異世界陸軍活動記

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世界の始まり ①

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 その少年がこの星を見つけたのは本当にたまたまだった。
 周りを見渡した時、チラリと目に入ったその星を興味本位で覗いたのが始まりだった。

「うわぁー! 何だこの星のやつら、似たもの同志で殺し合ってら」

 少年が見たものは人と呼ばれる種族が、同じ種族の集落を襲っている場面だった。
 鈍器で老若男女問わず殴り、犯しそして殺す、集落から引き上げる際には更に略奪をする

 その少年はニコニコしながらその光景を見ていたが、どうやら持ち物が一杯でそれ以上奪うことが出来ず帰るみたいだった。
 その者達が進む進路の先を何気なく見たところ、その略奪をした者達の住む場所であろう集落が同じように略奪を受けていた。

「ぷっ!!」
 思わず吹き出してしまう、自分達の集落に帰る者達の顔はとても晴れやかで皆笑顔、少年は笑うのを抑え我慢する、この後とてつもなく面白い物がまっているからだ。

 集落に着いた者達は、家を燃やされ家族を殺され、そしてその荒れ具合に戸惑い驚き泣き叫ぶ

「だーっはははは!!」
 久しぶりに腹の底から笑わせてもらったその少年は、この星を心底気に入った。
 他の場所も覗き見してみたが、同じような光景がそこら中で繰り広げられている。

「面白い、面白いよ! 気に入った! 暫くここで見ていることにする!」

 たまたま見つけたその日から、少年は新しい娯楽を手にし毎日のようにその星を飽きる事無く眺め続ける、そんな時間がいつまでも過ぎていくと、ふと横からか細い声が聞こえる

「あぁ‥‥可哀そうに、あぁ、可哀そうに」
 泣きながら食い入るように星を見つめている少年がいた。
 
 茶色で肩まで伸びる髪を持った少年、いつからいたのか分からないし特に興味もない、多分この横にいる泣いている少年も同じ気持ちだろうと思い特には気に掛けなかった‥‥
 
 が、いつまでたっても泣いているその少年に少しだけ興味を持つようになった。
 何で泣いているのかその理由が知りたいし、何より関わったら面白い事になりそうな予感がしたからだ。

「なあ、お前何で泣いているんだ?」
 少しからかってやろうと声を掛けてみる、それに対しての返答が

「あれを見てよ、皆あんなに苦しそうにしているじゃない、でも僕にはどうしてあげることも出来ないんだよ」
 そう言って少年は目から次々に涙を流す

 その少年が流す涙を見て更に笑いがこみあげてくる

 やっぱこいつ面白いや

 新しいおもちゃを手に入れた気分になった少年は、泣いている少年の名前を聞いてみることにした

「なぁ、お前なんて名前なんだ? 俺はカネオンって名前なんだ」

「僕はユーサリー‥‥」

「そっか、なあ俺達これから仲良くしようぜ!」

「えっ? 嫌だよ」

 断られると思ってなかったカネオンは、足の力が抜けがっくりと後ろに倒れそうになるが‥‥

「そんな事言うなよ、まぁ、仲良くしようぜ」
 無理やりユーサリーと肩を組み自分の方に引き寄せる

「ちょ、ちょっと待って、嫌!」

 嫌がるユーサリーを笑いながら捕まえるカネオン、最初は逃げていたユーサリーもしつこく話しかけてくるカネオンに諦めたのか、暫くすると逃げもせず普通に話をするようになっていった。

・・・・

・・・・

 長い長い時が経つ、少年二人にして見れば大した時間ではないが、それでも二人は少年から青年へと姿が変わるくらいの時が過ぎた。

「おいユーサリー何しようとしているんだ?」

 少年が青年になる程の年月を重ねても、この星の人達は最初に見た時と変わらない生活を送っていた。
 あれほど殺し合っているにも関わらず人口は減るどころか少しずつ増えている、カネオンはいつもソレが不思議だった。そんな時ユーサリーは不思議なことを始めた。

「私はこの星の人達に直接手を出すことが出来ない、それはこの星の人達を救う事が出来ないという事を意味している」

 ユーサリーは最初に会った時と違い、時たま難しい事を言うようになった。
 髪も伸び腰にまで掛かっている、このまま行ったら髪を引きずって歩く様になるのか? 引きずるようになったら、わざと踏んでみようか? そんな事を考え今から楽しみだったりする

 あの泣き虫が変わったもんだな‥‥
 カネオンは最近しみじみそれを感じている

「ああ、そうだな、それで?」

「もう一人の私を作ろうと思う、その者に直に人々に触れ、話をし、この星の人達を導く様に託したいと思う」

 なるほど‥‥、直接あの人を弄るってことか‥‥、それは絶対に面白い事になりそうだな!
「よし、俺も手伝おう!」

「そうか‥‥感謝する」
 ユーサリーはゆっくりと目を閉じた

「いいっていいって!」

 取りあえずどうやって作るのかユーサリーのする事を観察してみる、ユーサリーの体から光の鱗が剥がれるように足元に集まり形が形成される、そして時間を掛け一人の幼い少女に姿を変えた

