異世界陸軍活動記

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第一級

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 本来なら今日の朝、移転門を囲み守る要塞に攻撃を仕掛ける予定だった。
 だがその予定は急遽中止になった

 既に敵地に上陸しており、直ぐにでも移転門を落とさなければならないのにも関わらず

 

 作戦が中止になったのは早朝に偵察から帰ってきた竜翼機が原因らしい、俺ととしては何らかの情報が欲しいのだけれど、情報を提供してくれているタクティアを、上陸してから一度もその姿を見てない。
 破壊の一族の隊員でもあるが、軍の参謀でもあるので色々とこの状況でこの作戦の総指揮と話し合いをしていると思う。
 多分寝れてはいないだろう

 寝てないと言ったらこっちもそうだった。
 まだ夜が明ける前、海岸付近から炎が上がり停泊していたハルツールの軍艦全てが炎上していた。その上、次々と着弾する砲撃、近づく事も出来ずそれが朝まで続き、砲撃が止んだ時にはその場には金属の塊しか残ってはいなかった。
 これにより海からの退路が完全に断たれてしまった。
 もちろんその船の中には海軍兵士がいた訳で、無機物ではない物が浮かんでいたり浜に打ち上げられたりしていた

 陸に上がっていた海軍兵士もおり、その兵士達はまだ回収できる仲間の遺体や物資などを回収をしたが、流石に人手が足りず自分達もその回収を手伝った。 
 とは言っても回収できるような物は殆ど残ってはいなかったが
 

 



 探している間にまた砲撃があるかもしれないし、もうこれ以上は探しても意味がないとなり、陸軍兵士は今日の作戦の為一時テントに戻ったのだが、その時に一人の兵士と目が合う。
 まだ眠いにも関わらず海軍の回収を手伝い、互いに瞼が半分下がっている俺と目が合った兵士。
 そして俺が声を出すよりも先に

「ああ━━━っ!!!」
 その女性兵士が叫び、たまたま周りにいた兵士達は一斉に驚く

「ハヤト! ハヤトじゃん!」
 叫んだのは昨日いくら探しても見当たらなかった、元同じカナル隊のニーアだった

「ニーアやっぱりこの━━」
 俺が言いかけたが

「居たよ! タウロン居たよ!」
 言い終わる前にニーアは走ってどこかに行ってしまった。タウロンを呼びに行ったらしく俺はそれに安堵する、タウロンも無事でいてくれたらしい。
 結局二人ともこの作戦に参加しており、ホッとするのと同時に何故この作戦に‥‥と思った。
 二人の部隊は共に周囲の偵察に出ており、先程帰ってきたという。
 その時破壊の一族の部隊がこの場ににいるという事と、海岸に停泊していた船が全滅していた事を知ったと。
 一族の部隊がいるのなら、当然のことながら隊長である俺がいるはずとテントの辺りを探していたニーアだが、何となくテントの横にどこかで見たようなオブジェが立っているのを見て、俺達がいるテントの辺りをフラフラしていたらしい

 お互いの情報を交換し合ったが、向こうはラベル島が落ちた事を信じられないと言った顔で聞いていたし、二人が偵察に行っていた時の状況も詳しく聞いた

「それがさーぁ、まったく敵兵に出会わなかったんだよねー出会わなければそれでいいんだけどさ、船がやられたって事はもうあたし達がここに居るのって完全にバレてるじゃん? だったら何かしらあってもおかしくないと思うんだよねー」

「ニーアの言う通り、この状況で何があってもおかしくは無いのですが、ハルツール軍の竜翼機が我が物顔で飛んでましたし‥‥一体どうなっているんでしょうか?」

 敵地にも関わらず周囲には何も無かったそうだ、それに‥‥

「建物どころか道すらも無かったんだよ、ほんと何にもない」

「あるのは草と木だけでしたね、マシェルモビアとはこんなにも発展していないのでしょうか? 一応移転門の近くですから何かしらあるとは思っていたのですが」

「多分あれだよ、軍隊に全振りしちゃってさぁー、国民の生活とかきっついんじゃないの? サイテーだねマシェルモビアって、よかったぁーハルツールに生まれて」

 


