揺さぶる
「ん? え? おっと、やっと着くのかい」
まだ眠そうなポージュは軽くあくびをする
フレックス隊長が軍を引退し、ポージュとアルフレッドは二人一緒に他の部隊にへと移動になった。
そして今回、ラブル中佐率いる連隊の一部隊として合流する事になっている
「ライカはもう着いているかねぇ」
「さあ、どうだろうな」
ライカとは別の部隊へと別れてしまったが、やはり見知った者とまた会えるのは嬉しい物だった
「それにしてもライカも出世したねぇ、よりによって破壊の一族の部隊に配属されるだなんて」
「そうだな、しかもその部隊の隊長はハヤトだからな、召喚者なのに隊長になるなんてな」
「大陸深部を通過する偉業を果たしたんだ、それくらい当然さ、アイツはやる時はやると思っていたからね」
「まぁ、あの二人に会えるのは楽しみでもあるな、ハヤトにはもう威圧が無いみたいだから安心だしな」
アルフレッドはハヤトの威圧にビビりまくっていた以前の隊長、フレックスを思いだして笑う
ポージュも同じことを考えたのか顔には笑みがこぼれていた
軍用車は大陸東部最後のキャンプ地に到着した
「やれやれ体が固まっちまったよ」
ポージュは軍用車を降りて軽く伸びをした後、その足を止めた
「‥‥何だいこりゃ?」
ポージュの目に移ったのは辺り一面に敷物が敷かれ、その上には多くのけが人が横たわっていた、テントには収まり切れず外にまで溢れている光景だった
「おい! 今来た部隊の中に回復魔法を使える者はいるか!?」
まるで怒鳴るかのような声の救護班らしき男性
「ああ! 俺が使える! まずどうすればいい!?」
さっと車からアルフレッドが飛び出してくる
「助かる、まずは━━」
そのあまりにも悲惨な状況をみてポージュは思った
とんでもない任務に付いてしまったようだねぇ‥‥こんな時フレックスの勘はどう判断するんだろうかねぇ‥‥
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