 少女は体が出来上がるとじっとユーサリーを見つめている、どことなくユーサリーに似た容姿だった

「お前は今日からサーナと名乗るといい」
 サーナと名付けられた少女は膝を付き頭を垂れる

 なるほどそうやって作るんだな、よし!
 カネオンも同じようにしてもう一人の自分を作ってみる、ユーサリーと同じく光が体から剥がれ、目の前に幼い少女が現れる、少女はずっとこちらを見つめていた

 ‥‥ん? あ! そうか名前か
「今日からお前はマシェルだ、いいな?」

 マシェルと名付けられた少女はピクリとも動かなかった

「あれ? 失敗したか?」

 そう思ったが、マシェルは一度瞬きをしてからスタスタとどこかに行ってしまった。

「ふふふふ、カネオンにそっくりだな」

「どこがだよ‥‥」

「自分が興味を持った物以外は、全て無関心な所だ」
 ユーサリーは楽しそうに笑っている

「俺、そんな性格か?‥‥あれ? という事はだ、アイツは俺に全く興味を示さなかったって事だな」

「ふふふ、そうなるな」

 この星を見始めて初めて寂しいと感じたカネオンだった


 ・・・・

 ・・・・

 カネオンがもう一人の自分を作ったのは、ユーサリーの作ったもう一人の自分の邪魔をしてやろうと思った事も関係している、ユーサリーのした事と真逆の事をしてやろうと‥‥何故って? 楽しいからに決まっている。

 だがマシェルとサーナは、まだ真っ白な状態なので教育が必要になる、ユーサリーがサーナの教育を始めカネオンもマシェルの教育を始めた。

 がしかし、カネオンは途中で飽きてしまい、マシェルをユーサリーに押し付けてしまった

 結果、二人の少女はまるで仲の良い姉妹のようになった。
 性格が活発なサーナと、カネオンが作ったとは思えないほどおとなしいマシェル、二人はいつも一緒に行動をしていた。
 そしてユーサリーの教えの元次々に知識を吸収していき、長い時間が過ぎた。


 ・・・・・

 ・・・・・


 少女から大人の姿へと変えたサーナとマシェルは、この日初めてこの星の人に介入することになる、さて、どうなるのかと期待に胸を膨らませカネオンはそれを注視していたが‥‥

「えっ!」
 口をポカンとあけるしかなかった

 この星にはいくつもの魂が存在する、それは今まで死んだ人たちの魂、その魂の一つ一つが無念や怨念を抱え星に充満している、その魂達も自身の死に納得すると浄化され、新たに新しい体を求め、そして生まれ変わる、今まではそうだった‥‥

 しかし彼女達がした事とは、自分達が力を存分に使える土台を作る為に、その人の魂を力に変換した。

「あ、あはは、あはははははは」
 あっけに取られていたのが徐々に喜びに変わる

「だっはははは! やりやがった! すげーことしやがった!」

 カネオンは心の底から歓喜した、自分は星の人達が苦しんでいたり泣いていたりすると喜びを感じる、しかし、魂を消すなんて事‥‥いくら何でもそこまではしないし自分には出来ない、そこまで非道ではない。

 しかし、それをあの二人はやってしまった。
 多分ユーサリーの入れ知恵なんだろうが‥‥‥

「ユーサリーもそれをしちゃうのか? ひどいなぁ、まぁでも面白いからいいんだけど」

 ただ彼女達二人の行動はそれだけでは終わらなかった。
 魂を変換した力を使い、離れていた大陸と大陸、島々を繋ぎ合わせ、一つの大きな大陸を作ってしまった。
 多分離れていたら人達が不便だと思ったんだろう、通常島から島には船で移動をしている、その船で事故に遭い命を落とす者も多かった。

「あーあ、そんなことしたら‥‥」

 小さな島では既に完全に統治されていた場所もある、それが全て一つの大陸になった事でさらなる領土を求めて次々に争いに発展していく

 ユーサリーは争いを招くためにそんな事をしているのかと思ったが、少しだけユーサリーの事気になり、覗いてみたところ‥‥‥ユーサリーは頭を抱えていた。

「ああ‥‥人々よ何故そなた達は争うのか‥‥」

 吹き出しそうになる「お前のせいだろうが」と口から出てきそうになったが、サッとその場から離れ腹を抱えて笑い転げた。

 一つの大陸になった事で、生存競争に負け絶滅する生物や植物が増え続ける、更にこの星の気候を操作し常に一定の温度を保つように作り変えてしまった。
 その事で更に動植物が数を減らすことになる

 極めつけは瞬時に場所を移動できる『移転門』と言う移動装置を作った。これにより更に争いはより遠くへと広がっていく‥‥‥

 
 いやはや、この星は特に楽しい、いつまでもこのような時間を過ごせればいいなと、この星に来てそう思っていた。

 しかし、ユーサリーはそう思って無いらしい、拡大する争いを嘆き、ついにはサーナを星に降ろすことにしたようだ。
 何々? 争うことの愚かさを教えに行くだと? よし! 俺も手を出そうか

「マシェル!」

「‥‥‥‥はぃ‥‥」
 今にも消えそうな声で返事をする、正直俺はこいつの事が苦手だ。
 本当に自分が作ったのか? と思えるほど性格がおかしい

「お前も星に降りろ、そして人に新しい武器の概念を広めるのだ」

 返事も返さず、マシェルは立ち上がり俺の前から消えていった

 ちゃんと分かったんだよな?

 ・・・・・・
 

 その日、後に女神と呼ばれることになる二人が、星に初めて降りることになる
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