 そんな時だった。
 全軍に撤退命令が出たのは



 ◆◇

「大陸深部を抜けるってマジかよ」
「何でこんな事に‥‥‥」

 全部隊に絶望と言う名の撤退が実行されようとしていた。

 まず部隊の隊長達が呼び出され、その各隊長から各隊員へと伝達されたそれは

『我がハルツール軍は大陸西部の深部を抜けハルツールに帰還する』
 というものだった。

 自殺行為と同じと呼べる撤退、しかしその場を通らなければ本国へは帰還できない。
 船は全て沈んでおり海路での撤退は不可能、落とそうとしていた移転門にはこちらの6倍の戦力、後方にも6万のマシェルモビア兵、更には大陸深部に向かう緩衝地帯にも200万の兵がいるという。
 
 偵察部隊が得た情報では、このまま深部を抜けて帰るなら緩衝地帯の兵を引くと、つまりこのまま移転門を狙った場合その兵士が全て我々に向けられることになる


 では深部を抜けて撤退をするか? となるとこちらも非常に難しい
 
 『大陸深部』とは
 かつての厄災グラースオルグが通過した場所であり、大陸西部から東部へとソレは移動した。グラースオルグが通過した一帯は全ての命が奪われその後、魔物が誕生する事となる

 グラースオルグと呼ばれた都市で誕生した事からその都市の名を取り、それはグラースオルグと呼ばれる事となった。
 それで誕生した魔物はグラースオルグが誕生した場所に近ければ近いほど、強力な魔物として生れ落ちる。
 ‥‥そして、そのかつての都市でありその名がついた厄災は、丁度これから撤退するルートにとてつもなく近い。
 つまり、最も強力な魔物が徘徊する場所を通過しなければならない

 以前ソルセリー救出の際、大陸東部の深部を通過したが、あれは丁度大陸深部が終わる場所から緩衝地帯寄りに横断したため4人でも横断する事が出来た。とはいえあれも奇跡に近い
 
 このまま移転門を攻めた場合、間違いなく全滅が待っている。かと言って深部を抜けてハルツールに戻ろうとしても、そこには地獄しかない。
 地獄を見た後に死を迎えるだろう。もし死ぬのならこのまま移転門を攻めて死んだ方がいっそのこと楽なのかもしれない
 
 引くも地獄、攻めるも地獄と言った所か‥‥それでもこちらは1万の兵士、深部を抜けた場合、犠牲はかなりの物になるがそれでも生き残る者もいると思う

 そう信じたい



 最悪の撤退で兵士達の士気は低いがここから本国へ戻る為にはそれしかない、陸軍兵士約1万と敵艦からの砲撃時、丁度船から降りていたため助かった海兵200名は撤退の準備にかかる。
 海兵の200名の内50名ほどは竜翼機のパイロットだが、当然ハルツールまでの燃料はあるはずがなく、途中まで援護となり、その後竜翼機を乗り捨て地上を移動する兵と合流する。
 そして今この時でも緩衝地帯に向け偵察に出ている、兵を引くと言ったマシェルモビアだが実際に道を開けているとは信じる事が出来ない。
 だが何機か偵察を終え帰って来ているが撤退の準備は進められている、という事はマシェルモビアは本当に道を開けているのだろう



 さて、深部を通過するのだがその前にマシェルモビア側の緩衝地帯がある。その事で上から伝わってきた指示では、道を開けたとはいえマシェルモビアが手を出さないという保証はない。
 なので左右を守るように戦える者は配置される事になる、その時サコナ・ソルセリーはもちろんの事、召喚者そして海兵の生き残りは隊列の中央に位置する。
 深部に入ってからは探知を持っている者と召喚者は前方に出る事となる。深部の地中には地下で身を潜める魔物もいる為、俺が以前開発した地下専用の探知が出来る者が活躍する事になる。
 そして召喚者殺しが有る為、マシェルモビアとは戦闘を控えている召喚者だが深部ではそれに対し心配する事が無い為、隊列の前に出る事になる
 
 ハヤト隊は破壊の一族の部隊である為、隊列の中央に位置する事が許されているが、それでも大陸深部に入ってからは、地下の探知の出来るノース・ビベルと俺は前に出て欲しいと言われている。
 だが、俺は探知が使えなくなってしまったし、ソルセリーの安全が第一の為ノースはソルセリーの側に置いておきたい。
 そこら辺はタクティアが何とか調整してくれるだろうと思う

 しかし、どうにもならなかった場合を考えると、深部に入ってからでは遅いかもしれないため、各隊員に今のうちに支持を出しておこうと思い、たまたまライカと今後の事で話していた時のこと

「ハヤト隊長」
 久々にその姿を見たタクティアだった。その顔からはいつもの朗らかな表情は無い、たかだか1日ほどでこれまで外見が変わってしまうのか? と思うほどやつれていた

「少しいいでしょうか」
 
 もうその時点でいい話ではなさそうだ
「構わないよ」

「では作戦指令室のテントに一緒に来てもらえますか?」

「分かった」

「では隊長、話はあとで‥‥」
 それまで話をしていたライカだが、タクティアの顔を見て一般兵には話せない内容だと考えたのか、その場から立ち去ろうとしていたが

「ライカも一緒に来てもらっても構いません、破壊の一族の部隊としての話ですから」
 タクティアはライカが去ろうとしたのを止めた

 破壊の一族の部隊としての話‥‥
 もうその時点で内容を把握してしまった



 ◆◇


 指令室のテントでこの撤退での『条件』というのを聞いた。
 作戦指令は淡々とその条件について話

「後は頼む」
 とだけ言い頭を下げた



 撤退における条件とは、サコナ・ソルセリーの身柄であった。しかもそれは人質でもただ単に引き渡すだけではなく
 『差し出せ』だった
 
 『破壊の一族』は兵器のように扱われるが、その一方で『身代わり』としても扱われる。
 その命一つで部隊を助けてやろう、それはハルツール、マシェルモビア両方での暗黙の了解だった

 マシェルモビアが提示した条件とは、サコナ・ソルセリーの命一つで深部への道を開こうという物だった。
 上からの指示で破壊の一族の命を差し出せと命令が下った場合、まず最初に一族を率いる隊長、つまり俺にその指示が来る。それを俺がソルセリーに話さなくてはならない、後は部隊が一緒にソルセリーと残るのか、それともソルセリー1人だけで残るのか? 多分ソルセリーはこの事を話したら1人で残ると言うだろうし、まず1万の兵士の命が掛かっている訳だから彼女なら断らないと思う。
 殺させる位なら、マシェルモビアのいいようになる位ならと彼女は『消滅』魔法の詠唱に入るだろう
 


 指令室のテントからでた俺達3人はそのままテントを離れ、自然と人がいない場所に移動をしていた 

 会話の無いままこの場所まで来た3人だったが、足が止まった時タクティアがその口を開いた


「ソルセリーの血はハルツールには無くてならない物です」
 俺とライカが反応しなくともタクティアは話続ける


「もし破壊の血が途切れてしまったら、マシェルモビアにとって大きな脅威がなくなった事になります、周囲を壊滅させるあの力はマシェルモビアからしたらとてつもない脅威でしょう。
 だからあの血筋はどうしても残しておかなければなりません、ハルツールという国がある限りは‥‥。
 ハヤト隊長、以前私がこう言った事がありましたよね? サコナ・ソルセリーの『消滅』とハヤト隊長の『グラースオルグ』の力、それが同等の価値があると‥‥。
 その考えはハルツールだけではなく、マシェルモビアでも同じ考えです、知ってましたか? ソルセリ―とハヤト隊長は第一級殺害対象なんですよ? つまり姿を見たら殺せと相手は言っているんです。
 まぁ、実際は怖くて殺すどころか近づくのも怖いでしょうが」

 「ははは」と乾いた笑いをするタクティア

「それで‥‥何が言いたい」

「同じ第一級殺害対象のソルセリーとハヤト隊長‥‥別にそれが逆でもいいと思いませんか?」











「つまり‥‥‥‥‥っ、‥‥‥‥ソルセリーの代わりに死んでください、ハヤト隊長」



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